金銭債権って債権総論の範囲ですよね?何が論点なんでしょうか?
ぶっちゃけた話、金銭債権自体はあまり問題として出題されないね。さらに消費貸借契約(債権各論)を学んでからじゃないとあまりイメージもわかないだろう。
ここでは金銭債権の特徴について軽くまとめる感じにしよう。
債権総論で学習する金銭債権の部分は、あまり問題として出題されることがありません。というもの金銭債権自体を問題にすることは少なく、利息等も解答の範囲から外される場合が多いからです。
そのため、今回は債権総論で出てくる金銭債権の分野をざっと確認することを第一に、予習や復習が簡単にしやすいように書いていこうと思います。
金銭債権のポイント
金銭債権と一口にいっても、代金債権や貸金債権、損害賠償債権といったようにいろいろな種類があります。それらをまとめて金銭債権と言っているだけです。
まずは金銭債権の特徴を押さえます。そしてよく出てくる利息債権との関係性を押さえたのち、遅延損害金や法定利率についての考え方を理解していけるような作りにしようと思います。
①金銭債権の特徴を押さえる。
②利息債権について理解する。
③遅延損害金について知る。
④法定利率について知る。
それでは見ていきましょう。
金銭債権の特徴
金銭債権は民法402条
金銭債権についてまずは民法での規定を探してみます。民法402条が金銭債権についての規定です。
(金銭債権)
第四百二条 債権の目的物が金銭であるときは、債務者は、その選択に従い、各種の通貨で弁済をすることができる。ただし、特定の種類の通貨の給付を債権の目的としたときは、この限りでない。
2 債権の目的物である特定の種類の通貨が弁済期に強制通用の効力を失っているときは、債務者は、他の通貨で弁済をしなければならない。
3 前二項の規定は、外国の通貨の給付を債権の目的とした場合について準用する。
ところが、ぶっちゃけた話、
この金銭債権についての規定である民法402条は使いません。これは各種の通貨を問題にしていますが、日本円の場合が99%であり、他の特別な通貨の目的にするような変な問題は出題されないからです。
当たり前の前提すぎて、「日本円で400万円の売買契約を結んだ」とすらもかかれません。よほど問題文で記載されていない限り、民法402条は使わないと考えておいた方がよいでしょう。
そのうえで、金銭債権の特徴を考えてみます。
金銭債権は履行不能にはならない
民法402条の規定ぶりや、金銭債権というお金の引渡しを目的としている点からもわかるように、金銭債権は種類債権に似ています。とはいえ種類債権よりもさらに幅の広い概念(とりあえずお金が渡ればよい。お金の種類すら特定していない概念)といえます。
「このお金(目の前の特別な通貨)を引き渡さないとダメ!」という債権ではないことが明らかだからです。
もし「この目の前の特別な通貨じゃないとダメ!」というような債権の場合には種類債権として取り扱われます。
このように金銭債権は「とりあえず額だけそろっていれば、どのような硬貨であれ、どのような枚数であれよい」というのが基本的です。
すると金銭債権は履行不能にはならないということがわかります。他から代替的に持ってこれるからです。さらにいうと、債務者にお金がないということも履行不能にはなりません。
それほど金銭債権というのは強力で、一生ついてくるものなのです。
物の引渡しを目的とする債権は、特定物債権の場合、物がなくなったりしたら履行不能になるよね。
そうだね。その場合は損害賠償請求権として債権者は債務者に追及することになるんだ。
そうか、損害賠償請求権は金銭債権だよね。金銭債権に履行不能はないから、目的物引渡請求権が金銭債権に代わることで、ほぼ確実に債権者は責任を追及していけるというわけだね。
金銭債権は履行不能にならないため、払うまで永遠についてきます。皆さんも金銭債権の債務不履行はしないようにしましょう。もちろん目的物の引渡しの債権でも履行不能になると損害賠償請求権=金銭債権になるので、そもそも履行不能や債務不履行はよくないということですよ!
利息債権の性質
金銭債権は元本債権と利息債権に分けることができます。100万円貸して1年ごとに10%の利息を付けるような場合、100万円が元本で年10万円プラスではらうのが利息ですね。
このような場合、元本債権と利息債権は区別されます。同じものとしてひとくくりには扱われないということです。
訴訟での請求の際にも別に要件立てて書かれるのが普通です。
さらに利息債権は2つに分かれます。基本権たる利息債権と支分権たる利息債権です。
この用語が重要ではなく、考え方を学びましょう。
基本権たる利息債権とは、利息を発生させる債権(まだ発生していない利息についての債権)のことを言います。基本権たる利息債権には附従性・随伴性があるとされています。
一方、支分権たる利息債権とは、発生した利息についての債権のことを言います。支分権たる利息債権には附従性・随伴性はありません。
附従性や随伴性って何?結局基本権たる利息債権と支分権たる利息債権って何?
となると思います。私自身も学習したときはよくわかりませんでした。そのため、以下の例を覚えておきましょう。以下の例の内容を理解できてれば、別に用語や性質を覚える必要はありません。
元本100万円、利息年10%でお金を貸したとする。1年後、この金銭債権を、債権者は第三者に譲渡した。この場合、どういう関係になるか?
結論をいいますと、
この場合、まだ発生していない将来の利息債権(基本権たる利息債権)+元本100万円(元本債権)は第三者に移転し、すでに発生している1年分の利息債権(支分権たる利息債権)の10万円は第三者に移転することになります。
このように支分権たる利息債権には随伴性がないため、移転しないというわけです。
附従性も同様に考えられます。支分権たる利息債権は、元本債権が消滅しても消滅しないというわけです。これは深く考えるまでもなく当たり前のことということがわかります。
遅延損害金は民法419条
実務で非常によく出てくるのは遅延損害金です。この概念は覚えておきましょう。
金銭債権では、特に当事者間で取り決めをしていなくても履行期に遅れれば遅延損害金が発生します。遅れた罰としてのお金です。
規定は民法419条にあります。
(金銭債務の特則)
第四百十九条 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
3 第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。
金銭債権は時間が大事!遅れると遅延損害金が発生する!という点を理解しておきましょう。
改正法で大きく変わった法定利率
最後に法定利率について書きます。
法定利率は利息債権や遅延損害金についての利率として機能するものです。もちろん、当事者間で法定利率以上の利率にしている場合(約定利率)には違法なものでない限り、約定利率が適用されます。
何も取り決めをしていない場合の利率が法定利率というわけです。
規定は民法404条です。
(法定利率)
第四百四条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
2 法定利率は、年三パーセントとする。
3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。
4 各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。
5 前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の六年前の年の一月から前々年の十二月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が一年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を六十で除して計算した割合(その割合に〇・一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。
これをこまやかに理解しておく必要はありません。とりあえず押さえておくべきは、法定利率は基本的に3%であること。社会の情勢によって今後変化していくことです。
これを緩やかな変動制と言われたりします。
とりあえず当分は3%なので、特に気にしなくて大丈夫でしょう。ただし改正前は5%固定であったので、改正によってかなり変わった部分といえます。
まとめ
以上、金銭債権をみてきました。金銭債権はあまり出題されない分野ですのでとりあえず押さえてほしい点のみを抽出しました。
それでも必要な知識だけほしい!という方は以下の2点だけをとりあえずは押さえておけばいいと思います。
①金銭債権は履行不能にならない。債務者の資力がなくても履行不能にはならない。
②履行期に遅れると遅延損害金が発生する。
読んでくださってありがとうございました。ではまた~。
参考文献
債権総論では初学者にもおすすめのとてもわかりやすい基本書があります。有斐閣ストゥディアの債権総論です。
改正民法に完全対応ですし、事例や図解、章ごとのまとめもあるのでとてもわかりやすい基本書になっています。ぜひ読んでみてください。