民法改正対応!遺産分割とは?条文からわかりやすく解決【家族法その9】

遺産分割民法

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法上向
法上向

遺産分割は民法規制で変わった面も大きい。それにイメージがしにくいからなかなか理解しづらい分野だな。

どの財産が遺産分割の対象になるか、毎回忘れちゃんんですよね(笑)。わかりやすい考え方を知りたいです!

ある人が亡くなったら、いきなり各相続人に持分が発生するわけではありません。死亡→遺産共有の段階に入ります。この遺産共有状態から各相続人の持分に移るために行うのが遺産分割です。

被相続人の遺産の中でどれをどのくらい誰にあげるのか?これを相続人同士で決めることになります。

その際に遺産分割の対象や方法、効果が問題となるわけです。

遺産分割は民法改正で大きく変わった分野です。正確にいえば判例で認められてきたものが条文化したと言えると思います。

今回は、完全民法改正対応で、遺産分割に関する民法の条文を読み解き、家族法の遺産分割について基本的な知識の確認をしていけたらいいなー、と思います。

遺産分割のポイント

まず遺産分割の対象を押さえます。よく勘違いされがちですが、遺産分割の対象は、「遺産分割時まで」の相続財産です。「相続開始時」の財産ではありません。

どのように「遺産分割まで」の財産を確定していくのか、見ていこうと思います。また改正で創設された預貯金債権の行使についても確認します。また、特定財産承継遺言についても確認しましょう。特定財産承継遺言は物権法でもよく問題にされる部分、言い方を変えますと、論述試験で問われる可能性がある分野です。物権法の関連として軽く確認します。

そして遺産分割の方法を押さえましょう。

あとは遺産分割の効果を押さえれば完成です。

①遺産分割の対象を理解する。
②遺産分割の方法を理解する。
③遺産分割の効果を理解する。

対象→方法→効果、この3点を押さえれば遺産分割については大丈夫でしょう。しっかり理解していきましょう!

遺産分割の対象

遺産分割の対象は「相続時」ではなく「遺産分割時」の財産と説明しました。より詳しくどのようなものが「相続時の財産」として扱われるのか見ていきましょう。

もともと被相続人が持っている財産が遺産分割の対象になるというのは当然としてわかると思います。問題は「遺産分割に入るのかな?入らないのかな?」というのがわからない財産です。以下で詳しく見ていきます。

みなし財産(民法906条の2)

遺産分割前に処分された財産は遺産分割の対象になるでしょうか?

「遺産分割時を基準にするならそんなものならないに決まっているだろ!

って感じですよね。

では、被相続人が死亡した後、遺産分割前に勝手に相続人が遺産を処分したらどうなりますか?

それでも「遺産分割前に処分されてしまっているから遺産分割の対象にならない!

と言えますか?ちょっとおかしいですよね。

そのために民法906条の2という条文ができました。みてみましょう。

(遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲)
第九百六条の二 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる
2 前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。

簡単にいえば、みんなが同意すれば分割前に処分された財産も遺産分割の対象になるよ!ということです。

注意が必要なのは「処分された財産を遺産分割時に存在した遺産」としてみなすだけであり、誰によって処分されたかどうかは別にどうでもいいということです。

あくまで遺産分割の対象になるか、ならないのかを問題にしているわけですから。

また民法906条の2第2項もしっかり押さえましょう。処分した相続人の同意は必要ないというわけです。

たとえば、相続人がA、B、C、Dがいた場合に、AとBが遺産分割前に勝手に被相続人の不動産甲を第三者に売ってしまったとします。この場合、そのほかのCとDが同意をすれば、AとBが処分した不動産甲も遺産分割の対象に入れてしまえるというわけですね。

なお、この処分の際に得た財産については相続財産にはならないとされています。

つまりAとBで不動産甲を売って得た金銭があったとしても、この金銭は遺産分割の対象ではないわけです。処分時に手に入れた金銭等については各相続人に「固有の権利」として分割されるものと考えられています。

預貯金債権(民法909条の2)

改正前は、共同相続された預貯金債権は遺産分割の対象であり、単独で払戻しできないものとされていました。しかしこれは不都合です。

たとえば被相続人のお葬式の場面を想定してみましょう。

この時に葬式の費用はどうしますか?被相続人の財産から出したくありませんか?

しかし改正前は単独で払戻しが出なかったのです。遺産分割の対象とされていたからですね。それを改正民法は緩めました。民法908条の2になります。

遺産の分割前における預貯金債権の行使)
第九百九条の二 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす

難しい計算が含まれていますが、簡単にいえば、預貯金債権も一部は払い戻せるよ!ということです。

また、遺産分割の対象を考える上でのポイントは太字部分でしょう。遺産分割前に払い戻された預貯金は、相続人の一部分割とみなされる=遺産分割の対象にならない、というわけですね。

遺産から生じる果実

また相続開始時~遺産分割までに生じた、相続財産から生じる果実はどうなるか考えてみましょう。

一番わかりやすいのは、相続財産で不動産があり、それが賃貸借されている場合です。被相続人が不動産投資としてマンション経営をしているようなパターンですね。

その不動産からは賃貸人(被相続人)が死亡した後であっても賃料が入ってくるわけです。この賃料は遺産分割の対象になるでしょうか?

判例はこの賃料は遺産分割の対象にはならないとしています。遺産とは別の財産として相続人のに確定的に生じるわけです。遺産分割の対象にならないということは各相続人がすぐにゲットして使えるというわけです。

遺産から生じる果実は遺産分割の対象にはならず、各相続人が当然に分割してゲットする

と理解しておけば大丈夫でしょう。

特定財産承継遺言

Aに土地〇〇を相続させる」といった遺言がなされることがあります。

「特定物」について「相続人」に対して「相続させる旨」を示した遺言のことです。

これは遺産分割方法を指定した遺言と考えられています。そして改正法では「特定財産承継遺言」という命名がなされました。

特定財産承継遺言は、一部分割と同様の効果を持ちます。そのため、そのほかの共同相続人も子の遺言に拘束され、特定物財産承継遺言と異なる遺産分割をすることはできません。そして特定財産承継遺言による遺産は、被相続人の死亡時に直ちに指定された相続人に承継されます。遺産分割の対象にはなりません

なお、物権法と絡み論述として出題される可能性のある論点として

特定財産承継遺言による財産の取得を第三者に対抗できるか?

という論点があります。

この論点については民法899条の2第1項を確認しておきましょう。

(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第八百九十九条の二 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない

詳しくは物権法で学習しますが、法定相続分を超える部分については登記をしなければ第三者に対抗できないというわけです。

特定承継財産遺言と登記はセットである!という点は理解しておきましょう。

遺産分割の方法

遺産分割の方法は大きく分けて、協議(調停)による分割(民法907条1項)審判による分割(民法907条2項)指定分割(民法908条)があります。

協議・審判による分割(民法907条)

基本的に遺産分割は、相続人間の協議によって決めると考えておけば大丈夫です。

話し合いで決める

ということですね。

遺産分割の際には、遺産に属する物・権利・性質や各相続人の年齢・職業・状態・生活状況などあらゆる事情を考慮して決定することになります(民法906条)。そのため、話し合いの方が融通が利きやすいというわけです。

この協議が調わない場合に、調停や審判を行い、家庭裁判所によって決めてもらうことになります。

条文を確認しておきましょう。民法907条になります。

(遺産の分割の協議又は審判等)
第九百七条 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。
3 前項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。

注意点としては、相続人でない者(無資格者)が参加した遺産分割は基本的に無効ということです。遺産分割は「相続人のみが全員参加」しなければ有効とはいえません

さらに遺産分割は債務不履行といったものでの解除はできないとされています。一方で全員の同意により合意解除することは可能とされています。この違いにも注意です。

指定分割

被相続人が遺言で遺産分割方法を決めている場合があります。その指定に従って遺産分割をすることも可能というわけです。

ただし注意してほしいのは、分割方法の指定があったとしても、共同相続人の協議によって指定と異なる分割をすることは可能ということです。故人よりも共同相続人の現在の意思を優先するというわけです。

遺産分割の効果

最後に遺産分割の効果について簡単に確認しておきます。

民法909条の言っていることが理解できれば終わりです。

(遺産の分割の効力)
第九百九条 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

遺産分割は遡及効という点、第三者を害することはできないという点を理解しておきましょう。

民法909条ただし書の「第三者」とは遺産分割前に現れた第三者のことです。また「第三者」の善意・悪意は不問ですが、対抗要件を備えている必要があるとされています

ちなみに、これは解除の原状回復の「第三者」の考え方と同様です。解除の第三者の方がはるかに試験に出やすいので、解除の「第三者」の場合と遺産分割の「第三者」の場合の考え方は一緒!という風に覚えておけば大丈夫でしょう。

まとめ

遺産分割について解説していきました。

遺産分割の例外の場面を主に述べてきたため少々わかりにくいかもしれません。

結局、遺産分割は、「遺産分割時」までにある相続人の財産を対象として(みなし遺産を含む)、協議で分割するのが基本というわけです。そして、相続開始後~遺産分割前に発生する果実や費用等は遺産分割の対象にはならないということですね。

この原則を理解しておけば短答は基本的に大丈夫だと思います。指定財産承継遺言については物権法の論述としても登場しやすいので、その際に確認しておけば大丈夫でしょう。

解説は以上です。読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

家族法は大きな改正がなされており、改正に対応した基本書・参考書はまだ少ないです。今回は改正に対応したもののなかでわかりやすい、大村先生の家族法をおすすめします。

初学者にもわかりやすく書かれており、分量もそれほど多くないため、取り組みやすいと思います。

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