刑事訴訟法324条っていつ使うんですか?
これまで学習してきたのは、刑事訴訟法321条と刑事訴訟法322条だったよね。
これらはいずれも、被告人又は被告人以外の者の「供述書・供述録取書」すなわち、書面に証拠能力が認められるかどうかだった。
刑事訴訟法324条は書面ではなく、供述自体の証拠能力なんだよ。
刑事訴訟法321条・刑事訴訟法322条はいずれも書面に証拠能力が認められるかどうかでした。
>>>刑事訴訟法321条をわかりやすく解説【刑事訴訟法その16】
>>>刑事訴訟法322条をわかりやすく解説【刑事訴訟法その17】
今回学習する刑事訴訟法324条は書面ではなく、供述自体に証拠能力が認められるかどうかです。
我々が伝聞と聞いてイメージする、「Aちゃんが〇〇って言ってましたー」というような噂話自体に証拠能力が認められるかという問題ですね。
刑事訴訟法324条のポイント
まずは適用場面を押さえましょう。供述書・供述録取書ではなく、供述自体である点には注意が必要です。
次に、要件を押さえていきます。こちらは刑事訴訟法321条・刑事訴訟法322条が準用されているので、復習を兼ねて学習していきましょう。
最後に、刑事訴訟法324条の論点である再伝聞を押さえます。これまでの学習の総まとめですので、しっかり理解しましょうね!
①刑事訴訟法324条の適用場面を押さえる。
②刑事訴訟法324条の要件を理解する。
③再伝聞について理解する。
それでは見ていきましょう!
刑事訴訟法324条の適用場面
供述書・供述録取書ではない
一番押さえてほしいのは
刑事訴訟法324条が問題になるのは被告人以外の者の供述自体であるという点です。
刑事訴訟法321条・刑事訴訟法322条は供述書・供述録取書といった書面の証拠能力が認められるかといった問題に対処するためのものでした。
しかし刑事訴訟法324条は供述自体です。
すなわち、ある人(Aさんとしましょう)の証人尋問の際の
Aさん「Bさんが『△△』って言ってた!」
というような『△△』の部分を証明する際に、Bさんの証人尋問なく証拠能力を認められるかっていう話というわけです。
つまり、Aさんの供述過程は問題にならず(証人尋問しているので)、Bさんの供述過程が問題となります。
Bさんの供述過程が問題となるのに、Bさんの証人尋問せず、証拠能力が認められるかを考える
それが刑事訴訟法324条というわけです。
誰の供述過程が問題になるか
以上述べたように、伝聞法則から伝聞証拠を考える際には、誰の供述過程が問題になるのかをしっかり意識する必要があります。
今回は、供述に表れた伝聞証拠なので、当該証人尋問の対象者ではなく、
証人尋問の対象者の話に登場する者の供述過程が問題になる
ということになります。
この、証人尋問の対象者の話に登場する者の供述過程が問題になる場合、この者の証人尋問をまだ行っていなければ該当部分は伝聞証拠となります。
そのため、原則として、その者の証人尋問が別途必要になります。
しかしながら、刑事訴訟法324条の伝聞例外の要件を満たせば、証人尋問なくして、伝聞例外として、証拠能力が認められるというわけです。
刑事訴訟法324条の要件
条文の確認
まずは刑事訴訟法324条をみてみましょう。
第三百二十四条 被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述で被告人の供述をその内容とするものについては、第三百二十二条の規定を準用する。
② 被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述で被告人以外の者の供述をその内容とするものについては、第三百二十一条第一項第三号の規定を準用する。
刑事訴訟法324条1項と2項に分かれている点に注意が必要です。
刑事訴訟法324条1項より、被告人の供述過程が問題となる場合には刑事訴訟法322条の規定が準用されます。
一方、刑事訴訟法324条2項より、被告人以外の者の供述過程が問題となる場合には刑事訴訟法321条1項3号が準用されます。
このように、刑事訴訟法324条1項を適用するのか、刑事訴訟法324条2項を適用するのか考える際にも、
「誰の供述過程が問題となるのか」
は非常に重要になってくるので、間違えることなく、しっかりと理解したいところですね。
被告人の供述過程が問題となる場合(刑事訴訟法324条1項)
被告人の供述過程が問題となる場合には、刑事訴訟法324条1項の準用により、刑事訴訟法322条が適用されます。
こちらが刑事訴訟法322条です(刑事訴訟法322条2項はほとんど使いませんので、刑事訴訟法322条1項のみを見ておけば大丈夫でしょう)。
第三百二十二条 被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とするものであるとき、又は特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り、これを証拠とすることができる。但し、被告人に不利益な事実の承認を内容とする書面は、その承認が自白でない場合においても、第三百十九条の規定に準じ、任意にされたものでない疑があると認めるときは、これを証拠とすることができない。
この要件を図にまとめるとこのような感じになります。
注意してほしいのは、刑事訴訟法324条が適用されるということは供述自体が問題になっているという点です。
そのため、供述録取書のように、録取過程は問題となりません(供述なので署名・押印などそもそもできません)。
よって、①のみが要件となります。
すなわち、不利益供述もしくは絶対的特信情況があれば要件が満たされるというわけですね。もちろん、不利益供述の場合には任意性の確認も忘れないようにしましょう。
被告人以外の者の供述過程が問題となる場合(刑事訴訟法324条2項)
続いて、被告人以外の者の供述過程が問題となる場合です。
こちらの場合は、刑事訴訟法321条1項3号が問題となります。
第三百二十一条 被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り、これを証拠とすることができる。
三 前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、かつ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。ただし、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。
赤太字は刑事訴訟法322条と同様必要ありません。供述録取書のように録取過程が問題とならず、供述自体に署名・押印など不可能だからです。
よって、
供述不能+不可欠性+絶対的特信情況
の3要件のみが必要となります。
再伝聞は供述過程を分けて考える
再伝聞が問題となる場面
再伝聞とは、伝聞過程が重なっているものです。
さすがに三重伝聞のようなものは試験問題として出題されないとは思いますが、何回伝聞過程が重なったとしても基本的な考え方に違いはありません。
まずはメモ(供述書)を例に考えてみましょう。
Aさんが書いたメモの内容自体を立証したいときには、Aさんの供述過程(メモの内容を知覚・記憶し、書くという表現・叙述をする過程)が問題となりますので、伝聞証拠となります。
そのため、原則としてA自身の証人尋問が必要となります。
ここで、Aのメモの内容が
Bさんが昨日、CからDを殺す場面を見たって言ってたなー
というものだったらどうなりますか?
この場合に、当該メモをCがDの殺人罪の犯人性の立証として使いたいとします。
すると、Bさんの供述過程も問題となるはずです。
Bさんが、Cさんの犯行現場を知覚し、記憶し、それをAに対して表現・叙述しているからです。
この場合、必ず誰の供述過程が問題になるのか、分けて検討します。
今回は
Aの供述過程とBの供述過程が問題になるわけです。
最初に表れる供述過程から処理をする
次に、まずは最初に表れる供述過程から処理をします。
時系列順だと、後の方の供述過程
証拠内容からすると、最初に問題となる供述過程
です。
上の例ですと、Aさんの供述過程になります。メモを証拠能力にする際に最初に表れる供述過程というわけですね。
間違っても深く考えすぎて、
結局立証したいのはBさんの供述だから、Bさんの供述から処理しよう
などと考えないようにしましょう。
Aさんの供述過程の処理は、簡単です。そのまま考えるのです。
Aさんは「被告人以外の者」の「供述書」であり、裁面調書や検面調書ではないので、刑事訴訟法321条1項3号を適用すべきことがわかります。
よって、
供述不能+不可欠性+絶対的特信情況を検討することになります。
これらの要件を満たすのであれば、伝聞例外として、Aの供述過程がクリアすることになるというわけです。
次に検討する供述過程は刑事訴訟法324条類推
すると後残っているのは、Cの犯行現場を目撃したBがAにそのことを伝えるという供述過程のみです。
ここで先ほどのAの伝聞例外を思い出しましょう。Aの供述過程が伝聞例外として問題にならないとすると、
Aの書いたメモはAが実際に証人尋問で話しているものと同視できます。
すると、
Aが証人尋問で「Bが、Cの犯行現場を目撃した、と言ってました」と話しているのと同視できるというわけです。
これを聞けば
供述自体の証拠能力で、被告人以外の者のBの供述が問題になっている
ということがわかりますね。
となると、刑事訴訟法324条を適用すればBの供述過程の問題点もなくすことができます。
ただし、注意してほしいのは
刑事訴訟法324条の類推適用
になるという点です。
刑事訴訟法324条はあくまで「被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述」が対象でした。
しかしながら、再伝聞の場合は、一番最初に表れる供述過程を伝聞例外によってクリアし、被告ん以外の者の供述と同視しているだけなので、刑事訴訟法324条を直接適用することはできないというわけです。
まとめ
以上、刑事訴訟法324条について解説していきました。
結局は刑事訴訟法324条の適用場面を押さえておけば大丈夫でしょう。
①被告人以外の者の供述(≠供述書・供述録取書)の中に出てきた伝聞性が問題となる際に刑事訴訟法324条の問題となる。
②再伝聞で一番最初に表れる伝聞性を解消した場合に、刑事訴訟法324条類推適用の問題になる。
解説は以上になります。読んでくださってありがとうございました。ではまた~
参考文献
刑事訴訟法の参考文献としておすすめするのが、基本刑事訴訟法Ⅱです(基本刑事訴訟法Ⅰは手続法ですので刑事訴訟実務基礎に使うものです。一般的な刑事訴訟法を勉強する際にはⅡの方を選ぶよう注意が必要です)。
最近登場したものですので、有名ではないかもしれませんが、今後はこれが刑事訴訟法のバイブルに必ずなっていきます。
具体的な事例に沿って刑事訴訟法を理解できる作りになっているので、初学者にとっても理解しやすくなっています。
本当におすすめです!ぜひ読んでみてください!