民法改正対応!遺贈についてわかりやすく知っておくべき知識【家族法その11】

遺贈民法
法上向
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遺贈について考えていこう。遺贈ってどういったものかな?

遺言で誰かにあげるっていうものですよね。けど詳しくはよくわからないです。

法上向
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そうだよね、マイナーだよね。

ただ家族法を勉強すれば「遺贈」は必ず出てくるものだからしっかり、どういったものなのか、を押さえていこう!

遺贈は相続によって他人に財産を与える行為のことです。遺言には基本的に遺贈があると考えてよいでしょう。そうでなければ遺言を書く意味がありません。

なお「相続させる旨」の遺言は遺贈ではなく直接的に移転するものなので違います。注意しましょう。

遺贈は覚えるしかない分野で、覚えることも少ないです。この機会に総まとめしていきましょう。

遺贈のポイント

遺贈とは何かを考えることからスタートしていきましょう。その次に、受遺者について確認します。そして遺贈義務者についても押さえましょう。

そして遺贈の承認・放棄について理解する必要があります。遺贈で一番重要な点です。

最後に遺贈の無効・取消しについて確認していきます。

①遺贈とは何か?を知る。
②遺贈の承認・放棄について理解する。
③遺贈の無効・取消しについて押さえる。

それでは見ていきましょう。

遺贈とは何か?

遺贈とは遺言による財産処分行為

遺贈とは、被相続人が遺言で自己の財産を与える処分行為です。民法964条を見てみましょう。

(包括遺贈及び特定遺贈)
第九百六十四条 遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。

遺言で遺贈をしなければ遺言を書く意味がありません。遺言とは相続人の意思にかかわらず被相続人の意思を反映することのできるものでした。そのため、遺言で遺贈をしなければ、遺産分割で事足りることになるため、遺言があまりメリットのないものになります。

とはいっても、特定財産承継遺言は遺贈ではなく、遺産分割方法の指定として扱われます。「〇〇に△を相続させる」旨の遺言のことです。

遺言をする場合には、少なくとも遺贈または特定財産承継遺言がなされることがほとんどだと思います。

受遺者

遺贈によって相続財産を与えられた者を受遺者と呼びます。ただし受遺者は生きている必要があります。死亡している場合は遺贈は無効です。民法994条1項をみてみましょう。

(受遺者の死亡による遺贈の失効)
第九百九十四条 遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない

ここでのポイントは

遺贈では代襲相続(死亡した相続人の相続人が財産を受けること)は発生しない

ということです。

遺贈は「その人」を対象にして、被相続人があげたいからあげるものです。遺贈は当人以外にあげることを想定していません。これが法定相続との違いになります。

となると、遺贈の「その人」である受遺者が死亡した場合はその時点で遺贈は終わり(無効)というわけです。

遺贈義務者

遺贈が行われた場合にはそれなりの手続が必要です。

登記であれば受遺者と共同して申請する人が必要ですし、名義書換えが必要な場合もあるからです。

遺贈の手続の協力者が遺贈義務者です。遺贈義務者は基本的には相続人がなるものとされています。

遺贈義務者は、遺贈に伴う手続や行為をする義務を負います。特に民法998条はその義務内容をしっかり規定しているものなのでみておきましょう。

(遺贈義務者の引渡義務)
第九百九十八条 遺贈義務者は、遺贈の目的である物又は権利を、相続開始の時(その後に当該物又は権利について遺贈の目的として特定した場合にあっては、その特定した時)の状態で引き渡し、又は移転する義務を負う。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

遺贈の承認・放棄

遺贈の箇所で必ず覚えてほしいのは以下のフレーズだけです。

受遺者はいつでも遺贈を放棄できる(民法986条1項)。
遺贈の承認や法規の意思表示は撤回することができない(民法98条1項)。

それぞれについて詳しく見ていきましょう!

遺贈の放棄

受遺者はいつでも遺贈を放棄できます。民法986条1項をみてください。

(遺贈の放棄)
第九百八十六条 受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる
2 遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

遺贈は相続財産を被相続人からもらうものです。受遺者がいらないのなら無理やりあげる必要はありません。そのために「いつでも放棄できる」とされているんですね。

遺贈を放棄した場合は遺言者が死亡した時点までさかのぼって効力を生じます(民法986条2項。そのため、遺産に戻り、遺産分割の対象となるわけです。

遺贈の承認や放棄は撤回できない

遺贈の承認や放棄の意思表示はいったんされると撤回できません民法989条1項をみてみます。

遺贈の承認及び放棄の撤回及び取消し
第九百八十九条 遺贈の承認及び放棄は、撤回することができない。
2 第九百十九条第二項及び第三項の規定は、遺贈の承認及び放棄について準用する。

承認や放棄の撤回ができないというのは、相続の時と同じですね。また準用されている民法919条2項民法919条3項の規定を確認するためにも、相続の承認・放棄の撤回・取消しについて規定した民法919条についてみてみましょう。

相続の承認及び放棄の撤回及び取消し
第九百十九条 相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。
2 前項の規定は、第一編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。
3 前項の取消権は、追認をすることができる時から六箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。相続の承認又は放棄の時から十年を経過したときも、同様とする。

4 第二項の規定により限定承認又は相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

遺贈についての民法989条民法919条を準用していましたので、意思能力を理由とした無効(民法3条の2)や行為制限能力者による取消し、錯誤・詐欺・強迫による取消しは妨げられません。時間制限は追認できる時から6か月、相続の承認・放棄の時から10年となっている点も気をつけましょう。

要は

遺贈を承認しておいて勝手に撤回することはダメ
遺贈を放棄しておいて勝手に撤回すること
はダメ

というわけです。民法の規定に沿って撤回することができる場合(「勝手に」とは言えない場合)には撤回もオッケーということを前提にしています。

遺贈の無効・取消し

遺贈は法律行為なので、民法上の無効・取消事由は遺贈にも適用されます

また遺贈は遺言から発生するものなので遺言が無効であれば遺贈は無効です。

さらに先ほども確認しましたが、受遺者が死亡した場合(民法994条)も無効となります。

また、遺贈の目的物が、遺言者の死亡時点で相続財産に属していなかった場合も無効です(民法996条)。ここらへんは常識として考えることができます。

遺贈が無効になった場合や遺贈が放棄された場合は、その財産は相続人に帰属します=遺産として原則どおり遺産分割の対象となるわけです。

民法995条を見てみましょう。

(遺贈の無効又は失効の場合の財産の帰属)
第九百九十五条 遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によってその効力を失ったときは、受遺者が受けるべきであったものは、相続人に帰属する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

まとめ

遺贈についてみてきました。大して論点の多くない分野です。簡単にさっと確認するようにしましょう。

短答対策として覚えておきたいのは、以下の部分だけです。

受遺者はいつでも遺贈を放棄できる(民法986条1項)。
遺贈の承認や法規の意思表示は撤回することができない(民法98条1項)。

相続と同様に考えましょう!

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

家族法は大きな改正がなされており、改正に対応した基本書・参考書はまだ少ないです。今回は改正に対応したもののなかでわかりやすい、大村先生の家族法をおすすめします。

初学者にもわかりやすく書かれており、分量もそれほど多くないため、取り組みやすいと思います。

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