これだけは読め!請負契約の要件事実【民事実務基礎その12】

法律実務基礎科目

請負契約についての要件事実について解説されているものがほとんどありません!助けてください!

法上向
法上向

たしかに、請負契約についての要件事実を解説しているものは少ないな。しかし実は以外と請負契約の要件事実は特別なんだ!詳しく見ていこう!

請負契約の要件事実を押さえていきましょう。意外と請負契約の要件事実は単純に考えられるものではありません。特に判例の知識も必要になってくるので、民法の勉強も含まれます。

しっかり理解していましょう。

請負契約の要件事実のポイント

請負契約を押さえるうえで大事なのは、請負契約の仕組みを理解するということです。

通常の売買契約とは異なり、請負契約の権利関係は独特です。しかし契約不適合責任との関係では売買契約の理解も必要になっていきます。

そこで、まず請負契約の仕組みを理解したうえで、契約不適合責任について民法の復習もかねて軽く解説することにします。

あとは要件事実に沿って行きましょう。請負契約で押さえるべきは報酬請求権なので、報酬請求の際の訴訟物・請求の趣旨・請求原因→抗弁→再抗弁等を、契約不適合責任とも交えて解説していきます

①請負契約の仕組みを理解する。
②契約不適合責任について、追完請求・追完に代わる損害賠償請求を理解する。
③報酬請求の訴訟物・請求の趣旨・請求原因を押さえる。
④契約不適合責任の場合の抗弁を理解する。

それでは見ていきましょう!

請負契約の仕組み

請負契約は単純に考えると、

ただ仕事を完成させること(結果債務)を目的とした契約

となります。

しかし、請負人と注文者とでしっかりと権利関係を確定させてみましょう。

>>>民法の視点からみた請負契約の権利義務関係【はじめての契約法その13】

請負人の義務:仕事完成義務

請負人は請負契約により仕事完成義務を負います民法632条をみればわかりますね。

請負は結果債務です。それまでの経過(請負人の仕事の経過)に関わりなく、仕事が完成してたかしていないかで債務不履行が決まるというものです。

請負人はもちろん仕事を完成させなければいけません。仕事の多くは建物の建築でしょう。つまり家を完成させなければいけないというわけですね。

注文者の義務:報酬支払義務

一方で、注文者は請負契約により報酬支払義務を負います。これも民法632条から当然に導き出せます。

請負の権利義務の図

最後に以上をまとめて、請負の権利義務の図を簡単に書いてみます。

請負

請負契約の問題では上記のような図式を書いてみるとわかりやすいでしょう。

さらにここで仕事完成請求権は報酬支払請求権のための先履行であるという点も押さえておく必要があります

というのも、報酬は仕事の目的物の引渡しと同時に支払わなければいけないという規定があるため(民法633条)、当然の前提として仕事の完成が要求されているというわけです。

ただし、実務上は、特約によって完成前に段階を踏んで支払うことが多いので、あくまで民法の規定だけを見た話です。

とりあえず、

民法からすれば、請負契約の報酬と仕事の完成は双務関係にあり、仕事の完成が先履行

ということを押さえておけば大丈夫でしょう。

契約不適合責任

請負契約に関する訴訟で多いのが、瑕疵がある場合です。これを新民法の下では契約不適合責任として考えます。

>>>民法の視点からみた請負契約の契約不適合責任【はじめての契約法その13】

売買の契約不適合責任が準用

請負人は仕事完成義務を負いますが、この仕事完成とは「契約の内容に沿ったもの」である必要があります。もし契約の内容に沿った仕事をせず、実は不完全な状態で注文者に引き渡したとしたら、請負人は仕事完成義務を負いません。

この場合、注文者から契約不適合責任で責任追及することが可能です。特に請負の場合には建物の欠陥が後になって判明することが多いので契約不適合責任に対処することが売買よりも重要になります!

①追完請求②報酬減額請求③損害賠償④解除

を自由に選んで使うことができるというわけです。

契約不適合責任は、相手方が請負契約に基づく報酬請求をしてきた場合の抗弁になります。

たとえば追完請求であったり、追完に代わる損害賠償請求であったりを主張することで、報酬を拒むことができるわけです。

けど、ただ単に、追完請求や損害賠償請求を主張するだけだと報酬請求は拒めないよね。

法上向
法上向

そうだね。追完請求や損害賠償請求を用いて「同時履行の抗弁」や「相殺の抗弁」をすることではじめて報酬請求を拒めるんだよ!この点はあとで確認していこう!

報酬請求の訴訟物・請求の趣旨・請求原因

ではいよいよ要件事実に入っていきます。請負契約に基づく請求のほとんどは報酬請求なので、今回は報酬請求に絞って確認していきます。

報酬請求の訴訟物

ここまで「はじめての民事実務基礎シリーズ」を読んでくださっている方は、訴訟物がだいたい想像できるようになっているはずです。

請負契約に基づく報酬請求権

ですね。

報酬支払請求権でも問題はないですが、報酬請求権とするのが一般的でしょう。賃料支払請求権とせず、賃料請求権とするのと同様の議論です。なお、売買については売買代金支払請求権とするのが一般的なので混同しないようにしましょう。

報酬請求の請求の趣旨

請求の趣旨は、登記の場合以外では、いかにシンプルに書くかがポイントでした。

となると、

被告は、原告に対し、〇円支払え。

となります。

お金に関する請求はすべてこのような形になるわけです。原告は金だけもらえればいいのですから!

報酬請求の請求原因

報酬請求の請求原因はしっかりよく考える必要があります。

請負契約締結だけを主張してもダメだからです。下の図の関係性を思い出してください。

請負

仕事完成が、報酬請求の先履行でしたよね(なお、特約がある場合は特約の合意と履行期の到来を主張すれば、仕事完成前でも報酬請求できることになります)。

すると、請求原因としては、以下のように主張することになります。

〈報酬請求の請求原因〉

①請負契約の締結
②仕事の完成

→①「被告(注文者)は、原告(請負人)との間で、〇年〇月〇日、〇〇を代金〇円で請け負った。」
→②「原告は、上記〇〇を完成させた。」

ポイント:請負契約について記載する場合には、仕事の内容を代金を具体的に記載する。

報酬請求の抗弁

追完請求による同時履行の抗弁

報酬請求の抗弁として、まずは追完請求(請負の場合には修補請求ともいう)が考えられます。

欠陥住宅だったから修理しろ!

という主張です。

そして追完請求の主張だけでは報酬請求の抗弁とはなりません。この追完請求をもとに「同時履行の抗弁」を主張する必要があります。

同時履行の抗弁の要件は覚えていますか?

〈同時履行の抗弁〉
①自働債権の発生原因事実
②権利主張

でした。

よって、

①契約不適合
②修補されるまで報酬の支払を拒絶するとの権利行使

を主張することになります。契約不適合は事案に応じて具体的にテキトーに書けば大丈夫です。

追完に代わる損害賠償請求権による同時履行の抗弁

次に、追完に代わる損害賠償請求を見てみます。

どういう請求かというと、

欠陥住宅じゃないか!もういい!俺が修理する!その代わりその費用を払え!

という損害賠償請求です。

そして、この損害賠償請求を用いて、追完請求と同様に「同時履行の抗弁」を主張します。

損害賠償の要件事実は

①債務不履行②損害・額(③因果関係←自然と示されるため)

だったので、追完に代わる損害賠償請求を自働債権として同時履行の抗弁を主張する際には

〈追完に代わる損害賠償による同時履行の抗弁〉

①契約不適合
②損害・額
③同時履行の抗弁の権利主張

をすることになります。

たとえば100万円の報酬請求に対して、追完に代わる損害賠償請求の額が50万の場合、額が全然違いますよね。この場合でも同時履行の抗弁っていけるんですか??

法上向
法上向

いい質問だね。答えは「いける」だよ。

追完請求で同時履行が認められていたこととの整合性を理由にすることが多い。

追完請求権の別の姿が、追完に代わる損害賠償請求権なんだ。それにもかかわらず追完請求では同時履行の抗弁はできて、追完に代わる損害賠償請求の場合には同時履行の抗弁はできないというのでは整合性がとれないだろ?

だから、追完に代わる損害賠償請求はその額にかかわらず同時履行の抗弁として主張することができるんだ。

追完に代わる損害賠償請求を自働債権として同時履行の抗弁を主張する場合、その損害賠償の額は関係ありません。額にかかわらず、報酬請求全額について請求を拒むことができます。

追完請求の同時履行
追完請求に代わる損害賠償請求の同時履行

の整合性を保つためとよく説明されるので、理由づけも含めて覚えるとよいでしょう。

追完に代わる損害賠償請求権による相殺の抗弁

最後に追完に代わる損害賠償請求権を用いて報酬請求との相殺ができないかを考えてみましょう。

相殺の抗弁の要件は

①自働債権の発生原因事実
②同時履行の抗弁不存在
③相殺の意思表示

でした。

これを追完に代わる損害賠償にアレンジすると

〈追完に代わる損害賠償請求権による相殺の抗弁〉
①契約不適合
②損害・額
③相殺の意思表示

ということになります。

ここで、追完に代わる損害賠償には先ほどみた「報酬請求」と同時履行の関係にあったのを思い出してください。ということは本来であれば、「同時履行の抗弁不存在」として報酬をあらかじめ支払っておっく必要が生じるはずです。

しかし、判例上、「同時履行の抗弁の不存在」を主張する必要はないとされています。

なぜなら、追完に代わる損害賠償請求権と報酬請求権は

相殺により清算的調整を図ることが当事者双方の便宜と公平に適い、法律関係を簡明にすること

が理由としてあげられています。

この規範は民法でも使うことがあると思うので、しっかり覚えるようにしましょう。

まとめ

以上、請負契約に基づく報酬請求権についての要件事実について確認してきました。いかがでしたでしょうか。

特に抗弁についてはしっかり押さえる必要があるのでここで再度復習をしましょう。

①追完請求権による同時履行の抗弁

②追完に代わる損害賠償請求権による同時履行の抗弁
→追完請求権による同時履行の抗弁との整合性より額は関係ない!

③追完に代わる損害賠償請求権による相殺の抗弁
→清算調整を図ることが当事者の便宜と公平に適い、法律関係を簡明にするため、「同時履行の抗弁不存在」の事実は必要ない。

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

民事実務の基礎の教科書、参考書として有用なのは1つしかありません。

これを買わずして勉強できないといわれるほどの良書、大島先生の「民事裁判実務の基礎」です。

予備試験、ロースクール授業対策であれば「入門編」で十分でしょう。司法修習生になると「上級編」や「続編」が必要になるらしいです。

まだ何も参考書がないという方はぜひ読んでみてください!

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