生存権(憲法25条)の考え方についてまるわかり【憲法その11】

生存権憲法

生存権も三段階審査論で考えればいいんですよねー。保護領域→制約の有無→正当化っと。

法上向
法上向

おいおい,生存権は自由権ではないから三段階審査論は使えないぞ!

えっ!生存権では三段階審査論は使えないんですか!
じゃあ一体どう考えればいいのか……

法上向
法上向

生存権は裁量に着目するのが一般的だな。

三段階審査論は自由権について原則例外をもとにした考え方でした。いわば考え方としては,憲法上保障されている自由権に対して侵害してくる法律がある。その法律が正当かどうか審査してやる!という考え方でした。

しかし,生存権は社会福祉国家から生じる積極的権利であるため,憲法上保障されている自由権ではありません。そのため,生存権を侵害するおそれのある法律についても,それが正当かどうか審査してやる!といった国側からのモチベーションはそれほどはたらかないわけです。よって,三段階審査論という方法は一般的には使えないことになります(もちろん,それを踏まえて三段階審査論的に考える学説が存在します)。

生存権(憲法25条)のポイント

生存権の法的性格と審査方法が一番大きな問題であると思うので,その2点に着目して考えていこうと思います。

①生存権(憲法25条)の法的性格
②生存権(憲法25条)の考え方
それではみていきましょう。

生存権(憲法25条)の法的性格

生存権は抽象的権利

まず生存権は抽象的権利であるという点を押さえましょう。プログラム規定説や具体的権利説もありますが,抽象的規定説が判例学説なので,とりあえずここでは抽象的権利説だけを押さえます。

憲法25条の生存権は法的性格を持ちます。これは大丈夫ですね。しかし,憲法25条だけでは具体的に請求できないと考えるのが抽象的権利説です。

それでは,どうするか。それは憲法25条をもとにした法律を作ってあげるのです。つまり,生存権(憲法25条)は法律が制定されてはじめて請求できる権利というわけです。

憲法25条の条文の関係性

生存権は抽象的権利であることを踏まえて,憲法25条をみてみましょう。

第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
1項2項も同じようなことが書かれていますが,2項の方が具体的ですよね。

1項2項の役割を分けて審査密度を変える考え方もありますが,少し技巧的なので,ここでは一般的な考えにとどめておきたいと考えています。

ポイントは先ほどの生存権は抽象的権利であり,法律によって具体的に請求可能となるという考えです。この考えを踏まえて1項2項を見てみると理解が進みます。

憲法25条1項は国の最低限の役割を宣言しており,2項はいろいろな社会福祉的役割を立法を通じてしていくことを宣言しています。つまり,1項は具体的権利を規定したものではなく,2項による立法を通じて実現されるというわけです。逆にいえば,生存権は立法を通じて憲法で文化的な最低限度の生活を保障するとともに社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上,増進を目指しているというわけですね。

ここからも,生存権が抽象的権利を規定しているということがお分かりいただけると思います。あくまで立法ありきの規定となっているということですね。

まとめ

以上をまとめるとこういうことになります。

憲法25条1項は国の最低限の社会的責務を規定しており,2項はそのほか,社会保障等を規定している。
生存権(憲法25条)は抽象的権利であることを踏まえれば,1項2項どちらも立法により実現される,具体的に請求可能となると考えられる。

生存権(憲法25条)の審査

生存権は裁量が広範

自由権(表現の自由や思想良心の自由など)は裁量がある場合は審査基準を下げていました。これは裁量があると,裁判所は国会の意思を優先させますので立ち入った審理をしない=よっぽどひどい規定でないと違憲とはしないためです。しかしこれはあくまでも違憲審査基準の設定の一要素というだけでした。

生存権は自由権ではないため,一般的に違憲審査基準を下げるとかいう議論は出てきません。自由権では一要素でしかなかった裁量を中心的に考えます

これは生存権自体が非常に広範な裁量に基づいているためです。以下みていきましょう。

生存権は抽象的権利であるため,立法,法律によらなければ具体的権利として機能しませんでした。すでにこの時点で立法裁量の大きいことがわかります。裁判所は立法のいうことにある程度従わないとそもそも生存権の具体的権利として機能しないからです。

内容の裁量

次に,考えてみると,その立法においても非常に広い裁量があることがわかります。たとえば方法です。

貧しい人がいたとして生活保護をする場合を考えてみましょう。

生活保護

何をするか?について,いろいろな方法をとることができますよね?
お金をあげますか?就職先を紹介しますか?住居を与えますか?すべて行いますか?

このように多岐にわたる方法の中で立法府は自由に政策を決めれるという裁量を持っているのです。

程度の裁量

次に,どれくらい保護を行うのかも問題です。

同様に生活保護の場面を考えてきましょう

生活保護

どれくらい,いつまで保障しますか?憲法25条1項では健康で文化的な最低限度の生活を営む権利とだけ規定さており,上限は書かれていません。しかし国にも財源等の限界があるので最大限の保障をすべきであるとは考えにくいですよね?

そのため,保障の程度の裁量も立法府がもつことになるのです。

二重の不確定性

以上,内容と程度の2つの裁量があることから,生存権は立法府に非常に広範な裁量があるとされています。これを二重の不確定性と呼んだりします。

審査方法

判例では裁量の広範性を踏まえて,様々な事情を考慮して違憲かどうかを判断するパターンが多いですが,わかりにくいです。

そこで,上記二重の不確定性を踏まえて審査方法を考えてみましょう。なぜ生存権の裁量が広いかといえば内容と程度の不確定性があるからでした。逆に言えばこの2点を検討していけば裁量を踏まえつつ違憲性の判断ができるというわけです。

まず,作為義務の内容を考えます。当該状況ではどのような内容の方法をとるべきかという問題ですね。

次に,その作為義務の程度を考えます。重要なのは憲法25条1項があるので最低限度を下回っていないかを考えるという点です。下回っていればその時点で憲法違反です。この際,上限はないため,相当性の審査は必要ありません。裁量が広いため,裁判所が立ち入れないのです。

以上2点において,明らかに違反がある場合にのみ違憲となります(明白性の基準のような緩やかな審査ということになります)。

以上を見てもらえればわかるように,生存権(憲法25条)では憲法違反になりにくいことがわかると思います。これは何度の述べたように生存権は裁量が広いためです。

まとめ

以上,生存権の考え方をまとめるとこのようになります。

生存権は内容と程度の不確定性があるため,立法府に非常に広範な裁量がある。そのため,違憲となるのはその裁量を考慮しても明らかに違反がある場合に限られる。
具体的には,作為義務の内容および作為義務の程度が最低限度を下回っていないかを考える。

まとめ

以上,生存権(憲法25条)についてみてきました。生存権の問題は判例を踏まえればより制限的に裁量を考え,もしくは立法委任や判断過程審査で違憲にしやすくなったりします。しかし,今回は生存権の法的性格とデフォルトとしての考え方を知ってほしかったので省略しました。

生存権のキーワードは裁量です。これを意識して一緒に勉強を頑張っていきましょう!

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

三段階審査論に沿って解説されている基本書を紹介します。生存権は三段階審査論は使えませんが,その場合の例外的な考え方についても記載があります。憲法の答案の書き方の参考にもなると思います。憲法独特の答案の書き方に困っている方はぜひ参考にしてみてください。

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