改正しても安心!錯誤をわかりやすく教えます!【民法総則その3】

錯誤民法

錯誤の条文が改正法でおかしくなってるんですけど!わかりやすい解説が見当たりません。

法上向
法上向
錯誤は改正で大きく変わったところだね。詳しく見ていこうか。
錯誤は改正により条文が大きく変わりました。そのため,なかなか勉強しにくい分野だと思います。しかし,条文はこれまでの判例法理を取り入れた形になっただけです。むしろ,条文をもとに理解していくだけでよくなった,楽になったと捉えることができると思います。今回は,この錯誤について解説していきます。

錯誤のポイント

錯誤には1号錯誤(表示錯誤などいろいろな名称がありますが,ここでは1号錯誤とします)と2号錯誤(事実錯誤,行為基礎事情錯誤といろいろな名称がありますが,ここでは2号錯誤とします)があります。それぞれ条文を押さえていけば大丈夫です。

①錯誤について理解する。
②1号錯誤について理解する。
③2号錯誤について理解する。
以上にそって解説していきます。

錯誤は不一致

錯誤は刑法でもやりましたね。民法ではまた違う考え方をするので新しい気持ちでのぞみましょう。民法95条の錯誤は不一致です。何と何の不一致かは1号錯誤か2号錯誤かにより異なります。

そのため,1号錯誤か2号錯誤かどちらに該当するかが最初の検討ポイントになります。これがうまくできないと先へ進めません。

上の図を見てください。普通人は売買など法律行為をするときは,事情→意思(効果意思)→表示(意思表示)の流れをとることになります。ここでのポイントは意思と表示は裁判所からの評価(客観的な評価)だということです。つまり行為者の事情に関係なく神の視点から考えます

たとえば,有名な陶芸家の作品なので1000万円で甲という陶器を購入する場合を考えてみましょう。有名な陶芸家の作品であるという事情があり→1000万円で甲を買うという意思がうまれ→1000万円で甲を買う契約を締結した,という意思表示を売主に対してすることになります。

この流れを踏まえて次の図を見てください。

有名な陶芸家の作品なので→1000万円で甲を買おうと決意したが→契約書に100万円で購入すると書いてしまった(意思表示)場合を考えます。すると,意思と表示が不一致になっているということがわかりますか?このような意思と表示の不一致が1号錯なのです。

続いて上図のような場合を考えてみましょう。有名な陶芸家の作品と思っていた甲は実は贋作で素人の作品だったとします。すると,
有名な先生の陶芸家であるという事情の下→(素人の作品の)甲を1000万円で買おうと思い→甲を1000万円で買う契約を締結したことになります。ここで重要なのは,意思と表示は客観的に見て判断されるということです。神の視点からすればこの人のした意思というのは(当人は知らないが素人の作品である)甲を買う,という意思になります。

このような事情と意思の不一致が2号錯誤になります。

錯誤とは不一致である。1号錯誤は意思と表示の不一致であり,2号錯誤は事情と意思の不一致である。

1号錯誤は条文だけ考えろ!

1号錯誤は条文だけ考えれば大丈夫でしょう。とりあえず条文(民法95条)を見てみます。

(錯誤)
第九十五条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであってその錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

1号錯誤の際は上記緑色青色のみを考えれば大丈夫です。

次に掲げる錯誤に基づくものであって→主観的因果性です。これは錯誤によって意思表示をしたという因果関係のことを指します。しかし通常これは問題になりません。

その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるとき→客観的重要性です。これはしっかり押さえましょう。これが認められることが上記主観的因果性が認められることにもつながるからです。

つまり,1号錯誤は,①1号錯誤に該当するかを考える(意思と表示の不一致)②主観的因果性を考える。③客観的重要性を考えることになります。

1号錯誤は,主観的因果性と客観的因果性を考えればよい。

2号錯誤は2項に注意

(錯誤)
第九十五条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであってその錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる
2号錯誤は1号錯誤と最初は同じです。主観的因果性客観的重要性を考えます。ただし,2号錯誤は2項で表示を要求しています。こいつがやっかいなわけです。

表示は,表示+内容とされなければダメか

従来判例法理を踏まえて2号錯誤が作成されました。従来は動機の錯誤といわれていたものです。しかし,この動機の錯誤による取消しは,日常的に考えればおかしいような事例も出てきます。

たとえば,雨が降りそうだったのでコンビニでビニール傘を買ったとします。しかし,購入後外に出るとすでに晴れていました。

この場合「私は雨が降ると思ったからビニール傘を買ったんよ。売買契約取り消すからお金返して」という主張は通ると思いますか?店側からしたら「知らんがな」ですよね。

つまり,動機の錯誤というのはそうそう認められるものではなかったのです。ではどういう場合にこの錯誤が認められるか?それは「知らんがな」を考えればわかります。

店側は「知らない」から認めないと主張しました。では知っていれば……。そう,法律は表示を求めたのですね。つまり,行為の基礎となった事情(動機)が行為時(この場合は売買時)に表示されていれば店側は知っているわけであるから,錯誤で取り消せると考えたわけです。

しかし,これもちょっとおかしくないですか?たとえば下の例を考えてみましょう。

雨が降りそうだったのでコンビニでビニール傘を買ったとします。売買のときにレジで「急に雨が降ってきそうでやばそうやから,これ買うわ。ありがとさん。」と言ったとしましょう。しかしコンビニから出たら晴れていました。そして店員に「ワシは購入時に『雨やから買う』って言ってたやろ。売買契約取り消すから代金返して」といった場合どうなるでしょうか?

表示されていたから取り消せますか?ちょっと考えにくいですよね。店側は「ちゃんと天気予報確認して情報収集しとけよ」と主張するわけです。

ここで裁判例では,表示されかつ内容とされていた場合に動機の錯誤を認めてきたわけですね。内容とされるとは,お互いに合意があったことを意味します。つまり事情をもとに意思表示がされていることを合意していているということです。コンビニ事例では,「雨が降りそうだから定価100円のビニール傘を110円で買う。この10円分は雨が降りそうという緊急性によるものだよ。」というお互いの合意のもと目に見える形で売買が行われている必要があります。

さて,動機の錯誤に表示と内容となったことを要求してきた従来の裁判を踏まえた場合,95条2項の表示というのは表示され,かつ内容となった(相手が了承した)ことを意味していると考えるべきです。なお表示は黙示のものでもよいとされています

最新の判例

最新の判例(改正法案ができ,裁判官もこれを知っていると思われる状況下で出された動機の錯誤の判例)が以下の通りです。

そうすると,a社が反社会的勢力でないことという上告人の動機は,それが明示又は黙示に表示されていたとしても,当事者の意思解釈上,これが本件各保証契約の内容となっていたとは認められず,上告人の本件各保証契約の意思表示に要素の錯誤はないというべきである。
最判平成28年1月12日判決(一部抜粋)

これも動機の錯誤(現在の2号錯誤)が争われたものですが,表示だけでは足りないとされており,内容になっていることを要求しています。よって,改正後も,2号錯誤の表示には表示+内容化まで必要とすべきでしょう。

2号錯誤は主観的因果性,客観的重要性とともに,2項より行為の基礎となった事情が表示されかつ内容化されたことを必要とする。表示は黙示でもよい。

95条3項4項は条文に沿って行けば大丈夫

今まで95条1項と2項を見てきました。最後に3項4項を見てみましょう。

3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
3項,4項は条文通り解釈すれば大丈夫です
表意者が重大な過失(重過失といいます)であれば,取消しは認められないということです。しかしこれはあくまで1項2項の要件を確認した上での議論となります。なのでいきなり表意者に重過失あるから取消しオッケーとするのはダメだということです。

きちんと,1号錯誤か2号錯誤か→1号錯誤であれば主観的因果性と客観的重要性を,2号錯誤であれば主観的因果性,客観的重要性,事情が表示されかつ内容化されたのかを検討することは忘れないということです。

また3項で表意者が重過失がある場合でも1号,2号に該当する事実があるようだったら取消しは認められないことになります。

4項は前回とほぼ一緒なので忘れてしまった方はこちらをご覧ください。

心裡留保・通謀虚偽表示はカンタン!楽勝な考え方【民法総則その2】
はじめての民法総則シリーズです。改正民法完全対応。改正民法で学習しているロースクール生がわかりやすく法律を伝えるための記事です。第2回目の今回は心裡留保と通謀虚偽表示について解説しています。善意の第三者は民法の基礎となるのでしっかり押さえましょう!

補足すると,錯誤の場合の第三者は善意だけでなく無過失でなければなりません。また,錯誤の場合は無効ではなく取消しなので,第三者は取消し前に出てくる必要がありますがまた別の記事で詳しくやります。

94条3項は条文どおり解釈せよ。ただし,1項2項を検討したうえでの判断である。
94条4項は,取消し前に善意無過失で新しく取引関係に入った者に対しては取消しの主張はできないということ。

まとめ

どうでしたか。94条2項以外はすべて条文のままじゃん!と思っていただけましたか?改正によりわかりやすくなったと私は思います。改正世代頑張っていきましょう!

①錯誤はまず,1号錯誤か2号錯誤かを検討する。意思と表示の不一致の場合は1号錯誤であり,事情と意思の不一致の場合は2号錯誤である。
②1号錯誤は,1項柱書を見て主観的因果性と客観的重要性を考える。
③2号錯誤は,1項柱書を見て主観的因果性と客観的重要性を考える。また,2項をみて表示+内容化(相手方が了承しているか)も考えなければならない。表示は黙示のものでもよい。
④94条3項4項は条文通りに考える。ただし①②③の検討をしたうえで考えなければならない。
読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

今回もかなり要点だけを説明しました。加えて,学説の対立が大きい部分や改正法で将来どうなるかわからない部分があります。そのため,細かい箇所は基本書等でチェックお願いします。わかりやすくかつ改正法に対応しているものを載せておきます。

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