民法772条をわかりやすく!親子関係完全解説【家族法その4】

親子関係民法

嫡出子とか非嫡出子とか認知とかこんがらがってよくわかりません!

法上向
法上向

家族法の最初の山場の1つが親子関係をどう判断するかだね。まずは原則を押さえておくと、問題になっている場面はただの例外に過ぎないということが見えやすくなると思う。

今回は親子関係、とくに嫡出子・非嫡出子や認知について解説していこうか。

家族法の最初の山場といっても過言ではないのが親子関係について理解することです。特に嫡出子・非嫡出子や認知といった言葉は日常生活でなじみが薄く、イメージがしにくいと思います。

しかし、嫡出子・非嫡出子や認知が問題になるのは、例外的な場面にすぎません。つまり原則どおりいけばこういった問題は生じないのです。

原則・例外関係を押さえることで嫡出子や認知の問題を理解しやすくなると思います。できるだけわかりやすく解説していきます!よろしくお願いします!

親子関係のポイント

まずは原則を押さえます。誰が母になって誰が父になるのか?という問題です。

そのうえで嫡出子の問題にぶつかると思います。嫡出子とは婚姻関係にある夫婦から出生した子のことですが、嫡出推定については「推定を受けない子」や「推定を受ける子」、「推定の及ばない子」が生じそれぞれの対処法を知る必要があります。

さらに非嫡出子の問題についてみていく必要があります。非嫡出子と関連して問題になるのが認知です。認知はあくまで「非嫡出子」で問題になることをしっかり理解しましょう

認知の効果から認知の訴え、認知無効の訴えについて押さえていきます。

①原則の親子関係の判断について理解する。
②嫡出子について「推定を受けない子」「推定を受ける子」「推定の及ばない子」について理解する。
③非嫡出子について、認知の効果を理解する。
④認知について認知無効の訴え、認知の訴えを理解する。

それでは見ていきましょう!

原則としての親子関係

法上向
法上向

子どもが生まれた場合、誰が母で誰が父になると思う?

そんなの簡単ですよ!

生まれた時に母親と父親がいるんですから、その人が母と父になります。

法上向
法上向

答えになってないな(笑)。

別に出生届に記載されるから父と母が決まるわけじゃない。民法は厳格に誰が父か母になるか定めているんだ。

フィーリングで父や母を考えてはいけません。家族法を学習した者は「法律の視点から」母と父を定める必要があります

誰が母になるか、父になるかを定めているのは民法772条1項です。

(嫡出の推定)
第七百七十二条 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する
2 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

民法772条は父親しか定めていないじゃないか!

と思われるかもしれませんが、そうではありません。

実は

分娩した人は母親

であることが前提になっているのです。

つまり、民法は、

原則として分娩者を母、そして婚姻中に懐胎していればであれば母の配偶者を父

と定めているわけです。

なお、厳密にいえば民法772条2項があるので、婚姻の成立から200日~婚姻解消・取消しから300日の間の出産についてはその婚姻の夫が父と推定されるというわけです。民法772条2項は嫡出子推定として有名ですが、父親の推定にも使われるという点には注意してくだいさい。

なんで父の方は「推定」なんですか?

法上向
法上向

出産の場面を想像してみよう。子どもが生まれたとして、その親であることを母親は「産んだ」という事実で証明できるようね。けれど父親についてはどれだけ頑張っても確実に自分の子どもと証明するのは難しいんだ。

だから民法も「推定」としかしていないんだよ。

嫡出子

婚姻関係にあれば嫡出子

婚姻関係にある夫婦から出生した子は嫡出子と言います。これをまずは押さえましょう。

そして、婚姻中に懐胎してできた子は嫡出子です。一般的には母親も父親も嫡出子と認めて出生届を出すので推定などの話をせず子どもは嫡出子となります。

嫡出推定を受ける子

嫡出子かどうかが問題になりそうな場合(争いがありそうな場合)には、嫡出子かどうかの判別には推定規定(民法772条2項)を用いることになります。見てみましょう。

(嫡出の推定)
第七百七十二条
2 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

つまり、婚姻の成立した日から200日~婚姻の解消・取消しから300日以内の間に生まれた子については嫡出子と推定されるというわけです。

民法722条2項

婚姻の成立後200日以降~婚姻の解消・取消後300日までの間に生まれた子は「嫡出推定を受ける」であるし、その婚姻の夫は「」になるわけです。

嫡出否認の訴え(父からの父子関係否定)

繰り返し言いますが、婚姻成立後200日以内~婚姻の解消取消後300日までの子どもは嫡出子と推定されますし、婚姻中の夫は父親と推定されます

では夫側が「それ俺の子じゃないぞ!」といって推定を覆すことができるでしょうか?

このように夫が嫡出を否認(自身の婚姻関係から出生した子ではない)と主張するための制度として嫡出否認の訴えがあります民法774条民法775条を見てみましょう。

(嫡出の否認)
第七百七十四条 第七百七十二条の場合において、夫は、子が嫡出であることを否認することができる
(嫡出否認の訴え)
第七百七十五条 前条の規定による否認権は、子又は親権を行う母に対する嫡出否認の訴えによって行う。親権を行う母がないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任しなければならない。

ポイントは夫のみにしか否認権はないという点です。なおこ嫡出否認の訴えは夫が出生を知った時から1年以内に提起しなければなりません(民法777条

あれ、この子って俺の子じゃないんじゃない?」と思った時から1年以内に提起しないと嫡出否認の訴えはできないというわけです。

嫡出推定の及ばない子(子・母からの父子関係否定)

では嫡出推定が及ぶ期間内(婚姻成立200日以降から婚姻解消・取消し300日以内)に生まれた子はすべて嫡出子(婚姻中の母・父の子ども)と認定され、それを覆すことは父親の嫡出否認の訴えによることしかできないのでしょうか?

母や子どもから父子関係を否定したい場合もあるでしょう。

その場合に使われる手段が親子関係否認の訴えです。ただし嫡出推定を覆さないといけないため、「絶対に夫による懐胎は不可能であった!」と主張する必要があります。

判例によれば

夫婦が別居など婚姻の実態が存在しないことが外形的・客観的に明らかであり、夫による懐胎が外観的に不可能な場合

には嫡出推定を覆すことができるとされています。

注意してほしいのは、生殖不能や血液型の相違といった「夫婦がどういう関係であったか」以上に「夫婦自身の内部事情」にまで踏み込む場合には推定を覆すことはできないということです。家庭崩壊も推定を覆すことはできません。さらにDNA鑑定で生物学的に父子関係が存在しないことが明らかになったとしても推定を覆すことはできない(親子関係不存在確認の訴えで争うことはできない)としています。

夫婦が別居や夫不在といった外形上でしか嫡出推定を覆すことはできない、親子関係不存在確認の訴えで争うことはできないということです。

また言葉がややこしくて申し訳ないのですが「推定の及ばない子」は「嫡出推定期間内に生まれているがその推定が及ばないと考えられる子ども」であることは押さえておきましょう。嫡出推定期間内に生まれた子どもであることが前提です。嫡出推定を受けない子と一緒にしないようにしましょうね。

嫡出推定を受けない嫡出子

推定を受けない嫡出子というのは、婚姻の成立200日以降まら婚姻の解消・取消しから300日以内に生まれた子以外に生まれた子のうち特に「婚姻の成立200日前に生まれた子」のことを指します

厳密に考えれば嫡出推定期間外なので嫡出子ではないことになりますが、登記実務上、届出があれば、この場合も嫡出子として認められているのです。

推定を受けない嫡出子のわかりやすい例はデキ婚(できちゃった結婚)ですね。デキ婚を条文にあてはめますと、婚姻前に200日以内に生まれることが多いでしょう。そうなるとその子どもは嫡出推定(民法772条2項)を受けないことになりますが、先ほども述べたように、登記実務上から出生届があれば、父母の婚姻もあるので、嫡出子となるわけです。

嫡出推定を受けない子で問題になるのが、嫡出推定期間外の子について親子関係を否定する場合です。

嫡出推定が及んだ嫡出子については、父親からの嫡出否認の訴え(民法775条)が可能でしたが、推定を受けない子の場合には嫡出否認訴えをすることができません

関係者からの親子関係不存在確認の訴えによることになります。これは嫡出推定が及ばない子(嫡出推定期間内の子であるが夫以外から父子関係を否定したい場合)とは異なって認めやすくなります。嫡出子推定がないからです。

嫡出子の父子関係の争いのまとめ

なかなか理解するまでに時間がかかると思いますが、考え方は以下の手順です。

父子関係の争いの処理方法
  • 検討1
    夫婦間に婚姻関係があるかどうか

    夫婦間に婚姻関係がある場合には基本的に嫡出子である。夫婦も子どもを嫡出子として届け出ている場合には問題はない。婚姻しているが父子関係を争いたい場合に以降の検討になる。

  • 検討2
    嫡出推定期間内かどうか

    父子関係に争いがある場合にはまず嫡出推定期間(婚姻成立から200日~婚姻解消・取消しから300日)(民法722条2項)内の子どもかどうかを検討する必要がる。

  • 検討3-1
    【推定期間内の場合】争いたいのは誰か?

    嫡出推定期間内の場合は争いたい人物が誰かによって訴えの形式が変わってくる。㋐父親の場合には嫡出否認の訴え(民法774条・民法775条)㋑母や子などの場合には親子関係不存在確認の訴えによることになる。

    ㋑親子関係不存在確認の訴えの場合には「推定の及ばない子」の問題となり、外形的・客観的(別居や夫不在)に夫による懐胎が外観的に不可能な場合でなければ認められない。

  • 検討3-2
    【推定期間外(婚姻成立後200日以内)の場合】親子関係不存在確認の訴え

    争いたい人物がだれであれ婚姻㋓いつ率後200日以内に生まれた子の場合(でき婚のような場合)には「推定を受けない嫡出子」となる。この場合、親子関係不存在確認の訴えによることになる。

家族法の論述であれば出題されるかもしれない領域ですし、短答でも出題されたことがある論点なので、どういう場合にどういった訴えをすることになるのかを確認しましょう。

非嫡出子

認知とは?

婚姻関係にない男女から生まれた子どもは非嫡出子となります。

非嫡出子の場合には認知によらなければ親子関係は生じません

認知とは、法律上の親子関係という身分関係を創設するための法律行為(単独行為)です。

(認知)
第七百七十九条 嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。

認知は結構強い効果をもたらす法律行為というのがわかってもらえると思います。認知一つでその子に親子関係が生じるか否かが決定してしまうわけですから。

法定代理の同意は必要ありませんし、届出によって成立します。

(認知能力)
第七百八十条 認知をするには、父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときであっても、その法定代理人の同意を要しない
(認知の方式)
第七百八十一条 認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってする
2 認知は、遺言によっても、することができる。

とはいえ、認知が必要になるのは非嫡出子についてですので、デキ婚のような、嫡出推定を受けない「嫡出子」の場合(登記実務上、婚姻後200日以内の実際に婚姻している夫婦の出生届については嫡出子になるとされている)には認知の問題は生じないことになります

非嫡出子(多くは婚姻外(300日後)での出産や事実婚・内縁関係での出産)について認知をしなければ親子関係は存在しないということです。

認知については、嫡出子のような推定規定はなく届出をすれば問題なく認められます。

また認知は取り消すことができないという点にも注意が必要です。認知は親子関係創設という大きな影響を与えるからですね。民法785条になります。

(認知の取消しの禁止)
第七百八十五条 認知をした父又は母は、その認知を取り消すことができない。

認知を争う:認知否認

認知の多くは父親からの一方的な法律行為です。これに対して子やその利害関係人は認知が真実でない場合(親子関係相当ではない場合)には認知無効を主張することができます。もちろん認知無効の訴えとして訴訟を提起することも可能です。

(認知に対する反対の事実の主張)
第七百八十六条 子その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することができる。

細かいですが、認知無効の主張について認知した父親自身に利害関係人該当性を認めた判例もあります(平成26年1月14日)。ただし権利濫用にもなりうることには要注意です。

認知を要求する:認知の訴え

民法は認知されていない状態にある非嫡出子について、認知を求めることができるとする規定も設けています。民法787条です。

(認知の訴え)
第七百八十七条 子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない。

認知の効果

認知をするとどういう効果が生じるでしょうか。

通常の親子関係と同様に扶養義務(民法877条)や氏変更(民法791条1項)、親権者を父母の協議で父とすること(民法819条4項)といった効果が生じます。ほとんど嫡出子と同様です。

認知の効果として一番大きいのは、相続権が発生する(民法887条1項)ことでしょう。相続分も嫡出子と変わりません。

また、認知したとしても単独親権であり、父母の共同親権になるわけではありません

まとめ

親子関係についてまとめました。いかがだったでしょうか。

まず嫡出子非嫡出子の認知の問題は別物であるという点を理解する必要があります。嫡出子における父子関係の争いで認知等の問題は生じません

認知の問題が生じるのは非嫡出子においてです。

最後に父子関係の争いの考え方について再度確認してみましょう。

父子関係の争いの処理方法
  • 検討1
    夫婦間に婚姻関係があるかどうか

    夫婦間に婚姻関係がある場合には基本的に嫡出子である。夫婦も子どもを嫡出子として届け出ている場合には問題はない。婚姻しているが父子関係を争いたい場合に以降の検討になる。

  • 検討2
    嫡出推定期間内かどうか

    父子関係に争いがある場合にはまず嫡出推定期間(婚姻成立から200日~婚姻解消・取消しから300日)(民法722条2項)内の子どもかどうかを検討する必要がる。

  • 検討3-1
    【推定期間内の場合】争いたいのは誰か?

    嫡出推定期間内の場合は争いたい人物が誰かによって訴えの形式が変わってくる。㋐父親の場合には嫡出否認の訴え(民法774条・民法775条)㋑母や子などの場合には親子関係不存在確認の訴えによることになる。

    ㋑親子関係不存在確認の訴えの場合には「推定の及ばない子」の問題となり、外形的・客観的(別居や夫不在)に夫による懐胎が外観的に不可能な場合でなければ認められない。

  • 検討3-2
    【推定期間外(婚姻成立後200日以内)の場合】親子関係不存在確認の訴え

    争いたい人物がだれであれ婚姻㋓いつ率後200日以内に生まれた子の場合(でき婚のような場合)には「推定を受けない嫡出子」となる。この場合、親子関係不存在確認の訴えによることになる。

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

家族法は大きな改正がなされており、改正に対応した基本書・参考書はまだ少ないです。今回は改正に対応したもののなかでわかりやすい、大村先生の家族法をおすすめします。

初学者にもわかりやすく書かれており、分量もそれほど多くないため、取り組みやすいと思います。

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