強制捜査と任意捜査について考え方をまとめてみた【刑事訴訟法その2】

強制捜査・任意捜査刑事訴訟法

捜査って強制処分と任意処分に分けられるんですよね。

法上向
法上向

一般的にはそういわれているね。ちなみに捜査が強制処分に該当する場合はどうなる?

強制処分に該当する場合は違法です!

法上向
法上向

なるほど,どうやら根本から見直す必要がありそうだな。

刑事訴訟法上,捜査には強制処分任意処分に区別されますが,区別方法ばかりを注意しすぎて,その区別は一体どうしてあるのか?強制処分に該当する場合はどのような点がポイントなのか任意処分に該当する場合はどのような点がポイントなのか,をおろそかにしてしまいがちです。

基礎・基本を大切に「わかりやすく」解説するという本記事のモットーのもと,刑事訴訟法のスタートである強制捜査任意捜査について確認していきましょう!

強制捜査・任意捜査のポイント

まず,大事なのは強制捜査(強制処分)に該当する場合と任意捜査(任意処分)に該当する場合,以降どのような点を検討していくかです。そのことを押さえると区別が必要な理由が理解できます。

そして,一般的な区別方法を説明したのち,類型別で判例がどのように考えているかを軽く解説できればいいなーと思います。

①強制処分と任意処分の考え方
②強制処分と任意処分の区別
③写真撮影・GPS捜査・X線検査・通信傍受の考え方

強制処分と任意処分の考え方

刑事訴訟法197条1項が根拠

捜査は一般的に強制処分任意処分とに分けられます。このことは刑事訴訟法197条1項からもわかります。

第百九十七条 捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる。但し、強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない。

刑事訴訟法197条1項但書に該当する場合は強制処分というわけです。強制処分は法律で規定がないといけないことが書かれていますね。これを強制処分法定主義と言ったりします。

なるほど,強制処分は法律があればオッケーなのであって,ただちに違法というわけではないんですね。

刑事訴訟法の根底になる捜査比例原則

そして,もう一つ大事な考え方として,刑事手続には捜査比例原則があるといわれています。

捜査比例原則とは捜査の必要性(公益上の必要性)VS 被疑者の不利益を衡量して,捜査は相当な範囲で行わなければいけないとするものです。

これを判例では類型ごとに考え方の手順で落とし込んでいます(任意処分,任意取調べ,職務質問など)。

強制処分になったら……

以上を踏まえると,まず強制処分の場合は刑事訴訟法197条1項より法律の規定があるかどうかを検討します。憲法上,身体拘束には令状が必要とされており(令状主義憲法33条),刑事訴訟法にも捜索差押えなどでは令状を取ることになっているので,この規定が根拠になることが多いです。

次に法律の根拠のもと,法律が遵守できているかどうか,つまり令状が取れているかどうかがが問題となります。ここで令状が取れていない場合は無令状捜索差押等になるので,ここで無令状でもよいとされる例外に該当しない限り違法となるというわけです。

任意処分になったら……

任意処分の場合には,法律の必要はありませんが,上記の捜査比例の原則が強く及びます。つまり,捜査の必要性・緊急性・相当性を検討して捜査手段が適当であるかを見ることになります。

ここでのポイントは捜査手段の必要性・緊急性・相当性を主に考えるということです。捜査の必要性等ではありません。

殺人罪といった重大な事件だから捜査の必要性が高いよね,だから権利侵害大きくてもいいよね

というように考えるのではなく,

今撮っておかないと証拠隠滅されるかもだから捜査手段の必要性が高いよね,だから権利侵害大きくてもいいよね

という風に手段の必要性等を検討するのが基本というわけです。これは捜査比例原則を捜査に適用しているために,捜査手段について強制処分,任意処分の問題が生じているからですね。

強制処分・任意処分の考え方のまとめ

以上を図にまとめてみたいと思います。

となると,強制処分と任意処分の区別が問題となってくるわけです。ここでようやくなぜ区別が必要かがわかってもらえたと思います。

法上向
法上向

区別によってそれ以降の手順がかわってから強制処分と任意処分で区別しないとはじまらないということだね。

強制処分と任意処分の区別

強制処分と任意処分の区別の基準となる判例

判例で確立した区別がありますので,それを押さえましょう。

強制手段とは,有形力の行使を伴う手段を意味するものではなく,個人の意思を制圧し,身体,住居,財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など,特別の規定がなければ許容することが相当でない手段を意味する

最決昭和51年3月16日 岐阜呼気検査事件

着目すべき点はまず有形力の行使を伴う=強制処分ではないという点です。逆に言えば有形力の行使をしても任意処分とされる場合を認めているわけですね。

では,何が基準なのか?それが太字の部分になります。これは覚えた方がいいでしょう。

え,覚えるなんてそんなの無理……

その場合は要旨を理解するようにしましょう。ポイントは①個人の意思の制圧②身体住居財産等に制約を加えるという2つの要素に分ける点です。

個人の意思の制圧

個人の意思制圧

判例の傾向をふまえると,この個人の意思の制圧は黙示のものでも足るとされています。つまり,被疑者が「嫌だー」といっていなくても合理的に推認される意思に反していたらこの要件は満たすというわけです。

身体住居財産等に制約を加える

重要な権利利益

これは「等」という字からもわかるように例示です。身体,住居,財産など重要な権利利益に制約を加える場合と理解してもよいでしょう。

区別の基準のまとめ

以上を踏まえると,区別の基準は判例の文言を覚えるのもいいですが,要旨だけ理解しようとすると以下のようになります。

強制処分には,個人の意思を制圧し(これは合理的に推認される個人の意思に反する場合も含む),重要な権利利益を制約する手段が該当する。
そうでなければ任意処分である。
有形力の行使は決定的な基準とはならない。

写真撮影・GPS捜査・X線検査・通信傍受の考え方

以上,強制処分と任意処分の区別と考え方を踏まえて,類型別に簡単に検討していきます。

写真撮影

写真撮影によって侵害されるのは容ぼう等を撮影されない自由です(憲法13条に該当)。

写真撮影が強制処分か任意処分かについて実は判例は明確ではありません。場合によりけりとされています。

よって,まずこの区別を検討する必要があります。上記のように個人の意思を抑圧しているか,重要な権利利益の侵害かを考えることになります

この際のポイントは撮影場所です。撮影場所が一般人からも見れる場所(公道など)であれば容ぼう等を撮影されない自由の要保護性は低いことになります。そのため,強制処分ではないと認めやすくなります。

たとえば,住居内を撮影する場合は一般人からは見れない部分=要保護性は高いので重要な権利侵害であるといえ,強制処分となりやすくなります。

ということは住居内の撮影とかは違法ということか。

法上向
法上向

おいおい,また間違ってしまっているぞ。強制処分になったらすぐ違法ではなかっただろ?何を検討するんだったかな?

そっか,法律があるかどうか,写真撮影は検証(捜索)の性質があるので令状が取れているかをみるんですね。そして令状がなかった場合は現行犯逮捕とかではないので違法ということになりますね。

次に,任意処分とされた場合であっても,写真撮影の必要性・相当性を考えます(緊急性については検討していない判例もあるため,必要性を被る部分も多いのであまり検討ポイントとしては重要ではないです)。

GPS捜査

GPS捜査は強制処分です。この点は確定しています。一番大きな理由は,個人のプライバシーを侵害する場所を把握する可能性があるからです。GPS装置を設置した時点でずっと位置情報が捜査機関にばれることになります。するともしかしたら捜査に関係なく人に知られたくないプライバシーに大きくかかわる場所の位置情報を知れてしまう可能性があるのです(誰しも一つや二つそういう場所がありますよね笑)。

「おそれ」がある時点で強制処分としている点が注目すべきポイントでしょう。

さらに強制処分であれば法律→(検証)令状をとっていればいいのかというと判例ではこれも否定されています。検証令状ではとらえきれない性質があるから令状があっても違法というわけです。検証令状をとったとしても捜査に関係するかしないかを判別する必要があり,令状を事前呈示もできないし,条件をいっぱい伏せば裁判官の裁量が大きくなるといった理由が挙げられています。

つまり,現行法ではGPS捜査は違法というわけです。

X線検査

X線検査も強制処分とされています。これもGPS検査と同じく内容物が特定されるおそれがあるためです。

この場合は令状は否定されていないので,検証令状があればオッケーということになりそうです。

通信傍受

通信傍受はかつて任意処分とされました。GPS捜査では強制処分だったのに通信傍受は任意処分である点に納得がいかないかもしれませんが,判例は神,学説はゴミなので仕方ありません。

とはいえ,現在では通信傍受法ができましたので,一応この問題は解決されました。通信傍受法という法律があるのでこの要件さえ満たしていれば,仮に通信傍受を強制処分と考えてもオッケーというわけですね。逆に任意処分としても要件充足性が必要になったわけです。

この点に関して多少議論もあるところですが,省略させていただきます。

類型別のまとめ

以上,類型ごとに検討ポイントをみてきました。まとめてみましょう。

写真撮影は強制処分か任意処分かをまず考える。この際,撮影場所も重要なポイントである。仮に任意処分であった場合でも,写真撮影の必要性・相当性の検討が必要となる。
GPS捜査は強制処分である。さらに令状をとってもできない性格のものであるため,自動的に違法となる。
X線検査は強制処分である。
通信傍受は通信傍受法ができたため,区別の問題はある程度解消された。

まとめ

以上,強制処分と任意処分の区別,考え方をみてきました。類型別を確認しましたが,常に基礎にあるのは強制処分法定主義令状主義捜査比例原則,および一般的な区別考え方です。

もう一度考え方について図にまとめてみます。

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

刑事訴訟法の参考文献として「事例演習刑事訴訟法」をお勧めします。はじめての方にとっては解説が大変難しい問題集ですが,非常に勉強になるものです。また,冒頭にあります答案作成の方法について書かれた部分については,すべての法律について共通するものなのでぜひ読んでほしいです。自分も勉強したての頃にこれを読んでいれば……と公開しております。

最初は学説の部分はすっとばして問題の解答解説の部分だけを読めばわかりやすいと思います。冒頭の答案の書き方の部分だけでも読む価値はあるのでぜひ参考にしてみてください。

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