賃貸借ってよく借地借地法も使いますよね?あれって結局いつ借地借家法をみないといけないのかわからないです。
なるほど、借地借家法を見るのは、期間制限、賃料増減額、対抗要件のときだよ。詳しく見ていこうか。
賃貸借契約の場合には借地借家法を見る必要が出てくることがあります。そのため、民法での賃貸借の学習をややこしいと感じてしまう人が多いです。
今回は前回の民法の賃貸借の規定を踏まえて、どういった場面では借地借家法の条文を見るのかを分かりやすく解説していこうと思います。
借地借家法のポイント
借地借家法で見るべき条文は決まっています。そのため、どの条文がよく使われるのかをしっかり理解して、場面ごとに対応していく必要があります。
借地借家法が使われる場面、使われる条文・効果について一つずつ解説していこうと思います。
特に借地借家法は土地と建物に分けて検討していくとわかりやすいです。そして借地借家法が使われる場面は、期間制限・対抗要件・賃料増減額についてです。
ひとずつポイントを確認していきましょう。
①土地についての借地借家法の条文を理解する。
②建物についての借地借家法の条文を理解する。
それでは見ていきましょう。
土地について借地借家法
借地について借地借家法の適用場面(借地借家法2条1号)
借地借家法はすべての賃貸借に適用されるわけではありません。借地借家法2条1号の定義を見てみましょう。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 借地権 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。
借地借家法が適用されるのは建物の所有を目的とする土地の賃借権について適用されます。
つまり「建物の所有目的」が必要なわけです。建物所有目的の場合に賃貸借についての民法の規定と合わせて着地借家法を参照しないといけないことになります。
借地借家法は期間制限と対抗要件、賃料増減額の場面で主に使われます。土地についての借地借家法の条文についてみていきましょう。
借地権の存続期間(借地借家法3条・4条・5条)
建物の所有目的である借地権の期間制限は借地借家法3条・4条・5条を確認しましょう。
(借地権の存続期間)
第三条 借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。(借地権の更新後の期間)
第四条 当事者が借地契約を更新する場合においては、その期間は、更新の日から十年(借地権の設定後の最初の更新にあっては、二十年)とする。ただし、当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。(借地契約の更新請求等)
第五条 借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。
2 借地権の存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するときも、建物がある場合に限り、前項と同様とする。
3 転借地権が設定されている場合においては、転借地権者がする土地の使用の継続を借地権者がする土地の使用の継続とみなして、借地権者と借地権設定者との間について前項の規定を適用する。
つまり更新していく限り、建物を所有目的とする借地権は続いていくというわけです。
30年→20年→10年→10年→…
といった具体に更新されていきます。
更新拒絶事由(借地借家法6条)
では借地権者(貸主)はどうやってその更新の連鎖を止めることができるのか?
それは借地借家法6条を見ればわかります。
(借地契約の更新拒絶の要件)
第六条 前条の異議は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。
正当な事由が必要というわけです。逆に言えば正当な事由があれば借地契約の更新の連鎖を止めることができるというわけですね。
この正当事由の考慮要素としては、貸主と借主の土地の使用を必要とする事情が中心になってきます。
借地権の対抗要件(借地借家法10条1項)
民法上の賃貸借の問題点は「対抗要件がつけづらい」という点にありました。そこで着地借家法では賃賃貸借に対抗要件がつけやすくなっています。
建物所有目的の土地の賃貸借の対抗要件については借地借家法10条1項を見てみましょう。
(借地権の対抗力)
第十条 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
登記されている建物だけで土地の借地権についても対抗要件が備わると規定されています。
判例では他人名義での建物の登記では対抗力は認められないとされています。よって文言通り「借地権者が登記されている建物」でなければなりません。
賃料の増減額請求(借地借家法11条)
貸主・借主は状況次第では貸主に対して賃料増減額の請求をすることができます。借地借家法11条を見てみましょう。
(地代等増減請求権)
第十一条 地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
2 地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
3 地代等の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた地代等の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。
社会的状況等により賃料を貸主から増額したい場合や借主から減額したい場合が生じることは想像しやすいと思います。
この場合は賃料の増減を請求できます。さらに当事者間で協議が調わない場合には、裁判で判断してもらうことも可能というわけです。
建物について借地借家法
建物について借地借家法の適用場面
建物の賃貸借であればすべて借地借家法が適用されます!
土地の場合は「建物所有目的」である必要がありましたが、建物賃貸借の場合は限定がありません。
借地借家法は期間制限と対抗要件、賃料増減額の場面で主に使われます。建物についての借地借家法の条文についてみていきましょう。
建物の存続期間(借地借家法29条・26条)
まず建物賃貸借の期間において1年未満の場合は期間の定めのないものとなります。借地借家法29条1項を見てみましょう。
(建物賃貸借の期間)
第二十九条 期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。
2 民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百四条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。
そんため、アパートの賃貸借は2年契約・更新の場合が多いというわけです。下宿生の方は実際にそうなっていると思います。
更新については借地借家法26条を見てみましょう。
(建物賃貸借契約の更新等)
第二十六条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
2 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
3 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。
借地借家法26条1項は慎重に見る必要があります。
1年前~6か月前に更新しない旨の通知をしなかったときは、更新したものとみなされるわけです。自動更新していくわけですね。
下宿生の方は、おそらく1年6か月あたり(2年契約で6か月前)で更新のはがきが届くはずです。それをしないと貸主は自動更新で一生貸し続けることになってしまうので……。
では貸主はどうすれば賃貸借契約をやめることができるのか?次に見ていきましょう。
更新拒絶通知・解約の申入れ(借地借家法26条・27条)
更新をしない旨の通知(更新拒絶通知)をすれば貸主は賃貸借契約をやめる方向性になります。賃貸借契約期間満了により賃貸借契約が終了することになるからです。
また借地借家法27条によれば貸主は解約の申入れをすることも可能とされています。
(解約による建物賃貸借の終了)
第二十七条 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。
2 前条第二項及び第三項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。
ということは簡単に建物の賃貸借は貸主側からやめることができるというわけですね。
実はそうでもないんだ。借地借家法28条をみてみようか。
とはいっても、貸主は簡単に建物賃貸借をやめることができるわけではありません。借地借家法28条をみてみましょう。
(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
条文通りですね。更新拒絶通知や解約の申入れは正当な事由があると認められなければすることはできません。
その際の考慮要素としては、建物の貸主と借主の建物を必要とする事情が中心となるというわけです。
やっぱり土地の場合と同様で、建物賃貸借は早々に解約できないというわけですね。
建物賃貸借の対抗要件(借地借家法31条1項)
建物賃貸借の対抗要件具備方法も登記より簡単に定められてます。借地借家法31条1項です。
(建物賃貸借の対抗力)
第三十一条 建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。
建物の引渡しで対抗要件も備わるというわけです。非常に対抗要件が付けやすくなっています。
賃料の増減額請求(借地借家法32条)
最後に建物賃貸借の増減額請求についてみてみましょう。借地借家法32条になります。
(借賃増減請求権)
第三十二条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
2 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
3 建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。
建物所有目的の土地の賃貸借と同様に考えることができるわけですね。
借地借家法32条1項では、社会の情況によっては賃料を当事者で増額や減額することができるとされています。
また、当事者間で協議が調わない場合には裁判所に判断してもらうことになるというわけです。
まとめ
借地借家法の観点から賃貸借をみてきました。期間制限、対抗要件、賃料増減額請求の場面では民法での賃貸借の規定とはまた別で借地借家法の条文をみなければなりません。
また、今回は省略しましたが、建物買取請求権や造作物買取請求権、条件変更といった条文も借地借家法にはあります。これらはあまり試験にはでないので省略しましたが、詳しく知りたい方は参考書・基本書等で確認をお願いします。
読んでくださてありがとうございました。ではまた~。
参考文献
契約法について、初学者が学習しやすい本としては潮見佳男先生の『債権各論Ⅰ』をおすすめします。薄いため、最低限の知識がコンパクトにまとめられており、語り口調も丁寧語であるため、しっかり読めば理解できる流れになっています。青・黒・白と三色刷りなのでポイントも青の部分を読めばわかります。
もちろん、改正民法対応です。ぜひ読んでみてください!