ここだけ注意!間接正犯の検討ポイント解説!【刑法総論その15】

間接正犯刑法

共同正犯について前々回の記事でわかりました。けどたしか間接正犯っていうのがありますよね?あれの立ち位置がよくわからないんですけど……

法上向
法上向

もしかして、間接正犯を共犯の一種だと考えていないかい?

え、違うんですか?だって基本書とかでも共犯の箇所にあるじゃないですか。

法上向
法上向

たしかに、間接正犯は共犯との使い分けが必要という点ではかかわるが、間接正犯は別に共犯というわけではないぞ!

詳しく見ていこう。

間接正犯共犯の章に入れられることが多く、共同正犯教唆犯幇助犯といった共犯の一種と考えてしまうことがよくあります。

しかし、実際は間接正犯はあくまで「間接的に正犯行為を行うこと」です。つまり間接的に自己の犯罪を実現するというわけです。

私たちが一般的に考える共犯以外の犯罪は単独直接正犯です。これを共同で行えば共同正犯というわけですね。

つまり、間接正犯とは、直接正犯と対になる概念であり、別に共犯の一種というわけではありません直接的に自己の犯罪を実現するか(直接正犯)、間接的に自己の犯罪を実現するか(間接正犯)の違いです!

間接正犯のポイント

間接正犯の考え方はいたってシンプルですが、冒頭でも述べたように間接正犯を共犯の一種と考えてしまうと泥沼にはまってしまいます。慎重にしっかり考えて理解するようにしましょう。

次に問題になるのは検討ポイントです。間接正犯は条文がなくこれまでの判例から要件、検討ポイントを導き出さなければなりません。判例・通説による検討ポイントをしっかり押さえてどんな問題でも対応できるようになりましょう。

最後に、間接正犯の知っておきたい論点を解説します。故意ある幇助的道具の利用、間接正犯の故意で教唆犯となった場合、という2点です。

①間接正犯の考え方を理解する。
②間接正犯の検討ポイントを押さえる。
③間接正犯の論点、故意ある幇助的道具の利用を理解する。
④間接正犯の論点、間接正犯の故意で教唆犯となった場合の解き方を理解する。

それでは見ていきましょう!

間接正犯の考え方は一方的に利用支配

間接正犯は共犯ではありません!正犯なのだから当たり前です!

まずはこのことをしっかり頭の中に叩き込みましょう。これまでみてきた犯罪(故意犯)はすべて「ある人が意思のもと、犯罪を実現した」という単独正犯のパターンでした。しかし、間接正犯は「ある人が意思のもと、他人を用いて、犯罪を実現する」というパターンです。

つまり、他人を用いて、自己の犯罪を実現する行為類型を間接正犯というのですね。

これをよく参考書等では「間接正犯は相手方を一方的に利用支配して犯罪を実現するものである」というように表現されます。

一方的に利用支配して恐れおののく他人に犯罪を実現させれば間接正犯ということだね。

法上向
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ちょっと待って!支配の意味を勘違いしていないかい?別に利用される他人というのは意思を抑圧されているとかそういった事情は本来は必要ないんだ。

一方的に利用支配」と聞いて、「なるほど、他人を独裁者のように支配して犯罪を行わせることが間接正犯なんだな」と思った方は要注意です。本来の間接正犯の意味合いとは異なります。

別に間接正犯の他人は間接正犯者の手下である必要はありません。自由な意思を持っている場合でも間接正犯は成立するとされています。たとえば、何もしらない他人に、銃の練習と偽って人を殺させるような場合ですね。この場合の他人は「間接正犯者の手下」というような関係にはないはずです。

つまり、「間接正犯は相手方を一方的に利用支配して犯罪を実現する」というよりも「相手方を一方的に利用し、犯罪結果の実現を支配する」行為といった方が正確でしょう。利用・支配の「支配」は因果関係、結果に対する支配を意味していたわけですね。

わかりにくい場合、特に初学者の場合は「支配」という言葉に混乱を与えてしまうので

間接正犯は相手方を一方的に利用し、犯罪を実現する行為

と考えればよいでしょう。「支配」という言葉を省いても考え方には大して変化はありません。

不作為犯の作為義務の排他的支配の「支配」と同じ意味です。

①間接正犯は共犯の一種ではない!
②相手方を一方的に利用し、犯罪を実現する行為である。直接正犯と対になる。

間接正犯の検討ポイント

間接正犯は関係性・行為態様・状況を考えろ!

間接正犯は相手方を一方的に利用して犯罪を実現するという行為でした。となると一方的に利用できるだけの相手方である必要があります。

その場合の検討ポイントは、大きく3つあります。

①関係性②利用態様・状況

それぞれ簡単に見ていきましょう。

関係性

利用者と被利用者の関係にまずは着目してみましょう。

よくあるのが未成年者を利用して間接正犯を行う場合です。通常、未成年者は成年者に比べて「一方的に利用」しやすい者です。そのため、間接正犯は認められやすくなります

また、事案の事情として、日常的に支配関係にあったり、暴力虐待をしていた場合などには間接正犯は認められやすいです。

注意してほしいのは是非弁識能力の有無、責任能力の有無はあまり関係ないという点です。

間接正犯はあくまで利用者(間接正犯者)の犯罪についてのみ考えています。
被利用者は14歳以下だから犯罪成立しないといった事情や、是非弁識能力がないから犯罪の良し悪しの区別ができないとった事情はここでは考えません!
もう一度言いますが、間接正犯を考えるというのは「利用者に間接正犯が成立するか」を考えているのであって、被利用者の犯罪成立有無を考えるわけではないからです。

被利用者の犯罪成立の有無は問題に指定があれば別途考えることになります。

利用態様・状況

利用者がどんな犯罪を行わせたのか・どういう状況のもとで行為に及んだかというのも検討ポイントになります。

たとえば簡単に行うことのできる行為(被利用者の近くに落ちた財物を盗ませるようなもの)は間接正犯が認められやすくなります。また、他に助けを呼べない場所であったり利用者の指示が暴力・強い口調であったりした場合には間接正犯は認められやすくなるでしょう。

一方で、難しい行為(被利用者で実際に考える必要がある行為)の場合には間接正犯は認められにくくなります。被利用者が自分で決断・判断しないといけないため、「一方的に利用した」とは言いにくいためです。また、被利用者が他に助けを呼べる状況や利用者の指示がそれほど強いものでなかった場合には間接正犯は認めにくいです。

検討ポイントのまとめ

以上、間接正犯の際には関係性や利用態様・状況を検討するとわかりやすいということを説明してきました。

これらの要素、必要に応じてこれら以外の要素も総合考慮して、間接正犯かどうかを判断します。しかしこれらの根幹にあるのは「相手方を一方的に利用して、犯罪結果を実現した」といえるかどうかです。

結局は間接正犯の基本となる考え方があるかどうか、を検討しているだけなので、本質を見失わないようにして、事案に応じて柔軟に判断していくようにしましょう

論点:部下・使用人の利用

故意ある幇助的道具の利用」として説明される論点ですが、この言葉を聞いてもよくわからないと思います。

部下や使用人を利用して犯罪を行う場合のことです。部下や使用人は事情を知っています。たとえば覚せい剤の取引で顔を合わせたくないから部下に取引させるような場合ですね。

これは一見、背後者(利用者)には教唆犯が成立すると思われるかもしれません。実際にそう考える学説もあります。部下・使用人に犯罪を行わせており、部下・使用人は故意もあるためです。

しかし、部下や使用人は「自己の犯罪を実現するという意思(正犯意思)」はなく「他人(上司など)の犯罪を実現するという意思」しか持っていません。となると部下・使用人は背後者(利用者)に一方的に利用されただけといえます。

この場合には、背後者(使用者)に間接正犯が成立し、部下・使用人はその犯罪を助けたとして幇助犯になると考えられています。

法上向
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ここで、間接正犯の考え方を「相手方を一方的に利用支配」として、その「支配」を犯罪結果に対する支配ではなく、相手方に対する支配、と勘違いしてしまうと、上記考え方を誤ってしまうだろうね。

あくまで間接正犯は「相手方を一方的に利用」するだけでよく「支配」は結果への因果関係の支配を表しているということを忘れないようにね。相手方の故意は関係ないんだ!

間接正犯の故意で教唆犯の結果となった場合

最後に、利用者が本来の意図に気づいて正犯意思も持ってしまった場合を考えてみましょう。

毒を入れた注射を看護師に頼んで患者を殺そうとした医者がいたとします。しかし看護師がそのことに気づき、自分も患者に恨みがあったことから、殺意をもって注射をしたというような場合です。

まず医者には間接正犯の故意が認められます。看護師を利用して殺人(刑法199条)を実現しようとしているからです。

しかし客観的結果を考えてみましょう。間接正犯の結果とは「相手方を一方的に利用して犯罪が実現したこと」が必要でした。しかし、本問では、患者自身が故意・正犯意思をもって行為に及んでいるので「相手方を一方的に利用」できてはいません。つまり間接正犯の結果は発生していないのです。

故意と結果内容が違うんだね……。これってどこかでみたような……。

故意、故意、故意……

あ!抽象的事実の錯誤か!

故意(認識)と結果が異なる場合は錯誤です。今回は殺人の間接正犯の認識で殺人の教唆犯の結果を実現しているので、構成要件にまたがる錯誤=抽象的事実の錯誤が問題となります

抽象的事実の錯誤については以下の記事で詳しく解説しています。

重い故意で軽い結果を実現しているパターンですね。殺人の間接正犯と殺人の教唆犯は保護法益も行為態様もほぼ同じです。よって重なり合いが認められるため、重なり合いが認められる限度の犯罪、つまり殺人の教唆犯(刑法199条、刑法61条1項)が成立します

また、抽象的事実の錯誤では故意犯の未遂も検討するんでしたよね!

本問では、殺人未遂罪の間接正犯が成立しないかを検討します。ここで重要なのは間接正犯の着手時期です。間接正犯の場合の実行の着手は、被利用者を基準に考えるとされています。本問では看護師が殺意を持ったのが具体的危険発生前の場合には殺人未遂の間接正犯は成立せず、看護師が殺意を持ったのが具体的危険発生後の場合には殺人未遂の間接正犯が成立します。ちょっと応用っぽいので、初学者の方はスルーしてもらって大丈夫です。

①間接正犯の故意で教唆犯の結果を実現した場合には抽象的事実の錯誤となる。
②重なり合いが認められる限度で犯罪が成立する。
③故意犯の未遂の検討も忘れない。間接正犯の場合には被利用者を基準に具体的危険があるかどうかを考える。その際に、被利用者が事情に気づいて正犯意思が芽生えたタイミングが重要になる(応用)。

まとめ

間接正犯のまとめ

間接正犯について解説してきました。

関係性や利用態様・状況等を検討するといってきましたが、究極にある考え方は「相手方を一方的に利用」していたかどうかです。本質をしっかり押さえましょう。

この本質さえ理解すれば、故意のある幇助的道具という議論もすんなり受け入れられるはずです。

さらに、間接正犯では利用者自身に正犯意思・故意が芽生える場合があります。この場合には間接正犯の「一方的に利用して結果を実現する」ということは生じていないので、間接正犯の故意によって教唆犯が成立した=抽象的事実の錯誤を検討することになるわけです。

なお、最後にあまり基本書等で述べられていませんが、補足として、利用者の犯罪はどうなるのか、間接正犯が不成立の場合何を検討すればいいのか説明してみます。

補足:利用者の犯罪の検討

間接正犯にかかわりなく、利用者の犯罪は独立して検討することになります。つまり普通の検討方法でよいというわけです。

14歳以下の者を利用していれば、その者は責任阻却で犯罪は成立しません。意思を抑圧された成年者の場合には、幇助犯や共同正犯について違法性阻却や緊急避難等を考えることになります。

補足:間接正犯が成立しない場合

検討した結果、利用者に間接正犯が成立しない場合は次に何を検討すべきでしょうか

答えは未遂の間接正犯(論点で解説済み)と共同正犯です。

間接正犯が成立しない場合というのは、「一方的に利用」できなかった場合がほとんどだと思います。となると次に考えるのは「共同正犯(特に共謀共同正犯)」です。犯罪結果が発生しているため、「一方的に利用した」のではなく「共同して犯罪を実現したといえるのではないか」という視点を持つのですね。

共同正犯については以下の記事が参考になります。

以上です、読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

記事の目的上,とても簡潔にまとめているので,もっと深めたい方は以下の基本書を参考にしてください。わかりやすいのでおすすめです。

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