抵当権者の抵当権の侵害による物権的請求権をわかりやすく解説してみた【物権法その13】

民法

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法上向
法上向

抵当権が侵害されようとしているとき、抵当権者は何を主張できると思う?

んー、抵当権って交換価値しか把握してませんでしたよね?ということは何も請求できないんじゃ……。

法上向
法上向

けど、それじゃあ抵当権者は黙って侵害されているのを見ておくしかできなくなるな。被担保債権の回収もできなくなるかもしれないぞ。

そっか、だから抵当権が侵害されたときの物権的請求権があるんですね。

抵当権は不動産の交換価値を把握しているにすぎず、不動産の所有権は抵当権設定者側にあります。

すなわち、不動産をどう使おうが、基本的には抵当権者は何もできないということです。

しかしながら、抵当権者が抵当権侵害を黙って見過ごすしかできないのは不合理です。そこで、判例・通説では、抵当権者による物権的請求権が認められています。

今回はそんな、抵当権者による抵当権に基づく物権的請求権をみていきましょう!

抵当権に基づく物権的請求権のポイント

まずは場面を押さえることが大事です。どのような場面で抵当権に基づく物権的請求権が出てくるのかしっかり理解する必要があります。

その次に、侵害行為として①分離・搬出による場合と②占有による場合の2つあることを押さえましょう。

それぞれ論点化しているので、体系的にマスターする必要があります。

①抵当権に基づく物権的請求権の場面を理解する。

②抵当権が分離・搬出によって侵害される場合の処理を理解する。

③抵当権が占有によって侵害される場合の処理を理解する。

抵当権に基づく物権的請求権の場面

抵当権に基づく物権的請求はなぜ必要なのか?

抵当権に基づく物権的請求権を用いる場合を確認してみましょう。

毎度おなじみ抵当権の図は以下のとおりです。

さて、不動産が占有されたり、抵当権の効力が及ぶ付加一体物が搬出されたりなど、様々な方法で抵当権の実行に支障が生じることがあります。

この場合、抵当権が侵害されている、という状態になるわけです。

抵当権が侵害されている場合に最初に対処しないといけないのは抵当権設定者であり、抵当権者ではありません

というのも、抵当権は抵当不動産の交換価値を把握するだけであり、抵当権者は抵当不動産の所有権をもたないからです。抵当権設定者に抵当不動産の所有権があります。

そのため、抵当不動産に何らかの支障(不法占有等)がある場合には抵当権設定者がまずは対処すべきなのです。所有権に基づく物権的請求権をすることになります。

しかしながら、抵当権設定者自身が抵当権を侵害している場合や、抵当権設定者がやる気がない場合、抵当権設定者が行方不明の場合には、そのような抵当権設定者からの所有権に基づく物権的請求は期待できません

よって、抵当権者による物権的請求権が認められる、というわけですね。

抵当権者による物権的請求権が認められなければ、抵当権者はただ黙って侵害されているのを見ているしかなく、かわいそうですからね!

抵当権に基づく物権的請求権の種類

所有権に基づく物権的請求権の種類は3種類、返還請求権、妨害排除請求権、妨害予防請求権がありました。

>>>所有権に基づく物権的請求権のわかりやすい解説【物権法その2】

抵当権に基づく物権的請求権にも3種類あります。同じく、返還請求権と妨害排除請求権と妨害予防請求権です。

ただし、注意してほしいのは、返還請求権についてです。

抵当権者が抵当権に基づく返還請求権をした場合、その物は誰に返すべきだと思いますか?

ここで、

抵当権設定者!

と答えられた方は抵当権についてしっかり理解できています!

抵当権者へ返すのではなく抵当権設定者へ返すのが原則なのです。

というのも、抵当権は抵当不動産の交換価値しか把握しなく、抵当不動産の所有権は抵当権設定者にあります。

そのため、第三者が抵当不動産を侵害している場合などに、抵当権者が抵当権に基づく返還請求権をすると、原則として、当該抵当不動産は抵当権者ではなく所有者である抵当権設定者へ返すことになります

抵当権の侵害

では、抵当権に基づく物権的請求権の根拠となる抵当権の侵害はどのようなものなのか?一般論を押さえておきましょう。

抵当権の性質の記事でも述べた通り、

抵当権は抵当不動産の交換価値を把握するだけなので、抵当権設定者は自由に抵当不動産を使用収益することができます

したがって、抵当権の侵害になるのは、この使用収益の範疇を超えるような場合です。

抵当不動産の通常の使用・収益の範囲を超えて不動産の価値を下げるような行為は抵当権侵害になる

というわけですね。

多いのは、①抵当不動産の付加一体物の分離・搬出②第三者の占有です。

この2つの場面について詳しくみていきます。

侵害①:抵当不動産の付加一体物の分離・搬出

付加一体物(370条)

まずは抵当権の効力の及ぶ範囲の復習です。

民法370条を見ると、付加一体物について、抵当権の効力が及ぶことがわかります。

(抵当権の効力の及ぶ範囲)
第三百七十条
 抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び債務者の行為について第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合は、この限りでない。

そして、付加一体物とは、物理的一体性・経済的一体性のことを指し、付合物や従物も含まれました。

>>>付加一体物について詳しい解説【物権法その11】

通常の使用収益の範囲は大丈夫

たとえば、土地に抵当権が設定された場合を考えてみてください。

この場合、土地に定着物として木が植えられていたとします。この木を通常の土地の利用として分離・搬出する程度であれば、抵当権侵害にはあたりません。

抵当権設定者は抵当不動産につき、通常の使用収益は可能だからです。

通常の使用収益を超える行為は侵害にあたる

しかしながら、土地の全部の木々を伐採・搬出するような、抵当不動産の通常の使用収益を超えるものについては、抵当権侵害行為にあたります。

この場合、抵当権者は、抵当権に基づく返還請求権として、搬出された木々を抵当不動産である土地に戻すように請求できます(先ほども述べた通り、抵当権者に返すわけではないことに注意が必要です)。

論点:第三者が登場した場合

ここまでは簡単だったのですが、さらに深入りしてみましょう。

木々の搬出において、第三者がいた場合、第三者と抵当権者による物権的請求権、どちらが勝つのでしょうか。

いわゆる、対抗問題です。

まず、最初に抵当権の場面を押さえます。

付加一体物に抵当権の効力が及んでいます。このとき、抵当権設定者は通常の使用・収益を超える程度の伐採を行いました

その後、抵当権設定者は木々を土地から運びだします。

その後、抵当権設定者と第三者が木々について取引をします。

この第三者と抵当権者による物権的請求権のどちらが勝利するか、という論点があるというわけです。

この考え方にはいろいろな学説があり、判例はまだ存在しません。

そこで通説に限って説明しようと思います。

まず、付加一体物に抵当権の効力が及んでいるかどうかは、抵当不動産に存在していることで示されていると考えます

すなわち、

このように、不動産の中に付加一体物がある状態(土地に伐採された木が存在するような状態)であれば、一般人の目からみて、この付加一体物(木)に抵当権の効力が及んでいることがわかると考えるわけです。

しかしながら、一旦、抵当不動産から分離され運搬され、抵当不動産の範囲から外に出されると、一般人の目からはその付加一体物に抵当権の効力が及んでいるかどうかはわからなくなります

上図の付加一体物について、抵当権の効力が及んでいることが公示されていないというわけです(抵当不動産の範囲から外に出ているため)。

その後現れた第三者は、当該付加一体物に抵当権の効力が及んでいることがわかりません(抵当不動産の範囲から外に出ているため)。

そのため、抵当権者が

実は、それ、抵当権の効力が及んでいたんだよねー。返して!

と主張しても、第三者は「そんなの知らないよ!抵当不動産上になかったんだし」と反論することができます。

したがって、抵当権者は第三者に負けるというわけです。

以上をまとめると、

抵当不動産の範囲内にあれば抵当権者が勝つが、範囲外にあれば第三者が勝つ

ということになります。

侵害②:占有による侵害

不法占有者による侵害

続いて、抵当不動産が占有されることによる抵当権侵害を考えてみましょう。

まずは不法占有者の場合です。

何者かが抵当不動産に勝手に住み始めたとします。

これに対して、抵当権設定者は、所有権に基づく返還請求権(占有による妨害なので妨害排除ではない!)を行使することができます。

しかし抵当権設定者が行方不明であったり、やる気がなかったりすると、そのような行使は期待できません。

ここで、抵当権者の出番です。

判例では、

抵当不動産の交換価値が妨げられ、抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるとき

に抵当権侵害があり、抵当権者による抵当権に基づく物権的請求ができるとされています。

この判例の文言はしっかり暗記しておきたいところです。

正当な権原のある占有者

では、正当な権原のある占有者の場合はどうなるのでしょうか。

たとえば、抵当不動産について抵当権設定者が第三者に対して賃貸借した場合を考えてみましょう。

この場合、第三者が不法占有者ではなく、賃借権という正当な権原のある占有者です。

そのため、基本的に抵当権設定者も抵当権者も第三者に対して何も言えません。

しかしながら、暴力団員に対して抵当権設定者が賃貸借契約を結ぶなど、抵当不動産の妨害目的でなされることがあります。このような場合は、通常の使用収益の範囲を超えますので、抵当権に基づく物権的請求権ができるというわけです。

判例では、主観的要件と客観的要件に分けて言及しています。

㋐占有権原の設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ、
㋑占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるとき

は前述の不法占有者の場合と同様です。に加えて、正当な権原のある占有者の場合には、という主観的要件が追加されることになるというわけです。

この㋐㋑も暗記しちゃいましょう。

抵当権者への明渡し

何度も言う通り、抵当権に基づく物権的請求権はあくまで、抵当権設定者に対しての引渡し(明渡し)を求めているものでした。

しかしながら、抵当権設定者と第三者がグルになっている消すや抵当権設定者が行方不明のケース、抵当権設定者がお金に困っていて不動産を管理できないケースなどもあります。

このような場合にも、抵当権設定者に返すとなると、しっかり抵当権が守られる保障がありません。

そのため、例外的に、抵当権者に対して明渡すよう求めることも認められています

判例は、

㋒所有者に抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合

抵当権者への明渡も認められているとしました。抵当権設定者が行方不明のような場合や、第三者のいいなりになっているような場合ですね。

すなわち、正当な権原のある第三者の占有する不動産が抵当権侵害行為にあたり、抵当権者自身に明渡してほしい場合には

㋐占有権原の設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ、
㋑占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があり
㋒所有者(抵当権設定者)に抵当不動産を適切に維持管理することができない場合

という3要件が必要になってくるというわけです。

まとめ

以上をまとめると、このような図になります。

これらは完全に暗記してしまいましょう。

どんどん要件が加重されていくのも面白いですね!

まとめ

以上、抵当権者による物権的請求権をみてきました。いかがだったでしょうか。

とりあえず押さえるべきは

抵当権の妨害パターンとしては

①付加一体物の分離・搬出パターン
②占有パターン

の2種類あるということです。

の場合、第三者と抵当権者の対抗問題が論点となりますが、それは抵当不動産内にあるか否かで判断します。

の場合、下図の要件を満たすかで判断します。

こうして、抵当権者による物権的請求権が可能かどうかを考えることができるというわけです。こうみてみると案外わかりやすく思えるのではないでしょうか。

解説は以上になります。読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

担保物権についてわかりやすい解説は、はじめての法でおなじみストゥディアシリーズです。

これを超える担保物権の基本書はないと思います。三色刷り+事例問題が豊富なので、楽しく担保物権を学習できるはずです。

初学者の方はまずはこの本から読んでみてください!

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