恐喝罪の論点と要件をわかりやすく整理!【刑法各論その14】

恐喝罪刑法
法上向
法上向

恐喝罪ってどんな犯罪だ?

強盗罪っぽいやつですよね。反抗を抑圧する程度にいかない場合の犯罪みたいな……。

法上向
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なるほど。恐喝罪を強盗罪と同様に考えてしまうと混乱してしまうと思うな。実は恐喝罪は詐欺罪をもとに考えるべきなんだ!

 

詐欺罪!詐欺罪ってたしか欺罔行為→錯誤→交付行為のやつですよね。

この考え方が恐喝罪にも使えるんですか?

法上向
法上向

そうだね、詳しくみていこう。

恐喝罪詐欺罪の基本を押さえていれば楽に覚えることができます。詐欺罪は欺罔行為→錯誤→交付行為の流れでしたが、恐喝罪は恐喝行為(暴行・脅迫)→畏怖→交付行為の流れをとります。

どうでしょうか。ほぼ一緒ではないですか?

詐欺罪に不安がある方は以下の記事をご参照ください。

それでは恐喝罪についてみていきましょう!

恐喝罪のポイント

恐喝罪の保護法益は詐欺罪と同様に考えてよいでしょう。財産です。そして要件を押さえます。恐喝罪には借金の取立てという論点があるのでその点も押さえていこうと思います。

①恐喝罪の保護法益を押さえる。
②恐喝罪の要件を押さえる。
③借金の取立てという論点を理解する。
では説明していきます。

恐喝罪の保護法益

恐喝罪の保護法益は財産です。これは詐欺罪と同じですね。というのも、恐喝罪詐欺罪財産犯のなかでも交付罪(被害者の意思によって財物が移転するもの)なので、占有が保護法益とはなりにくいからです。

窃盗罪強盗罪で占有(所有権)が保護法益とされるのは、その占有を奪う行為に違法性があるからでした。詐欺罪恐喝罪は、その者自身が交付はしてくれているので、その占有を「奪う」とはいえず占有が保護法益とはいいにくいでしょう。よって何がより重視されるかというと、その者の「財産」が失われているかどうか、もっというとその者の「財産を自由に処分する権利」が損なわれているかどうか、という視点になってくるというわけですね。

しかし、このことはほとんどの基本書には書かれていません。よってほぼ論点にならない、知っておく必要がない部分かもしれません。よくわからなければさっと流す程度で大丈夫だと思います。

恐喝罪(刑法249条)の要件

刑法249条恐喝罪の規定です。

(恐喝)
第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

詐欺罪強盗罪と同様に、1項2項に分かれています。ここでもわかりやすいように1項恐喝罪2項恐喝罪と呼び分けるようにします。

1項恐喝罪の要件

ここで詐欺罪の規定を復習してみます。

(詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

恐喝罪をみると詐欺罪とほぼ一緒の規定ということがおわかりいただけるのではないでしょうか。「欺いて」が「恐喝して」に置き換わっただけですね。

ということは要件もほぼ一緒になるわけです。

①恐喝行為②畏怖③交付行為④故意⑤不法領得の意思

欺罔行為」→「恐喝行為」、「錯誤」→「畏怖」に変わっただけですね。このように詐欺罪の要件さえ覚えてしまえば、恐喝罪は無理に覚える必要はなく、置き換えるだけでいいということです。

故意不法領得の意思はいつも通りです。故意については刑法総論、不法領得の意思については窃盗罪のところで確認してみてください。念のためにボタンを作っておきます。不安がある方はクリックしてみてください。恐喝罪ではあまり問題とならない要件です。

故意 不法領得の意思

それでは①恐喝行為②畏怖③交付行為についてみていきましょう。

①恐喝行為

恐喝行為とは暴行・脅迫を指します。暴行とは不法な有形力の行使、脅迫とは一般的な害悪の告知のことでした。詳しくは以下のボタンをクリックです。

暴行 脅迫

さて、ここで強盗罪の暴行・脅迫を思い出してみてください。「反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫」でしたよね。

恐喝罪では少し程度が落ちますが、ある程度強い暴行・脅迫が必要になります。これを一般的には「人を畏怖させるに足る暴行・脅迫」と言います。ただし反抗を抑圧する程度には至りません

この文言は覚えるべきでしょう。

②畏怖

恐喝行為が「人を畏怖させるに足る暴行・脅迫」であるため、畏怖という要件は自ずと出てくることがわかります。

恐喝

詐欺罪では相手方は錯誤に陥っていましたが、恐喝罪では畏怖状態にあるのです。怖がって財物を交付してしまう、ということですね。

③交付行為

交付行為は詐欺罪ではかなり問題になるのですが、恐喝罪ではほとんど問題になりません

というのも、詐欺罪は錯誤によって交付行為が行われていました。となると相手方が本当に財物を交付したかどうか、の判断基準について様々な見解があり、交付意思が必要だが外形上の認識で足るという見解が有力なわけです。

一方で、恐喝罪は畏怖によって交付行為が行われています。となると、相手方はだまされて財物を渡しているわけではないので交付行為は当然にあると考えらえるわけです。

2項恐喝罪

2項恐喝罪2項詐欺罪と同様の考え方をとれば大丈夫でしょう。

1項恐喝罪の財物交付が利益移転になるだけです。

①恐喝行為②畏怖③処分行為④故意⑤不法領得の意思

③が交付行為ではなく処分行為となっているのは財産上の利益の移転を「交付」とはあまりいわないからです。

財産上の利益が処分されているか=移転されているかを考える点がポイントですね。

論点:借金取立ての恐喝

さて、恐喝独自の論点を見てみましょう。債務者に対して債権者が「早く払え!!殺すぞボケ~!」といって債権を回収する、借金を取り立てるのは恐喝罪にあたるでしょうか?

借金取立て

相手方が畏怖して支払った場合には、脅迫によって金を得ているわけだから要件に該当して恐喝罪にあたるんじゃないの?

でも、この恐喝行為は債務を回収するために行っている行為でしょ。社会一般にもこのような取立ては行われてそうじゃない。それを恐喝罪で違法とするのは違和感があるわ。

法上向
法上向

どちらもいい指摘だね。わかりやすい考え方は、客観的には要件に該当するから違法だが、債権者であるという事情は違法性阻却事由で考えるという方法だな。

基本的に刑法は構成要件該当性判断の段階では、客観的に淡々とあてはめていくので、債権者による借金の取立てであったとしても、それが①人を畏怖させるに足る暴行や脅迫によって行われ、②相手方が畏怖し、③相手方がお金を交付した場合には恐喝罪(刑法249条)に該当します。

しかし、債権者にはある程度強い働きかけによって自身の債権を回収するということは認められてよいはずです。このような事情は違法性を阻却する事情(違法性阻却事由の正当行為)として事案に応じて考えることになります。

判例でも、社会通念上の受忍性によって違法性阻却を考えているものがあります。

より詳しく要件したいなら、違法性が阻却される場合は①正当な目的があること②手段が相当であることを検討するようにするといいでしょう。目的手段審査(違憲審査基準)という憲法での考え方がここでも利用できるわけです。

あれ?この考え方って窃盗罪の自救行為と似ているね!

法上向
法上向

よく気が付いたね。窃盗罪の自救行為も要件該当性は認めるが、取戻しであるといった事情は違法性阻却で考えていたよね。その考え方と根本は一緒ということさ。

窃盗罪の自救行為については以下の記事を参照してください。

間違っても、構成要件違法性阻却をごちゃまぜにして論じないようにしましょう構成要件該当性判断はあくまでも客観的に淡々粛々と行うことが重要です。

まとめ

以上、恐喝罪をみてきました。要件は詐欺罪の構成とほとんど変わらないことがわかっていただけたと思います。

最後にもう一度、恐喝罪の要件を思い出してみましょう。言えましたか?

言えなかった方は以下でもう一度復習をしてみてください。

①恐喝行為(人を畏怖させるに足る暴行・脅迫)②畏怖③交付行為・処分行為④故意⑤不法領得の意思

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

刑法各論は刑法総論に引き続き,基本刑法をおすすめします。事例問題を示しながら解説されているので,初心者から司法試験対策まで幅広く対応できる作りになっていると思います。

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