当事者訴訟ってなんか捉えどころがないというか…
よくわからない訴訟なんですよね。
具体的イメージがわかないのなら,判例を考えればいいじゃない
ってことで,今回は差止訴訟でも検討した「君が代訴訟」をもとに当事者訴訟についても解説していくぞ!
当事者訴訟は,行政訴訟の中で一番よくわからない訴訟だと思います。考え方も漠然としておりイメージがつきにくいです。ここでは差止訴訟でも利用した君が代訴訟を利用していこうと思います。君が代訴訟さえマスターすれば差止訴訟も当事者訴訟もマスターできるというわけです。
差止訴訟についてはこちらをご覧ください。
では見てきましょう!
当事者訴訟のポイント
当事者訴訟とは抗告訴訟以外のものの場合の行政訴訟に基本的には該当します。簡単にいうと行政処分の処分性が否定される場合の現在の法律関係についての訴訟と思っておけば大丈夫です。よって対象とする行為には処分性はないことになります。処分性って何それ?おいしいの?と思った方はこちらをご覧ください。
前述のとおり,君が代訴訟を中心に見ていきます。
②当事者訴訟の要件を理解する。
当事者訴訟の重要判例は君が代訴訟
君が代訴訟は当事者訴訟の代表例
まず君が代訴訟について確認してみましょう。
何を対象に当事者訴訟をするかわかるかい?
ええっと,行政処分ではないものだから,通達とか職務命令を対象にして通達や命令の違法確認訴訟かしら?
当事者訴訟なんだから現在の法律関係を対象にすべきだよ。通達や命令によって指示される義務がないことを確認するんじゃないかな?懲戒処分の分は差止訴訟で対処できるしね。
そうだね,一見通達や職務命令が違法であることの確認でもよさそうなんだけど,より具体的に現在のことについて訴訟をしたいわけだから,義務がないことの確認=義務の不存在確認訴訟を提起すべきなんだ。
君が代訴訟では義務不存在確認訴訟が提起されている。
通達を踏まえた命令によってどのような義務が発生すると思いますか?起立斉唱とか伴奏とかの義務ですよね。これを対象としました。
君が代訴訟の判旨を確認
対象選択の適否,方法選択の適否
まず判例は当事者訴訟を使うべきか,この訴訟でいいのかを検討しています。
本件通達を踏まえた本件職務命令に基づく公的義務の存在は,その違反が懲戒処分の処分事由との評価を受けることに伴い,勤務成績の評価を通じた昇給等に係る不利益という行政処分以外の処遇上の不利益が発生する危険の観点からも,都立学校の教職員の法的地位に現実の危険を及ぼし得るものといえるので,このような行政処分以外の処遇上の不利益の予防を目的とする訴訟として構成する場合には,公法上の当事者訴訟の一類型である公法上の法律関係に関する確認の訴え(行訴法4条)として位置付けることができると解される。
このように不利益の予防目的のための訴訟であり,対象は現在の法律関係です。また,職務命令自体は行政処分ではない=取消訴訟等で解決できないために当事者訴訟でいくのが適当と言っています。
つまり,対象が現在のものか,方法が当事者訴訟でよいかを検討していますね。
確認の利益があるか
確認訴訟で一番問題になるのが確認の利益です。これは取消訴訟などの訴えの利益とは異なる判断によります。確認訴訟であればバンバン提起できるのではなく利益がないとダメなので一定の制約があるのですね。
君が代訴訟では下のように確認の利益を認めました。
本件通達を踏まえて処遇上の不利益が反復継続的かつ累積加重的に発生し拡大する危険が現に存在する状況の下では,毎年度2回以上の各式典を契機として上記のように処遇上の不利益が反復継続的かつ累積加重的に発生し拡大していくと事後的な損害の回復が著しく困難になることを考慮すると,本件職務命令に基づく公的義務の不存在の確認を求める本件確認の訴えは,行政処分以外の処遇上の不利益の予防を目的とする公法上の法律関係に関する確認の訴えとしては,その目的に即した有効適切な争訟方法であるということができ,確認の利益を肯定することができるものというべきである。
差止訴訟と同様不利益は反復継続的かつ累進加重的に発生し拡大する危険があるので,すぐに当事者訴訟をする必要があるから,確認の利益ありとしているのですね。
けれど,差止訴訟ができるから,よくないですか?
いい指摘だね。けれど差止訴訟が対象にするのは将来にくる処分(懲戒処分だけ)なんだ。今現在の不利益である義務については差止訴訟は対象としていない。よって差止訴訟でカバーできていない不利益の受け皿として当事者訴訟は必要であると考えるべきだね。
当事者訴訟の要件
大前提は処分性がないこと
当事者訴訟の大前提は処分性がないことです!処分性があったら抗告訴訟として扱われるので処分性→原告適格→訴えの利益といった要件を検討していくことになります。
処分性が満たされなかったらこの当事者訴訟を検討するということです。すると別の世界線へ突入することになります。
また当事者訴訟は行政訴訟の一種なので行政を巻き込んでいることが必要です。じゃないと民事訴訟になってしまいますからね。
条文は行政事件訴訟法4条等参照
条文は行政事件訴訟法4条が一番わかりやすいですが,実はこれを読んでも訴訟要件はでてきません。行政法ではめずらしく不親切な条文となっています。
(当事者訴訟)第四条 この法律において「当事者訴訟」とは、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。
民事訴訟にも共通しますが,確認の訴えでは3つの要素が必要だとされています。
②方法選択の適否とは確認よりも給付形成の方がいい,という考えです。
③即時確定利益とは,現に危険があり解決が必要!という考えです。
上記3つの検討をクリアしてようやく確認の利益ができることになります。それを君が代訴訟ではどう見ていたのか思い出してみましょう。
対象選択の適否
現実の危険に着目した将来の予防を目的としたものでしたね。よって現在の法律関係を対象としていることがわかります。さらに差止訴訟の対象となる部分は外している=差止訴訟以外の不利益を対象とした点も注目です。
方法選択の適否
本当は給付訴訟等がいいのですが,今回は給付は全然関係ないので確認訴訟しかできそうにありません。また「義務不存在確認」という方法も他によい手段がないので方法としても適切といえます。
即時確定の利益
君が代訴訟は現実に危険があることをめちゃくちゃ押していましたよね。反復継続的かつ累進加重的に発生し拡大する危険とも言っていました。
以上より一応3つの要素を検討しているといえるわけです。これが大きく見たときの確認の利益の検討要素=当事者訴訟の検討要素であると言えるでしょう。
まとめ
まず大前提として処分性がないことをみるべきです。これが他の訴訟形態との区別になります。次に確認の利益があるかをみます。これは民事訴訟法と共通なのでいずれは覚えると思いますが,行政法では現実の危険を重視されていると考えてよいでしょう。
処分性の違いと将来,現在の違いを押さえましょう。
まとめ
最後の当事者訴訟の要件(検討要素)をもう一度確認して終わります。
①処分性がない
②行政を巻き込んだものである
③確認の利益(対象の適否,方法の適否,即時確定の利益がある)
読んでくださってありがとうございました。ではまた~。
参考文献
記事の目的上,とても簡潔にまとめているので,もっと深めたい方は以下の基本書を参考にしてください。わかりやすいのでおすすめです。