改正対応!相続の対抗問題はこれだけを押さえろ!【物権法その5】

民法

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不動産二重譲渡の問題として、相続との関係も問題になってきますよね?

法上向
法上向

そうだね!相続は相続改正の影響もあって非常にわかりづらい分野になっているぞ。今回は相続と二重譲渡の問題についてしっかり読み解いていこう!

相続における対抗問題の最大の問題点は、相続に複数の場合があるということです。

遺産分割遺言相続放棄といった問題があります。

さらに難しくさせているのが改正法、民法899条の2の理解です。これができたことによって民法177条との関係性がわかりにくくなっています。

相続の種類と民法899条の2とを上手に理解していくことで、相続と対抗問題の関係性について理解できるようになっていくはずです。

相続の対抗問題のポイント

まず、相続の対抗問題が論点となる場面について理解しましょう。

その次に、遺産分割における対抗問題を押さえます。これはあの魔法の言葉を使えるので理解しやすいです。

その後、遺言における対抗問題を押さえます。

最後に、相続放棄における対抗問題を押さえます。これは少し例外的なのでしっかり意識して理解する必要があります。

①相続の対抗問題の場面を理解する。
②遺産分割における対抗問題の考え方を理解する。
③遺言における対抗問題の考え方を理解する。
④相続放棄における対抗問題の考え方を理解する。

それでは見ていきましょう。

相続の対抗問題の場面

相続の対抗問題は考え方が理解できても、どのような場面で用いるのか理解しづらいです。そのため、場面をしっかりと押さえる必要があります。

相続の基本

はじめての物権法シリーズで物権変動について学習している方のほとんどは相続についてまだ学習したことがないと思います。

そのため、最初に相続の基本を押さえておきましょう。

Aさんが死亡し、BさんとCさんが相続人の場面を想定してください。

Aさんは不動産を持っていました。

Aさんが死亡した時点で、BさんとCさんは不動産に対する権利として2分の1ずつをもちます(これを持分権といいます)

遺産分割があるまで、BさんとCさんはそれぞれ不動産に対して2分の1ずつ権利(持分権)をもつというわけです。

これがすべての基本なので必ず押さえてください。

対抗問題が論点となる場面

上図からさらに設定を付け加えます。

Aさんは不動産を持っていましたが、AさんからBさんへその不動産が移転する物権変動がありました(遺産分割やAの遺言、Cの相続放棄などです)

一方で、第三者DさんがCさんの差押えとして、不動産の2分の1の持分権を差し押さえたとします。(たしかに不動産はA→Bへ動きましたが、対外的には明確ではないので、Cの債権者DはCの持分権を差し押さえちゃったというわけです)。

ここでBさん VS Dさんの図式が出来上がるというわけです。

さて、A→Bの物権変動よりBの不動産100%取得が勝つのか?それとも、DのCの持分権に対する差押えより、不動産の2分の1の権利取得が勝つのか(Dが勝つ場合、Bは不動産について残りの2分の1しか権利を主張することができません)?

さて、BとDとの間で対抗関係が問題となるわけです。

遺産分割と対抗問題

遺産分割と対抗問題の場面のイメージ

遺産分割と対抗問題のケースは上の図でいうところのA→Bへの矢印が「遺産分割」になるということです。

遺産分割とは、わかりやすく言えば

相続が始まって、誰にどの財産を帰属させるかの決定

をいいます。

上の図でいうと、BC間での遺産分割協議によって、不動産がBへ移るということですね。

じゃあ、BさんにはAの不動産をあげるわ。

とBC間で会議がなされたというわけです。

すると、A→Bへ不動産の物権変動を捉えることができます

遺産分割では前回勉強した魔法の言葉を利用することができます!

第三者の登場が、前なら条文、後なら二重譲渡(民法177条)

です。

これを遺産分割に応用すると、

第三者の登場が、遺産分割前なら民法909条ただし書、遺産分割後なら民法177条(民法899条の2)

を考えることになります。

第三者の登場が遺産分割前の場合

第三者の登場が、遺産分割前の場合には、条文を考えます。

遺産分割の場合には民法909条ただし書を見てみましょう。

(遺産の分割の効力)
第九百九条 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない

第三者の権利を害することはできない、とされていますね。

条文に善意や無過失といった文言はないので、すべての第三者(悪意や過失があっても)は保護されるというわけです。

よって、遺産分割前にDが登場していた場合には、Dの勝ちとなります

Dは不動産の2分の1についての権利を手に入れ、Bは残りの2分の1の権利しかもたないというわけです。

第三者の登場が遺産分割後の場合

魔法の言葉に従えば、

第三者Dの登場が遺産分割後の場合には、二重譲渡の関係、すなわち民法177条を使うことになります。

しかしながら、相続法改正によって、相続については特別な規定が創設されました。

民法899条の2第1項です。相続関係ではこちらを参照することになります。

(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第八百九十九条の二 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
2 前項の権利が債権である場合において、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。

非常にわかりにくい条文ですが、わかりやすく翻訳すると、

相続の物権変動は、法定相続分を超える部分については登記は必要ないけれど、法定相続分を超える部分については登記が必要だよ

ということです。

通常の場合は、不動産の物権変動を第三者に主張するためには登記が必ず必要でした。一方で、相続においては、法定相続分を超えない場合、登記は必要ないということですね。

すると、D対Bのバトルの場面では、

Bは不動産について法定相続分(この場合は2分の1)については登記なしでDに対抗(主張)できるが、法定相続分を超える部分(不動産100%)について主張したい場合には、登記が必要

というわけです。

通常、Bは不動産すべてを主張したいでしょうから(遺産分割でBは不動産100%を所有する権利があるので)、登記をDより先に備える必要があるということですね。

もちろん、Bが変わった人で、

遺産分割で不動産100%もらえるけど、別に法定相続分2分の1だけあればいいやー

という人であれば、登記を備えることなく、第三者Dに主張できるということになります(まぁ、そんな人いないでしょうが…)。

また、第三者Dが背信的悪意者のような「第三者」ではない場合には、Bは登記なくして不動産100%の権利を主張することができます。これは民法177条の考え方と同様です。

遺言と対抗問題

遺言の場合には遺産分割と異なり、条文がありません。そのため、常に遺言が優先されるとも思われます。

しかしながら、民法899条の2第1項ができたことによって、この条文が優先されるのです。すなわち、常に対抗関係の問題になるということです。

もう一度、民法899条の2第1項を確認してみましょう。

(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第八百九十九条の二 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。

遺産分割にかかわらず、すなわち、遺言についても民法899条の2第1項の適用があるというわけですね。

A→Bの遺言における物権変動について、

Bが登記を備えるのであれば、法定相続分(2分の1)を超える不動産100%についての権利主張を、
Bが登記を備えないのであれば、法定相続分限りの不動産50%についての権利主張を、

第三者Dに対してすることができるというわけです。

相続放棄と対抗問題

相続放棄とは、自身の相続の権利を放棄するということです。

したがって、上図において、Cが相続を放棄したとすると、Aの相続人はB1人だけとなり、不動産の権利は100%Bに帰属します

しかし、それを知らず、DがCの持分権(2分の1)を差し押さえたとしましょう。

D対Bのバトルものになるということがわかりますね!

この場合、先ほどの民法899条の2第1項を適用すれば、登記移転すればBが不動産100%、登記移転をしなければBは法定相続分の不動産50%の権利しか主張できないように思えます。

しかし!!

相続放棄には民法899条の2第1項の適用はないとされているのです。

そして、Bは常に100%の不動産の権利を手に入れることになります。

ん??意味が解らなくなってきました。

相続放棄の場合には、Bが常に勝つということですか??

法上向
法上向

そういうことさ!相続放棄は絶対的効力をもつんだ。

そのため、相続放棄をしてしまったら、Cは無権利者=Dは差し押さえることはできない=Bの勝ちということだな。

相続放棄を理解するコツは、相続放棄は絶対ということです。

相続放棄をしてしまったら、相続人ではなくなる=被相続人の不動産について何も権利をもたない無権利者となる

ということが確定します。

すると、Dが差押えすることもありえないことになり、常にBが勝つというわけです。

やっかいなのは、Dの登場が相続放棄前の場合でも同様ということです。

DがCの持分権を差し押さえた後であっても、Cが相続放棄したのであれば、Bは勝ちます。すなわち、登記なくして不動産100%の権利主張ができるということです。

それくらい相続放棄というのは

絶対的効力

をもつというわけですね。

まとめ

以上、相続と対抗問題の関係性についてみてきました。

なかなか複雑に思われたかもしれませんが、場面を分けてしっかり押さえていけば大丈夫です。

まず、遺産分割については、前回の魔法の言葉がそのまま適用できました。

次に、遺言については、新設の民法899条の2が適用されます。

最後に、相続放棄については、相続放棄が絶対的効力をもつがゆえ、対抗問題になりえないということになります。

①遺産分割は、第三者の登場が遺産分割前なら民法909条ただし書、後なら民法899条の2第1項

②遺言は、常に民法899条の2第1項

③相続放棄は、常に第三者が負ける

最初のうちは相続や遺言、遺産分割という家族法の用語がありわかりにくいと思われるかもしれません。家族法を学習してから戻ってくるのも一つの手です。

自分がやりやすい方法で地道に復習していってください!

解説は以上です。読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

物権法のわかりやすい基本書としては佐久間先生のものをお勧めします。

事例付で詳しく解説されているので、初学者の方には特におすすめです。

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