改正対応!制限行為能力をわかりやすく解説してみた【民法その11】

制限行為能力制度民法

(PR)法律資格を目指す方必見!!

効率よく資格の勉強をするには、低価格でかつ効率よく学習できるオンライン講座がおすすめです。
特に、アガルートアカデミー資格スクエアはかなり人気が高く利用者も多い予備校となっており、当サイトと併用することで法律の理解が深まります!
現在、無料相談・無料相談実施中なので、この機会にぜひお試しください。

民法総則で一番ややこしいのが制限行為能力者なんですけど,わかりやすい考え方を教えてください。

法上向
法上向

たしかに,制限行為能力制度はわかりにくいな。しかし,実際問題で出ることは少ない分野なんだ。出るとしても未成年の場合くらいだね。

今回は未成年を中心に制限行為能力制度を解説していこう。

制限行為能力制度はわかりにくい分野ですが,実際に問題として出ることはほとんどありません。また問題として出るとしても未成年の場合がほぼだと思います。そのため,今回は未成年を中心に解説することで,制限行為能力制度全体を読み取っていきたいと思います。

制限行為能力制度のポイント

まず,制限行為能力制度の趣旨とよく勘違いしやすいポイントを理解しましょう。そのうえで未成年制度について解説することで制限行為能力制度がどのようなものなのかを理解していってもらいたいと思います。最後に成年後見,保佐,補助制度をざっと確認します。

①制限行為能力制度の趣旨を理解する。
②未成年制度について理解する。
③成年後見,保佐,補助について押さえる。
それではみていきましょう。

制限行為能力制度の趣旨

行為能力とは何か

意思能力はすべての人が持っている能力です。意思無能力になると法律行為が行えなくなります。意識不明の状態などです。

なお,改正により民法3条の2が新設されました。

第二節 意思能力
第三条の二 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

しかし意思無能力は立証や相手方の不利益などなかなか難しい問題を抱えており,あまり使えるものではありません。そのため,単独で法律行為を行える能力行為能力として,意思能力に不安のある人はその行為能力を制限する制度を設けようとしたのが行為能力制度の始まりです。

制限行為能力者の保護や取引の相手方の保護などを趣旨としています。

制限行為能力のパターンは同意と代理

行為能力を制限するのは2つのパターンがあります。同意と代理です。つまり,制限行為能力者は意思表示(法律行為)について保護者の同意が必要な場合や,保護者が代理権をもつ場合があるということです。

同意が必要な場合保護者に代理される場合の2つの制限方法があるということを押さえましょう。この2つのパターンも制限方法が種類によって異なります。以下の表を参考にしてください。

上図の色がついた部分が主に問題となる部分です。未成年を押さえれば ほぼすべての色付きパターンに対応できることになります。よって未成年を中心に押さえていきます。

勘違いしやすいポイント「被後見人」とはだれか

種類によって,被成年後見人だとか,被保佐人,被補助人とか,成年後見人とか保佐人だとか補助人だとかが出てきます。

これらの用語を勘違いして覚えてしまうことがよくあります。

がつく場合はその保護を受ける者のことなので制限行為能力者のことを指します。逆にがついていない場合は保護者のことです。

未成年の行為能力

未成年とは?

成年については最近改正されたので注意してください。

(成年)
第四条 年齢十八歳をもって、成年とする。
18歳以上は成年となりました。つまり,未成年とは17歳までの人を指します。

同意について

未成年の制限行為について,まず同意から考えていきます。上図で示したとおり,未成年者のほぼすべての行為に保護者の同意が必要となります。このことは民法5条に規定されています。

(未成年者の法律行為)
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる
3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
少々わかりにくい条文ですが,大事なのは1項柱書と2項です。未成年者の法律行為には法定代理人(=保護者=親権者)の同意が必要であること,同意のない法律行為は取り消すことができることが大事な部分です。

例外は民法5条1項ただし書3項,そして民法6条に書かれています。

(未成年者の営業の許可)
第六条 一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。
2 前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第四編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。
例外はあくまで例外ですので,基本は同意が必要という点を押さえておけば大丈夫でしょう。例外は条文に書いてありますしね。

代理について

未成年の保護者は法定代理人として基本的に親権者がなります。詳しくは家族法で学習するのでとりあえずは未成年の保護者=法定代理人=親権者という理解で大丈夫でしょう。

(親権者)
第八百十八条 成年に達しない子は、父母の親権に服する。

(財産の管理及び代表)
第八百二十四条 親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。

未成年者の親は未成年者について包括的代理権を持つということです。つまり,親は子どもの法律行為も好き勝手に行えることになります(ただし利益相反に該当すれば例外となります)。

同意がなかったときの相手方との関係

取消し

取り消す場合は一般原則に従い,取消しの条文(民法120条,121条)を用います。

(取消権者)
第百二十条 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
上記太字部分からたしかに保護者が取り消すことができることがわかりますね。
(取消しの効果)
第百二十一条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。
取り消した場合は初めから無効です(遡及効)。これも原則通りですね。

追認

また,一般原則どおり追認することも可能です。未成年者がした行為を親がオッケーとして認める場合ですね。

(追認の要件)
第百二十四条 取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。
2 次に掲げる場合には、前項の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にすることを要しない
一 法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をするとき
二 制限行為能力者(成年被後見人を除く。)が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得て追認をするとき。
民法124条の2項より,制限行為能力制度の場合は取消しの原因が消滅していなくても保護者の独断で追認可能です
法上向
法上向

はじめてのおつかいが成立しているのは,この追認制度があるからだね(笑)。

以上,一般原則の取消しや追認についてより詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

催告

さらに,制限行為能力者制度には,取引の相手方が催告できるという規定があります。これは取り消すこともできるし取り消さないこともできる(追認できる)となると相手方は不安定な地位に置かれるため,相手方としては「どっちでもいいからはやく決めてくれ~」となるためです。

(制限行為能力者の相手方の催告権)
第二十条 制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。

論点:詐術

最後に一番論点になりやすい詐術について確認してみましょう。

(制限行為能力者の詐術)
第二十一条 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
詐術=詐欺の簡易バージョンと思っていただければ大丈夫です。

未成年者が成年者であると相手方をだまして行った取引は相手方を保護するために取り消すことができないということですね。

どういった場合に詐術に該当するかという難しい問題がありますが,判例上は黙示のものであっても,他の言動と相まって相手方を誤信させた場合は詐術に該当するとされています(最判昭和44年2月13日)。

たとえばとあるサイトで「20歳以上ですか?(改正法だと18歳以上ですか?)」と出てきたものに対して「はい」とクリックしてしまった場合は詐術に該当する可能性があります。となると,実際は未成年であったとしても取消しはできなくなるかもしれないので注意しましょう。わざわざこのような告知をしてくるサイトに危ないサイトが多いのはそのためかもしれませんね(汗)。

被成年後見人・被保佐人・被補助人

被成年後見人

被成年後見人は事理弁識能力(自分が何をやっているか判断する能力)が常時欠如しており審判を受け認定された者を指します。

この場合は未成年と同様に,同意に関してはほぼすべての行為に同意が必要です。

(成年被後見人の法律行為)
第九条 成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない
ただし日用品などの購入は同意なしでもいいよーという規定はあります。

代理に関しては,未成年と同様に成年後見人に包括代理権が与えられています。

(財産の管理及び代表)
第八百五十九条 後見人は、被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。

被保佐人

被保佐人は,事理弁識能力が著しく不十分で審判を受けた者が該当します。

同意に関しては民法13条を見ましょう。

(保佐人の同意を要する行為等)
第十三条 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
一 元本を領収し、又は利用すること。
二 借財又は保証をすること。
三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
四 訴訟行為をすること。
五 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
九 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
十 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。
2 家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
3 保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
4 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる

ほとんどないと思いますが保佐人の同意が問題になるときは民法13条を見て各号に該当する行為がないか確認すれば大丈夫です。

代理については基本的にありません。つまり保護者に代理権は基本的に認められません。例外として審判を行えば特定の事柄に代理権をつけることができます(民法876条の4)。

被補助人

被補助人は事理弁識能力が不十分で審判を受けた者が該当します。しかし,程度が弱いためそれほど保護する必要はなく,基本的に同意についても代理も制限がありません。審判によって同意や代理を付けられるだけです(民法17条,民法876条の9)。

まとめ

以上,制限行為能力制度を見てきました。問題として出ることはほとんどなく出たとしても未成年くらいだと思うので,未成年を中心に押さえれば大丈夫でしょう。

最後に全体のイメージとして以下の表を再掲しておきます。参考になれば幸いです。

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

記事の目的上,とても簡潔にまとめているので,もっと理解を深めたい方は以下の基本書を参考にしてください。改正民法対応でわかりやすいのでおすすめです。

(PR)予備試験・司法試験をお考えの方必見!

予備試験・司法試験をはじめ、法律を効率よく、勉強するならアガルートアカデミー資格スクエアをおすすめします!
低価格でかつ自分の時間に沿った学習が可能で、予備試験・司法試験を受験する多くの方が利用しています。
オンラインにもかかわらず、サポートが充実しているのも人気の理由ですね!

当サイトと併用することで効果倍増です!!

民法
はじめての法
タイトルとURLをコピーしました