今回は離婚について学習していこう!
なかなかブラックな話題ですね。
家族法を学ぶ者として、社会一般論ではなく、法的な視点から離婚を知っておく必要があるんだ。特に離婚の効果については将来いつその境遇にあうかわからないから一般教養として知っておく必要があるだろう。
詳しく見ていこう。
離婚は社会一般でもよく聞く言葉です。しかし単純に「婚姻が解消すること」と考えていませんか?
家族法を学習する者としては、
どういった場合に離婚が発生するのか?離婚の効果は何か?離婚の処理方法は何か?
といった様々な法的場面についての問題点を知っておく必要があるのです。
今回は家族法の離婚について一通り復習・予習できるような記事にしようと思います。
離婚のポイント
離婚には「協議離婚」と「裁判離婚」があります。
まず協議離婚について要件等を確認していこうと思います。そして協議離婚の効果を押さえます。特に協議離婚の財産分与についてはしっかり学習していきましょう。
次に裁判離婚について要件を確認していきます。効果はほとんど協議離婚と同じなので省略する予定です。
①協議離婚の要件・効果を押さえる。
②裁判離婚の要件・効果を押さえる。
それでは見ていきましょう。
協議離婚の要件・効果
協議離婚の要件
協議離婚の要件を出し惜しみせずにまとめます。
〈協議離婚の要件〉
①離婚意思
②親権者の定めがあること(819条1項)
③離婚の届出(764条)
以下、それぞれの要件を簡単に見ていきましょう。
要件①:離婚意思
離婚意思については形式的意思説が判例通説だと言われています。婚姻意思は実質的意思説が判例通説だったので違いに注意しましょう。
形式的意思説とは、法律上の婚姻関係を解消する意思さえらればいい、ということです。
もし離婚の際に実質的意思説をとってしまうと、離婚届を受け取る人は「この人たちは本当に離婚意思があるのだろうか。ちょっと離婚のわけを聞いていいですか?」といったように無駄な詮索をしないといけなくなります。
婚姻届けを提出しにきたハッピーな人に「ちょっと婚姻の訳を聞かせてください!」というのとは大きな違いですよね。
よって離婚の要件の離婚意思は形式的要件説とされているのです。
要件②:親権者の指定
父母が離婚する場合で、未成年子がいる場合には夫婦の協議で一方を親権者と定めなければなりません。未成年は行為能力が制限されているためです。民法819条1項を見てみましょう。
(離婚又は認知の場合の親権者)
第八百十九条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
この規定とともに、親権者と定めなければ届出が受理されないとの規定があります。民法765条です。
(離婚の届出の受理)
第七百六十五条 離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第七百三十九条第二項の規定及び第八百十九条第一項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
2 離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、そのためにその効力を妨げられない。
とはいえ民法765条2項によれば誤って受理された場合には離婚は効力を発します。
注意してほしいのは、「一方」を親権者として定めなければならないという点です。「双方」は無理なのです。「一方」なのです。
日本は離婚後の共同親権を認めていません。単独親権です。そのため、ここでどちらを親権者にするかよくもめるわけですね。協議で決まらない場合には調停や審判によって決めることになります(民法819条5項参照)。
要件③:離婚の届出
離婚の届出の規定についてはさきほどの民法765条で確認した通りです。協議離婚の場合には届出まで提出する必要があります。
「届出までが協議離婚」としっかり覚えておきましょう。
協議離婚の効果
姻族関係が終了するのは当たり前(民法728条1項)として、その他の効果について確認していきます。
離婚後の子の監護に関する事項の義務(民法766条)
まず協議で定める、面会交流・養育費分担その他の子の監護に関する事項の義務を履行することが必要になっていきます。民法766条についてみてみましょう。
(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
第七百六十六条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
3 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
4 前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。
離婚により親権者でなくなった者についても、子と面会勾留することが認められることがあるということです。
これもよく社会一般的に離婚で問題になる点です。離婚後親権者になった母親が夫(子からすると父親)に「もう二度と子どもに会わないでください!」という場面をよくドラマなどで見たことがあると思います。
この場合は法律を知っている夫(子からすると父親)は「いや、法律上面会交流を求めることができるから、家庭裁判所に認めてもらいます!」という対処ができるわけです。
離婚による復氏(民法767条)
離婚をすると、同姓になった状態からもともとの氏に戻るのが基本になります。ただし3カ月以内に届出をすれば復氏は生じません。民法767条になります。
(離婚による復氏等)
第七百六十七条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。
2 前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。
なお、子どもの氏は離婚によっても影響がないので注意しましょう!子どもの氏を変更したい場合には民法790条・民法791条によります。
財産分与(民法768条)
まずは条文を確認してみます。民法768条です。
(財産分与)
第七百六十八条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
財産分与も離婚の際に社会的にもめる場所ですね。
財産分与の中身については3つほど種類があるので押さえましょう。
①夫婦財産関係の清算(過去の婚姻費用清算を含む)②離婚後の扶養③慰謝料
です。
①夫婦財産関係の清算は夫婦が婚姻中に有していた共同財産をどちらに分配するのかということです。ただし単純に考えられるわけではありません。
例えばある財産をどちらに帰属させるかという問題に際して一方配偶者の名義でなされている場合を考えてみましょう。「俺が買ったんだからこれはこれの物だな」と言われて場合
「本当にあなただけの財産なの?」
という視点を持ちましょう。
あなたが買えたのは、私が家庭を維持してきたからじゃないのか。私が財産を管理してきたからではないのか?私が家事を行ってきたからではないのか?
といった反論も可能です。このように「実質的」に清算を行います。専業主婦だからといってまったく清算が得られないわけではありません。
②離婚後の扶養というのは、他方配偶者が離婚により生活が困窮しないように生計を維持していくことを目的とするものです。特に共働きではなく専業主婦であった場合には問題になるでしょう。また離婚後の扶養の中には未成熟子の養育費も含まれます。
③慰謝料についてはよく目にするものですよね。芸能人の離婚でもどれだけ慰謝料を支払ったか問題になることがあります。慰謝料は「ごめんなさい料」だと思ってください。たとえば相手方の不倫によって離婚になった場合は慰謝料を含めて財産分与がされる場合が多いでしょう。
またこの慰謝料については財産分与とは別立てで請求することもできます。
協議離婚の無効・取消し
協議離婚については婚姻の場合と異なり、無効の規定があります。この点、民法742条1号を類推適用するという見解もあります。
より重要なのは協議離婚の取消しです。これは民法の規定があるのでしっかり押さえましょう。民法764条準用の民法747条になります。
(婚姻の規定の準用)
第七百六十四条 第七百三十八条、第七百三十九条及び第七百四十七条の規定は、協議上の離婚について準用する。
(詐欺又は強迫による婚姻の取消し)
第七百四十七条 詐欺又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2 前項の規定による取消権は、当事者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後三箇月を経過し、又は追認をしたときは、消滅する。
婚姻の場合と同様、詐欺・強迫の場合には離婚の取消しが認められるというわけです。もちろん期間制限(3カ月)というのも準用されます。
さすがに詐欺や強迫の際に離婚を許してはいけないという配慮ですね。
相手方は「離婚したい」と言っているけれど、相手方が「どうしても別れたくない!」と言っている場合は離婚意思の合致がないから離婚できないというわけですか?
いや、協議離婚では離婚できないというだけさ。協議離婚で離婚できなかったら裁判離婚になるぞ。次項で詳しくみていこう。
裁判離婚の要件・効果
協議、調停、審判でも離婚ができない場合には裁判所によって離婚をするしかありません。
これを裁判離婚と言います。まずはその裁判を起こす要件(離婚原因)についてみてみましょう。
裁判離婚の要件(離婚原因)
裁判離婚ができる場合(提訴できる場合)は民法770条に規定されています。
(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
1号から4号まではざっくりと頭に入れておくとよいでしょう。離婚の原因(民法770条1項)は有責主義(相手方に責任がある場合に離婚できるという考え)と破綻主義(夫婦関係が破綻している場合に離婚できるという考え)をミックスした形になっています。
また、注意してほしいのは2号です。遺棄とは何も刑法の遺棄罪ように危険な場所に放置するということではなく、夫婦の同居・協力・扶助義務(民法752条)や婚姻費用分担義務(民法760条)に違反する行為のことです。義務違反行為を悪意で行った場合に離婚原因になるというわけですね。
論点:有責配偶者から離婚できるか
離婚に際して論述で問われるかもしれない大きな論点として、「有責配偶者から離婚できるのか?」という論点があります。
自身が不倫などをした有責配偶者が離婚をしたいと思っているが相手方が一切認めないというなかなかヘビーはケースを考えてみましょう。
この場合、協議離婚で使えるとすれば5号「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」しかありません。1号は「(相手方)配偶者に不貞な行為があったとき」と読むべきなので自身が不貞行為をしている場合には1号離婚はできないことに注意です。
判例の結論を押さえます。
〈有責配偶者からの離婚の要件(5号離婚できる場合)〉
①別居が相当の長期間に及ぶこと
②未成熟子が存在しないこと
③相手方配偶者が離婚により苛酷な状態に置かれるなど離婚請求を認めないことが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情がないこと
この3要件があってはじめて有責配偶者からの請求は認められる可能性があるとされています。また②未成熟子が存在しないことは決定的な要件ではないと言われている点にも注意です。高校生くらいで離婚後も養育費の期待ができる場合などは未成熟子がいようとも有責配偶者からの離婚の障害にはならないでしょう(最判平成6年2月8日)。
この点は家族法の論述試験でも聞かれる可能性があるのでしっかりと要件立てして押さえるようにしておきましょうね!
裁判離婚の効果
裁判離婚の効果は民法771条より民法766条~民法769条までが準用されています。
(協議上の離婚の規定の準用)
第七百七十一条 第七百六十六条から第七百六十九条までの規定は、裁判上の離婚について準用する。
監護義務、復氏、財産分与が発生するというわけです。
また裁判上の離婚の際に親権者がどうなるかについても確認しておきましょう。民法819条2項です。
(離婚又は認知の場合の親権者)
第八百十九条
2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
裁判所が親権者を定めるというわけですね。
まとめ
離婚についてまとめました。いかがだったでしょうか。
基本的には婚姻で学習した箇所が準用されるので、婚姻の学習と合わせて離婚の理解を深めていくといいでしょう。
離婚について学習すると、周りの目もありますから、ちゃんと「家族法の勉強だよ!」とアピールしておきましょうね(笑)。
解説は以上です。読んでくださってありがとうございました。ではまた~。
参考文献
家族法は大きな改正がなされており、改正に対応した基本書・参考書はまだ少ないです。今回は改正に対応したもののなかでわかりやすい、大村先生の家族法をおすすめします。
初学者にもわかりやすく書かれており、分量もそれほど多くないため、取り組みやすいと思います。