任意同行・任意取調べの問題を攻略する【刑事訴訟法その4】

任意同行・任意取調べ刑事訴訟法

任意取調べってどこで問題になるかいまいちよくわからないんですよねー。影が薄いっていうか。

法上向
法上向

任意同行・任意取調べは逮捕していない状態での問題だな。

けど,「任意」っていうことだから同意があるってことですよね。それなら何しても違法とはならないんじゃないんですか?

 

法上向
法上向

そうとも言えないんだよ。刑事訴訟には捜査比例原則があるからね。

任意同行・任意取調べの問題についてみていこうと思います。まず最初に疑問に思うのが,「任意」なのになんで違法になるのか?という点だと思います。これに対する答えとしては,毎度おなじみの捜査比例原則があるため任意であったとしても相当性を欠くと違法となる,というものが考えられます。

このように,単に同意が得られていれば問題ないのではなく,しっかりとその内容を見て考えていく必要があるのです。ではどのような手順を踏んで考えていけばいいのか。今回はこの問題について考えてみます。

任意同行・任意取調べのポイント

任意同行・任意取調べはまず問題になる時点を意識しましょう。意外と陰の薄い論点なのでどの時点で問題になるのか,全体を通してみたときにこんがらがるおそれがあるためです。

次に,手順を考えてみます。なお,任意同行・任意取調べは連続する場合が多く,まとめて違法かどうか判断審査される場合が多いと思います。そのため,任意同行/任意取調べと分けずに任意同行・任意取調べ全体として違法性を判断していきます。

①任意同行・任意取調べが問題になるのはどのような場合かを確認する。
②任意同行・任意取調べの考え方を押さえる。
それではみていきましょう。

任意同行・任意取調べが問題になる場面

さて,任意同行・任意取調べが問題になる時点はどの場合でしょうか。一緒に捜査機関の立場になって考えてみましょう。

職務質問で不審事由がある者や犯人の疑いがある者,重要参考人がわかっているが,逮捕までの証拠等がなく,現行犯逮捕等も厳しい場合,捜査機関は何もしないとその者を逃してしまいます。また,事件も迷宮入りになってしまうかもしれません。

そのため,捜査機関はその者の話を聞きたいと考えるのが普通です。職務質問よりしっかり取調べとして話を聞きたいんですね。ただし,令状はとれない状況なので「任意」でしか行えません。これは任意捜査・強制捜査のところでも確認しましたね。

この場面で,任意同行・任意取調べの問題が生じるのです。任意同行とは,任意取調べの前段階で,職務質問の場面や被疑者の家に行って「ちょっと,警察署で話聞かせてもらっていいかな?」という感じで同行を求めるものです。これも「任意」で行います。令状はないので強制はできません。

ここで条文を確認しておきましょう。刑事訴訟法198条1項です。

第百九十八条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。

刑事訴訟法198条1項より任意(いつでも退去自由がある)であれば,同行や取調べを促せるということですね。

ここで任意なのだから,問題ないのではないか?という最初の疑問が生じると思います。しかし,前で確認したように,刑事訴訟には捜査比例原則があるので,たとえ任意であったとしても相当性を欠く同行手段や取調べ態様は違法となるのです。

それでは,どのような手順で任意同行・任意取調べが問題になるのかを考えていきましょう。

①任意同行・任意取調べは逮捕前に問題になる。
②たとえ任意であったとしても相当性を欠くものは違法となるので任意同行・任意取調べの問題が生じる。

任意同行・任意取調べの考え方

実質的逮捕かどうか

まず,任意同行で問題となるのは,実質的逮捕ではないかどうかです。通常,逮捕の場合には逮捕状が必要です。しかしそれを潜脱するような,逮捕状なしで実質的に逮捕しているような状態で任意同行をしている場合は違法ということですね。

実質的逮捕かどうかの簡単は判断方法は「退去自由があるかどうか」です。たとえば警察官に囲まれ退去できないような任意同行であれば仮に被疑者が同意している場合であってもその場から逃げにくいので実質的逮捕とされる場合がありえます

これは任意捜査・強制捜査でみた第1段階審査(強制処分かどうか)とほぼ考え方としては同じです。つまり,最初の段階で強制処分ではないかを考えているということです。

これをより一般化すると,個人の意思を制圧+重要な権利利益の制約ではないか,を考えていることになります。よく問題となるのは逮捕であるために退去の自由があったか(個人の意思を制圧していないか)を考えているだけです。任意同行・任意取調べで問題になる権利利益は身体の自由・供述の自由ですので,重要な権利利益要件は満たされるでしょう。

社会通念上の相当性があるかどうか

次に,実質的逮捕とまでは言えなくても,社会通念上の相当性があるかどうかを考えます。これも任意捜査・強制捜査の第2段階審査と似ていますね。

あれ?でも任意捜査・強制捜査の第2段階の審査って必要性・(緊急性)・相当性でしたよね。今回は「社会通念上の相当性」を考えるんですか?

法上向
法上向

そうだね。判例の文言に沿った方がいいと思うから,任意同行・任意取調べの第2段階の審査では「社会通念上の相当性」という文言を使った方がいいだろう。
しかし,これも背景には捜査比例原則があるから,内容としては任意捜査・強制捜査の第2段階の審査(必要性・緊急性・相当性)とほぼ同じだね。

社会通念上の相当性について,判例ではその考慮要素も挙げているので余裕があれば,それも覚えるとよいでしょう。

取調べの肉体的精神的負担VS事案の性質,被疑者に対する容疑の程度,被疑者の態度

肉体的精神的負担でよく出てくるのが,深夜にわたる取調べやずっと警察官の目にさらされている場合などです。

対して,事案の性質が重大なものほど,容疑の程度が高いほど,被疑者の同意の積極性が高いほど,その取調べの態様が多少きつくても社会通念上相当性があるとされる場合があるということになります。

天秤にかけるイメージですね。

①実質的逮捕(強制処分)かどうか,考える。基本は個人の意思の制圧+重要な権利利益の制約だが,多いのは退去の自由があったかである。退去の自由がなければ実質的逮捕といえる。
②社会通念上相当性があるかどうか(取調べの肉体的精神的負担VS事案の性質,被疑者に対する容疑の程度,被疑者の態度)を考える。

まとめ

いかがだったでしょうか。図にしてまとめてみましょう。

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

刑事訴訟法の参考文献として「事例演習刑事訴訟法」をお勧めします。はじめての方にとっては解説が大変難しい問題集ですが,非常に勉強になるものです。また,冒頭にあります答案作成の方法について書かれた部分については,すべての法律について共通するものなのでぜひ読んでほしいです。自分も勉強したての頃にこれを読んでいれば……と公開しております。

最初は学説の部分はすっとばして問題の解答解説の部分だけを読めばわかりやすいと思います。冒頭の答案の書き方の部分だけでも読む価値はあるのでぜひ参考にしてみてください。

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