結局どれ使えばいい?執行停止・仮の義務付け・仮の差止め【行政法その9】

執行停止・仮の義務付け・仮の差止め行政法
法上向
法上向

今回は仮の救済方法について学んでいくぞ!

仮?どういう意味ですか?

法上向
法上向

訴訟って時間がかかるものなんだ。しかしもたもたしていたらすべての処分が完了してしまうかもしれない。さらには訴えの利益が消滅してしまうかもしれないな。
そのために,仮の救済方法でとりあえずの解決を図ることが多いんだよ。

取消訴訟をはじめとする訴訟は時間がかかります。しかし,原告によって訴訟を起こすほど思い悩んでいる状況がほとんどです。今すぐにでも解決したいのです。そのため,行政法ではいくつかの仮の救済方法が設けられており,訴訟継続中でも原告の保護が図られるようになっています。

今回はそんな仮の救済方法についてざっと見ていきましょう。

執行停止・仮の義務付け・仮の差止め

行政法で主に用意されている仮の救済手段は,執行停止・仮の義務付け・仮の差止めです。今回ははじめての方にもわかりやすくをモットーにしているので,要件だけをざっと見ていくようにします。実際,この仮の救済方法は要件だけ知っていれば問題に対処できる場合がほとんどです。判例等でも大きな問題になった事例はないように感じます。

①仮の救済方法の使い分けを押さえる。
②執行停止の要件を理解する。
③仮の義務付けの要件を理解する。
④仮の差止めの要件を理解する。
それでは見ていきましょう!

使い分けのカギは本案訴訟

大前提として要件の確認

まず,仮の救済の大前提として,本案訴訟,つまりちゃんとした訴訟を提起しておく必要があります。取消訴訟や義務付け訴訟,差止訴訟などです。もちろん,出訴期間経過後などは無効等確認訴訟でも要件を満たせばありです。

本案訴訟の要件に不安な方はこちらから確認お願いします。

一番よく使われる取消訴訟は,処分性原告適格訴えの利益の検討が必要ですので忘れないようにしましょう。

本案訴訟の性格を考える

次に本案訴訟として何を使っているかを考えます。これがわかれば後はカンタンです。

取消訴訟,無効等確認訴訟なら執行停止の申立て
義務付け訴訟なら仮の義務付けの申立て
差止訴訟なら仮の差止めの申立て

をすればいいだけです。

すごく簡単ですね。原告はどのような訴訟形態を求めているかを考えれば,おのずと仮の救済手段も見えているのです。

でも法上さん,当事者訴訟を忘れてませんか?

そうでした,当事者訴訟はスライム転生の世界線でしたね。たしか行政行為で処分性がないときに使われる形態だったような…。

法上向
法上向

そう!だから性格としては民事訴訟に近いわけだ。となると,行政事件訴訟法による仮の救済ではなく,民事訴訟の方の仮の救済,民事保全法によって保護することになるんだよ。民事保全については省略するけど,当事者訴訟は別ということは覚えておくといいね!

どの仮の救済方法を使うかは本案訴訟で考える。
取消訴訟,無効等確認訴訟なら執行停止の申立て,義務付け訴訟なら仮の義務付けの申立て,差止訴訟なら仮の差止めの申立てである。

執行停止の要件

では要件について考えてみましょう!執行停止は行政処分を停止させるような効果をもつものです。

執行停止については行政事件訴訟法25条に規定されています。

(執行停止)
第二十五条 処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。
2 処分の取消しの訴えの提起があつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(以下「執行停止」という。)をすることができる。ただし、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によつて目的を達することができる場合には、することができない。
3 裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。
4 執行停止は、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、することができない。
大事な要件を太字にしました。

執行停止のは三種類,処分の効力の停止,処分の執行の停止,手続の続行の停止がありますが,今回は深入りしません。

重要なのは重大な損害です。この要件は義務付け訴訟や差止訴訟等で幾度となく登場してきましたね。今回も3項でいろいろと解説されているのですが,なかなか判断が難しいものです。これまでは重大な損害について明確な基準があったのですが,執行停止の場合の重大な損害については明確な基準を立てることはできず場合に応じて総合的に判断していくしかありません。
頑張りましょう(汗)

また4項にも注意です。ほとんど問題になりませんが,公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは執行停止ダメ。本案(取消訴訟や無効等確認訴訟など)に理由がないときはダメということですね。条文をみてここが要件になると気付けるようになっておけば大丈夫だと思います。

執行停止の要件は,①重大な損害②公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないこと③本案に理由があることである。

仮の義務付けの要件・仮の差止めの要件

行政事件訴訟法37条の5から要件を導く

仮の義務付けと仮の差止めは同じ条文を使っています。そのため,ほとんど要件は同じです。行政事件訴訟法37条の5を見てみましょう。

(仮の義務付け及び仮の差止め)
第三十七条の五 義務付けの訴えの提起があつた場合において、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずること(以下この条において「仮の義務付け」という。)ができる。
2 差止めの訴えの提起があつた場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずること(以下この条において「仮の差止め」という。)ができる。
3 仮の義務付け又は仮の差止めは、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、することができない。
1項が仮の義務付けについて(赤字),2項が仮の差止めについて(青字)書かれていることがわかります。

要件が共通しています。

①償うことのできない損害がある②本案について理由がある③公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがない

の3つが大事です。ここで執行停止の違いはわかりますか?執行停止では重大な損害であったのに対して,仮の義務付けや仮の差止めでは償うことのできない損害となっていますね。

どちらがよりハードルが高いかといわれると償うことのできない損害の方です。ドラゴンボールでいうところの,フリーザとセルくらいの違いがあります(たぶん笑)

しかし償うことのできない損害ってどんなの?と思う人もいると思います。簡単に言うと,お金で解決しにくい損害のことです。

たとえば処分されると教育が受けられなくなるだとか,処分されると営業ができなくなって社会的信用が失墜するような場合ですね。

成金

こんな成金でも解決できないくらいの損害です。行政が「ほらこれでいいだろ?」と言ってお金を出しても解決できないくらいの損害ということです(逆にわからなくなる気がする笑)。

とまあ,要件は以上で確認できましたね。

要件の中の本案に理由があることが執行停止と仮の義務付け・仮の差止めで若干書き方が異なる点に気が付きましたでしょうか?これは積極要件か消極要件かの違いです。執行停止の場合は行政側が本案に理由がないことを主張しないといけませんが,仮の義務付け・仮の差止めは原告側が本案に理由があることを主張しないといけないことになります。
この点でも仮の義務付け・仮の差止めの方がハードルが高いといえそうですね。
仮の義務付け・仮の差止めの要件は①償うことのできない損害②本案について理由があること③公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないことである。

まとめ

以上,要件をざっと見てきました。条文から要件を導き出せればそれほど大きな問題はないでしょう。最後にもう一度要件の確認です。

大前提として本案訴訟要件がそろっていることが必要である
執行停止の要件は,①重大な損害②公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないこと③本案に理由があることである。
仮の義務付け・仮の差止めの要件は①償うことのできない損害②本案について理由があること③公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないことである。
大前提を忘れないでください!この前提によってどの仮の救済を使うか決まってくるので非常に重要です!

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

記事の目的上,とても簡潔にまとめているので,もっと深めたい方は以下の基本書を参考にしてください。わかりやすいのでおすすめです。

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