たったこれだけ。取締役の報酬のわかりやすい考え方【会社法その9】

取締役報酬商法
法上向
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取締役の報酬について会社法上の論点は知ってる?

えー,たしか慣行の了知が……

法上向
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なるほど。たしかに基本書等ではわかりにくく書かれていることが多いな。ここではどう考えればいいか検討していこう!

取締役の報酬は会社法上の論点のひとつです。よく問われる部分ではありませんが,問われた場合は知ってないとなかなか解答することはできない分野なので,一緒に考え方をみていきましょう。

取締役の報酬のポイント

取締役の報酬は一定の考え方の筋があります。学説ではいろいろと述べられていますが,今回は本筋をしっかりとらえられるような構成で書いていこうと思います。

①取締役の報酬の手続を理解する。
②取締役の報酬手続なしに行われた場合の処理を押さえる。
③取締役報酬の減額について考え方を理解する。
それではポイントに沿ってみていきましょう!

取締役の報酬の手続は条文と実務を理解

361条についての理解

取締役の報酬についての規定は会社法361条です。これは覚えちゃいましょう!

(取締役の報酬等)
第三百六十一条 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める
一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
二 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
三 報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容
361条1項1号だけ見れば大丈夫です。私自身も2号,3号が適用される場面はみたことがありません(笑)。

定款によって定めるか,株主総会の決議によって定めるか,選べるのですね。通常は株主総会によって定めることが多いと思います。なので取締役の報酬は株主総会の決議によって定めると思ってもらえば大丈夫です。

手続は実務で理解

しかし,条文のまま読み取っていては実務で通用しません。実際は取締役の報酬額を株主総会で決めることはほとんどなく,株主総会では取締役の報酬額の上限を決めるのがほとんどです。これも一応,条文上報酬額を株主総会決議で定めたことになり法令違反には当たらないとされます。

上限を決めたのち,取締役会で各人の報酬の具体的金額を決定するのです。さらに,取締役会で代表取締役に一任することを定め,代表取締役が報酬額を決定する場合もあります。

条文をみただけでは,このような実務の行いはわかりません。取締役の報酬の場合は,条文はこう言っているけど,実際は上限を株主総会で決めるだけで具体的内容は取締役会や代表取締役が決めていると考える必要があるんですね。

なぜこのような手続をとっているのか?それは,取締役個人の報酬を決めることを会社が嫌っているからです。〇〇さんは今年は500万円もらってるんだー。ぜいたくだなー。とか思われるのは皆さんも嫌ですよね。株主に公開されるのは恥ずかしいです。そのため,プラバシー保護的な意味があるといえます。

退職慰労金も取締役の報酬

退職慰労金の問題も取締役の報酬の問題と関係します。退職慰労金とは,退職する取締役に与えるボーナスみたいなものです。これまでがんばってくれてありがとう!という感謝のお金ですね。これも361条1項1号の報酬に該当します。これは条文に載っていない点なので忘れないようにしましょう!

さらに退職慰労金の場合は,株主総会では上限すら決めずに,「〇〇という一定の方法に沿って退職慰労金を決めます」という決議で株主総会はオッケーだとされます。これは退職慰労金の場合,1人や2人の場合が多く上限を決めただけで受け取る報酬額がだいたいわかるためです。上限を決めればプライバシーを守れないので方法を株主総会で決めて,あとは取締役会で具体的内容を決めるようにするのです。

取締役の報酬については会社法361条1項1号を見る。株主総会で上限を決め,取締役会で具体的内容を決定する場合がほとんどである。
取締役会からさらに代表取締役に委任して具体的内容を代表取締役に決定してもらうことも許される。
退職慰労金の場合は株主総会では方法を決めるだけである。

株主総会決議をしなかったら報酬はどうなるか?

さて,取締役の報酬は株主総会で上限を決めるのがでしたね。その株主総会決議がない場合は支払われた取締役の報酬はどうなると思いますか?

正当な手続を経ずに報酬が支払われた。つまり,権限のない者に報酬が支払われたということか。なんかどっかで同じような場面を見たことがあるなー。

株式の譲渡で,権限のない者が利益を得ている場合,本来権限を持っている譲受人からどのような請求ができたか覚えていますか?

不当利得返還請求をするんでしたね!同じように今回も正当な手続を減らずに報酬を得ている取締役に対して,会社は不当利得返還請求をすることができるのです!

また,この請求権を株主が株主代表訴訟で追及することもできます。これに対して会社は防ぐために後から,その問題となっている部分の報酬を取締役会で決議をとることで対処します。やや細かいですが,とりあえず株主総会がなされていないと報酬は得られない,ということは必ず理解しておきましょう。

株主総会がない場合は,取締役に支払った報酬は無効となる。よって不当利得返還請求の問題になる。

 

取締役報酬決定後の減額はなかなか難しい

取締役の報酬の具体的報酬額が決定するのはいつか?

まず取締役の報酬額が具体的に決定するのはいつかを考えてみましょう。上記の復習ですね。

法上向
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取締役の報酬は通常は株主総会で上限を決めて,取締役会で具体的内容を決定するんだったな。

報酬額が決定するのは,株主総会決議時点ではなく,取締役会決議時点(もしくは代表取締役に一任している場合には代表取締役が決定した時)になります。ここは意外と勘違いしやすいので間違えないでください!

減額は取締役が同意したかどうか

報酬額が決定したあと,会社が取締役の報酬を減額できるかの問題です。ここは基本書等ではわかりにくく書かれていることが多いのですが,基本的に考え方は一つです。

取締役が同意したかどうか

これにつきます。あとから株主総会で減額の決議をとったとか,取締役会で減額の承認をとったとか関係ありません。「一度払うっていったら,守れや!」ということです。

この同意についてはいろいろな考えがありますが,黙示のものでもよいとされています。つまり,「取締役の短答する業務に応じて額を決定する」といった慣行があり,慣行を了知していれば,取締役が減額に同意しているとして許されるのです。

その会社の慣行を知っていて,それで取締役の職についたのでれば,ランクに応じて減額したりすることも当然同意してたんですよね,という考えがあるのですね。

しかし,結局は同意の問題に落ち着くということを意識しておきましょう。

まとめ

今回は図にしてまとめようと思います。よくあるパターンの株主総会で上限→取締役会で具体的内容決定をする場合の取締役報酬の考える手順です。

ポイントは株主総会が必要であること,減額する場合は取締役の同意をみることの2点です。ポイントは少ないですが,わすれやすいので気を付けましょう!

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

会社法の基本書はどれも難解だと思います。問題で論点をつかみながら理解するとよいです。そのため解説の詳しい問題集を載せておきます。参考にしてみてください!

商法
はじめての法
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