詐欺罪の論点をわかりやすく解説してみた【刑法各論その13】

詐欺罪刑法

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詐欺罪の論点がよくわからないです。いつも適用に思いつきで書いてしまいます。

法上向
法上向

もしかしたら、それは要件を意識できていないからかもしれないね。

詐欺罪の要件を言ってごらん?

ええっと、欺罔行為とか交付行為とか処分行為とかですよね。あと損害の要件もあったような……。

法上向
法上向

なるほど、要件がぐちゃぐちゃになっているね。詳しく見ていこうか。

詐欺罪は論点が多い分野です。深めれば三角詐欺、訴訟詐欺やクレカ問題、キセル乗車問題といった論点が数多く存在します。

しかしここではオーソドックスな詐欺罪の考え方を保護法益要件から考えていこうと思います。

詐欺罪のポイント

保護法益は財産であると考えられます。そして要件それぞれから論点が1~2つ出てきます。この点を押さえておけば、要件を理解するだけで詐欺罪の問題が解けるようになるのです。

①詐欺罪の保護法益を押さえる。
②詐欺罪の要件を理解する。
③要件から論点を出せるようになる。
以上みていきましょう。

詐欺罪の保護法益

詐欺罪の保護法益は財産です。ここであれ?占有じゃないの?と思われるかもしれません。実は窃盗も強盗も詐欺も「財産犯」なので財産についての罪を規定しています。

すると、窃盗罪も最終的には財産が保護法益といえるのですが、窃盗は財産性よりも占有を奪う(奪取)行為自体を対象とし、あまり財産的損害があるかという点は問題になりにくいです。よって保護法益は?と聞かれた場合には占有と答えるわけです。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

一方で、詐欺罪交付罪(被錯誤者の意思によって財産が交付される罪)ですので占有が侵害されるという状況は生じにくいです(錯誤によるとはいえ、自らの意思で交付しているから)。よって、保護法益は占有ではなく財産となり、その行為によって財産的損害があるのか?という点も考慮する必要が出てきます

このように詐欺罪の保護法益は占有とはあまり言いませんので注意しましょう。詐欺罪の保護法益は、正確にいえば、財産を自由に処分する権利といえると思います。

とはいえ、詐欺罪の保護法益をちゃんと書いている基本書は少ないと思います。それくらいあまり問題にならない点ですのであまり深入りする必要はないでしょう。

詐欺罪(刑法246条)の要件

まずは条文の刑法246条を見てみましょう。

(詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
強盗罪と同様に1項2項に分かれています。これをわかりやすく1項詐欺罪2項詐欺罪と呼び分けることにします。

1項詐欺罪の要件

1項詐欺罪の要件は以下のとおりです。

①欺罔行為②錯誤③交付行為④故意⑤不法領得の意思

ここで損害を要件として立てる見解もありますが、損害は①欺罔行為の中で検討すれば足り、別要件立てするメリットもあまりないので今回は①~⑤の要件に立つ説から説明していこうと思います。

なお、詐欺罪では窃盗罪と異なり不法領得の意思はほぼ認められるのであまり問題になりません。

①欺罔行為は交付の判断の基礎となる重要な事項を偽ること

これは暗記してください。必ず論述で使います。ポイントは㋐交付の判断の基礎となっていること㋑重要な事項であることに分けられるという点です。これは損害という論点にも関わるので詳しく見ていきましょう。

交付の判断の基礎となるとは、形式的損害説に似た考え方です。「本当のことを知っていなければ交付しなかったであろう」場合に損害があるとする考え方ですね。

しかし通説は形式的損害説だけでは詐欺罪の損害にはあたらないとします。実質的に損害がないとダメという実質的損害説からの見解です。

この見解を示しているのが㋑重要な事項です。交付行為において重要な事項を偽っていた場合は、実質的に損害があるという結論になります。

つまり、よく基本書等で「詐欺罪は実質的損害説に立ち、欺罔行為要件で検討される」と書かれていますが、詐欺罪の「交付の判断の基礎となる重要な事項を偽ること」という定義からそれは自然と検討していることになるため、損害要件を別に立てて検討するメリットがあまりないというわけです。

欺罔行為はまず最初に「交付の判断の基礎となる重要な事項を偽ること」と書いて、事案でのあてはめを検討していきましょう。その際にふわっとあてはめるのではなく㋐交付の判断の基礎となっている偽りかどうか(錯誤に陥っていなかったら交付していないかどうか)、㋑重要な事項かどうか(その交付によって欺罔者に実質的な損害があるかどうか)を検討することになります。

なるほど、損害について形式的損害説と実質的損害説の対立は欺罔の定義「交付の判断の基礎となる重要な事項」の中に集約されていたんですね。

法上向
法上向

そういうことさ。形式的や実質的という言葉からもわかるように、形式的損害に+αとして実質的な損害を考えているのが実質的損害説ということさ。その考慮は欺罔行為の「交付の判断の基礎となる重要な事項を偽ること」という文言に合われているということだね。

②錯誤

錯誤については論点もあまりなく、すらっと認めるだけでいいと思います。ただしこの要件は条文からはなかなか導き出しにくいと思うので忘れないように注意してください。

ポイントは錯誤者が交付行為を行う必要があるという点です。これは発展問題の三角詐欺罪にも使われる考え方なのでここで押さえておきましょう。どのような詐欺罪であっても必ず錯誤者と交付者は同一人物というわけです(被害者は錯誤者や交付者と同一人物でないこともあります)

③交付行為

詐欺罪は窃盗罪や強盗罪とは異なり、あくまでも錯誤に陥った者から自分の意思で交付してもらう必要があります。これが交付行為というわけです。

この交付行為がない場合には、行為者が奪取したといえるので、基本的には窃盗罪(刑法235条)が成立します

さて、問題は交付意思が必要かどうかです。

学説上対立がありますが、基本的には必要であると考えておけば大丈夫でしょう。しかしこの交付意思というのは移転するという外形上の認識で足ります

もっとわかりやすくいうと、交付行為自体の認識だけでよく、具体的に何が移転しているかという認識は必要ないというわけです。この点において、交付意思を必要とするものの、交付意思不要説とあまり変わらない結論になります。

交付意思がよくわからないんですよね。交付行為をしているのに交付意思がない場合ってあるんですか?

 

法上向
法上向

交付行為をしている時点でほぼ交付意思は認められるだろうね。

だから交付意思不要説と外形上の交付行為の認識で足るという交付意思必要説はほぼ変わらないんだよ。

2項詐欺罪の要件

2項詐欺罪1項詐欺罪とほぼ要件は変わりません。

(詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
①欺罔行為②錯誤③処分行為(財産上の利益の移転)④故意⑤不法領得の意思

 

処分行為交付行為は一緒の意味です。ただし財産上の利益についてはあまり「交付」とは言いませんので、ここでは処分としています。

論点は1項詐欺罪と一緒です。①欺罔行為は処分の判断の基礎となる重要な事項を偽ることを言います。③処分行為は外形上の認識に基づくものが必要となります。

まとめ

以上、詐欺罪をみてきました。詐欺罪は本当に論点や覚えるべき事例の多いものなので、また適宜追記していこうと思います。

ポイントは要件から論点を考えるということです。要件はあらゆる種類の詐欺罪に共通しますので、しっかり押さえていきましょう。

最後にまとめてみます。

①詐欺罪の要件の欺罔行為は「交付(処分)の判断の基礎となる重要な事項を偽ること」であり、実質的損害説に基づく。
②交付行為には交付意思が必要とされているが、行為に対する外形上の認識で足るため、交付意思不要説とほぼ変わらない。
③そのほか、錯誤、故意、不法領得の意思も必要であることを忘れないこと!

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

刑法各論は刑法総論に引き続き,基本刑法をおすすめします。事例問題を示しながら解説されているので,初心者から司法試験対策まで幅広く対応できる作りになっていると思います。

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