図解!独禁法における企業結合規制の論証はこれだけ!【経済法その3】

経済法

企業結合でも独占禁止法が適用されるって話ですよね。ということは経済法には企業結合という分野があるわけですね。

法上向
法上向

その通りだよ!今回も各要件について丁寧に見ていこう!

経済法では、企業結合規制があります。企業結合は市場に対して影響力が強いものです。経済に不公正な影響をもたらす自体も少なくありません。そこで独占禁止法は企業結合関係にある場合に規制をしています。

経済法の基本は、各要件の定義を暗記して、丁寧に事例からあてはめることです。この各要件の定義を「暗記」していなければ話になりません。

今回も、各要件の解説を中心に、企業結合規制について説明していきます!

企業結合規制のポイント

企業結合規制を学習するにあたっては、まずどのような場面で規制が及ぶのかをざっくり押さえておく必要があります。そして各要件を条文から分解します。これが第一段階です。

その後、各要件を丁寧に見ていきましょう。

企業結合でよく出題されるのは「合併」ですので、合併を中心に話を進めていこうと思います。とはいえ、株式取得や会社分割も出題される可能性はありますが、検討事項に大きな違いはありません。

なお、企業結合には「水平型企業結合」「垂直型企業結合」「混合型企業結合」がありますが、今回は「はじめての経済法」シリーズということもあり、一番基本的な「水平型企業結合」のみに絞って解説します

①企業結合規制とは何か?外観を理解する。
②結合関係の検討を理解する。
③一定の取引分野を理解する。
④競争の実質的制限について、単独的な場合を理解する。
⑤競争の実質的制限について、協調的な場合を理解する。

それではみていきましょう。

企業結合規制とは?

独占禁止法が企業結合を規制している

まずは独占禁止法が企業結合を規制しているという点はしっかり押さえておきましょう。

会社法では、「合併」や「株式取得」「分割」などでは手続や問題点しか学習しません。しかし、実は背後には、独占禁止法に違反しないかも検討されているのです。

これが企業法務で独占禁止法分野が確立している一つの理由になります。

具体的な手続としては、一定規模以上の企業結合計画について、公正取引委員会への事前届け出の義務付けがされている、というのがあります。

これによって、企業結合前に公正取引委員会が独占禁止法上違反になる点はないがチェックするのです。

実務ではもし違反しそうな場合には、事前に当事会社に知らされ、問題解消措置等の手段がとられます。もしくは当事会社から「こういう対応をとるんで独占禁止法の問題は生じません」ということを伝えます。

独占禁止法の違反にならないようにする対応をとることで、一見独占禁止法に反しそうな企業結合も許されているというわけです。

そこで、経済法を学習する我々としては「どういう場合に経済法上問題があるのか」に加えて「どういう処置をとれば違反にならなくなるのか(問題解消措置)」も検討していくことになります。

以上をまとめると、

①結合関係の検討
②一定の取引分野の画定
③競争を実質的に制限するかどうか
④問題解消措置

という4つのステップを踏んで審査が行われていくことになります。

要件の確認

では結合規制の1つの企業結合についてみてみましょう。独占禁止法15条1項です。

第十五条 会社は、次の各号のいずれかに該当する場合には、合併をしてはならない。
一 当該合併によつて一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合

すごいシンプルですよね。つまり「一定の取引分野」と「競争を実質的に制限」という2つの要件しかないわけです。

それではさっそく各要件について見ていきましょう。と言いたいところですが、まずは要件の前提として「結合関係」を生じさせるかどうかを検討する必要があります。以下を見てください。

要件の前に:結合関係の検討

企業結合規制が及ぶ前提として、それが市場に影響を及ぼす・競争に影響を及ぼす場合である必要があります。つまり、影響がたいしてないような企業結合の場合にはそもそも企業結合規制を検討する必要すらないというわけです。

ということで、最初にスクリーニングを行うことになります。このスクリーニング(結合関係の検討)は決まったパターンがありますので覚えてしまいましょう。

合併(独占禁止法15条1項1号)

合併については明らかに競争単位が減少します。2つの会社が1つの会社になるわけですから当たり前ですね。

よって市場に影響がありうる場合と自動的認定されるわけです。最初のスクリーニングは簡単に突破されるわけです。

それくらい合併は企業結合規制にひっかかりやすいということです。

なお、細かいですが、共同株式移転(独占禁止法15条の3第1項1号)も同様の理由で結合関係にあるかどうかは検討しなくてよいでしょう(結合関係を検討するまでもなく市場に影響があるということです)。

株式保有(独占禁止法10条1項)

株式保有において結合関係になるかどうかはしっかりと検討する必要があります。

以下の事項を覚えてください!

①保有する株式に係る議決権を合計した割合が50%超
②保有する株式に係る議決権を合計した割合が20%超+同割合の順位が単独1位

この2パターンのどちらかであれば株式保有によって結合関係が形成されたといえます。

簡単にいえば

①子会社になる場合
②子会社とまではいかないが、20%超株式保有し、1位大株主になっている場合

ということです。

株式保有の問題が出たら、まず

①50%超or②20%超+1位

のどちらかになっているか検討する必要があるというわけですね。

法上向
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そういうこと!

忘れやすいポイントなので注意だぞ。要件検討の前段階の検討事項さ。

会社分割(独占禁止法15条の2)・事業譲渡(独占禁止法16条)

会社分割や事業譲渡の場合は、

分割される事業が重要部分の場合

に結合関係があるとされています。

ではその重要な部分とは何なのか?

それは

事業承継会社(分割会社)にとって重要部分であることを意味しており、当該承継部分が1つの経営単位として機能しうるような形態を備え、事業を承継させようとする会社の事業の実態からみて客観的に価値を有していると認められる場合をいう

とされています。

つまり、

①1つの経営単位
かつ
②客観的に価値を有する

という両方を満たす必要があるというわけです。ちょうど会社法の事業譲渡の「組織的有機的一体」や「質的・量的重要性」と似たような感じですね。

>>>会社法における「事業譲渡」の検討事項【はじめての会社法その17】

要件①:「一定の取引分野」

ハードコアカルテルとは異なる検討方法

どの条文であれ「一定の取引分野の競争を実質的に制限」という文言が使われていることがわかると思います。

ということで最初に「一定の取引分野」を調べる必要があるわけです。

「一定の取引分野」ってカルテル(不当な取引制限)の箇所でも出てきましたよね。たしか合意に至っている・合意が実効性を持っている範囲が一定の取引分野だったはず…!

法上向
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お!よく覚えているね。しかし結合関係の場合にはこの理論は使えないんだよ。地道に別の方法で一定の取引分野を画定していかなければいけないんだ。

え!なんでですか?

法上向
法上向

ハードコアカルテルは例外だったんだよ。ハードコアカルテルはやっている時点で競争の悪影響が生じるのは明らかなんだ。だから実効性をもつ範囲=市場になったのさ。しかし企業結合規制は必ずしも「悪」とはいえない。だから原則に戻るんだよ。

ハードコアカルテルは、合意に至っている範囲=市場に影響が出る範囲=一定の取引分野でした。

>>>ハードコアカルテルの「一定の取引分野」【はじめての経済法その2】

しかしこれはあくまでも一定の取引分野の検討の「例外」です。

企業結合規制の場合、必ずしも「」とはいえませんので、一定の取引分野は原則に戻ってしっかり検討する必要があります。

ではどうやって検討すればよいのか見ていきましょう。

商品市場・地理的市場について需要の代替性から判断する

一定の取引分野は「商品市場」及び「地理的市場」からなります。つまり一定の取引分野=市場のことであり、商品と地理という2つの側面があるというわけです。

「関西」の「カール(お菓子)」
「日本」の「シャーペン」
「アメリカ」の「ハンバーガー」
「ヨーロッパ」の「時計」
「全世界」の「紙」

など地理と商品によって、市場は画定されるというわけです。

そして商品市場と地理的市場の両方で、主として需要の代替性・必要に応じて供給の代替性によって市場の画定をしていくことになります

商品市場の画定

まずは需要の代替性とはどういうことか確認していきます。

需要者の視点に立って考え、もし仮に当該商品の価格が高くなった場合に別の商品に振り返るかを考えるわけです。

たとえば、

消せるボールペン(フリクション)を想定してください。消せるボールペンの価格がめっちゃ上がりました。その場合、需要者(消費者)としては「消せるボールペン気に入ってたけど、高くなるんだったら普通のボールペンにしよ」となりませんか?

その場合は市場はこの段階で確定せず、一段階大きい「ボールペン」の市場を検討することになります。

ではボールペンの商品市場を考えましょう。ボールペンの価格が高くなった場合、「ボールペン使いたかったけど、高いんだったら別の筆記用具に切り替えよう」と考えますか?

その場合は商品市場は「筆記用具」まで広がることになります。

しかし、ボールペンの値段が上がったとしても「いや、普通の人たちはボールペンの値段が上がっても他の商品には切り替えないだろう。ボールペンにはそれなりのよさがある!」と考えるのであれば、商品市場は「ボールペン」で画定するわけです。

すなわち、需要者の認識や行動を考慮して商品市場を決定するわけです。

しかし、需要の代替性だけではなかなかうまく市場を画定できない場合があります。そのときに登場するのが「供給の代替性」です

供給の代替性は需要の代替性とは少し異なります。需要の代替性は「市場」から「別の市場」に移ることを想定しましたが、供給の代替性は逆です。「別の市場」の供給者が「市場」に入っている・参入してくる場合を考えるということです。

有力な市場(需要が高い市場)があった場合、供給者がどう入ってくるかを検討します。もし仮に入ってきやすいのであれば市場は広がっていくことになります。

具体例を見てみましょう。

シャーペンを作っていた事業者とボールペンを作っていた事業者があったとします。シャーペンを作っていた事業者がボールペンの市場に入りやすい(例えば作成する機械が一緒)といった事情があれば市場は広がることになります。供給が乗り換え用と思えば乗り換えることが可能だからです。

とはいえ商品市場においては基本的に「需要の代替性」のみを検討すれば大丈夫でしょう。供給の代替性を検討した方がよいのは地理的市場画定の場面がほとんどです。

地理的市場の画定

地理的市場も、商品市場と同様に需要の代替性・必要に応じて供給の代替性を検討します。

日本のボールペンを考えてみましょうか。アメリカのボールペンと日本のボールペンが売られていました。日本のボールペンの値段が上がったとします。その場合、あなたはどっちのボールペンを購入しますか?

普通はアメリカのボールペンを買うだろ!という場合にはボールペンの地理的市場は「全世界」へと移っていくことになります。

しかし「いや、ボールペンはさすがに日本製しか使わん」という場合には、ボールペンの地理的市場は「日本」ということになります。

また地理的市場では供給の代替性も検討するとわかりやすいです。

ボールペン市場において、日本以外のアメリカなどの他の国が入ってきやすい(輸入が多い)場合には、地理的市場は「全世界」のボールペンとなります。

一方、日本では海外のボールペンはほぼ販売されておらず、輸入が少ないといった事情があれば、地理的市場は「日本」のボールペンとなるでしょう。

このように商品市場・地理的市場の画定は需要の代替性、必要に応じて供給の代替性から検討するという意味がわかってもらえたのではないでしょうか。

要件②:競争の実質的制限

競争の実質的制限の論証

競争の実質的制限は、不当な取引制限で学習した箇所とほぼ考え方は同じです。まずは暗記の論パを吐き出しましょう。

「競争を実質的に制限する」とは「競争自体が減少して、特定の事業者又は事業者集団がその意思で、ある程度自由に、価格、品質、数量、その他各般の条件を左右することによって、市場を支配することができる状態をもたらすこと」をいい、市場支配力の形成・維持・強化を意味する

これは必ず暗記してください。

企業結合の実質的制限には2パターンあります。

①単独行動による競争の実質的制限
②協調的行動による競争の実質的制限

の2つです。必ず2パターン両方を検討しなければなりません。それぞれの考慮事項を詳しく見ていきましょう。

どちらのパターンであれ、まずは論証を張り付けるということは忘れないでください!

単独行動による競争制限効果

企業結合で合併した場合を考えてください。合併会社のシェアが90%などになっている場合、圧倒的な力で合併会社は市場を支配できると想像できます。

このような制限効果を「単独行動による競争の実質的制限」と言います。圧倒的な力でねじ伏せることによる実質的制限だからです。当事会社が90%のシェアと他を圧倒しているので、当事会社が単独で当該市場を操ることができます。

大体の指標は企業結合ガイドラインに書かれています。

①当事会社の地位及び競争者の状況
②輸入
③参入
④隣接市場からの競争圧力
⑤需要者からの競争圧力
⑥総合的な事業能力
⑦効率性
⑧当事会社の経営状況

などを総合考慮して単独による市場支配力が行使できるようになっているかを検討することになります。

特に重要なのは①の要素になるシェアと順位・他の事業者との格差です。

いかに他の事業者を結合会社(当事会社)が圧倒しているかを力説していけばそれとなくは単独行動による競争の実質的制限を示すことができます。

あとは事例を説いて当てはめ力を鍛えていくしかないので、ここの総合衡量の力は問題演習を通して身に着けていきましょう。

協調行動による競争制限効果

単独行動による検討が終わったら、次に「協調的行動による競争の実質的制限」を検討をする必要があります。

協調行動による競争制限と聞いてよくイメージが付きにくい方もいるのではないでしょうか。以下の図を見てください。

この場合当事会社はシェアが60%なので他の条件がそろえば別ですが、シェアだけでは単独行動は難しそうです。しかしながら、順位2位のC社は30%のシェアを持っており、当事会社とB社が協力すればシェア90%を獲得します。

すると、C社は、A社と競争するより、A社に合わせた方が楽なのではないか?という気持ちが生じてくるわけですね。

このように当事会社単独では無理でもと他の企業とが協調的な行動をとることによって市場支配力が形成できる場合があるのです。

協調的行動による競争制限効果は

①当事会社の地位及び競争者の状況
②取引の実態
③輸入、参入および隣接市場からの競争圧力
④効率性及び当事会社の経営状況

から総合的に判断されます。ほとんど単独行動の場合と同じのように見えるかもしれませんが、視点が異なるということは押さえておくとよいでしょう。

①については、当事会社よりもどれくらい少数の企業にシェアが集中しているか

②については商品が同質であるか、企業間で情報を入手しやすいか、市場は安定しているか(需要が安定している場合は協調的な行動が起こりやすい)

といった視点を考慮することになります。

あくまで、協調的行動をとりやすいかどうか、という視点で判断されるわけです。

まとめ(論証)

以上、企業結合規制についてみてきました。いかがだったでしょうか。企業結合で覚えるべき論証は、「競争の実質的制限」の部分のみです(もちろん、結合関係の検討や一定の取引分野の考え方、競争の実質的制限の考慮要素は知っておく必要はありますが、「暗記」するまではないでしょう)。

競争の実質的制限の考え方を暗記しているか、ここでもう一度確認してみましょう。

「競争を実質的に制限する」とは、「競争自体が減少して、特定の事業者又は事業者集団がその意思で、ある程度自由に、価格、品質、数量、その他各般の条件を左右することによって、市場を支配することができる状態をもたらすこと」をいい、市場支配力の形成・維持・強化を意味する

という論証でした。しっかり暗記しましょうね。

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

経済法を本格的に学習する人の中で入門的に使ってほしい参考書を上げてみます。というか論証の暗記として使えるものを用意してみました。

とりあえず経済法のスタートは「要件の暗記」です。そのため、要件自体のガイドラインや判例通説をもとに逐条的に解説してある『条文から学ぶ独占禁止法(第2版)』をお勧めします。

ただし課徴金等の箇所は改正に対応していませんので、別途サイトの方から補遺をダウンロードすることをお勧めします。とはいえ、要件の部分は変更がありませんので試験対策としてはほぼ問題はないでしょう。

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