わかりやすく!自白の論点を総まとめ【刑事訴訟法その14】

自白刑事訴訟法

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法上向
法上向

自白の論点で結構あるよね。

そうですね,さらに学説の対立もあってすごくわかりにくいです。

法上向
法上向

今回も判例通説に絞って,結局どう考えればいいのかをみていこうか。

自白の論点は多く,それぞれの論点で学説の対立もあります。さらに最近学説の変化もある分野でもあります。そのため,特に初学者にとっては結局どう考えればいいのか,わかりにくいです。

今回は主流の考え方(判例・通説)に沿って,自白の論点を総まとめしてみましょう。

自白のポイント

それぞれの論点ごとに解説していきますが,学説の対立は省略して,判例・通説に絞って解説していきます。他の学説が知りたい方は参考文献の基本書などを確認してみてください。

大きく分けると,論点は3つです。①違法収集証拠排除法則との関係②派生証拠③補強証拠ですね。さらに,細かい論点として,趣旨反復証拠などがあります。

これらをまとめて確認していこうと思います。

①自白法則の趣旨を押さえる。
②違法収集証拠排除の法則との関係を押さえる。
③違法な自白からの派生証拠の証拠能力について理解する。
④反復自白の考え方を理解する。
⑤補強証拠の考え方を理解する。
論点も多いため,冗長にならないように頑張ります!

自白法則の趣旨

刑事訴訟法319条1項を確認

まずは条文を確認してみましょう。

第三百十九条 強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることができない

任意性に疑いのある=不任意のものであるかもしれない自白は証拠能力がないことが規定されています。

この趣旨について学説では大きく3つが主張されています。確認してみましょう。

虚偽排除説・人権擁護説・違法排除説

不任意自白は虚偽のおそれが大きいから排除されるというのが虚偽排除説です。
不任意自白は供述の自由を侵害するから排除されるというのは人権擁護説です。
不任意自白は手続が違法であるから排除すべきというのが違法排除説です。

ご覧の通り,違法排除説違法証拠排除法則と同じような考えであることがわかります。しかし条文上は不任意である場合に排除するという規定であり手続が違法な場合とはまた別です。よってあまり支持されていません。

また虚偽排除説と人権擁護説をミックスして任意性説をとる学説もあります。これがもっとも主流です。この場合は虚偽のおそれが大きいし供述の自由の侵害でもあるから,不任意自白は証拠能力がないと考えるわけですね。

違法収集証拠排除法則の関係性

任意性説(虚偽排除説,人権擁護説)をとると,自白法則(刑事訴訟法319条1項)は違法収集証拠排除法則とはまた別のものであると考えるのが適当でしょう。これを二元説と言います。

二元説っていうのは理解できるんだけど,二元説だとどうなるのかがよくわからないです。

法上向
法上向

意外とここら辺のサポートが手薄だよね。二元説だと,違法収集証拠排除法則と自白法則は別,つまり,2つの方法で検討できるというわけなんだ。

二元説であれば,不任意自白が問題になる場合には自白法則からのアプローチと違法収集証拠排除法則からのアプローチができることになります

学説上は明文の規定がある自白法則から考えるべきだとか優先順位を設けるものもありますが,とりあえずは自白法則と違法収集証拠排除法則のどちらか好きな方を選択できると考えておくと楽でしょう。

つまり,トレーディングカードみたいに,自白法則を召喚できるし,違法収集証拠を召喚してもいい,というわけです。

作為義務

自白法則の考え方

問題となる場面

二元説の場合,自白法則と違法収集証拠排除法則とでどう考えるのか気になりますよね。

まず適用場面としては下の図のような場面になります。

手続の後に自白があり,この手続の違法性が問題になる場面です。基本的に手続に問題がある場合はそれによって得られた自白の任意性も問題になるので,違法収集証拠排除法則,自白法則の両方の側面から検討できることになります。

違法収集証拠排除法則でいく場合は手続に着目し,手続の違法の重大性・排除の相当性を検討します。詳しくは以下の記事をご覧ください。

自白法則でいく場合は,自白自体に着目し,自白が任意で行われたかどうかを検討します。

では自白法則でどのような場合が任意性に疑いのある場合となるのかを見てみましょう。

不任意とされる場合

最終的には状況次第ということになりますが,不任意自白の場面はいくつかの類型に分けることができます。

基本的に自白が出てくる手続は取調べです。
取調べで暴力が使われた場合,威圧的だった場合,欺罔手段が用いられた場合,任意取調べ余罪取調べで違法性がある場合などです。

一番難しいのが,約束による自白だと思います。約束による自白とは,自白したら不起訴にするよ,といったように自白したらそれにより被疑者が何らかの利益を得ることを告知して自白を促すパターンです。

一見,任意性があるように感じますが,これは被疑者が利益を得られることを望んで嘘の自白をしてしまう可能性があり,虚偽排除の観点から自白法則が適用できます。

餌をちらつかせて走らせる

自白法則が適用されるのは,被疑者の心理的側面に影響がある場合です。この点で手続の違法性だけをみる違法証拠排除法則とは考え方が異なるといえるでしょう。

不任意自白による派生証拠

違法証拠排除法則が適用できない場合が大きな問題

不任意自白による派生証拠の問題も,違法性排除法則と自白法則の両面から考えることができます

違法性排除法則から考えるとなると,毒樹の果実論に似た考えをとることになります。しかし,違法性排除法則には違法が重大であることという要件があるため,ハードルが高いです。

違法がそれほど重大ではないが任意性に問題がある自白を疎明証拠として令状請求され,その令状で証拠物についてはどう考えるべきでしょうか。

このような,違法性排除法則が適用できない場合の不任意自白による派生証拠がよく問題になります。

虚偽排除説からの見解

虚偽排除説からは,何もすることができません。つまり,虚偽排除説ではこの派生証拠の証拠能力を否定することはできないというわけです。

というのも,証拠物自体には虚偽である疑いはないからです。

けど,やっぱり不任意の自白は許せないよ!そこから派生した証拠物の証拠能力も否定されるべきだよ!

 

法上向
法上向

それなら人権擁護説をとるしかないね。

人権擁護説からの見解

人権擁護説は供述の自由を問題としていたので,証拠物の証拠能力を肯定してしまうと,被疑者の供述の自由が侵害されることから派生証拠物の証拠能力を否定できる可能性があります。

ではこの派生証拠物について,何を検討するのか難しい問題がありますが,不任意自白との因果性の程度や派生的証拠の重要性などを総合衡量などと学説では言われています。結局は総合衡量で派生証拠物の証拠能力を認めるか検討するというわけですね。

反復自白

続いて反復自白の問題です。反復自白とは不任意自白→任意性の疑いがない自白が行われた場合に,後半の自白の証拠能力を認めてよいのかという考えです。

普通に考えれば,不任意で行われたわけですから,自白の証拠能力は認めてよい気がします。しかし,一度不任意で自白が行われているので,被疑者としてはその影響が残っていて2度目の自白をした可能性があります。

よって,2度目の自白を検討する際には,1度目の自白の影響が取り除くような措置をとったかを検討する必要があります。たとえば,取調官を変えたり,1回目の自白から時間を長くとったり,弁護人の接見の機会設けたりしたかどうかです。

このような事情から,1回目の自白の影響を取り除くことができたといえる場合に,2回目の任意自白の証拠能力を肯定することができるとされています

補強証拠の考え方

刑事訴訟法319条2項を確認

まず刑事訴訟法319条2項を見てみます。

第三百十九条 
2 被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない
自白だけで有罪とはならない,と規定されていますね。

では逆に,自白+αで何があれば有罪にしてもいいか気になりませんか?この+αの証拠のことを補強証拠と言います。自白に加えてあれば有罪判決を出してもいいとされる証拠が補強証拠というわけです。

また非常に重要なのは,補強証拠が問題になる場合の自白は完全な自白(任意性に問題がない自白)の場合です。不任意自白の場合はそもそも補強証拠の論点は出てこないので注意しましょう。

論点の考え方

補強証拠の論点はいっぱいあります。まずはその論点の項目を覚えましょう。わかりやすい覚え方は5W1Hを考えることです。

Who(だれが)
When(いつ)
Where(どこで)
What(なにを)
Why(なぜ)
How(どのように)
ですね。これを補強証拠で考えていきますが,どれが適用できるか考えると以下の3つに絞られます。
Who(だれが):人ではないから問題にならない。
When(いつ):時間は問題にならない。
Where(どこで):どこまで補強証拠は必要か。
What(なにを):何が補強証拠になるのか。
Why(なぜ):刑訴法319条2項があるから問題になるのであり論点にはならない。
How(どのような):どの程度の補強証拠が必要となるのか。
論点がわかったところで,この3つの論点についてそれぞれ考え方を見ていきましょう。学説上の対立がありますが,判例通説の見解のみ紹介します。

どこまで補強証拠が必要か

自白に加えてどの範囲まで補強証拠が必要か問題になります。

実質説と罪体説の対立がありますが,判例は実質説に立つといわれていますので実質説に沿って解説すると,自白の真実性を担保するにたる範囲で補強証拠があればよいとされます。

また,自白の真実性を担保する範囲は主に客観的要素についてと考えられているため,客観的要素について補強証拠がある→自白の真実性を保障できる→刑訴法319条2項に反しない。という流れをとることになります。

何が補強証拠になるのか

証拠能力があることは当たり前です。補強証拠は直接証拠でも間接証拠でもよいとされています。ただし,自白から実質的に独立した証拠であることが必要!と言われています。

どの程度の補強証拠が必要か

相当説と絶対説がありますが,判例は相当説に立ち,自白と補強証拠とか相まって犯罪事実の真実性が証明されればよいとされています。

ほぼWhereのどこまで補強証拠が必要かの考え方と一緒ですね。

補強証拠のまとめ

以上をまとめると,補強証拠は真実性の担保のための独立したものであり,それと自白と相まって真実性が証明されるものであればよい,というわけです。

法上向
法上向

ポイントは有罪となる犯罪のどの部分の証拠として補強証拠が機能しているかだな。実質説だと基本的に客観的構成要件事実に証拠があればオッケーだということになるぞ。

まとめ

自白が問題となる部分についてみてきました。論点がたくさんある箇所ですが,一つひとつの考え方は学説に深入りしなければ単純です。

しっかり理解していきましょう。読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

刑事訴訟法の参考文献として「事例演習刑事訴訟法」をお勧めします。はじめての方にとっては解説が大変難しい問題集ですが,非常に勉強になるものです。また,冒頭にあります答案作成の方法について書かれた部分については,すべての法律について共通するものなのでぜひ読んでほしいです。自分も勉強したての頃にこれを読んでいれば……と公開しております。

最初は学説の部分はすっとばして問題の解答解説の部分だけを読めばわかりやすいと思います。冒頭の答案の書き方の部分だけでも読む価値はあるのでぜひ参考にしてみてください。

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