改正対応!民法の条文から賃貸借契約を考える【契約法その10】

賃貸借・民法民法

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賃貸借契約って借地借家法とかも絡んでよくわからないです!

法上向
法上向

たしかに賃貸借はわかりにくいな。賃貸借契約を民法の条文の規定と借地借家法に基づく場合との2つに分けて解説していこうと思う。さらに賃貸借と第三者関係という試験の論点になりやすい部分を3つ目として扱うぞ!

今回は民法の規定の賃貸借を見ていこう。

賃貸借は非常に試験問題に出題されます。実務でもよく使われる分野です。

ただし初学者によっては契約法の中で特にわかりづらい分野でしょう。借地借家法と民法2つの法律を見ないといけないからです。

どうすればこの賃貸借をわかりやすく解説できるかを検討した結果、賃貸借の適用法律について分けて説明した方がいいかな、という結論に至りました。

今回は賃貸借の中の民法の規定についてみていこうと思います。そして次回に賃貸借の借地借家法の規定を解説していきます。

さらに次々回では賃貸借と第三者関係という最も試験に出題される部分について記事にしようと思います。

一つ一つの項目・条文・論点を丁寧に理解していきましょう。

賃貸借のポイント

まず賃貸借契約はどのように成立するのかを理解しましょう。そして、賃貸借契約から生じる賃貸人・賃借人の義務を説明します。

その次に、賃貸借契約の終了について説明していきます。賃貸借の終了事由には様々なものがありますが、主要なものを中心に解説していこうと思います。

できるだけわかりやすくしていこうと思います。

①賃貸借契約の成立・そこから生じる権利義務について知る。
②賃貸借の終了について理解する。

それでは見ていきましょう。

賃貸借契約の成立

賃貸借の条文は民法601条

賃貸借契約の条文は民法601条です。みてみましょう。

(賃貸借)
第六百一条 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。

これを見てわかるように、賃貸借契約は当事者間の合意によって成立します。別に賃借物の引渡しが必要になるわけではありません。合意をした時点で賃貸借契約は成立しているというわけです。

賃貸人の義務

それでは賃貸借契約からどのような権利・義務が発生するのかを確認していきます。

使用収益させる義務

賃貸人は目的物を賃貸人に引渡し、契約の内容に沿った使用・収益をさせる義務を負います。賃貸借契約から当然生じる義務です。

修繕義務

賃貸人は、賃貸物の使用収益に必要な修繕をする義務を負います。民法606条を見てみましょう。

(賃貸人による修繕等)
第六百六条 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
2 賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。

また、賃借物の修繕が必要である場合、賃借人の側から賃貸人に通知して、相当期間内に賃貸人が修繕をしない場合などには賃借人は自身で修繕をすることもできます。

(賃借人による修繕)
第六百七条の二 賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
二 急迫の事情があるとき。

費用償還義務

賃借人が賃借物について賃貸人の負担に属する必要費や有益費を支出したとき、賃貸人はその費用を償還する義務を負います民法608条です。使用貸借でみた必要費償還・有益費償還のことですね。

(賃借人による費用の償還請求)
第六百八条 賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
2 賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

注意が必要なのは、賃貸借の場合は使用貸借とは異なり、「すべての必要費」を償還できるという点です。使用貸借の場合は借主は「非常な必要費」しか償還できませんでした。違いに注意しましょう。

また、有益費償還(民法608条2項)は必要費と異なり、賃貸借終了時でなければ償還できないという点も見落としがちなので注意してください。

賃借人の義務

賃料支払義務

賃借人は契約で定められた賃料を支払わなければなりません。これは賃貸借契約から当然に導き出せる義務です。

ただし、賃料の支払日については規定があります。民法614条です。

(賃料の支払時期)
第六百十四条 賃料は、動産、建物及び宅地については毎月末に、その他の土地については毎年末に、支払わなければならない。ただし、収穫の季節があるものについては、その季節の後に遅滞なく支払わなければならない。

建物や宅地であれば毎月末に支払うわけですね。ただし下宿をしている方ならわかると思いますが、基本的に賃貸借は翌月分を前払いで納めることが多いです。これは民法の賃貸借の原則がありつつ、賃貸借契約に特約を定めているわけですね。

下宿生の方は自身の賃貸借契約書を確認してみてください。前払特約が定められているはずです。

用法遵守義務

賃借人は契約または賃借物の性質によって定まった用法に従い、賃借物の使用・収益をする義務を負います民法616条を見てみましょう。

(賃借人による使用及び収益)
第六百十六条 第五百九十四条第一項の規定は、賃貸借について準用する。

ここから根気強く民法594条1項をみます。

(借主による使用及び収益)
第五百九十四条 借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。

使用貸借の規定の準用ですね。

このように民法616条準用の民法594条より賃貸借は使用貸借と同様に用法遵守義務を負うのです。この義務に違反すれば、債務不履行になり解除損害賠償の流れになります。

やや細かいですが、用法遵守義務違反の損害賠償請求の場合は使用貸借と同様に期間制限があります(民法622条準用の民法600条)。

賃貸借終了時の義務

賃貸借契約が終了すると借主は賃借物を返還する義務を負います。これは賃貸借契約から当然に導き出される義務です。

また、使用貸借の場合と同様に原状回復義務を負います。

(賃借人の原状回復義務)
第六百二十一条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

ポイントは使用貸借とは異なり、賃貸借の場合には、通常損耗は原状回復しなくてもよいとはっきり規定されている点です。つまり、借主は通常損耗以外の損傷について原状回復することになります。

原状回復とは元の状態に戻すということです。下宿生にとっては重要なポイントなので社会常識としても押さえておきましょう。壁に穴をあけたといった損傷は基本的に原状回復させて貸主に返さなければなりません。

やや細かいですが、使用貸借規定の準用により収去義務や収去権も発生します。民法622条準用の民法599条1項、民法599条2項です。収去義務や収去権については使用貸借の記事に詳しく書いています!

賃貸借契約の終了

民法での期間の満了や解約の申入れ(民法604条・619条・617条・618条)

民法では賃貸借契約の期間制限や解約の申入れについての規定があります。しかし試験で問題になるほとんどが居住用の土地や建物です。そのため、基本的には借地借家法の規定が適用されるため、民法上の賃貸借の期間についての定めが適用されることはほとんどありません

そのため、ここでは条文のチェックにとどめましょう。

(賃貸借の存続期間)
第六百四条 賃貸借の存続期間は、五十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。
2 賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五十年を超えることができない。

(賃貸借の更新の推定等)
第六百十九条 賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第六百十七条の規定により解約の申入れをすることができる。
2 従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。ただし、第六百二十二条の二第一項に規定する敷金については、この限りでない。

(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第六百十七条 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
一 土地の賃貸借 一年
二 建物の賃貸借 三箇月
三 動産及び貸席の賃貸借 一日
2 収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。

(期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)
第六百十八条 当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。

何度も繰り返し言いますが、基本的には借地借家法の規定が優先的に適用されるため、試験としてはこれらの規定を使うことは少ないです。

使うとすれば、駐車場のような場合くらいでしょう。

賃借物の全部滅失による終了

賃借物が全部滅失した場合は当然に賃貸借契約は終了します民法616条の2です。

(賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了)
第六百十六条の二 賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、これによって終了する。

ポイントは間違っても危険負担の問題にしないということです。たしかに賃貸借契約も双務契約なので危険負担と同様に考えることもできそうですが、賃貸借契約では危険負担を考えることなしに当然に賃貸借契約自体が終了してしまうことになります

反対給付を拒めるかどうか考えるより先に契約自体が終了してしまうというわけです。

債務不履行による解除

賃貸借で一番多い終了事由は債務不履行による解除でしょう。

賃借人は賃貸借契約によりどのような義務を負っていたか覚えていますか?

賃貸借契約中は賃料支払義務用法遵守義務でしたね。この義務に違反した場合には債務不履行になるので当然に債権一般の規定から解除できます。

判例による信頼関係破壊の法理

ただし、判例によれば、不動産の賃貸借について、賃借人に債務不履行がったとしても、それが賃貸借の基礎にある相互の信頼関係を破壊するに至らない場合には賃貸人は賃貸借の解除をすることができないという「信頼関係破壊の法理」というものがあるとされています。

これは賃借人の保護のための規定です。たとえば建物を簡単に解除されてしまうと賃借人は大きな不利益を負うことになりますからね。

単に債務不履行があるという理由だけでは解除できないというわけです。厳密にいえば相手方から「信頼関係破壊の法理(背信性不存在事由)」を反論されて解除できなくなります。

そのため、賃貸借契約で債務不履行により解除する場合には、その債務不履行によって賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊されているかどうかも考える必要があるわけです。

個別具体的な判断になっていきますが、賃料1カ月分の未払いなどでは基本的に「信頼関係が破壊された」とはいえないので解除はできないでしょう。

賃貸借の解除は将来効

さらに賃貸借の解除は将来に向かってのみ効力を生じるという点も押さえておきましょう。民法620条になります。

(賃貸借の解除の効力)
第六百二十条 賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。

通常、解除は原状回復義務が課せられていましたが、賃貸借の場合にはそうではなく賃料等を返還する必要はないというわけです。

まとめ

賃貸借契約を民法の規定に沿ってみて確認してみました。とりあえずまとめてみたいと思います。

①賃貸借契約は当事者の合意によって成立する。
②賃貸人は「使用収益させる義務」「修繕義務」「費用償還義務」を負う。
③賃借人は「賃料支払義務」「用法遵守義務」を負う。
④賃貸借契約終了の場合には賃借人は「原状回復義務」などを負う。
⑤賃貸借契約終了について期間制限は借地借家法の規定が優先される。
⑥賃貸借契約終了の1つに賃借物の全部滅失がある。
⑦賃貸借契約の債務不履行解除については「信頼関係破壊の法理」より信頼関係が破壊されている状況でなければ解除できない。

以上7点を理解しておけばとりあえず民法からみた賃貸借については大丈夫だと思います。

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

契約法について、初学者が学習しやすい本としては潮見佳男先生の『債権各論Ⅰ』をおすすめします。薄いため、最低限の知識がコンパクトにまとめられており、語り口調も丁寧語であるため、しっかり読めば理解できる流れになっています。青・黒・白と三色刷りなのでポイントも青の部分を読めばわかります。

もちろん、改正民法対応です。ぜひ読んでみてください!

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