賄賂罪でのポイントをわかりやすく解説!【刑法各論その19】

賄賂罪刑法

賄賂罪って収賄罪と贈賄罪がありますよね。さらにいっぱい種類があって結局どれをどうやって使えばいいのかわからないんですよね。

法上向
法上向

たしかに、賄賂罪は種類が多いうえで二、論点も忘れがちになってしまうね。ここでは賄賂罪を検討する際のポイントをしっかり解説していこうと思う!

賄賂罪は論点を忘れがちな科目No.1かもしれません。というのもあまり問題にでないうえに、出題されたらされたで論点を忘れてしまっているからです。

論点は勉強の際に覚えていても、後では忘れているものですではどう忘れない工夫をするか?

試験で唯一見れるものは何でしたか?六法ですよね。そこで条文の要件から論点を導けるようになればいいわけです。

ここでは、保護法益要件を押さえることで、論点も網羅していこうと思います!

賄賂罪の保護法益

賄賂罪には収賄罪と贈賄罪があることを押さえましょう。

収賄罪が成立しているとき、贈賄罪もまた成立している

のが基本です(例外はもちろんあります)。

そこで収賄罪、それも単純収賄罪について保護法益と要件を押さえます。その後、その変化形である受託収賄罪、事後収賄罪、事前収賄罪、加重収賄罪、贈賄罪について軽く触れていこうと思います。

(単純)収賄罪を制する者は贈賄罪を制する!

これを念頭に置いてみていきましょう。

①賄賂罪の保護法益を押さえる。
②収賄罪の要件を押さえる。
③変化形である事後収賄罪、事前収賄罪、贈賄罪について理解する。

賄賂罪の保護法益

賄賂罪(収賄罪、贈賄罪)の保護法益には争いがあります。純粋性説信頼保護説ですね。しかし純粋正接をとってしまうと以降の説明に支障をきたしてしまうので、判例・通説に従って信頼保護説のみを説明していきます!

賄賂罪の保護法益は、公務員の職務の公正&社会の信頼です。

え、賄賂罪は公務員にお金を渡す(もらう)という犯罪ですよね。ということは公務員の職務の公正さだけが保護法益じゃないんですか?

法上向
法上向

それは純粋性説の立場だね。しかし信頼保護説はそれに加えて、社会の信頼も保護法益としているんだよ。

公務員は社会的信頼の上に成り立つ職業です。賄賂罪に当たる行為をするというのは、社会的信頼も害することになるというわけですね。

それくらい公務員というのは社会に重要な立場にある職業というわけです。

公務員を目指している皆さんは、「自分たちの目指す職業は社会的信頼にも影響を与えるくらい重要なものなんだ」と理解しておく必要がありますね。

公務員
公務員は社会の信頼をもとに成り立つ

収賄罪(刑法197条1項前段)の要件

(単純)収賄罪は刑法197条1項前段に規定されています。

収賄、受託収賄及び事前収賄)
第百九十七条 公務員が、その職務に関し賄賂収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、七年以下の懲役に処する。
2 公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合において、五年以下の懲役に処する。

(単純)収賄罪は公務員側からお金を提供する犯罪」と意識してください。一般人側からお願いされて公務員がお金を提供する場合は受託収賄罪(刑法197条1項後段)が成立することになります。法定刑が違うので違いを理解できるようになりましょう。

単純収賄罪の要件を刑法197条1項前段から導き出せるようになりましょう。

①公務員②職務関連性③賄賂④収受・要求・約束⑤故意

それぞれについて詳しく見ていきましょう。論点が生じるのは②職務関連性と③賄賂です。

①公務員

公務員はほぼ問題になりません。一応、刑法7条に公務員の規定があります。不安な方は刑法7条1項も参照するといいでしょう。

(定義)
第七条 この法律において「公務員」とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいう
2 この法律において「公務所」とは、官公庁その他公務員が職務を行う所をいう。

とはいえ、賄賂罪(収賄罪・贈賄罪)が問題になるときは公務員はほぼ問題なく認めらます。問題の作成者側の気持ち上、公務員じゃないとされたら賄賂罪として作った問題を解いてもらえないからです。

問題の構成上、単純に認定してあげれば大丈夫でしょう!

②職務関連性

ここが賄賂罪の最大の論点といってもよいでしょう。

一般的職務権限でもよい

職務関連性でまず押さえるべきは「一般的職務権限でもよい」ということです。具体的にその公務員が担当している職務でなくても、その公務員が一般的抽象的に権限を持っているものであるなら、その職務についてお金をもらうことはダメというわけです。

えー、でも納得できないわ。具体的に行うことができないなら、その職務についてお金をもらったとしても贈賄罪にはならないと思うんですけど……

法上向
法上向

それは法律的な視点ではなく一般的視点だよね。刑法ではどう考えるかの根本は保護法益なんだよ。賄賂罪の保護法益を思い出してごらん。

そっか、賄賂罪の保護法益は、公務の職務の公正&社会の信頼でしたね。社会的にみればその公務員が具体的に行えようが行えまいが関係なく、お金をもらっている時点で社会的信頼は失われます。となると、この「職務関連性」は一般的職務権限でもいい、となるんですね。

賄賂罪の保護法益は社会の信頼まで含まれていました。となると一般人からすれば、公務員が具体的にどのような権限を持っているかあまり知らないのが普通ですから、公務員に対して一般的職務権限でもいいからお金を渡した時点で賄賂罪(ここでは収賄罪)が成立するというわけです。

職務密接関連行為でもよい

さらに、一般的職務権限に属する行為でなくても、公務員の職務と密接に関連する行為であれば職務行為関連性が認められるとされています。

これは条文上の「職務に関し」の例外と理解しておくとよいでしょう。「職務に関し」の職務関連性に職務密接関連性を含むとしてしまうと文言に反してしまうからです。くれぐれも「職務に関し」を「職務に関連し」と読まないようにしてください(なお、学説ではこのように読めばよいとする見解もあります)。

このように考えてみると、収賄罪の職務関連性要件はかなり広いことになります。一般人が、公務員がお金をもらっている場面をみて「公務員は信用ならんなー!」となる場合はすべてアウトというわけです。公務員が具体的に行えなかったとしても、一般的に行えると考えられる職務であればよいというわけですね。

さらに判例では例外的に職務密接関連行為まで広られているということです!

賄賂罪

③賄賂

賄賂は対価性を考えます。基本中の基本なので覚えておきましょう。この対価という言葉は覚えておかないと出てきません。

公務員の職務の対価としてのお金でないといけないわけです。しかし通常は公務員にお金を渡せば賄賂と基本的には言えると思います。

理解しておくべきは「対価とはいえないお金」=「③賄賂要件を満たさない場合」です。

それは中元とか歳暮のような社会上の儀礼に過ぎないような場合ですね。とはいっても「社会上の儀礼ですよ」といっていれば賄賂とはならないわけではありません。具体的事情に応じてしっかり賄賂かそうでないのか認定する必要があります。

具体的事情や人的関係、程度などからそれを考えます。おすすめの考え方は「日常的にそのような行為をしていたかどうか」です

日常的にお歳暮や慣行的にお中元を贈っていた場合には、対価性は認めにくくなります。よって③賄賂要件は認められず社会的儀礼となるのです。

しかし、1回きりでお歳暮や中元を贈る場合は、ある行為に対して贈っていることが想定されます。つまり対価性が認めやすくなるのです。よって③賄賂要件が認められるというわけです。

対価に着目するということを押さえておきましょう

④収受・要求・約束

収受・要求・約束はそれほど問題になりません。意味も文言通りです。簡単に具体的事例に応じてどれかを認定すれば足ります。

⑤故意

故意は収賄の故意ですが、その際には「実際に職務を行う」という意思が必要になります。公務員が収賄について実際には当該職務を行う意思がなくて単純にお金が欲しかった場合には収賄の故意は認められず、収賄罪は成立しません。

意外と見落とす論点ですので注意しましょう。

嘱託を受けた場合=受託収賄罪(刑法1967条1項後段)

刑法197条1項後段をもう一度確認してみます。

(収賄、受託収賄及び事前収賄)
第百九十七条 公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、七年以下の懲役に処する。

嘱託を受けるとは、「お願いを聞き入れた」と考えるとわかりやすいでしょう。

(単純)収賄罪(刑法197条1項前段)は公務員から指示してお金をもらう場合を想定していました。受託収賄罪(刑法197条1項後段)はその逆です。一般人側から公務員にお願いするパターンです。

受託収賄罪の場合には

①公務員②職務関連性③賄賂④収受・要求・約束に加えて⑤嘱託を受けたこと⑥故意

が要件となるというわけですね。

事前収賄罪・事後収賄罪は普通に考えろ

収賄罪には変化形として事前収賄罪事後収賄罪があります。とりあえず条文を確認しましょう。

事前収賄罪は刑法197条2項・事後収賄罪は刑法197条の3第3項

(収賄、受託収賄及び事前収賄)
第百九十七条 
2 公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合において、五年以下の懲役に処する。

(加重収賄及び事後収賄)
第百九十七条の三 
3 公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。

事前収賄罪と事後収賄罪と収賄罪について学説上様々な議論がありますが、判例・通説でいくなら単純に考えれば終わりです

①一般人→公務員のパターンが事前収賄罪、②公務員→一般人のパターンが事後収賄罪、③公務員→公務員のパターンが収賄罪です。公務員の種類は問いません。

というのも贈賄罪の保護法益は社会の信頼も含んでいました。公務員がお金をもらう時点で社会の信頼は侵害されるからです。

収賄罪・事前収賄罪・事後収賄罪

加重収賄罪は実際に行為をしたかどうか

加重収賄罪は収賄について実際に、要求通りの行為をした場合に適用されます。刑法197条の3第1項・2項です。

加重収賄罪は刑法197条の3第1項・2項

(加重収賄及び事後収賄)
第百九十七条の三 公務員が前二条の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、一年以上の有期懲役に処する。
2 公務員が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、前項と同様とする。

加重収賄罪は条文通りに考えればよく、特に論点はありません。

わりと収賄罪とセットで出題されるので、具体的事案をよく確認しないままに収賄罪としないようにしましょう。加重収賄罪が成立するのであれば、加重収賄罪の方を適用します

贈賄罪

収賄罪が成立して満足してはいけません。

収賄罪が成立するとき、また贈賄罪も成立している

という名言(迷言?)を思い出してください!

贈賄罪は刑法198条

(贈賄)
第百九十八条 第百九十七条から第百九十七条の四までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金に処する。

基本的に贈賄罪も一般人側に成立しています。ただし例外で贈賄罪しか成立しない場合があるのでこの場合を押さえておきましょう。

収賄罪が成立せず、贈賄罪が成立する場合

贈賄罪だけ成立し、収賄罪は成立しない場合があります。故意について公務員に職務執行意思が認められない場合です。それに対して一般人側は公務員に騙されて(脅迫されて)お金を渡したとします。すると、一般人側にだけ贈賄罪が成立するのです。

一般人は公務員に騙された、脅迫されたためにお金を渡しているため、一般人が罰せられるのはおかしいと思われるかもしれませんが、これはしょうがいない、というしかありません。違法性阻却もほとんど考えられないでしょう。

公務員にお金を渡す時点で、贈賄罪の保護法益の公務の職務の適正と社会信頼が害されているので贈賄罪が成立することから逃れることはできないというわけです。

これが収賄罪が成立するのと贈賄罪が成立するのが同じという例外になります。

まとめ

賄賂罪についてみてきました。

ポイントは(単純)収賄罪についての保護法益と要件を押さえることです。あとはその変化形でしかありません。収賄罪の要件とその論点について最後に確認してみましょう。

〈収賄罪(刑法196条1項前段)の要件〉
①公務員
②職務関連性…一般的職務権限でよい。さらに例外的に職務密接関連行為も含む。
③賄賂…対価に着目する。
④収受・要求・約束
⑤故意…職務を執行する意思が必要。

お願いされてそれを聞き入れたパターンの場合には加えて「嘱託を受けたこと」が必要になり、適用条文が刑法196条1項後段(受託収賄罪)になる点は意識しておきましょう。

読んでくださってありがとうございました。ではまた。

参考文献

記事の目的上,とても簡潔にまとめているので,もっと深めたい方は以下の基本書を参考にしてください。わかりやすいのでおすすめです。

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