さて、いよいよ物権法の最初のボス「物権変動」に入っていくぞ!
物権変動ってよくわかんないんですよね?何が何だか。
実は物権変動は基本書等ではわかりにくく書かれているだけで、要点は簡単なんだ!
今回はわかりやすさ第一で不動産物権変動について、まずは概括的に解説していくよ!
物権法の3大ボスは「物権変動」「抵当権」「譲渡担保」です。そのうちの「物権変動」は別名「対抗問題」とも呼ばれ、物権で誰が優先するか?を考える分野です。
物権変動は基本書等ではわかりづらくかかれています。というもの、学説が混迷している部分があり、結局どう考えればよいのか、見えにくくなっているからです。
今回は判例中心かつわかりやすさ第1で「物権変動」について解説していこうと思います。まずは不動産からです。
不動産物権変動のポイント
物権変動のポイントとして、まず押さえたいのは
二重譲渡
の考え方です。二重譲渡を制するものは物権変動を制します。
二重譲渡で誰が所有権を取得するのか?
これを考えるのが物権変動の基本といえるでしょう。
これを考える際に、「登記」や「第三者」の概念が重要になってきます。
①登記について理解する。
②民法177条の「第三者」について理解する。
③二重譲渡の考え方を押さえる。
それでは見ていきましょう。
登記とは何か?不動産の第三者対抗要件
登記は不動産の証明書
まず、不動産の物権変動を考えるにあたって、絶対に理解しておきたいのは
登記
です。
登記とは、わかりやすくいえば、不動産の証明書のことです。
不動産が譲渡されたら「譲渡された」という記載が、抵当権が設定されたら「抵当権が設定された」とという記載が残り、他の人が見ても、不動産がどういう状態にあるのかを知れるようになっています。
いわば、不動産の状態を示す証明書というわけです。
登記は不動産とともにある
さて、この登記は不動産の物権変動では非常に重要になってきます。
なぜなら、
不動産の登記は、第三者対抗要件になるからです。
第三者対抗要件??なんですか?それは!
突然出てきて驚いたよね。第三者対抗要件をわかりやすくいうと、第三者に主張できるようになる根拠のことだよ。
不動産(家、土地など)は動産と異なり、誰にどのような権利があるのか見えにくいものです。たとえば、あなたの隣の家を想像してみてください。
この家の所有者が誰かわかりますか?
え?隣の家の人でしょ?
本当にそうかな?隣の家に住んでる人が所有者とは限らないんじゃない?たとえば誰かに貸してもらってるかもしれないでしょ。
このように、不動産(家、土地など)はぱっと見ただけでは誰に権利があるのかがわからないのです。
その時に登場するのが
登記
です。
登記があれば、その不動産にどのような権利があるのかが明確に、しかも公的な文書として記録されます。これによって誰でも、その不動産にある権利を知ることができるというわけです。
その不動産の所有者の視点からすれば、登記に記録することで、不動産の権利を対外的に主張できるようになる=第三者対抗要件となる、ということになるわけです。
不動産において、譲渡など権利が生じる場合には登記を必ずすべきなんだ!
登記をして初めて、権利が明確化するからですね!
不動産の譲渡など、不動産に何かしらの権利が発生する場合には必ず登記をする必要があります。登記をしなければ、対外的に権利が明確化せず、第三者に不動産の権利についての主張ができなくなるからです。
不動産の譲渡の時には登記移転をすべき
という大原則をまずは押さえましょう!
民法177条の「第三者」
二重譲渡の場面
不動産物権変動を理解するにあたって、二重譲渡の場面を中心に考えていきます。
Aが不動産をもっていたところ、B及びCに売買してしまった場面を想定してください。そして、Aは第二譲受人であるCへ登記を移転してしまいました。
この場合に、BがCに対して、不動産の所有権があるから返還せよ(物権的請求権、その中でも返還請求権)という主張をできるでしょうか。
もっとわかりやすくいえば、Bさん VS Cさんの状況でどちらが勝つのでしょうか?
このような二重譲渡の場面が、不動産物権変動の中心となります。
民法177条
さて、上で見た通り、不動産について、登記をしなければ第三者に主張できないですよ!ということは、民法177条に記されています。ここではじめて、物権法の条文が登場です。
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
わかりやすく翻訳すると、
不動産の物権変動は、登記がなければ、第三者に対抗できない
という意味です。
これに基づけば、不動産の登記がないBはCに対して、不動産の所有権が、AからBに移転したことを主張できないCさんの勝ちということになりそうですね!
第三者の意味
ここでふと、Cって「第三者」(民法177条)かな?と気になった人は、かなり民法の才能があります(とはいえ、気にならなかったとしても全然大丈夫です。普通気にならないので笑)。
実は、Cが「第三者」かどうかが非常に重要な論点になります!!
「第三者」と一口にいっても、世の中にはいろいろな人たちがいますよね。
不動産の物権変動をして登記をしていなかったら、
親にも主張できないの?犯罪者にも主張できないの?悪意者(知っていた人)にも主張できないの?
といったいろいろな疑問がわいてくるはずです。
では「第三者」の定義をお教えしましょう!
「第三者」(民法177条)とは、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者
です。この文言は完全に暗記してください。
つまり、
Cが登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者かどうか
が問題になってくるわけです。
もっとわかりやすくいえば、
「第三者」とは、当事者及び包括承継人以外の者で、登記について主張してもよいと言えるくらいちゃんとした人
といえます。
すなわち、Cが当事者や包括承継人以外の者でちゃんとした者であればCの勝ち、Cが当事者や包括承継人またはちゃんとしていない者であればBの勝ち
ということです。
そのため、Cが不法行為者であったり、相続人(=包括承継人)は登記について主張できないということになります。
では、Cが、AB売買を知っていた者=悪意者はどうなるのでしょうか?
この点、判例は、悪意者だけであれば、Cの勝ち(Bの負け)だが、背信的悪意者の場合にはBの勝ち(Cの負け)としています。
背信的悪意者とは、知っている(悪意)だけではなく、背信性(信義則上悪いこと)まで持っている者のことです。
たとえば、Bの嫌がらせのためにAC売買を締結した者などですね。
この場合はCは信義則上、保護すべきではないので、Bの勝ち=Bは不動産の所有権をCに対して主張できることになります。
なんで悪意者だけの場合にはCが勝つのかが納得できないです。
たしかに疑問に思うところだよね。実は二重譲渡は自由競争原理とかかわっているんだ。
悪意者(AB売買を知っていただけの人)はただ自分の利益を得たいがために取引をしている場合だよ。
Cが、「たしかにBに売っているのはわかりました。けれど、私はより高値で買取ましょう。なので私に売ってください」ということでAC売買を締結することは、自由競争の観点からすればオッケーとされているんだね。
だから、単なる悪意者の場合にはCは保護されるのさ。
ただし、前述のとおり、背信的悪意者は、Bを妨害するために取引をしているわけだから、自由競争とは関係のない、悪い奴ってことで、保護しないんだな。
民法177条の「第三者」として、悪意者は保護されるが、背信的悪意者は保護されないという点はしっかり押さえていきましょう!
まとめ
以上のまとめとして、もう一度二重譲渡の場面を考えてみましょう。
二重譲渡の場面で、第一譲受人であるBは第二譲受人であるCに対して不動産の所有権を主張できるか?が問題になるのでした。
すなわち、Bさん VS Cさんでどちらが勝つか?という話です。
この場合、原則としては民法177条より登記がなければ第三者に対抗できません(主張できない)。そのため、登記のないBは負けます。
ただし、Cが、当事者、包括承継人、登記の欠缺を主張する正当な利益を有しない者である場合はCは「第三者」には当たりませんので、Bは主張できるということになります。
ここでいう、登記の欠缺を主張する正当な利益を有しない者について、悪意者は含まれませんが、背信的悪意者は含まれます。
すなわち、
Cが、当事者、包括承継人(相続人など)、背信的悪意者
である場合には、Cは「第三者」にはあたらず、Bに負ける=Bは不動産所有権をCに対して主張できるというわけです。
①二重譲渡の場面をみたら、第一譲受人VS第二譲受人のバトルものと考える。
②第二譲受人が「第三者」かどうか=当事者、包括承継人、背信的悪意者ではないかを検討する。
この2点に注意するとわかりやすいと理解しやすいですね。
解説は以上です。これからも一緒に頑張りましょう。
参考文献
物権法のわかりやすい基本書としては佐久間先生のものをお勧めします。
事例付で詳しく解説されているので、初学者の方には特におすすめです。