前回は被告人以外の者の供述書・供述録取書でしたね。今回は被告人自身の供述書・供述録取書ですか?
その通りだよ!被告人の供述が問題になる場面では、刑事訴訟法321条とは少し要件が異なるから、刑事訴訟法321条との違いを意識しながら、刑事訴訟法322条を攻略していこう!
前回は刑事訴訟法321条を使う、被告人以外の者の供述書・供述録取書を学習しました。
>>>被告人以外の者の供述の伝聞例外!刑事訴訟法321条のわかりやすい解説【刑事訴訟法その16】
今回は、刑事訴訟法322条を使う、被告人自身の供述書・供述録取書を学習していきます。
以外と要件を勘違い・忘れやすい分野ですので、しっかりと学習していきましょう!
刑事訴訟法322条のポイント
まず最初に刑事訴訟法322条の適用場面を押さえます。こちらは刑事訴訟法321条を理解していればすんなりいけると思います。
なお、刑事訴訟法322条2項は試験にほとんど出題されませんので省略します!
被告人の供述書・供述録取書は刑事訴訟法322条1項を理解していれば試験対策としては万全でしょう!
刑事訴訟法322条1項の要件をしっかり押さえるようにします。不利益供述で認められる場合と絶対的特信情況により認められる場合の2つがあるので、分けて考えることにします。
①刑事訴訟法322条適用場面を理解する。
②刑事訴訟法322条1項の要件を理解する。
それでは見ていきましょう。
刑事訴訟法322条の適用場面
伝聞証拠であること
まず最初に必ず確認してほしいのは、伝聞証拠であるということです。
そもそも伝聞証拠でなければ、伝聞例外の話が出てこないので、刑事訴訟法322条を問題にする必要がありません。
伝聞証拠とは、簡単にいえば、供述者の知覚→記憶→表現→叙述過程が問題になるものです。
供述者の記憶過程を経ていれば、原則として、その供述者を証人尋問しなければならないというわけですね。
詳しくは以下の記事で解説しています。
被告人の供述過程が問題になる
続いて、注意してほしいのは、刑事訴訟法322条の適用が問題となるのは、被告人の供述過程(知覚→記憶→表現→叙述)が問題となる伝聞証拠について、という点です。
もし、被告人の供述過程ではなく、被告人以外の者の供述過程が問題になる場合には、刑事訴訟法321条の伝聞例外が問題になります。
被告人自身の書いたメモや、被告人の言ったことを警察官が録取した書面など、被告人の記憶が介在している書面において、刑事訴訟法322条は適用されるというわけです。
刑事訴訟法322条の要件
条文の確認
まず最初に条文を押さえましょう。刑事訴訟法322条をみてみます。
第三百二十二条 被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とするものであるとき、又は特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り、これを証拠とすることができる。但し、被告人に不利益な事実の承認を内容とする書面は、その承認が自白でない場合においても、第三百十九条の規定に準じ、任意にされたものでない疑があると認めるときは、これを証拠とすることができない。
赤太字、青太字、緑太字に分けて考えていきます。
供述録取書の場合には署名・押印
まずは赤太字についてです。
こちらは刑事訴訟法321条柱書と同様に考えればオッケーです。
被告人の供述書の場合には署名・押印は必要なく、被告人の供述録取書(作成者は捜査官などになる)の場合には、「その録取が正しいですよ!」という意味合いを込めて被告人の署名・押印が必要というけですね。
間違っても、被告人の供述書(≠供述録取書)の場合に、被告人の署名・押印が必要と勘違いしないでくださいね。
不利益供述
続いて、青太字についてです。
被告人の供述が不利益なものである場合は、証拠能力が認めらます。かなり緩い要件になっていますね。
たとえば犯行を自白するような文言が書かれている場合は不利益供述として、刑事訴訟法322条の伝聞例外として証拠能力が認められるというわけです。
注意点としては、刑事訴訟法322条1項但書についても考える必要があるという点でしょう。
自白法則の箇所でも学習しましたが、任意性のない自白は証拠能力が認められません。
>>>自白法則(刑事訴訟法319条1項)について詳しい解説【刑事訴訟法その14】
被告人の不利益供述は実質的には自白ですので、この場合も任意になされる必要があるというわけですね。
ただし、論述で書く際には、この刑事訴訟法321条1項但書はあまり問題になりませんので、
また、任意にされたものでない疑があるとは認められない(刑事訴訟法321条ただし書)。
といったように1行書いておけば大丈夫です。
絶対的特信情況
絶対的特信情況は刑事訴訟法321条1項3号と考え方は同様です。
外部的付随的事情より、信用なる情況であるかどうかを考えます。
たとえば、身内に対しての供述であったり、改ざんの恐れのない場面であったり、犯行日からすぐの記憶が鮮明なうちに書かれていたりすると、特信情況が認められやすいでしょう。
こちらは、絶対的(客観的)特信情況であり、刑事訴訟法321条1項2号のような相対的特信情況ではないため、前の供述と後の供述とでどちらが特信性があるか(信用できるか)という話ではない点には注意が必要です。
まとめ
以上、刑事訴訟法322条を用いる被告人自身の供述書・供述録取書をみてきました。
要件を図にまとめてみましょう。
特に、供述録取書のときには署名・押印が必要なこと、不利益供述から証拠能力を認める場合には、322条1項但書まで検討する必要があること(前述のとおり1行書けば大丈夫です)を忘れないようにしましょうね!
解説は以上です。読んでくださってありがとうございました。ではまた~
参考文献
刑事訴訟法の参考文献としておすすめするのが、基本刑事訴訟法Ⅱです(基本刑事訴訟法Ⅰは手続法ですので刑事訴訟実務基礎に使うものです。一般的な刑事訴訟法を勉強する際にはⅡの方を選ぶよう注意が必要です)。
最近登場したものですので、有名ではないかもしれませんが、今後はこれが刑事訴訟法のバイブルに必ずなっていきます。
具体的な事例に沿って刑事訴訟法を理解できる作りになっているので、初学者にとっても理解しやすくなっています。
本当におすすめです!ぜひ読んでみてください!