ロー生が株主総会の論点をわかりやすく解説【会社法その2】

株主総会商法

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会社法って条文長いし多すぎません?どこから勉強すればいいかわかりません。

法上向
法上向

会社法は論点を押さえるようにするとわかりやすくなるぞ。とりあえず,今回は株主総会の論点を見ていこうか。

会社法は初学者に最も不親切なものだと思います。一般的な基本書等ではまんべんなく記述がされていますが,ここではよく出る論点を中心にわかりやすく解説し,会社法の全体をなんとなく理解してもらうことを目標に書いていこうと思います。

そのため,論点型の勉強が有利です。特に会社法は条文のわりに論点が少ないので論点中心でそれにかかわる条文を適宜確認するという方針をとりたいと思います。

株主総会のポイント

会社法で比較的わかりやすい株主総会を今回は解説します。株主総会の論点は「取消し・無効・不存在」がほとんどです!これを押さえればとりあえずは大丈夫です!

①会社法の株主総会の前提を押さえる。
②どのような場合に株主総会が取消し,無効,不存在になるかを押さえる。
ポイントに沿って解説していきます!

株主総会の前提事項

309条を中心に!

すぐ論点に入っていきたいのですが,会社法は前提事項を押さえないとなかなか頭に入ってきません。できるだけ簡略化して最小限にとどめたいと思います。

まず,株主総会の話題だなーと思ったら会社法309条を思い浮かべてみてください。

(株主総会の決議)
第三百九条 株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
この規定ですね。これはまぁ,国会みたいな感じで株主総会の定足数とどれくらいの票があれば可決するかが決められています。

次に,309条からざっと,309条より前の条見出しと309条より後の条見出しを見てください。309条付近に株主総会関連の条文が固まってるからです。つまり,309条をピラミッドの頂点として株主総会についての条文は散らばっているのです。

こう考えれば,わざわざ一条一条条文の番号を覚えなくても,309という数字だけ覚えれば,株主総会の問題は解けるようになります。

招集通知はいつか?

では,株主総会招集通知(株主総会開催するから来てねーという会社から株主への手紙)はいつまでに出さないといけないかわかりますか?

309条を基準として前にさかのぼると条見出しが株主総会の招集の通知となっている会社法299条に出会えたと思います。これまたよくわからない条文ですが,1項はこう書いてあります。

(株主総会の招集の通知)
第二百九十九条 株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の二週間(前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては、一週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。

つまり,株主総会の二週間前(公開会社は一週間前)に招集通知を出さないといけないわけですね。会社法の条文を読むコツは要所だけ掴むことです。今回だと太字部分です。訳が分からないことを言っている部分は飛ばしてください。ポケモンでいうところの草むらででてきたしょうもない戦いは逃げて,ジム戦だけ頑張るみたいなものです(笑)。

取締役会設置会社と株主総会

では難易度をあげましょう。株式会社には取締役会を設置することができます。実は取締役会設置会社は株主総会についてある規定があるのです。使うのはもちろん309条です!

5 取締役会設置会社においては、株主総会は、第二百九十八条第一項第二号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない。ただし、第三百十六条第一項若しくは第二項に規定する者の選任又は第三百九十八条第二項の会計監査人の出席を求めることについては、この限りでない。

はい,ただし書は草むらのポケモンなので無視しますよ(笑)。取締役会設置会社だと,株主総会は298条1項2号に掲げる事項以外の事項について審議できないらしいです。

ってなわけで298条を見てみます。

(株主総会の招集の決定)
第二百九十八条 取締役(前条第四項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主。次項本文及び次条から第三百二条までにおいて同じ。)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主総会の日時及び場所
二 株主総会の目的である事項があるときは、当該事項
三 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
四 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
五 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
株主総会を招集する際に決める目的事項だったのですね。なお細かいので条文等は省略しますが,取締役会設置会社では目的事項は招集通知に記載することになります。

よって,取締役会設置会社は株主総会招集通知でその総会で何を決議するのかを事前に見れる。当日急に知らない話題になることはないということですね。

まとめ

以上が株主総会の取消し・無効・不存在へつながる前提知識となります。ちょっとまとめてみましょう。

①株主総会の条文は309条を中心に,まわりをみていく。
②招集通知については299条(309条からちょっと遡って探す)。
③取締役会設置会社の場合は,目的である事項以外は決議できない(309条5項)。
以上を押さえて,いよいよ本題に入っていきます。

株主総会の取消し・無効・不存在

決議取消しの訴え

株主総会に瑕疵があればもちろん取り消したりできるわけです。これを会社法では訴訟として条文化しています。訴訟ときたら,831条を思い出しましょう。先ほどの309条と結構離れるので,これはまた別で覚えなければなりませんね。

基本は取消しですので,取り消しを中心に説明します。よっぽどのことがないと無効や不存在にはならないからです。取消しは手続や内容が著しい場合です。

(株主総会等の決議の取消しの訴え)
第八百三十一条 次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより株主(当該決議が創立総会の決議である場合にあっては、設立時株主)又は取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。以下この項において同じ。)、監査役若しくは清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第三百四十六条第一項(第四百七十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役)又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。
一 株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。
二 株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。
三 株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。
長すぎてわかりにくすぎますね。結局は株主が3か月以内に提訴してください。各号が取消事由になります。ということです。とりあえず太字以外は野生のポケモンですよ!
とまぁ,法令違反や内容が著しく不公正なときとかには取り消せるんだなーと思っていただけだでしょうか。

しかし,どういう場合が実際にこの取消訴訟が使われるかわからないと問題に太刀打ちできません。これは判例で形成されてきたものなので覚えちゃいましょう!

招集通知漏れ招集通知期間の不足,代表取締役会決議を経ない代表取締役による招集
以上です(笑)。少ないですね。他にもいろいろありますが,とりあえず問題になるのは手続違反(1号)であり,その中でも招集通知漏れがほとんどです!たまに招集通知期間の不足があるくらいです。そうでなければ代表取締役会議を経ない代表取締役の招集やそのほかの手続違反(手続については309条の周りに散らばってます)ですね。2号や3号はわかりやすいし今のうちは考えなくてもよいでしょう!

決議無効確認の訴え

決議無効は内容が法令に反する場合です。
第八百三十条 2 株主総会等の決議については、決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を、訴えをもって請求することができる。

ほとんどないですね。内容が法令違反になるようなことをする会社はほとんどいないと思います。なので今回は省略させていただきます。

決議不存在確認の訴え

不存在は,手続の瑕疵が著しい場合です。

(株主総会等の決議の不存在又は無効の確認の訴え)
第八百三十条 株主総会若しくは種類株主総会又は創立総会若しくは種類創立総会(以下この節及び第九百三十七条第一項第一号トにおいて「株主総会等」という。)の決議については、決議が存在しないことの確認を、訴えをもって請求することができる。
これは2つだけ覚えておけば大丈夫でしょう。
(取締役会設置会社において)取締役会決議なしに平取締役が招集した場合,招集通知漏れが著しい場合
誰が招集するかに注意してください。取締役会決議なしに代表取締役が招集した場合は取消事由で,取締役会決議なしにただの取締役が招集した場合は不存在事由になります。また,招集通知漏れが著しい場合も不存在となります。

まとめ

色々見てきましたが,覚えにくい場合はとにかく831条(株主が,3か月以内に)と取消事由の代表である招集通知漏れ・招集通知期間の不足だけとりあえず覚えてみてください。ともに299条の手続ですから覚えやすいと思います。

株主総会に何らかの問題があったら,取り消されたりすると思うので831条を見て条件を確認する(基本は株主が3か月以内にすることになる)。
取消事由としては招集通知漏れか招集通知期間不足(299条)の場合がほとんど。
無効や不存在になる場合は限られているし,あまりでない。

まとめ

どうだったでしょうか。会社法は条文が複雑なので,株主総会関係だったら309条,さらに訴訟になりそうだったら831条を意識して読んでみてください。あとはそれに関係する条文がまわりにあるだけです。

さらによく出るパターンというのは決まっていて,取消事由は招集通知漏れ招集通知期間不足がほとんどです。他の場合は問題を解いていくうちに出てきたら対処すればオッケーです。頑張りましょう!

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

会社法の基本書はどれもかなり難解だと思います。問題で論点をつかみながら理解するとよいです。そのため解説の詳しい問題集を載せておきます。参考にしてみてください!

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