改正対応!詐害行為取消権の要件をわかりやすく整理【債権総論その8】

詐害行為取消権の要件民法

債権者代位権は前回の記事で学習しました!その次の詐害行為取消権もよくわからないんですよね。

法上向
法上向

詐害行為取消権は債権総論の中でも難問の1つだね。特に詐害行為取消権は改正で大きく変わったから、条文にそってしっかり理解していこう。

詐害行為取消権は債権総論の中の難問の1つです。条文が多く、どの場合にどの条文を使うのか、その場合の要件は何か?、効果はどうなるのか?といった様々な問題があります。

今回はそんな詐害行為取消権を要件編と効果編に分け、要件編、つまり要件事実に絞って解説していこうと思います。効果編については次回の記事で書く予定です。

要件事実を押さえなければ詐害行為取消権の主張はできません。要件をただ暗記するのではなく、しっかり理解できるような書き方をできればいいなー、と思います。

詐害行為取消権のポイント

まず、詐害行為取消権とはどういったものなのかをざっくり押さえておく必要があります。

その次に、詐害行為取消権の要件について条文に沿って押さえていきましょう。詐害行為取消権は条文が豊富なので、違いを意識しつつしっかり理解していく必要があります。

最後に転得者に対する詐害行為取消権について確認します。

①詐害行為取消権とは何か?を理解する。
②詐害行為取消権の適用場面を理解する。
③詐害行為取消権の要件を条文に沿って導き出せるようになる。
④転得者に対する詐害行為取消権を理解する。

それではみていきましょう。

詐害行為取消権とは何か?

詐害行為取消権は債権者VS受益者の訴訟

詐害行為取消権の登場人物は、債権者債務者受益者、たまに転得者です。債務者が受益者に対して行う行為が債権者にとって詐害性のあるものである場合には、債権者は受益者に対して、詐害行為を取り消すことができます

これを詐害行為取消権と呼ぶわけです。

重要なのは、詐害行為取消権は債権者VS受益者との間の「訴訟」であるという点です。裁判によらなければ詐害行為取消権を行使することはできません。債権者代位権は訴訟でなくても行使できたのですが、詐害行為取消権の場合は、行使したい場合は債権者は裁判所に訴える必要があるのです。

その場合の訴訟は、債権者VS債務者ではなく、債権者VS受益者です。受益者が巻き添えを食っているというわけです。そのため、要件も厳しくなっています。

詐害行為取消権の趣旨は債務者の責任財産の保全

債権者代位権で学習した趣旨とほとんど同じです。困窮した債務者は債権の強制執行から逃れるために、あるいは嫌がらせのために、自身の財産を別の第三者に譲渡したりといろいろなことをします。

そのような妨害行為、詐害行為を許してしまうと、どんどん債務者の財産がなくなっていき、債権者が損をする結果になります。

よって債権者は債務者の詐害行為を止めるために、詐害行為取消権を用いて、債務者の責任財産を保全しようとするわけです。

先ほど説明した通り、詐害行為取消権はあくまで債権者VS受益者の訴訟なので、受益者は巻き添えをくっているわけになるのです。そのため、要件では受益者の悪意が必要となっています。受益者が善意であれば「なんで俺が責任を問わされるんや!」となりますからね。

詐害行為取消権を図で理解

以上をまとめて、詐害行為取消権がどのような場面で使われるのかを図をみて復習してみましょう。

詐害行為取消権

繰り返しになりますが、詐害行為取消権はあくまで債権者と受益者との間での話であるという点を理解するようにしてください。

さらに裁判でなければ行使できないので、詐害行為取消権を使いたい場合には債権者は受益者を訴えることになります。

詐害行為取消権の要件(民法424条)

詐害行為取消権の基本は民法424条

さて、詐害行為取消権の要件について押さえていきましょう。基本となるのは民法424条です。

(詐害行為取消請求)
第四百二十四条 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
2 前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない
3 債権者は、その債権が第一項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる
4 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない

主張立証を考えると、ただし書や2~4項は相手方からの反論(抗弁)となりますが、とりあえず最初に詐害行為取消権を学ぶ際には、裁判所の立場になって、どのような要件が充足すれば詐害行為取消権が認められるかを考えるとわかりやすいです。

そのため、詐害行為取消権が認められるために必要な要件を列挙してみます。

〈詐害行為取消権(民法424条)の要件〉
①詐害性(民法424条1項)
②無資力

③詐害意思(民法424条1項)
④財産権を目的とする行為(民法424条2項)
⑤被保全債権が詐害行為前の原因に基づいて生じたものであること(民法424条3項)
⑥被保全債権が強制執行により実現できるものであること(民法424条4項)
⑦受益者の悪意(民法424条1項)

特に問題となるのは、①詐害性②無資力③詐害意思⑦受益者の悪意です。④~⑥は基本的に試験問題で出題される場合には認められているでしょう。

よって、詐害行為取消権の適用場面では①②③⑦を意識して、逐一確認していくことになります。

以下でも①②③⑦に絞って要件を解説していきます。

①詐害性

まず、詐害行為取消権なので、債務者と受益者の間の行為が詐害行為である必要があります。

民法424条では「債務者が債権者を害することを知ってした行為」となっていますが、その前提として当該行為が詐害行為である必要があるというわけです。

詐害性とは、責任財産を減少させて債権を回収できなくすることです。逆に言えば当該行為を行っても債務者に十分な資力があり債権者が債権を回収できるのであれば、詐害性はないことになります。

つまり、行為時に無資力であれば詐害性が認められるというわけです。

②無資力

判例によれば、詐害行為取消権の行使のためには、詐害性のほかに債務者が無資力である必要があるとされています。詐害行為取消権は債務者の責任財産保全を目的とするものであることを考えればおのずと理解できますね。

さらに無資力要件は事実審の口頭弁論終結時を基準として判断するとされています。

詐害行為取消権は債権者VS受益者の訴訟でした。その訴訟において、債務者が本当に無資力であるかどうかは口頭弁論終結時に判断されるというわけです。

①詐害性を踏まえると、

詐害行為時に無資力であること(①詐害性)
口頭弁論終結時に無資力であること(②無資力)

の2つが必要になるというわけです。

詐害行為時に無資力でなければ(債務者に十分な財産があれば)、詐害性の要件を満たさないことになり

口頭弁論終結時に無資力でなければ、無資力要件を満たさないことになる

というわけですね。

③詐害意思

詐害意思は、条文どおり「債務者が債権者を害することを知ってした」かどうか、債務者の悪意を考えることになります。

ここでの立証責任は債権者にあるので、債権者が債務者の悪意を立証するというわけです。他人の悪意を立証することに違和感を感じるかもしれませんが、それほど詐害行為取消権は限定的というわけです。

この詐害意思は、一般的に「害意」までは必要ありません。債権者を害することを認識していればよいです。

この行為をしちゃうと、債権者に迷惑をかけるかもしれないなー」という程度でよいというわけですね。

⑦受益者の悪意

受益者の悪意は民法424条1項ただし書なので、立証責任は受益者の側にあります。

債権者が詐害行為取消しの主張をしてきた場合に、被告となる受益者は「いや、俺知らなかったから」といって反論するわけです。

よく見落とす要件ですが、詐害行為取消権の場合にはしっかりこの要件も意識するようにしましょう。

詐害行為取消権の特則

民法改正によって詐害行為取消権が類型に分かれて特則が設けられました。特則に当たる場合には特則の場合が適用されます。

これらは条文が長いわりに試験問題として出題されることは少ないため、条文から要件を導き出せれば大丈夫でしょう。

また、これらの特則は民法424条の詐害行為の基本的な要件に加重されて必要とされる要件です。そのため、民法424条の要件も満たしている必要があります

とはいっても、民法424条の主要な要件①②③⑦は特則の要件を満たせば満たされることになるので、この点をあまり深く考えなくてもよいことになります。

とりあえず、特則が使える場合には特則を使い、要件を確認する+民法424条が前提になっていることを忘れない、というスタンスで行けばよいと思います。

それぞれ見ていきましょう。

相当の対価を得てした財産の処分行為の特則(民法424条の2)

第四百二十四条の二 債務者が、その有する財産を処分する行為をした場合において、受益者から相当の対価を取得しているときは、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。
一 その行為が、不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により、債務者において隠匿、無償の供与その他の債権者を害することとなる処分(以下この条において「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。
二 債務者が、その行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。
三 受益者が、その行為の当時、債務者が隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。

一般的に相当対価の処分行為の場合には詐害性や無資力要件が満たされず、詐害行為取消権は認められません。

しかし、民法424条の2の1号~3号を満たすと相当の対価を得てした財産の処分行為の場合であっても詐害行為取消権を行使することができます

よって相当対価処分の場合に詐害行為取消権を使いたい場合の要件は

①隠匿等の処分をするおそれを現に生じさせるもの
②隠匿等の処分意思
③受益者の悪意

ということになります。

特定の債権者に対する担保の供与等の特則(民法424条の3)

第四百二十四条の三 債務者がした既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為について、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、詐害行為取消請求をすることができる。
一 その行為が、債務者が支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。次項第一号において同じ。)の時に行われたものであること。
二 その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。
2 前項に規定する行為が、債務者の義務に属せず、又はその時期が債務者の義務に属しないものである場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、債権者は、同項の規定にかかわらず、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。
一 その行為が、債務者が支払不能になる前三十日以内に行われたものであること。
二 その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。

民法424条の3第1項と第2項の違いが若干わかりにくいですが、1項は履行期到来後の行為であり、2項は履行期到来前の行為と考えればわかりやすいでしょう。

要件は

〈履行期後の場合(民法424条の3第1項)〉
①支払不能
②債務者と受益者の通謀的害意

〈履行期前の場合(民法424条の3第2項)〉

①支払不能前30日以内
②債務者と受益者の通謀的害意

過大な代物弁済等の特則(民法424条の4)

第四百二十四条の四 債務者がした債務の消滅に関する行為であって、受益者の受けた給付の価額がその行為によって消滅した債務の額より過大であるものについて、第四百二十四条に規定する要件に該当するときは、債権者は、前条第一項の規定にかかわらず、その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分については、詐害行為取消請求をすることができる。

これは基本的に代物弁済の際に用いる規定です。

債務者の債務消滅行為(弁済など)が当該債務の額より過大である場合には、過大な部分については詐害行為取消権の基本的な規定民法424条で取り消せるというわけです。

よく勘違いされやすいのですが、過大ではない部分が取消せないわけではありません。民法424条の3第1項の要件を満たしていれば、つまり①支払不能②債務者と受益者の通謀的害意(+民法424条の要件)を充足していれば、相当部分も取り消せることになります。

民法424条の3は、債務消滅行為自体を取消すものでした。そのため、要件を満たせば相当な部分でも取り消せるわけです。ところが、民法424条の3の要件はなかなか認められにくいため、過大な場合には過大分は通常の民法424条の要件を満たせば取り消していいよ、としただけのことです。

過大な代物弁済の場合、過大部分は民法424条を用いて(民法424条の4)、相当部分は民法424条の33を用いる、ということは押さえておきましょう!

転得者に対する詐害行為取消権

転得者に対する詐害行為取消請求の場面

あまり出題されることはないと思いますが、転得者に対しても詐害行為取消権を行使することができます。この場合は債権者VS転得者の訴訟ということになります。

転得者に対する詐害行為取消請求

上図を見てもらえればなんとなくイメージがつかめるでしょう。詐害行為取消しは転得者であっても巻き添えにできるというわけです。

転得者に対する詐害行為取消権の要件

規定は民法424条の5にあります。

(転得者に対する詐害行為取消請求)
第四百二十四条の五 債権者は、受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合において、受益者に移転した財産を転得した者があるときは、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める場合に限り、その転得者に対しても、詐害行為取消請求をすることができる。
一 その転得者が受益者から転得した者である場合 その転得者が、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。
二 その転得者が他の転得者から転得した者である場合 その転得者及びその前に転得した全ての転得者が、それぞれの転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。

ポイントは民法424条の要件充足が前提にあるという点です。今まで見てきた①~⑦の要件充足性は必須となります。

それに加えて、転得者の悪意が必要になるというわけです。また転得者が複数いる場合には全転得者の悪意が必要になります(民法424条の5第2号)。

〈詐害行為取消権(民法424条)の要件〉
①詐害性(民法424条1項)
②無資力

③詐害意思(民法424条1項)
④財産権を目的とする行為(民法424条2項)
⑤被保全債権が詐害行為前の原因に基づいて生じたものであること(民法424条3項)
⑥被保全債権が強制執行により実現できるものであること(民法424条4項)
⑦受益者の悪意(民法424条1項)
⑧転得者の悪意(民法424条の5第1号/第2号)

まとめ

以上、詐害行為取消権を要件事実を中心に見てきました。詐害行為取消権は要件が複雑ですが、条文に書いてる場合はほとんどですのでそれほど気にする必要はないでしょう。

それよりも、勘違いしやすい点をしっかり間違えないようにすることが必要です。

たとえば、詐害行為取消権は債権者と受益者との間の問題であり、債務者が関わっていないという点詐害行為取消権は訴訟の中で行使されるという点などです。

次回は詐害行為取消権の行使方法や効果についてみていこうと思います。

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

債権総論では初学者にもおすすめのとてもわかりやすい基本書があります。有斐閣ストゥディアの債権総論です。

改正民法に完全対応ですし、事例や図解、章ごとのまとめもあるのでとてもわかりやすい基本書になっています。ぜひ読んでみてください。

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