民法総則も理解できたし、いよいよ物権法を勉強します!
物権法は、民法学習者が最もつまづきやすい部分だから、注意してかかることが重要だ!一緒に頑張っていこう!
民法学習の大きな流れは、民法総則→物権法→債権総論→債権各論→家族法というものです。そしてこの中で最も難しい分野は「物権法」でしょう。
というのも、民法総則や債権総論、債権各論は改正法で条文が詳しく、初学者に優しくなりましたし、家族法は身近な法律なので理解しやすいためです。
一方、物権法は、改正されていない(現在改正審議中です)&身近ではないという二重苦を抱えています。
普段生活していても、物権的請求権や登記といった問題は出てこないがためですね。
そこで、今回の「はじめての物権法シリーズ」では、物権法についてわかりやすさ第一に解説していきます!一緒に頑張って勉強していきましょう!
物権法を学ぶポイント
一口に物権法といっても、物権と担保物権という大きな2つの柱に分かれます(そのため、基本書や問題集を2つに分けているものも多いです)。
物権で、一番大事なのは「物権的請求権」です。そしてこの物権的請求権の適用場面として、「物権変動(いわゆる二重譲渡や対抗問題)」があります。
続いて、担保物権で一番重要なのは「抵当権」です。もっとも、試験対策でいうなら「譲渡担保」も押さえなければなりません。
物権法の3大ボス「物権変動」「抵当権」「譲渡担保」を押さえればほぼ物権法をマスターしたといっても過言ではないでしょう。
一緒にコツコツ頑張っていきましょう!
今回はその最初のステップということで「物権とは何か?」について解説していきます。特に債権との違いを意識することが重要です。
「債権とは何か?」については以下の記事にまとめていますので、不安な方はぜひ確認してみてください。
①物権とは何かを理解する。
それでは見ていきましょう!
物権の特徴は3つ!
物権は債権と異なり当事者間で設定できない(物権法定主義)
さて、物権で最初に押さえてほしい特徴は
債権と異なり、当事者同士の合意による設定はできない
ということです。
債権総論や債権各論を勉強するとわかると思いますが、契約は当事者の合意がすべてです。契約法に存在しない義務や権利も、当事者が合意しているのであれば、存在することになります。
たとえば、物の売買において、当事者同士で「物の引渡しの時には腕立て伏せ100回して」と言い、相手方が「いいよ!」といえば、「物の引渡しの際に腕立て伏せ100回行う」というのは立派な債権となります。
守らなければ、原則として債務不履行となり、契約解除、損害賠償等になるでしょう。
このように債権では、当事者で自由に設定できるという特徴があります。
一方で、物権は、基本的に当事者で自由に設定できるものではありません。
物権は物権法定主義といって、法律に規定された物権しか存在しないのです。
なんで物権は当事者で勝手に設定しちゃダメなんですか?不自由でしょー!
いい質問だね。それは物権のもう一つの性質に関係しているんだ。次を見てみよう。
物権は誰に対しても主張できる(絶対性)
債権は当事者間で生じているだけであり、第三者(当事者以外の人)には基本的に主張できません。
たとえば、売買契約において、売主と買主との間で「物の引渡しの際に腕立て伏せ100回する」という合意をしていたとしても、
その合意を買主のお母さんには主張できないというわけです。「息子さんが腕立て伏せを100回しません。なのでお母さん、あなたが腕立て伏せをしてください!」という主張はできないというわけです。
債権は当事者同士でしか成立しないためですね。
一方で、物権は誰に対しても請求できます。
「物を引き渡せ!」という権利は物権ですが、これは自身が所有権を持っていれば、誰に対しても主張できるというわけです。
となると、物権でめっちゃ強いですね!
そうだろ?ここでさっきの疑問は解消されたかな?
もし、当事者同士で自由に物権を設定できるとすると……
あ!物権は絶対的で強力な権利だから、社会がおかしくなります!
好き勝手にいろいろな人に、いろいろな請求ができちゃうことになるので!
その通り!
だから、物権は「当事者同士の合意によっては設定できない=物権法定主義」があるというわけさ。伏線回収できたね!
物権はいつも一つ(一物一権利主義)
物権で押さえてほしい最後の特徴として「一物一権主義」があります。
文字通り、
1つの物には1つの権利しか存在できない=1つの物に複数の権利が存在することはない
ということです。
たとえば所有権について考えてみます。
本屋で好きな漫画を購入したとしましょう。
この漫画についてあなたは所有権をもちますよね?
そしてこの場合に一物一権主義をあてはめると、
この漫画に対して1つの所有権しか存在しない=この漫画に複数の所有権が存在することはない
ということになります。
すなわち、友達が「この漫画、俺のだよ!」と主張してきたとすると、本当に所有権を持っているのはあなたかその友達のどちらかということになります。
なぜなら漫画について所有権は1つしかないからです(一物一権主義ですね)。
もっとわかりやすく言えば
物権はいつも一つ!!
ということです。いろいろな人が物権を主張してきたとしても、真実としてその物権を持っている者は一人だけということです。
まとめ
以上物権の特徴を3つみてきました。
思い出せますか?
①物権は当事者で設定できない(物権法定主義)
②物権は誰に対しても主張できる(絶対性)
③物権はいつも一つ(一物一権主義)
でした。これらの特徴の反対の性質を持つのが「債権」です。
物権の性質は試験に直接問われるものではありませんが、今後の物権法の学習においてはこれらの性質がわかっていなければついていけないと思います。
しっかり押さえていきましょうね!
解説は以上です。読んでくださってありがとうございました。
参考文献
物権法のわかりやすい基本書としては佐久間先生のものをお勧めします。
事例付で詳しく解説されているので、初学者の方には特におすすめです。