事業者団体についての規制もたしか独占禁止法にはあった気がするんですけど、これは試験に出ませんよね??
おいおい、事業者団体についても司法試験に出題されたことがあるぞ!しっかり勉強することが必要だ。とはいっても、これまでの学習で身に着けた要件が生きてくるから、今までの復習だと思って学んでいこう!!
事業者団体規制は手薄になりがちですが、司法試験に出題されたこともあるので、しっかり勉強する必要があります。
これまでの学習の知識・暗記が生きてくる分野ですので、事業者団体特有の考え方・論証だけを身に着ければ大丈夫でしょう。そのため、学習量としては少ないと思います。
事業者団体規制のポイント
事業者団体規制は要件をひたすら押さえていくことにつきます。各要件がどのようなことを意味するのかわかるようになれば上出来でしょう。
要件①「事業者団体」、要件②:事業者団体の行為であること、要件③:独占禁止法8条各号該当性
この3つをしっかり理解していくことが重要です。
①:要件①「事業者団体」について理解する。
②:要件②事業者団体の行為であることを理解する。
③:要件③独占禁止法8条各号該当性を押さえる。
ではさっそく見ていきましょう!
要件①:「事業者団体」
定義は独占禁止法2条2項
事業者は団体を作って活動していることがあります。その事業者団体が市場競争上違反行為をした場合に、独占禁止法8条による事業者団体規制が及ぶのです。
では事業者団体とは何をいうのか?
これは独占禁止法2条2項に書いてあります。
② この法律において「事業者団体」とは、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする二以上の事業者の結合体又はその連合体をいい、次に掲げる形態のものを含む。ただし、二以上の事業者の結合体又はその連合体であつて、資本又は構成事業者の出資を有し、営利を目的として商業、工業、金融業その他の事業を営むことを主たる目的とし、かつ、現にその事業を営んでいるものを含まないものとする。
一 二以上の事業者が社員(社員に準ずるものを含む。)である社団法人その他の社団
二 二以上の事業者が理事又は管理人の任免、業務の執行又はその存立を支配している財団法人その他の財団
三 二以上の事業者を組合員とする組合又は契約による二以上の事業者の結合体
これをさらに細分化すると
㋐「事業者の結合体又はその連合体」
㋑「事業者としての共通の利益の増進を主たる目的とする」
となります。
㋐「事業者の結合体又はその連合体」
事業者の定義は独占禁止法2条1項に書いてありますが、判例上の定義①経済上の利益提供②反対給付の反復継続も覚えとくべきポイントでした。
「結合体」とはその「事業者」の集団として構成事業者とは別個的存在である場合を指します。
なお、「連合体」は「事業者」の結合体のことで、試験にはあまり出ません。
㋑「事業者としての共通の利益の増進を主たる目的とする」
「事業者としての共通の利益」とは、構成事業者の経済活動上の利益に直接または間接に寄与するものであればよいとされています。
つまり、学術団体や宗教団体は「事業者としての共通の利益を増進すること」を目的としないのでアウトです。
「主たる目的」とはいくつかの目的のうちで主要なものでよいとされています。定款や規則等で明文化されている必要はありません。
独占禁止法2条2項ただし書
2条2項ただし書について気になっている方もいるのではないでしょうか。
①資本または構成事業者の出資を有し、②営利事業を主たる目的として、③実際に同事業を行う事業者の結合体
は事業者団体ではないとされています。
なぜなら、これらの要件を満たす団体は、「事業者団体」ではなく「事業者」として扱われるからです。
営利的な団体はそれ自体が「事業者」になるというのを要件細分化でわかりにくく言っているだけなのです!
要件②:事業者団体の行為か
事業者団体による違反行為であることをいうためには、それが構成事業者の行為ではなく、事業者団体としての行為であることを言わなければなりません。
「構成員が勝手にやったのではなく、団体の意思でがやりました。」
ということをいわなければならないというわけです。
ただし、事業者団体の行為をいうために、正式な機関(総会・理事会など)の決定がなければならないというわけではありません。委員会や部会などの機関の決定であればよいとされています。
判例(大阪バス協会事件)では
事業者団体の何らかの機関で決定がなされた場合に、その決定が構成員に実質的に団体の決定として遵守すべきものとして認識されていたときには、その機関が団体の正式意思決定機関であるか否かにかかわりなく、その決定を団体の決定としてよい。
と述べられています。
すなわち
㋐何らかの機関での決定㋑実質的に団体の決定として遵守すべきものとしての認識
があれば要件②の事業者団体の行為であると認められるというわけです。
要件③:独占禁止法8条各号該当性
独占禁止法8条
事業者団体の定義と、事業者団体の行為については押さえました。
あとはどのような行為であれば違反になるのか、がポイントです。まずは独占禁止法8条をみてみましょう。
第八条 事業者団体は、次の各号のいずれかに該当する行為をしてはならない。
一 一定の取引分野における競争を実質的に制限すること。
二 第六条に規定する国際的協定又は国際的契約をすること。
三 一定の事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限すること。
四 構成事業者(事業者団体の構成員である事業者をいう。以下同じ。)の機能又は活動を不当に制限すること。
五 事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること。
どこかで見たような要件もあると思われますが、各要件ごとでみていきましょうか。
1号「一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」
1号は文言からわかる通り、明らかにカルテルや談合などの不当な取引制限を想定しています(企業結合でもこの文言は出てきますが、「こととなる」という蓋然性まで要求していないですし、事業者団体に企業結合は想定えきないので、不当な取引制限を指しているということがわかります)。
事業者団体も事業者の活動について、カルテルや談合等など、価格等の制限をしてしまう場合があるというわけです。
1号は競争の実質的制限しか文言上表れていませんが、判例は通常は「公共の利益に反し」で検討する正当化事由が認めらえるかどうかもはこの要件該当性において検討します。
具体的には、
独占禁止法1条の究極目的に照らして目的が正当か、手段が相当か
を独占禁止法8条では1号該当性の中で検討しているというわけです。
つまりは1号は「不当な取引制限」自体を表したものという理解でよいでしょう。
2号「第六条に規定する国際的協定又は国際的契約をすること」
試験問題としてまず出題されることはないので飛ばします。
3号「一定の事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限すること」
これは自由競争減殺より問題になっているとか考えることができるため、正当化事由があればこの要件を満たさないこともあるという点は忘れないようにしましょう。
「一定の事業分野」
まずは「一定の事業分野における」という要件からです。
注意してほしいのは、さんざんやってきた「一定の取引分野」とは言葉が違うという点です。「取引分野」ではなく今回は「事業分野」ですよ!
そのため、定義も変わってきます。
「一定の事業分野」とは、需要側の代替性を考慮せず、同一または同種の商品を供給する者をもって、画定される。
と言われています。
このような需要の代替性の検討作業は必要なく、
上図のように供給の同一・同種性から検討するというわけです!
「現在又は将来の事業者」
既存事業者の排除のほか、新規参入者に対する参入阻止も含むため、「将来の」という文言があります。そのまま読めば大丈夫というわけです。
「数を制限する」
数を制限しているかどうかは実質的に判断されます。たとえば事業者団体に加入しなければ事業が行えないような状況なのに合理的な理由なく団体への加入制限を行う場合
非構成事業者に対して取引を拒絶させる行為、非構成事業者の事業活動に直接的に介入するなど、事業者の地位を利用して、非構成事業者の数を制限させようとする場合
などは「事業者の数を制限すること」にあてはまりますよね!
4号「構成事業者の機能又は活動を不当に制限すること」
「不当に」という言葉からもわかるとおり自由競争減殺についてです。そのため、正当化事由があるのであれば許される場合がありうるという点は押さえておきましょう。
3号との大きな違いは「構成事業者」のみを対象としている点です。構成事業者についての機能や活動を制限していたらアウトというわけですね。
3号はどちらかといえば事業者団体構成員以外に対する嫌がらせでしたが、4号は事業者団体内部における嫌がらせです。
多い類型としては、事業者団体の中で独自ルールを制定する場合です。この独自ルールが「構成事業者の機能又は活動を『不当に』制限するかどうか」が問題となります。
事業者団体ガイドラインでは
①競争手段を制限し需要者の利益を不当に害するものではないか
②事業者間で不当に差別的なものではないか
③社会公共的な目的等正当な目的に基づいて合理的に必要とされる範囲内のものか
を勘案しつつ、その不当性を判断するとされています。
そしてあくまで「自主的・任意的な事業者団体ルール」である必要があると言われており
④事業者団体が自主規制等の利用・遵守を構成事業者に強制することは、一般的には独禁法上問題となるおそれがある
とされている点にも注意が必要です。
ちゃんとした理由があって不当じゃなくって、あくまで強制ではない
といった自主ルール(自主規制・自主認証・自主認定)なら許されるというわけですね。
5号「事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせようとすること」
「させようとする」という言葉からもわかるように、これは強制することまでは必要なく、不公正な取引方法に該当する「行為」さえやらせていればよいということです。
多いのは事業者団体にかかわりのある事業者(取引先や川下企業など)に対して取引拒絶をさせる場合などですかね。
不公正な取引方法は各類型の復習だと思って思い出しておきましょう!
>>>不公正な取引方法の概観を押さえる【初めての経済法その5】
下図も参考にしてみてください!
まとめ(論証)
事業者団体規制はこれまでの学習で理解した観点が重要になってくるということがわかってもらえたのではないかと思います。
事業者団体規制(独占禁止法8条)特有で覚えるべきは、忘れやすい要件②:事業者団体の行為であること、と「一定の事業分野」についてです。事業者団体の定義も問題になりますが、これは独占禁止法2条2項の文言にそのままあてはめていけば大丈夫です。
判例の言い回しも押さえておきたいところですね。
事業者団体としての行為…事業者団体の何らかの機関で決定がなされた場合に、その決定が構成員に実質的に団体の決定として遵守すべきものとして認識されたときには、その決定を団体の決定としてよい。
「一定の事業分野」…同一または同種の商品を供給する者
読んでくださってありがとうございました。ではまた~。
参考文献
経済法を本格的に学習する人の中で入門的に使ってほしい参考書を上げてみます。というか論証の暗記として使えるものを用意してみました。
とりあえず経済法のスタートは「要件の暗記」です。そのため、要件自体のガイドラインや判例通説をもとに逐条的に解説してある『条文から学ぶ独占禁止法(第2版)』をお勧めします。