事業譲渡の論点をわかりやすく解説してみた【会社法その17】

事業譲渡商法

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法上向
法上向

今回は組織再編の1つの事業譲渡について解説していこう!

組織再編…聞いただけで頭が痛くなります……。

法上向
法上向

確かに組織再編は条文がややこしいが、事業譲渡は本格的な組織再編の中にはなく、論点も少ないから簡単な印象があるな。詳しく見ていこう。

会社法のラストに位置しているのが組織再編です。組織再編は応用的な分野として扱われることが多いですが、試験にも出題されやすい分野だと思います。

そのため、初学者の方でも最低限度の知識と基礎は必要です。今回は事業譲渡の基礎基本から論点をどう考えらばいいのか、について重点的に解説していこうと思います。

事業譲渡のポイント

事業譲渡は会社合併や会社分割のような本格的な組織再編とは異なる箇所に独自に設けられている規定です。

そのため、条文も3つくらいしか使いません。そのため、本格的な組織再編のように条文を行ったり来たりすることがないため、簡単だと思います

ただし、ただ条文を読むだけでは気づけない論点もあるので注意しましょう。今回は事業譲渡の論点についても詳しく解説していこうと思います。

①事業譲渡の事業の意味を理解する。
②事業譲渡の手続を知る。
②事業譲渡で株式買取請求権のいらない場合を知る。

それでは見ていきましょう。

事業譲渡の重要な財産の判断方法

事業譲渡の問題を解く際には、本当に事例の会社がやっていることが事業譲渡なのか判断することが必要です。

つまり、事業譲渡とはどのような行為かを知っておく必要があるというわけです。

事業譲渡は組織的かつ有機的一体の財産の譲渡

まず事業譲渡の一般的な要件について押さえましょう。学説上様々な見解がありますが、判例・通説で以下説明していきます。

事業譲渡は3つの要件があります。

①組織的・有機的一体
②承継
③競業菱義務

なお③については①②が認められたら自然と認められ(会社法21条)(要件ではなく効果ともいわれる)、②もほとんど明らかに認められるでしょう。そのため実質的には①だけが要件となります

組織的・有機的一体とは一種の比喩です。ただ単に財産を譲渡するだけでは有機的に一体とはいえません。その事業譲渡によって組織的・有機的にちゃんと動く段階になる必要があるからです。

よって、組織的・有機的一体は暖簾(得意先関係等の経済的価値のある事実関係)を考えるのが一般的でしょうノウハウや得意先等の事実関係(現物的なものではない)も一緒に譲渡されてはじめて、組織的・有機的一体の譲渡=事業譲渡といえるわけです。

事業譲渡は会社法467条1項

まずは条文を確認してみましょう。会社法467条1項です。

(事業譲渡等の承認等)
第四百六十七条 株式会社は、次に掲げる行為をする場合には、当該行為がその効力を生ずる日(以下この章において「効力発生日」という。)の前日までに、株主総会の決議によって、当該行為に係る契約の承認を受けなければならない。
一 事業の全部の譲渡
二 事業の重要な一部の譲渡(当該譲渡により譲り渡す資産の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えないものを除く。)
二の二 その子会社の株式又は持分の全部又は一部の譲渡(次のいずれにも該当する場合における譲渡に限る。)
イ 当該譲渡により譲り渡す株式又は持分の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えるとき。
ロ 当該株式会社が、効力発生日において当該子会社の議決権の総数の過半数の議決権を有しないとき。
三 他の会社(外国会社その他の法人を含む。次条において同じ。)の事業の全部の譲受け
四 事業の全部の賃貸、事業の全部の経営の委任、他人と事業上の損益の全部を共通にする契約その他これらに準ずる契約の締結、変更又は解約
五 当該株式会社(第二十五条第一項各号に掲げる方法により設立したものに限る。以下この号において同じ。)の成立後二年以内におけるその成立前から存在する財産であってその事業のために継続して使用するものの取得。ただし、イに掲げる額のロに掲げる額に対する割合が五分の一(これを下回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えない場合を除く。
イ 当該財産の対価として交付する財産の帳簿価額の合計額
ロ 当該株式会社の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額
2 前項第三号に掲げる行為をする場合において、当該行為をする株式会社が譲り受ける資産に当該株式会社の株式が含まれるときは、取締役は、同項の株主総会において、当該株式に関する事項を説明しなければならない。

注目してほしい箇所は、会社法467条1項柱書と1号、2号です。1号2号以外の号が出題されることは稀でしょう。

中でもよく出題されるのは会社法467条1項2号です!

会社は1つに1つの事業しかもてません。多くの部門をやっている、経営している会社でも法律上は1つの事業ということになります。

つまり、会社のある部門を事業譲渡するとなると、1号の全部の事業譲渡ではなく2号の事業の重要な一部の譲渡となるわけです。

会社のすべての部門を事業譲渡する場合に限って、1号の全部の事業譲渡が使われるわけですね。こちらが使われることはあまりありません。

よって、会社が事業譲渡のような行為を行っていたら2号の事業譲渡をまず疑うべきです。

事業の重要な一部の譲渡(会社法467条1項2号)の判断

会社の事業の重要な一部の譲渡(会社法467条1項2号)はどのように判断すればいいのでしょうか

ただ単に事業の譲渡をしていただけでは会社法上の事業譲渡にあたりません。「重要な」一部の譲渡である必要があります。

この「重要な」の判断方法が1つの論点であり、判断方法を覚えておく必要があります。

なんだ、簡単じゃないか。会社法467条1項2号のかっこ書の部分

(当該譲渡により譲り渡す資産の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えないものを除く。)

に該当するものが「重要な」一部といえるわけでしょ。

法上向
法上向

実は違うんだよ。会社法467条1項2号かっこ書は、「重要性」を基礎づける最低限の要素を規定したにすぎないんだ。

会社法467条1項2号かっこ書は総資産額の5分の1以上の帳簿価格である必要があると述べられています。しかしこれだけを満たしても実は「重要な一部の譲渡」とはいえないのです。

ではどう判断するのか。結論から先に書きます!

事業の重要な一部の譲渡かは質的量的側面の両方から判断する。
→(量的側面)帳簿価格が総資産額の5分の1を超えているかどうか
→(質的側面)企業イメージなど

重要な一部かどうかは量的側面(会社法467条1項2号かっこ書)の最低限のハードルを超えた後、質的側面(実質的に重要といえるかどうか)を考えていくわけですね。

事業譲渡の手続

会社法では手続をしっかり押さえておく必要があります。手続違反が問われることが多いからです。

事業譲渡の手続は条文を見ればわかります

株主総会の特別決議が必要

(事業譲渡等の承認等)
第四百六十七条 株式会社は、次に掲げる行為をする場合には、当該行為がその効力を生ずる日(以下この章において「効力発生日」という。)の前日までに、株主総会の決議によって、当該行為に係る契約の承認を受けなければならない。

事業譲渡では、基本的に株主総会の特別決議が必要です(会社法467条1項柱書、309条2項11号)

反対株主の株式買取請求権も必要

合わせて事業譲渡では、基本的に反対株主の買取請求権を与える必要があります事業譲渡が嫌な株主は会社が株式を買い取りますよ、という手続です。

(反対株主の株式買取請求)
第四百六十九条 事業譲渡等をする場合(次に掲げる場合を除く。)には、反対株主は、事業譲渡等をする株式会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる
一 第四百六十七条第一項第一号に掲げる行為をする場合において、同項の株主総会の決議と同時に第四百七十一条第三号の株主総会の決議がされたとき。
二 前条第二項に規定する場合(同条第三項に規定する場合を除く。)
2 前項に規定する「反対株主」とは、次の各号に掲げる場合における当該各号に定める株主をいう。
(省略)
3 事業譲渡等をしようとする株式会社は、効力発生日の二十日前までに、その株主(前条第一項に規定する場合における当該特別支配会社を除く。)に対し、事業譲渡等をする旨(第四百六十七条第二項に規定する場合にあっては、同条第一項第三号に掲げる行為をする旨及び同条第二項の株式に関する事項)を通知しなければならない
(省略)

株主総会で事業譲渡について反対した株主に対して、買取請求権があることを20日前までに通知する必要があるというわけですね。

株主総会決議が必要ない場合

会社法468条の条文を見てもらった方が早いと思います

(事業譲渡等の承認を要しない場合)
第四百六十八条 前条の規定は、同条第一項第一号から第四号までに掲げる行為(以下この章において「事業譲渡等」という。)に係る契約の相手方が当該事業譲渡等をする株式会社の特別支配会社(ある株式会社の総株主の議決権の十分の九(これを上回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)以上を他の会社及び当該他の会社が発行済株式の全部を有する株式会社その他これに準ずるものとして法務省令で定める法人が有している場合における当該他の会社をいう。以下同じ。)である場合には、適用しない。

会社法468条1項は略式手続といわれます。特別支配会社(90%以上の株を持っている会社)への事業譲渡なので、株主総会決議を開かなくても承認されることがみえみえです。

そのため、特別支配会社への事業譲渡の場合には株主総会決議による承認が必要ないわけですね。

また、事業の重要な一部の譲渡でやりました会社法467条1項2号かっこ書からもわかるように、譲渡財産の帳簿価格が総資産額の5分の1を超えない場合には、株主総会は必要ありません。簡易手続といわれます。

事業の債権者には個別の同意が必要

事業譲渡で事業が移る場合に、その事業には債権者がいる場合があります。併存的債務引受けならよいのですが、そうでない場合=譲渡会社に債務が移転する場合には、債務者全員に個別の同意をとる必要があります。これは民法と同様の処理方法です。

事業譲渡の個別債権者の同意

事業譲渡手続に違反がある場合

事業譲渡手続に違反がある場合は、その事業譲渡は無効になります。事業譲渡は影響が大きいものなので、手続に違反がある場合には絶対的に無効です。

誰からでもいつでも主張することができます

会社法では会社の利益保護の規定であるとして、会社側しか無効主張を認めない場合が時々登場しますが、事業譲渡はそんなことに関係なく、絶対的無効で、誰からでもいつでも主張できるという点を理解しておきましょう。

まとめ

以上、事業譲渡についてみてきました。

事業譲渡の問題の解き方を復習してみましょう。

事業譲渡の判断
  • 手順1
    事業譲渡の要件を確認する

    特に組織的有機的一体かどうか、暖簾があるかを確認する。ただ単の財産の譲渡では事業譲渡とはいえない。

  • 手順2
    事業の一部の譲渡の場合は重要性の要件を満たすかを考える

    量的側面(総資産額の5分の1を超えるか)
    質的側面(会社のイメージなどから重要かどうか)
    を検討する。

  • 手順3
    株主総会特別決議・反対株主の株式買取請求という手続をとっているか考える

    特別支配会社以外では基本的に株主総会が必要である。さらに会社法469条より株式買取請求をする必要がある。

  • 手順4
    手続違反があればいつでもだれでも主張可能

    事業譲渡の手続違反は絶対的無効なので、いつでも、だれからでも主張可能である。

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

会社法の基本書はどれも難解だと思います。問題で論点をつかみながら理解するとよいです。そのため解説の詳しい問題集を載せておきます。参考にしてみてください!

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