改正民法対応!遺言と遺言執行者の論点を簡単にまとめてみた【家族法その10】

遺言民法

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遺言でよく映画やドラマ、アニメ・漫画ででてきますよね。ビデオテープで遺言の内容が伝えられたり……

法上向
法上向

たしかに遺言は実際に使われるかどうかはおいておいて、ドラマとかではよく出てくるものだね。

ちなみに、ビデオテープは遺言としては認められないぞ。フィクションだな。

え!遺言ってとりあえず被相続人が前もって意思を伝える手段がとられていればいいんじゃないんですか?

法上向
法上向

いやいや、遺言の要件は厳格だぞ。

詳しく見ていこうか。

遺言は実務で使われるかはおいておいて、ドラマ等いろいろな場面で耳にする言葉だと思います。

しかし遺言が実際にどういう手続がとられ、どういう要件で誰が遺言を行っていくのか、知らない人も多いと思います。

遺言は実際に私たちが直面する問題になる可能性もあります。その時によりよい対応ができるように民法の観点から遺言について学習していきましょう!

遺言のポイント

遺言の要件が厳格であるということはあまり知らないかもしれません。遺言は要件がかなり厳格であり手続をしっかりとっていなければすぐ無効になってしまうのです。まずは遺言の要件・手続についてまとめてみます。

さらに遺言の効果についても注意が必要です。あまり想像しにくいかもしれませんが、遺言は自由に撤回できたりと今までの法律イメージからすると意外なことが多々あります。

また遺言執行者についても簡単に押さえておきましょう。この点、民法改正で変わった部分もあるため、簡単にわかりやすくまとめてみます。

①遺言の要件・手続について理解する。
②遺言の効果について理解する。
③遺言執行者とは何かについて知る。

それでは見ていきましょう!

遺言の要件・手続

遺言には自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言がある

遺言には大きく分けて3種類あります。自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言です。この3つについて要件・手続が異なるのですが、まずはこれら3つの種類に共通する要件を見ていきましょう。

すべての遺言に共通する要件

15歳以上であること

遺言は15歳にならなければすることができません。逆にいうと未成年であっても15歳に達していればすることができるというわけです。中学3年生・高校1年生からでも遺言はできるというわけですね(そこまで殊勝な人がいるかはわかりませんが笑)。

民法961条です。また民法962条民法963条も合わせて確認しておきましょう。

(遺言能力)
第九百六十一条 十五歳に達した者は、遺言をすることができる。
第九百六十二条 第五条、第九条、第十三条及び第十七条の規定は、遺言については、適用しない。
第九百六十三条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

遺言時に15歳である必要がある。遺言には行為制限能力制度の適用はないということですね。

行為制限能力の適用がないとはいえ、被後見人の遺言の場合には厳格に定められています。民法973条民法966条を見てみましょう。

(成年被後見人の遺言)
第九百七十三条 成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。
2 遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。

(被後見人の遺言の制限)
第九百六十六条 被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人又はその配偶者若しくは直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、その遺言は、無効とする。
2 前項の規定は、直系血族、配偶者又は兄弟姉妹が後見人である場合には、適用しない。

覚えておくべきポイントは、被後見人であっても制限はあるが、遺言は可能という点です!

行為能力は必要ないとはいえ、遺言は法律行為ですので、意思能力は当然必要になります!この点も押さえておいてください。

共同遺言でないこと

複数の者が1つの証書で合わせて遺言をすることはできません。これを共同遺言の禁止といったりします。短答で問われたりするのでチェックしておきましょう。

(共同遺言の禁止)
第九百七十五条 遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。

遺言の共通の要件(手続)はこのほかにもありますが、とりあえず大まかにこの2点を押さえたうえで各種類の遺言の要件・手続の解説に移ります!

自筆証書遺言の要件・手続(民法968条)

あれこれ言っていくよりも条文を見てもらった方が早いと思います。民法968条です。

(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない

自筆証書遺言は公証人等が必要ないというメリットがあります。自分だけで遺言が作成できるというわけです。

しかし要件がかなり厳格です。前文を自筆して、日付、指名、押印をする、という点はまだ受け入れられると思います。

厳格とされるのは、民法968条3項です。なんと変更する場合には場所を支持し変更をした旨を記載・署名し、さらに変更場所に押印しなければいけないとされています。

かなり厳格ですよね。遺言を訂正・修正した場合にこの民法968条3項の要件を少しでも満たさないと全部無効です。書く側もひやひやだと思います。

公正証書遺言の要件・手続(民法969条)

公正証書遺言の要件についても確認してみましょう。民法969条です。

(公正証書遺言)
第九百六十九条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。

四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

なんだか自筆証書遺言よりも要件が厳しいと感じられるかもしれませんが、実際には公正証書の方が間違いが少ないでしょう。というのも自筆証書遺言は民法をあまり知らない一般人であっても自分だけですることになりますが、公正証書遺言は「公証人」が遺言の手続をやってくれます。

公証人とは遺言のプロです。間違いを侵すことは少ないというわけです。ただし、自筆証書遺言とは異なりそれなりにお金が発生します。

ポイントは証人2人以上+公証人が必要な点です。また遺言者は自筆する必要がないという点も自筆証書遺言との違いとして押さえておきましょう。遺言者・証人・公証人が署名押印をするというのは常識的に考えれば当然なのであまり意識する必要はないと思います。

秘密証書遺言の要件・手続(民法970条)

秘密証書遺言の条文は民法970条になります。

(秘密証書遺言)
第九百七十条 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
三 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
四 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
2 第九百六十八条第三項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。

秘密証書遺言は、遺言者が遺言内容を秘密にして遺言書を作成したうえで封印をした遺言証書の存在を明らかにして行うものです。

自筆証書遺言では遺言の存在自体を隠しておくことも可能でした。自分だけで完結するため、自分以外内容を知っている人もいません。

これに対して、秘密証書遺言は

遺言作ったけど、内容は内緒だよ

という遺言です。なんだかいやらしいですね(笑)。相続人はドキドキがとまりません。

秘密証書遺言は自筆証書遺言よりも要件が緩いという点が理解できれば大丈夫でしょう。全文自筆である必要はありませんし、訂正の際の厳格さも要求されていないからです。

ただし、封をする際に公証人・証人2人以上を付ける必要があります。ただし遺言自体は遺言者が書いて公証人等が立ち会うのは封をする段階なので、費用も安くで済みます。

遺言の効力

遺言は死亡により効力発生(民法985条)

遺言は死亡により効力が発生します。この大前提は押さえておきましょう。民法985条になります。

(遺言の効力の発生時期)
第九百八十五条 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる
2 遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。

遺言撤回の自由(民法1022条)

遺言はいつでも撤回をすることができます。あまりイメージがつかないかもしれませんが、こればかりは受け入れるしかありません。

遺言は基本的に遺言者(+証人・公証人)くらいしかその内容を知らないため、撤回を自由に認めてもあまり支障がないということですね。

民法1022条になります。

(遺言の撤回)
第千二十二条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

また撤回擬制として、遺言者が撤回の意思表示をしたとみなされる場合もいくつかあります。民法1023条民法1024条です。

(前の遺言と後の遺言との抵触等)
第千二十三条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。
(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
第千二十四条 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。

撤回した遺言をまた撤回・取消した場合、元の遺言が復活することは詐欺・強迫の撤回取消し以外にはありませんし(民法1025条)、遺言撤回権を放棄することもできません(民法1026条)。

遺言執行者

最後に遺言執行者について確認していきましょう。遺言執行者とは、遺言内容を実現するために選ばれた者です。相続人のために遺言についていろいろ行う人という風にとらえれば大丈夫でしょう。

遺言執行人は遺言で指定されます(民法1006条1項)。指定された者が就任を承諾したときには、遺言執行者は直ちにその任務を遂行するとともに(民法1007条1項)、遅滞なく遺言の内容を相続人に通知しなければなりません(民法1007条2項)。

遺言執行者で問題になるのは実は民法よりも民事訴訟法の場面なのです。遺言執行者は相続人の訴訟担当とされています。

そのため、相続人のために訴訟を起こすこともできますし、相手方が所有権移転登記抹消登記手続請求をしてきた場合などは被告となります。

注意が必要なのは「抹消」登記手続請求の場合は遺言執行者が被告なのですが、「移転」登記手続請求の場合は相続人本人が被告とされている点です。

また、遺言執行を終えた場合には基本的に遺言執行者ではなく相続人自体が被告となります。

少々、民事訴訟法分野に入り込んでしまいましたね……。もとに戻りましょう。

なぜ遺言執行者が訴訟の当事者になるのかというと、遺言執行者は「相続人のために遺言を執行する者」であったからです。相続人の代わりにいろいろな業務を行うので相続人についての訴訟も請け負うというわけですね。

遺言執行者の主となる業務内容は遺言に関する一切の行為をすることができますが(民法1012条1項)、特に遺言に関する妨害排除と対抗要件具備(所有権移転登記など)は覚えておきましょう。

また、行った行為の効果は相続人へ帰属されます。このことを規定した民法1015条は重要なので、遺言思考者についてはせめてこの条文だけでも覚えて帰ってください!

(遺言執行者の行為の効果)
第千十五条 遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる

まとめ

遺言についてみてきました。

遺言については短答ぐらいでしか問われませんし、遺言執行者についてはほとんど問われる問題はないと思います。

とはいっても遺言は我々が実際に直面する可能性のある分野です。将来のためにもしっかり基本的な知識は身に着けておきたいところですね。私自身も頑張ります!

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

家族法は大きな改正がなされており、改正に対応した基本書・参考書はまだ少ないです。今回は改正に対応したもののなかでわかりやすい、大村先生の家族法をおすすめします。

初学者にもわかりやすく書かれており、分量もそれほど多くないため、取り組みやすいと思います。

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