民法改正対応!婚姻を条文から考える。【家族法その1】

婚姻民法

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家族法ってなかなか勉強の手が回らない分野ですよね。家族法について教えてほしいです。

法上向
法上向

たしかに家族法は後回しにされがちだね。

ただし短答試験では必ず出題されるし論述で登場するかもしれないから基本的な要素は知っておく必要があるだろう。

今回は家族法の最初、婚姻について勉強していこう!

婚姻ってただ届出出すだけじゃないんですか?何も論点なんてないような……。

法上向
法上向

おいおい、法的には婚姻の要件から効果、

あまりなじみのない婚姻取消しといった制度もあるんだ。詳しくみていこう。

家族法は勉強が手薄になりがちな分野ですが、短答では確実に出題される分野です。

最低限の知識をわかりやすく押さえる!ということをモットーにして「はじめての家族法シリーズ」を進めていこうと思います。もちろん家族法改正全面対応です!

まずは最初の婚姻についてです。

婚姻のポイント

婚姻を考える際にまず意識してほしいのは、普通の法律と同様、要件と効果です。まずはこれを押さえます。

その次に、婚姻の無効・取消しについて簡単にまとめてみることにします。

最後に夫婦財産制についてです。特に日常家事債務と民法110条類推のところは民法総則と合わせて論述でも出題される可能性の高い部分なのでしっかり理解したいところです。

①婚姻の要件・効果を押さえる。
②婚姻の無効・取消しについて知る。
③夫婦財産制の考え方を理解する。

それでは見ていきましょう!

婚姻の要件・効果

婚姻の要件

婚姻の要件をまずはまとめてみます。以下の囲みをご覧ください。

〈婚姻の要件〉
①婚姻意思の合致
②婚姻障害の不存在
③婚姻の届出

それぞれの要件について詳しく見ていきましょう。

要件①:婚姻意思の合致

婚姻意思とは、社会通念上夫婦という婚姻生活共同体を形成しようとする意思のことです。これを実質的意思説といったりします。判例・通説なのでこの定義で押さえておけば大丈夫でしょう。

たとえば、結婚はしたくないが子どもに嫡出子の身分を与えたいがために婚姻を利用したケースでは、当時者間に「夫婦という婚姻生活共同体を形成しようとする意思」はないことになるため、婚姻意思はない=婚姻は成立しないということになります。

また婚姻意思の時期について、婚姻届時に婚姻意思があったがその後意識不明になった場合、届出受理以前に翻意(やっぱりやめること)するなどの特段の事情がないかびり、届出受理によって婚姻は有効に成立するとしたものがあります。

要件②:婚姻障害の不存在

婚姻にはいくつか障害事由が用意されていますこれがあると婚姻はできませんよ!という事由のことです。以下並べてみるので皆さんも確認してみましょう。

(婚姻適齢)
第七百三十一条 婚姻は、十八歳にならなければ、することができない。
(重婚の禁止)
第七百三十二条 配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。
(再婚禁止期間)
第七百三十三条 女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 女が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合
二 女が前婚の解消又は取消しの後に出産した場合
(近親者間の婚姻の禁止)
第七百三十四条 直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。
2 第八百十七条の九の規定により親族関係が終了した後も、前項と同様とする。
(直系姻族間の婚姻の禁止)
第七百三十五条 直系姻族の間では、婚姻をすることができない。第七百二十八条又は第八百十七条の九の規定により姻族関係が終了した後も、同様とする。
(養親子等の間の婚姻の禁止)
第七百三十六条 養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第七百二十九条の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない
第七百三十七条 削除

これはざっと確認して、論述試験対策であれば条文の箇所さえわかっていればよいですし、短答ではざっくりとした内容がわかっていれば大丈夫だと思います。

簡単にいえば、

①婚姻適齢(18歳)②重婚・近親婚の禁止③再婚禁止期間(婚姻解消・取消しから100日)

ですね。

また、よく短答で狙われるのが成年被後見人の婚姻です。これは民法738条を見ればわかります。

(成年被後見人の婚姻)
第七百三十八条 成年被後見人が婚姻をするには、その成年後見人の同意を要しない。

家族法というのは非常に当事者の意思が尊重されます。そのため、成年後見人は基本的に同意がなければ効力が発生しませんが、婚姻については成年後見人の同意は必要ないというわけです。

その人と決めたら後見人でも婚姻を防ぐことはできない。愛は法律を超える、というわけですね。おしゃれです。

要件③:婚姻の届出

民法739条民法740条を見てみましょう。

(婚姻の届出)
第七百三十九条 婚姻は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
2 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。
(婚姻の届出の受理)
第七百四十条 婚姻の届出は、その婚姻が第七百三十一条から第七百三十六条まで及び前条第二項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。

簡単にいえば届出によって婚姻の効力が生じるよ!というわけですね。

民法740条は婚姻障害があると婚姻届を受理しないということが定められています。このことからも婚姻には婚姻障害事由がないことが必要であるということがわかると思います。

婚姻の効果

婚姻の効果としてまずは

①夫婦同氏(民法750条)②相続(民法890条)③同居・協力・扶助義務(民法752条)

を押さえておきましょう。

そのうえで論点として生じるのが夫婦契約取消権についてです。まずは民法754条を確認してみます。

夫婦間の契約の取消権)
第七百五十四条 夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

夫婦間契約はいつでも取り消せるというものです。愛によって自由意思がない状態で夫婦間の契約が締結されることが多いといった事情からこの規定が定められたとされています。

愛は人を狂わせるということです。その対処として夫婦間の契約では取消権を認めたわけですね。

ただし「愛」に関係のない第三者については第三者が婚姻について悪意であろうと善意であろうと守られます(民法754条ただし書)。

民法754条は婚姻で愛があることが前提となっているように読めますね。となると愛がない状態=夫婦関係が破綻していた場合はどうなるのか?という問題があるのです。

判例では、夫婦関係が破綻した後に締結された夫婦間契約や取消行為時には夫婦関係が破綻していた場合には取り消すことができないとしています。つまり愛がなければ取消権は認められないというわけです。

取り消す場合には、「そこに愛はあるんか?」という点を意識してみましょう!(笑)

婚姻の無効・取消し

婚姻の無効

婚姻の無効は民法742条に規定されています。離婚とはまた別ですので注意してください。あくまで婚姻が無効になる場合です!

(婚姻の無効)
第七百四十二条 婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
一 人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。
二 当事者が婚姻の届出をしないとき。ただし、その届出が第七百三十九条第二項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そのためにその効力を妨げられない。

婚姻の無効を反対解釈すると婚姻の要件になるといわれています。

実際に民法742条1号を反対解釈すれば「当事者間の婚姻の意思の合致
民法742条2号を反対解釈すれば「婚姻の届出

という要件が導き出せると思います。もちろん、婚姻の要件の際には婚姻障害事由がないことが当然の前提として必要ですが…。

このように短答試験などで婚姻の無効について忘れてしまった場合には婚姻の成立の逆だと考えるといいでしょう。

婚姻意思の合致」の反対→婚姻意思がないこと→人違いとかの場合だな
婚姻の届出」の反対→婚姻の届出がない場合だな

という風に考えることで婚姻の無効が出題された場合に対処できると思います。

婚姻の取消し

婚姻の取消しは離婚とは違うので注意してください。婚姻自体を取消すことです。

無効はいつでもだれでも主張できるものでしたが、婚姻の取消しは無効よりすこしハードルが下がります。当事者等が裁判所に請求することでしか取り消すことができません(民法744条1項本文民法747条1項)。

ざっと取消事由を確認していきましょう。

(婚姻の取消し)
第七百四十三条 婚姻は、次条から第七百四十七条までの規定によらなければ、取り消すことができない。
(不適法な婚姻の取消し)
第七百四十四条 第七百三十一条から第七百三十六条までの規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、これを請求することができない。
2 第七百三十二条又は第七百三十三条の規定に違反した婚姻については、当事者の配偶者又は前配偶者も、その取消しを請求することができる。
(不適齢者の婚姻の取消し)
第七百四十五条 第七百三十一条の規定に違反した婚姻は、不適齢者が適齢に達したときは、その取消しを請求することができない。
2 不適齢者は、適齢に達した後、なお三箇月間は、その婚姻の取消しを請求することができる。ただし、適齢に達した後に追認をしたときは、この限りでない。
(再婚禁止期間内にした婚姻の取消し)
第七百四十六条 第七百三十三条の規定に違反した婚姻は、前婚の解消若しくは取消しの日から起算して百日を経過し、又は女が再婚後に出産したときは、その取消しを請求することができない。
(詐欺又は強迫による婚姻の取消し)
第七百四十七条 詐欺又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2 前項の規定による取消権は、当事者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後三箇月を経過し、又は追認をしたときは、消滅する

読み解くのが難しい規定ですが、

とりあえず

婚姻障害事由=①婚姻適齢(18歳)②重婚・近親婚②再婚禁止期間(婚姻解消・取消し後100日)の場合には婚姻を取消すことができるという点を押さえてください!婚姻の要件を満たしていなかったのだから当たり前です。

ただし、18歳に達した場合(民法745条)や再婚禁止期間を経過したり出産した場合(民法746条)はもはや取り消すことはできません

また、重要なのは民法747条です。詐欺や強迫の場合にも婚姻を取り消すことができるとされています。ただし、時間制限にも注意しましょう(民法747条2項)。詐欺を発見したり強迫を免れた時から3カ月を経過すると取消権を失います

たとえば結婚詐欺に引っかかった場合、判明してから3カ月以内に家庭裁判所に婚姻の取消しを請求しなければ婚姻の取消権を失ってしまうということです!注意しましょう!

効果については民法748条を見れば万事解決です。

(婚姻の取消しの効力)
第七百四十八条 婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる
2 婚姻の時においてその取消しの原因があることを知らなかった当事者が、婚姻によって財産を得たときは、現に利益を受けている限度において、その返還をしなければならない
3 婚姻の時においてその取消しの原因があることを知っていた当事者は、婚姻によって得た利益の全部を返還しなければならない。この場合において、相手方が善意であったときは、これに対して損害を賠償する責任を負う。

婚姻取消しは将来効です。

さらに、もし婚姻取消事由(婚姻障害事由+詐欺・強迫)について当時者が知らなかった場合(詐欺・強迫の場合に相手方が知らなかった場合というのは想定しづらいですが)には、財産は現存利益で返還しなければならないとしています。

加えて、婚姻時に取消原因があったことを当事者が知っていた場合(詐欺・強迫の場合などが顕著です)には婚姻で得た財産を全部返還することになります。また相手方が善意であれば損害賠償も可能です!詐欺強迫の場合には損害賠償も加わるでしょう。

夫婦財産制

最後に婚姻の場合の財産処理・財産関係について学習していきます。

夫婦財産制の条文は民法760条~762条

民法は夫婦財産制について約定財産制(夫婦で財産契約を結ぶこと)を原則としていますが(民法755条)、日本ではあまり約定財産制は利用されておらず、法定財産制が基本となっています

そのため、以下、法定財産制にそって解説します。

夫婦財産制で見るべきは民法760条~民法762条までの規定です。

(婚姻費用の分担)
第七百六十条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する
(日常の家事に関する債務の連帯責任)
第七百六十一条 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
(夫婦間における財産の帰属)
第七百六十二条 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする
2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

簡単にまとめますと、

婚姻から生じた費用は分担する(民法760条)。日常家事債務は連帯責任となる(民法761条)。婚姻前の財産や婚姻中に自分で得た財産は別々(民法762条)。

というわけです。

なお、民法762条の「自己の名」というのは名義ではなく、お金を払ったかどうかなど実質的にその人が取得したかどうかによって判断するとされています。「自己の名」という文言に惑わされないようにしましょう。

日常家事債務と民法110条類推

家族法において唯一論述で出題されやすい箇所がこの日常家事債務です。なぜなら民法110条の問題と絡んでくるからですね。

民法761条は、日常家事債務であれば代理権を実際に授与していなくても配偶者に効果が帰属するというものです。

ここで日常家事債務とは何ぞや?と思うと思います。

日常家事とは、未成熟子を含む夫婦共同生活を営むうえで日常必要とされる事務のことです。何がこの日常家事債務になるかはその家庭ごとの事情により異なります。

じゃあ、日常家事債務に入らない債務であれば夫婦は連帯責任を負わないわけね。安心したわ。

法上向
法上向

実はそうでもないんだ。取引の相手方は「日常家事債務」として配偶者にも請求できると思っている可能性がある。この場合に判例は民法110条を類推適用するとしているんだな。

夫が日常家事債務に入らないようなとんでもない債務を負ったとしましょう。相手方が「日常家事債務だから妻にも請求できる!」といって妻にその債務を請求してきたとします。

妻側は「これは日常家事債務じゃないから私は知りません!」といって民法762条の規定から逃れることは可能です。

しかしそうであっては相手方がかわいそうです。相手方は「いざとなれば妻にも請求できる。」と思っているのですから。

そのため、判例はこの場合の相手方の保護として民法110条類推適用を認めました民法110条とは表見代理の規定で権限踰越型の代理の場合に適用されるものです。

民法110条類推として

相手方が①法律行為②顕名③基本代理権(権限外)⑤正当な理由(善意無過失)を主張することで妻にも同様に夫の債務を請求できるというわけですね。

民法110条については以下の記事で詳しく説明しています。

このように日常家事債務が関わると、民法総則の代理まで範囲が及びます。そのため論述の問題として出題しやすいわけです。注意しておきましょう。

まとめ

以上、婚姻についてまとめてみました。

このようにみてくると、基本的には条文に書かれているということがわかっていただけたのではないか、と思います。

最後に婚姻の要件について復習しましょう。覚えていますか?

〈婚姻の要件〉
①婚姻意思の合致
②婚姻障害の不存在
③婚姻の届出

でしたね。婚姻障害には、婚姻適齢(18歳)、重婚・近親婚、再婚禁止期間内というものがありました。最低限この部分はしっかり確認しておきましょう。

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

家族法は大きな改正がなされており、改正に対応した基本書・参考書はまだ少ないです。今回は改正に対応したもののなかでわかりやすい、大村先生の家族法をおすすめします。

初学者にもわかりやすく書かれており、分量もそれほど多くないため、取り組みやすいと思います。

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