もう迷わない。会社法423条の考え方をまとめます!【会社法その6】

取締役の会社に対する責任商法

取締役がなんか悪いことをしてれば423条を使うんですよね。

 

 

法上向
法上向

なんか悪いことって適当だなー。考慮するポイントは何だい?

んー,二元説とか一元説とはよくわからなくて結局いつも「何となく」ですね。

法上向
法上向

実は,423条の責任の考え方は一定なんだよ。

会社法の取締役の任務懈怠責任は,二元説だ!とか一元説だ!とか,過失責任だ!当該取締役の時は無過失責任だ!とか言われており,なかなか勉強しづらいです。ここでは判例通説に絞って,考え方を整理していこうと思います!

任務懈怠責任のポイント

会社に対して取締役がやらかしている場合は会社は取締役に責任追及することができます。会社法の多くの論点にかかわって出てくるポイントなのでしっかり押さえたい所です。

①取締役の責任の考え方を押さえる。
②競業取引の際の取締役の責任について考える。
③利益相反取引の際の取締役の責任について考える。
①が非常に重要です。ここだけ見ていただければ他の論点との関係ではほぼ確実です。②③は条文にほとんど書かれているのであまり不安にならず読んでくださればいいなーと思います。

取締役の会社に対する責任の考え方はこの図を見て!

条文は会社法423条!

取締役は会社の使者です。取締役は裏切ってはダメなのです。そのため,取締役が会社の利益に反する行動をした場合は,会社は取締役に対して責任を追及することになります。

使う条文は423条です。非常によく出てくるので,覚えましょう。

(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)
第四百二十三条 取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う
どうやら任務を怠ったときに責任を追及できるようですね。これを任務懈怠責任を言います。つまり,取締役に任務懈怠がある場合に責任を追及できるというわけです。なお,これに加えて損害賠償請求なので,損害や損害額,因果関係の検討も必要なこともありますが,民法と異なり会社法ではそこまで厳密に考えられてはいないので,はじめての会社法シリーズでは任務懈怠責任に絞って解説をしていきます。

学説の対立なんて関係ないね

ここで学説の対立があります。二元説とか一元説とか呼ばれるものですね。この記事はわかりやすく説明するという観点なので二元説で以下進めます。会社法の条文上この説しかとれないと思うんですよね(汗)。以後「学説の対立など知らねー」って感じで進めます。学説の対立を気にしすぎて泥沼化した過去があるからです。学説が気になる方は基本書等で確認をお願いします。

ここでちょっと休憩として,民法改正が一元説二元説の対立に影響を与えるかどうか考えてみます。結論としては,わかりません。たしかに民法改正によって帰責性は過失ではないとされました。すると債務不履行はすべて善管注意義務違反として考え過失の概念はなくなることになるようにも思えます。ただし,民法改正によっても428条の文言が変わっていないことを踏まえると現状はやはり二元説が妥当なように思われるのです(個人的な意見です)。

取締役が会社に対してやらかす場合

取締役が会社に対してやらかす場合は大きく2パターンあります。

一つ目は法令違反です。これまで法令手続を数多く見てきました。その法令を違反した場合は会社に対してやらかしているといえますよね?よって責任を負うのです。

二つ目は善管注意義務違反です。善管注意義務違反って何?となる人はここでは法令違反ではないが,ちゃんと注意をしていなかったことで損害が発生した場合と考えましょう。例えば金融業者からお金を借りて借金返済地獄に追われたような場合です。金融業者からお金を借りることは適正な手続を経れば法令違反にはあたりませんが,それで会社に不利益が出たのであれば,善管注意義務違反となります。善管注意義務違反とは善良な管理者の注意を欠くことでことあり,略字ですね。

以上を踏まえて次を見ていきましょう。

取締役の会社に対する責任はこう考えるだけ!

出し惜しみせず,結論を言います。下の図が私が勉強で編み出した現在の理解です。

取締役が法令違反をした場合,そのこと自体が任務懈怠となり,これに加えて過失があれば会社に対する責任を負うことになります。
一方,取締役が善管注意義務違反(法令違反ではない!)をした場合,任務懈怠となりますが,善管注意義務違反で任務懈怠になる場合は,無過失であることはほぼ不可能なので過失の要素があるのですが検討は実際にはしません。

このように取締役のやらかしが法令違反かそうでないかで検討方法が変わってくるということですね。

①取締役の会社に対する責任は会社法423条1項を見る。
②法令違反か善管注意義務違反かに分け,それぞれで上図のように検討していく。法令違反では任務懈怠と過失を別に考えるが,善管注意義務違反では任務懈怠だけを考えるのがポイント。

経営判断の原則は視点が違う

善管注意義務違反では,よく経営判断の原則が問題になります。取締役の経営ミスで損害が生じた場合です。この場合,法令に反した違法な行為でなくとも会社に損害が出ているので善管注意義務違反に当たりそうです。しかし,もしこのような場合がすべて善管注意義務違反にあたるとすると取締役はどうなりますか?

「この会社と取引した方が利益が出そうだな。でも,損害がでたら責任追及されるよなー。無難な方にしよ」となり,活発な経営ができなくなるとは思いませんか?株主も消極的な経営をして全然会社が成長しないことは望んでいません。そのため,経営判断の原則で判断に至るプロセスが適当であれば善管注意義務違反には当たらないのです。

よくあるミスとして,経営についての判断は善管注意義務にはあたらないと考えてしまうことがあります。しかし,これは誤りです。あくまでも経営ミスが必ず善管注意義務違反になる,というのを否定しているだけであり,判断に至る過程の注意を怠っていないか=ちゃんといろいろ調べて準備して判断したかどうかをみて善管注意義務違反かどうかを判断するということです。

また,法令違反であれば,法令違反ルートを使うので経営判断の原則の論点は出てこないことも留意が必要ですね

経営ミスでは善管注意義務違反ルートにおいて経営判断の原則の問題がある。つまり,経営結果ではなく判断過程についての善管注意について違反がないかを確認する。

競業取引はちゃっかりある条文に注意!

条文に気をつけよ

手続をせず,もしくは正当な手続をせず,競業取引をした場合は法令違反ですので,423条で取締役に責任追及が可能です。

競業取引?なんですかそれは?

競業取引違反は法令違反ですよね。ということは……。上の図で考えると,任務懈怠であることは当たり前に言えるので,さらに取締役の過失が必要になります。もし取締役が「俺,無過失だしー」と主張すれば責任を免れることができるのです。

さらに,条文がありますのでこれを確認しましょう 。

2 取締役又は執行役が第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定に違反して第三百五十六条第一項第一号の取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。

損害額は取締役が得た利益の額と推定されるということです。本来損害賠償では損害額を主張しなければいけませんが,競業取引の法令違反の場合には,利益の額を主張すればよいということですね。少々細かいところですが覚えておくとよいでしょう。条文があることを忘れないように!

勘違いに気をつけよ

ここで私も勘違いしていたことなのですが,競業取引の手続を守ったとしても,423条1項の責任追及がされることがあるのです。どのような場合かわかりますか?

それは競業取引がうまくいかず,損害が生じた場合です。競業取引はちゃんと取締役会(株主総会)で決議をとって承認を得ましたが,その取引がうまくいかず損害が生じました。会社に不利益がでたわけです。これが善管注意義務違反に該当すれば423条1項の責任(法令違反ではなく,善管注意義務違反パターン)で責任が問われるのですね。

競業取引の手続違反は法令違反であるから,取締役の過失も必要。さらに,423条2項より損害は取締役が得た利益の額と推定される。
また,ちゃんと手続をとっていた場合でも,競業取引で損害が生じれば善管注意義務違反に問われる可能性がある点に注意。

利益相反取引は条文を操れ!

次に,利益相反取引の場合を考えてみます。これも手続の条文があるので手続に違反したら法令違反となります。

利益相反取引って何だったけ?

利益相反取引の手続をしていない,もしくは手続に瑕疵がある場合は法令違反なのでそのこと自体が任務懈怠となり,さらに取締役に過失があれば責任追及できることになります。

423条3項の条文が超重要!

3 第三百五十六条第一項第二号又は第三号(これらの規定を第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引によって株式会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定する。
一 第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取締役又は執行役
二 株式会社が当該取引をすることを決定した取締役又は執行役
三 当該取引に関する取締役会の承認の決議に賛成した取締役(指名委員会等設置会社においては、当該取引が指名委員会等設置会社と取締役との間の取引又は指名委員会等設置会社と取締役との利益が相反する取引である場合に限る。)
423条3項にはなんと利益相反取引のために特別な規定が用意されています。
みると,なんと任務懈怠が推定されるそうです

え,さっき利益相反取引の手続違反は任務懈怠にあたるっていいませんでした?推定もなにも関係ないのでは?

 

法上向
法上向

よくある間違いだな。これは利益相反取引手続が正しく行われた場合のときのことを規定しているんだよ。

ここで競業取引の話をもう一度考えてみましょう。競業取引手続違反=法令違反=任務懈怠責任でした。しかし,競業取引手続をちゃんとした場合も善管注意義務違反であれば,任務懈怠になるのでしたね?

同じように利益相反も利益相反取引手続違反=法令違反=任務懈怠責任なのは当たり前として,利益相反取引をちゃんとした場合も損害により任務懈怠が推定されるのです!また,取締役会で賛成した取締役も推定される点には注意してください。

利益相反取引は取締役に対して厳しい規定だということですね。

428条という鬼畜な規定

さらに,さらに,会社法は利益相反取引の取締役に対して追い打ちをかけます。

(取締役が自己のためにした取引に関する特則)
第四百二十八条 第三百五十六条第一項第二号(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引(自己のためにした取引に限る。)をした取締役又は執行役の第四百二十三条第一項の責任は、任務を怠ったことが当該取締役又は執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって免れることができない
利益相反取引の中でも直接取引でかつ自己のためにした取締役は任務懈怠を帰責性なし(無過失)で免れることはできないといいます。つまり,無過失責任というわけです。

以上をまとめると,

利益相反取引の手続違反は法令違反であるから,取締役の過失も必要。
また,ちゃんと手続をとっていた場合でも,利益相反取引で損害が生じれば任務懈怠が推定=善管注意義務違反が推定。さらに,直接取引で自己のために取引をした取締役は無過失責任となるから責任を逃れられない(428条1項)。

まとめ

いやー,なかなか,難しいですね。わかりやすく最後は図でまとめたいと思います。

青が法令違反で赤が善管注意義務違反です。423条1項の会社に対する取締役の責任の場合には必ず法令違反か善管注意義務違反に仕分けできる点を意識しましょう。すべての出発点はここからです。

※経営ミスはネズミ色なのは経営判断自体が善管注意義務違反なのではなく経営判断の原則を通して善管注意義務違反となるからです。

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

会社法の基本書はどれもかなり難解だと思います。問題で論点をつかみながら理解するとよいです。そのため解説の詳しい問題集を載せておきます。参考にしてみてください!

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