業務妨害罪と公務執行妨害罪をわかりやすく・まとめて解説!【刑法各論その20】

刑法
法上向
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業務妨害罪と公務執行妨害罪は理解しているかな?

たしか業務妨害罪が成立するか、公務執行妨害罪が成立するか判断基準があったような……。どう使い分けるかよくわからないですね。

基本書とかでも、業務妨害罪と公務執行妨害罪は離れた場所に書かれているからつながりがよくわからないわ。

法上向
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それじゃあ、業務妨害罪と公務執行妨害罪をまとめて、みていこうか。

業務妨害罪公務執行妨害罪は似ているにもかかわらず、基本書では離れて規定していることが多いです。そのため、初学者にとっては業務妨害罪公務執行妨害罪の使い分けがよくわからない状態になります。

今回は、業務妨害罪公務執行妨害罪について、どのような場面で適用するのか、どのような要件・論点に注意すればいいのか、について解説していきます。

業務妨害罪・公務執行妨害罪のポイント

業務妨害罪と公務執行妨害罪の保護法益を押さえましょう。行為自体は似ていますが、業務妨害罪公務執行妨害罪の保護法益は異なります。

要件はしっかり理解しましょう。業務妨害罪公務執行妨害罪は主要な罪名ではなく、付随的に成立しているパターンが多いと思うので、要件だけしっかり押さえればある程度対応できます

最後に業務妨害罪と公務執行妨害罪の使い分けの論点を解説します。

①業務妨害罪の保護法益を押さえる。
②公務執行妨害罪の保護法益を押さえる。
③業務妨害罪の要件を押さえる。
④公務執行妨害罪の要件を押さえる。
⑤業務妨害罪と公務執行妨害罪の使い分けができるようになる。

それでは見ていきましょう。

業務妨害罪の保護法益・要件

業務妨害罪の保護法益

業務妨害罪の保護法益は、業務活動です。業務の妨害を罰しているので当たり前といえば当たり前ですね。

業務は要件のところでも検討しますが、「職業その他の社会生活上の地位に基づいて継続して従事する事務」のことを指します。

簡単に言えば業務妨害罪は職業活動を守っているということです。

業務妨害罪(刑法223条・刑法224条)の要件

では条文をみてみます。

(信用毀損及び業務妨害)
第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(威力業務妨害)
第二百三十四条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

虚偽の風説の流布や、信用棄損はほとんど出題されません。よって出題されるとしたら、偽計業務妨害罪(刑法233条)もしくは威力業務妨害罪(刑法234条)でしょう。

偽計業務妨害罪と威力業務妨害罪の違いは、偽計か威力かどうかだけです。よって要件は以下のようになります。

①偽計・威力②業務③妨害行為④故意

それぞれ簡単に見ていきましょう。

①偽計・威力

偽計・威力はかならずどちらかに絞らないといけません。偽計の場合には偽計業務妨害罪(刑法233条)、威力の場合には威力業務妨害罪(刑法234条)と適用条文が異なるからです。

偽計は、欺罔や錯誤、不知を利用することをいいます。簡単にいえば「だます」ことです。

威力は、人の意思を抑制するに足る勢力のことを言います。暴行や脅迫よりも緩い概念ですのでそんなに深く考えなくてよいでしょう。

問題は、偽計と威力の違いです。学説上は様々ですが、

偽計業務妨害罪はこっそり妨害すること、威力業務妨害罪は公然と妨害すること

と覚えておけば大丈夫でしょう。こっそりか、公然かの違いにすぎません。

②業務

業務は保護法益でも確認したとおり、「職業その他の社会生活上の地位に基づいて継続して従事する事務」のことです。社会生活上である必要があるので、個人的な趣味の活動は業務に含まれません。

③妨害行為

偽計や威力が業務を妨害するようなものであれば偽計業務妨害罪、威力業務妨害罪は成立します。ここで注意してほしいのは「業務妨害の結果」までは必要ないということです。偽計や威力が業務を妨害しうるものであれば足ります。行為がありさえすればよいのです。

「実際に業務が妨害されたこと」までは必要ありません。危険犯というわけです

妨害行為として考える基準は「本来の業務行為を妨害したかどうか」という点です。業務者に余計なことをさせたことが業務妨害罪になるのではなく、業務者に余計な行為をさせて「本来の業務行為を行うことをできなくしたこと」が妨害ととらえるわけです。

公務執行妨害罪の保護法益・要件

公務執行妨害罪の保護法益

公務執行妨害罪の保護法益は文字通り、公務です。公務とは、国または地方公共団体の作用のことをいいます。

公務執行妨害罪(刑法95条1項)の要件

(公務執行妨害及び職務強要)
第九十五条 公務員職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。

刑法95条1項が公務執行妨害罪の規定です。

要件は以下のようになるでしょう。

①公務員②職務執行③職務適法性④暴行・強迫⑤故意

ポイントは③職務適法性が必要という点です。これは条文には書かれていない要件です。条文から導き出せないので③職務適法性の要件だけはしっかり覚えておく必要があるというわけです。

①公務員

公務員の説明は大丈夫でしょう。賄賂罪でも出てきましたね。不安がある方は刑法7条を見ればよいでしょう。

(定義)
第七条 この法律において「公務員」とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいう。

②職務執行

どのような場面を職務執行の場面とみるかについては判例・学説ともに様々です。公務員が実際に職務をしている場面かどうかの判断は非常に慎重に行う必要があります。

一般的には、具体的個別的に判断するとされています。妨害が行われた際の公務員が職務に従事していたかは時間帯や場所と職務行為との関連性、一体性を見るというわけです。

しかし、判例では、管理的職務は職務執行の範囲を広く考える傾向にあります。たとえば県議会議長は議会を管理する職務にあります。その場合は、休憩中に行われた妨害行為に対しても公務執行妨害罪が成立するとしたものがあります。

基本的には具体的個別的に判断するが、管理的職務の場合には割と広く考えられている

と覚えておけばよいでしょう。

③職務適法性

職務適法性は実は刑事訴訟法でつながりがある要件です。刑事訴訟法では捜査の適法性といった論点がありました。あれはほぼすべてこの公務執行妨害罪が成立するかどうかについて争われたものなのです。捜査などが適法に行われたといえなければ、この③職務適法性の要件を満たさないため、公務執行妨害罪(刑法95条1項)は成立しません。

では職務の適法性はどう判断するのか?

一般的には

㋐抽象的職務権限にあるか→㋑具体的職務権限にあるか→㋒手続の重要部分を履践しているか

によって判断します。

具体例を考えてみましょう。警察官が令状を示して逮捕しようとした場面を考えてください。

逮捕

この場合の③職務適法性要件の検討に入ります。

まず㋐抽象的権限かどうかを考えます。警察官にとって逮捕は法令によって認められている権限ですので抽象的権限に当たります。

次に㋑具体的権限かどうかを考えます。これは法律上の要件を具備していることを言います。令状が出てくるかどうかなどを考えます。

最後に㋒重要部分を履践しているかどうかを考えます。抽象的権限があり具体的権限があったとしてもそれを適法に行っていなければ意味がないからです。令状をちゃんと被疑者に示したかどうかなどを考えます。

ちなみに、刑事訴訟法で問題になるのは㋒重要部分の履践です。詳しくは刑事訴訟法の論点に解説を映しますが、社会一般的相当性などを考えることになります。

④暴行・強迫

暴行・強迫は間接的なものでよい、という点を押さえてください。別に公務員に直接向けられたものでなくてもよいということです。

通常の暴行は不法な有形力の行使なので直接その者に加えないと認められませんが、公務執行妨害罪の暴行は特別に間接的なものでよいというわけです。

たとえば証拠物差押え中に注射器を踏みつけて破壊する行為や警察官のそばにあるパトカーに対して石を投げてフロントガラスを割るような行為があたります。

これらは警察官に向けられたものではありませんが、公務執行妨害罪となります。

業務妨害罪と公務執行妨害罪の使い分け

業務に強制力を行使する権力的公務は入らない

業務と公務については様々な議論がありますが、それぞれの学説を見ていってもあまり実益はありません。

判例・通説に絞って解説していきます。

まず基本的に公務は業務に含まれるが「強制力を行使する権力的公務」は業務に含まれないという点を理解してください。

強制力を行使する権力的公務かどうかは「公務員の公務内容」を見ます。たとえば捜査中の警察官であれば「強制力を行使する権力的公務」にあたります。

なぜ強制力を行使する権力的公務は、業務妨害罪の「業務」要件を満たさないのでしょうか

これは強制力を行使する権力的公務であれば実力で威力を排除できると考えられているからです。業務妨害罪は威力で苦しむ者を助ける規定なので、実力で威力を排除できる公務には威力妨害罪は成立しないことになります。

学説によりさまざまですが、偽計の場合にはあまり強制力を行使する権力的公務という区別を使っていないと思われる判例もあります。偽計は「こっそり行われる妨害行為」でした。そのため、排除する実力があるかどうかはあまり意味を持たないからですね。この点は詳しくは基本書等で確認して自分自身の見解をもっておくことをおすすめします。

公務であれば公務執行妨害罪は考えられる

一方、公務執行妨害罪の公務にはそのような限定はありません。強制力を行使する権力的公務かどうかにかかわらず、公務執行妨害罪は成立します。

もちろん、他の要件は検討する必要がありますので注意してください。

業務妨害罪と公務執行妨害罪は観念的競合(刑法54条1項前段)

以上をみてくると、強制力を行使する権力的公務でない場合には、業務妨害罪と公務執行妨害罪の両方が成立することが多々あります。

この場合は観念的競合(刑法54条1項前段)として処理するのが一般的です。業務妨害罪と公務執行妨害罪は保護法益が業務と公務で異なるのでまとめて「包括的一罪」とすることはできず、一つの行為であれば観念的競合となるわけです。

また、公務執行妨害罪より傷害の結果が発生した場合、公務執行妨害罪と傷害罪は観念的競合となります。一つの行為で保護法益が異なるので当たり前ですね。

まとめ

業務妨害罪公務執行妨害罪についてみてきました。いかがだったでしょうか。

基本書等ではあまり述べられていませんが、以下のように考えられると思うので確認してみてください。

〈強制力を行使する権力的公務の場合〉
公務執行妨害罪(刑法95条1項)のみが成立する。


〈それ以外の公務の場合〉
公務執行妨害罪(刑法95条1項)と威力業務妨害罪(刑法224条)の観念的競合(刑法54条1項前段)となる。

〈公務でない場合〉
偽計業務妨害罪(刑法223条)や威力妨害罪(刑法224条)が成立する。

※偽計の場合には強制力を行使する権力的公務であっても、実力で排除できないので公務執行妨害罪(刑法95条1項)と偽計業務妨害罪(刑法223条2項)の観念的競合(刑法54条1項前段)となるという見解が有力

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

記事の目的上,とても簡潔にまとめているので,もっと深めたい方は以下の基本書を参考にしてください。わかりやすいのでおすすめです。

刑法
はじめての法
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