遺棄罪についてわかりやすく整理してみた【刑法各論その2】

遺棄罪刑法

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遺棄罪も生命に対するものですよね。たしか死体遺棄罪は刑法総論でも出てきたような…。

 

法上向
法上向

遺棄罪の保護法益は議論が分かれていて少し複雑だな。さらに死体遺棄罪の保護法益は生命ではないぞ。また、遺棄の意味もポイントになる。

今回は意外とややこしい遺棄罪を整理していこうか。

死体遺棄罪は、論述試験でも以外と出てくる罪名です。特に、殺人等の罪とセットで使われることが多いです。

一方、通常の基本とされる遺棄罪はあまり出題されませんが、遺棄の意味という根幹にかかわる部分に論点があります。よって、刑法各論を学ぶ際には是非とも押さえておきたいポイントです。

がんばっていきましょう!

遺棄罪のポイント

遺棄罪の保護法益は議論がありますが、判例通説に絞って解説します。そのうえで、要件を確認します。この要件の遺棄について争いがあるのでその点を整理してみましょう。

論点はほぼないでしょう。しいていえば、殺人罪と保護責任者遺棄罪の区別です。

①遺棄罪の保護法益がわかる。死体遺棄罪の保護法益の違いを理解する。
②条文による遺棄の違いがわかる。
③殺人罪と保護責任者遺棄罪の違いがわかる。
それでは見ていきます。

遺棄罪の保護法益

遺棄罪(刑法217条・218条)の保護法益

まず、通常の遺棄罪(刑法217条、218条)の保護法益からです。これは学説上議論のあるところですが、判例通説は、生命・身体とされています。つまり、生命だけではなく身体も含むというわけです。

理由はいくつかありますが、刑法219条で致死だけでなく、致傷まで含まれているという点が一番大きいと思います。

死体遺棄罪(刑法190条)の保護法益

条文がかなり離れたところにあるので注意してください。条文が離れているということは保護法益が異なることを意味します。

死体遺棄罪はすでに亡くなっている人の遺棄が問題になるので、保護法益は生命・身体であるはずがありません。この場合の保護法益は、死者に対する敬虔感情(切実な感情)と言われています。

保護法益が生命・身体の安全でないために、死体遺棄と殺人との間で錯誤がある場合で抽象的事実の錯誤の話となっても、重なり合いが認められないわけですね。

遺棄罪の要件

遺棄罪(刑法217条)の要件

(遺棄)
第二百十七条 老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者は、一年以下の懲役に処する。

要件は条文から見てわかるとおり、

①老年、幼年、身体障害、疾病のために扶助を必要とする者②遺棄③故意

です。

一番問題となるのは、②遺棄でしょう。刑法217条遺棄は「移置」すなわち「危険な場所に移転させる行為」を指すとされています。「置き去り」は含まないとされています。

保護責任者遺棄罪(刑法218条)の要件

(保護責任者遺棄等)
第二百十八条 老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。
刑法218条の要件も以下のように分けられるでしょう。
①保護責任者②遺棄または不保護③故意

まず①保護責任者について、保護責任者は不作為犯の作為義務と同様の考え方をもとにします。つまり、先行行為、排他的支配、保護の引受け等を考えるということです。

不作為犯の作為義務については、以下のリンクをご参照ください。

この②遺棄には、「移置(危険な場所への移転)」に加えて「置き去り(危険な場所で放置)」も含むとされています。これが刑法217条との違いです。

217条の遺棄は移置だけで218条の遺棄は移置と置去りを含むってよく言われますけど、その理由がよくわかりません。

法上向
法上向

なるほど、理由はあまり基本書等で述べられていない点だね。また学説では反対説もあり、上記見解が学者によっては正しいわけではないことを前提に説明しようか。

保護責任者遺棄罪刑法217条遺棄罪より法定刑が重くなっています。これは「保護責任者なのに、遺棄をするなんてありえない!罰すべきだ!」という気持ちが強いからですね。

つまり保護責任者であることが遺棄の内容を決定づけるはずです。保護責任者とは、作為義務と同様の判断構成をとっていました。つまりある一定の義務をすることが前提とされている存在というわけですね。

となると、罰すべき行為である遺棄には移置という作為だけではなく、置き去りという不作為が観念化されます。一方、刑法217条の通常の遺棄には作為義務を基礎づける要件はなにもないので、不作為的な置き去りは観念できないというわけです。

なるほど、遺棄の内容の違いは、保護責任者要件があるかどうかによっていたわけですね。
法上向
法上向
ただし、繰り返しになるが、この考え方は一つの解釈にすぎず、学者によっては別の見解をとる人もいることを忘れないようにな。

死体遺棄罪(刑法190条)の要件

(死体損壊等)
第百九十条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。

上記条文は遺骨等も含まれているが、死体遺棄罪の場合を例にとって要件を挙げます。

①死体②遺棄③故意

です。この遺棄刑法217条、218条の場合とはまったく異なり、損壊や領得のバージョン変化となります。そのため放棄すること一般の行為を指します。この点はあまり問題となりません。

保護責任者遺棄致死罪と不作為の殺人罪の区別

さて、以外と悩むのが保護責任者遺棄罪不作為の殺人罪の区別です。不作為の殺人罪は不真正不作為犯です。一方、保護責任者遺棄罪は真正不作為犯です。

不真正不作為犯の考え方を知りたい方は以下の記事をご覧ください。

保護責任者遺棄罪保護責任者の要件の部分で作為義務的な考え方をするので実行行為で判断することは難しいでしょう。

よって、通説からは、故意によって区別する、といわれています。

殺人罪の故意とは「死んじゃうかも」(認識・認容)でした。一方で保護責任者遺棄致死罪は死に対する認識・認容までは必要ありません(結果的加重犯なので)。「遺棄しよう(放置しよう)」という故意だけで足りるのです。

故意が異なるというのは当たり前だと思うかもしれませんが、人間、行為自体が一緒だったら故意の検討を忘れてしまうものです。そして保護責任者遺棄致死罪と不作為の殺人罪の区別に迷ってしまいます。

成立要件にはかならず故意(主観的構成要件)まで必要という意識をもつことが大事というわけですね。

ちなみに、保護責任者遺棄致死罪刑法218条とともに刑法219条を用いるので注意しましょう。

(遺棄等致死傷)
第二百十九条 前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

結果的加重犯なので、死亡結果に対する過失は判例によれば必要なく、因果関係があれば足ります

まとめ

遺棄罪についてみてきました。死体遺棄罪だけ別の内容ということがわかりましたでしょうか。基本書等でも、遺棄罪死体遺棄罪は別のページに書かれていることが多いですが、ここでは区別のためにまとめて扱ってみました。

本来の遺棄罪(刑法217条、218条)について再度振り返ってみましょう。

①刑法217条の遺棄は移置を意味する。
②刑法218条の遺棄は移置と置き去りを意味する。
③保護責任者は作為義務と同様の内容を考える。
④死体遺棄致死罪(刑法218条、219条)と不作為の殺人罪(刑法199条)の違いは故意の内容である。

以上です。読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

刑法各論は刑法総論に引き続き,基本刑法をおすすめします。事例問題を示しながら解説されているので,初心者から司法試験対策まで幅広く対応できる作りになっていると思います。

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