自己株式の取得について覚えておくべきポイント解説!【会社法その16】

自己株式の取得商法

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自己株式の取得っていう論点がありますよね。あれって条文がちょっと複雑でよくわからないんですよね。

法上向
法上向

自己株式の取得は、手続を覚えさえすればどうってことない分野だぞ。詳しく見ていこうか。

自己株式の取得という論点が会社法にはあります。会社が自身の株を株主から買い取ることです。

従来、自己株式の取得は厳しく制限されてきましたが、現在では広く認められています。また、よく混在してしまいがちなのが、自己株式の処分です。自己株式の処分は、新株発行の規定がそのまま適用されるので、新株発行の回に説明を譲ります。

自己株式の処分(改めて自己株式を発行すること)は新株発行に含まれる、というのは必ず押さえておきましょう。

ここでやっていくのは、自己株式の取得です!会社が株主から株を買い取る(もらう)場面です。しっかり意識していきましょう。

自己株式の取得のポイント

自己株式の取得は繰り返しになりますが、会社が株主から株をもらう場面です。会社法上3つの方法があります。その3つの場面の手続をまずは押さえましょう。

そのうえで自己株式が分配可能額規制等手続違反になった場合の処理方法を考えていきます。

よって、まとめるとこんな感じです。

①自己株式の取得の手続を押さえる。
②自己株式の手続違反の処理方法について押さえる。

それでは見ていきましょう。

自己株式の取得の手続

会社法155条は3号が一般的

自己株式の取得の手続でまず理解しないといけないのが、会社法155条です。会社法155条会社が会社の株式を取得することができる場合=自己株式の取得ができる場合を規定しています。

第百五十五条 株式会社は、次に掲げる場合に限り、当該株式会社の株式を取得することができる。
一 第百七条第二項第三号イの事由が生じた場合
二 第百三十八条第一号ハ又は第二号ハの請求があった場合
三 次条第一項の決議があった場合
四 第百六十六条第一項の規定による請求があった場合
五 第百七十一条第一項の決議があった場合
六 第百七十六条第一項の規定による請求をした場合
七 第百九十二条第一項の規定による請求があった場合
八 第百九十七条第三項各号に掲げる事項を定めた場合
九 第二百三十四条第四項各号(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)に掲げる事項を定めた場合
十 他の会社(外国会社を含む。)の事業の全部を譲り受ける場合において当該他の会社が有する当該株式会社の株式を取得する場合
十一 合併後消滅する会社から当該株式会社の株式を承継する場合
十二 吸収分割をする会社から当該株式会社の株式を承継する場合
十三 前各号に掲げる場合のほか、法務省令で定める場合

会社法155条には13号までしかないので、13の場面しか自己株式はできないというわけですか。全然自己株式の取得って使えないんですね。

法上向
法上向

それが違うんだよ。自己株式の取得は155条3号で手続さえしっかりすれば利用できるものなんだ。

会社法155条を見て、自己株式の取得って利用できる場面が限られている、と思った方は注意です。実は会社法155条3号会社法156条1項の手続があれば利用できるということを言っているため、手続さえしっかりしていれば自己株式の取得はいつでも利用できるということになります

会社法155条を見たら必ず3号に着目するようにしましょう。

試験で出題されるのも会社法155条3号だと思います。それ以外だと手続の規定を覚えていなくても自己株式の取得ができるからです。ただし、事業譲渡(会社法155条10号)会社合併(会社法155条11号)会社分割(会社法155条12号)の場合には自己株式取得の手続は必要ない(3号を使わない)という点も押さえておくと役立つと思います。

それでは会社法155条3号より、自己株式取得の手続を見ていきます。以降は会社法155条3号による自己株式の取得である点を意識してください。

ミニ公開買い付け・相対取引・市場取引等の3つの方法

自己株式の取得には、ミニ公開買い付け、相対取引、市場取引(公開買付け)の3つの方法があります。それぞれで手続方法が異なるので注意が必要です。

会社が自己株式取得するぞ~、となったときに、3つの方法があって、場面に応じて好きなものを選べるということです。

自己株式取得手段を選ぶ会社の様子のイメージ

ミニ公開買付けは株主全員に売却の機会を与える取得方法

ミニ公開買付けは株主全員に売却の機会を与えるものです。株を手放したい株主は譲渡しの申込みをして、それが承諾されることで会社が株主から株を買い取ることになります。

その際の手続としてまずは会社法156条を押さえましょう。

(株式の取得に関する事項の決定)
第百五十六条 株式会社が株主との合意により当該株式会社の株式を有償で取得するには、あらかじめ、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。ただし、第三号の期間は、一年を超えることができない。
一 取得する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
二 株式を取得するのと引換えに交付する金銭等(当該株式会社の株式等を除く。以下この款において同じ。)の内容及びその総額
三 株式を取得することができる期間
2 前項の規定は、前条第一号及び第二号並びに第四号から第十三号までに掲げる場合には、適用しない。

株主総会の決議によって、自己株式の取得についていろいろなことを決めておく必要があります。これを授権決議(会社に自己株式取得ができる権利を与える決議)といったりします。この決定があれば、1年以内であれば自己株式の取得が何度でも可能になります。

(取得価格等の決定)
第百五十七条 株式会社は、前条第一項の規定による決定に従い株式を取得しようとするときは、その都度、次に掲げる事項を定めなければならない
一 取得する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び数)
二 株式一株を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
三 株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の総額
四 株式の譲渡しの申込みの期日
2 取締役会設置会社においては、前項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。
3 第一項の株式の取得の条件は、同項の規定による決定ごとに、均等に定めなければならない。

次に会社法156条での授権に基づいて会社法157条でさらに詳しく具体的に自己株式についていろいろなことを決めていきます(具体的買受けの決定)。これは会社法157条2項によれば取締役会決議が基本です。

つまり、ミニ公開買付けの方法をまとめると、取締役会設置会社では

①1年間自己株式の取得ができることを大まかに決める授権決議を株主総会でとる(会社法156条)
②自己株式の取得をするたびに具体的買受けの決定として取締役会決議をする(会社法157条)

という2段階の手続が必要というわけです。

そのほか、会社法158条や159条では通知や申込みなどの規定がありますが、これは大して重要ではないでしょう。

とにかく、まずは、授権決議と具体的買受けの決定の2段階の手続が必要という点を押さえてください。

相対取引は特定の株主からの取得方法

次に、相対取引という方法を説明します。相対取引とは特定の株主から株を取得する方法です。特定の株主から取得するので、不当なものが行われやすいです。

そのため、会社法では相対取引に厳重な規制をしています。

会社法160条を見てみましょう。

(特定の株主からの取得)
第百六十条 株式会社は、第百五十六条第一項各号に掲げる事項の決定に併せて、同項の株主総会の決議によって、第百五十八条第一項の規定による通知を特定の株主に対して行う旨を定めることができる
2 株式会社は、前項の規定による決定をしようとするときは、法務省令で定める時までに、株主(種類株式発行会社にあっては、取得する株式の種類の種類株主)に対し、次項の規定による請求をすることができる旨を通知しなければならない。
3 前項の株主は、第一項の特定の株主に自己をも加えたものを同項の株主総会の議案とすることを、法務省令で定める時までに、請求することができる
4 第一項の特定の株主は、第百五十六条第一項の株主総会において議決権を行使することができない。ただし、第一項の特定の株主以外の株主の全部が当該株主総会において議決権を行使することができない場合は、この限りでない。
5 第一項の特定の株主を定めた場合における第百五十八条第一項の規定の適用については、同項中「株主(種類株式発行会社にあっては、取得する株式の種類の種類株主)」とあるのは、「第百六十条第一項の特定の株主」とする。

相対取引について、会社法160条は1号~5号まですべて重要なのでしっかり押さえておください。そして会社法160条は、ミニ公開買付けでみてきた会社法156条、会社法157条などの規定の付け加えとなることにも注意してください!

そのため、相対取引の場合も、会社法156条1項の株主総会決議(授権決議)と会社法157条2項より取締役会決議(具体的買受け方法の決定)が必要になります。このことは会社法160条1項からもわかりますね。

続いて、会社法160条2項、3項より特定の株主以外の株主には売主追加の議案変更請求権が与えられます

つまり、相対取引で本来想定しない株主であっても、その株主が「自分も入れて~。自分の株も買ってよ~」といえば会社は拒むことができないというわけです。

会社側の「くそっ、二人でやろうと思ってたのに……。」と悲しがっている場面が容易に想像できると思います。

このよな、売主追加の議案変更請求権(売主追加請求権)を手続の中に入れることで不正な相対取引が起こらないようにしているわけです。

さらに、相対取引の特定株主は株主総会(授権決定)で議決権を行使できません。株主総会では利害関係人であっても議決権を行使できるのが原則ですが、自己株式の取得の相対取引はその例外ということになります。

売主追加の議案変更請求権は相対取引をやろうとしている会社によって厄介なものです。実は、売主追加議案変更請求権(売主追加請求権)を排除できる場面があります。それが会社法161条、162条です。これらの規定は条文を読めば大体はわかります。さらに問題として出題されることもあまりないと思うので今回は省略させていただきます。

市場取引(公開買付け)は会社法165条

最後に市場取引による方法を見てみましょう。会社法165条に規定されています。

第三目 市場取引等による株式の取得
第百六十五条 第百五十七条から第百六十条までの規定は、株式会社が市場において行う取引又は金融商品取引法第二十七条の二第六項に規定する公開買付けの方法(以下この条において「市場取引等」という。)により当該株式会社の株式を取得する場合には、適用しない
2 取締役会設置会社は、市場取引等により当該株式会社の株式を取得することを取締役会の決議によって定めることができる旨を定款で定めることができる
3 前項の規定による定款の定めを設けた場合における第百五十六条第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「株主総会(第百六十五条第一項に規定する場合にあっては、株主総会又は取締役会)」とする。

会社法165条1項より、市場取引・公開買付けの場合には、ミニ公開買付けでは必要だった具体的買受けの決定は必要ないというわけです。

つまり、市場取引・公開買付けの場合には、156条1項の株主総会決議(授権決議)だけでいいというわけですね。

さらに、会社法165条2項を見てみましょう。なんと定款の定めがあれば、156条1項の株主総会決議でさえも取締役会でよいことになる、と定められています。

つまり、取締役会設置会社で定款を定めて、市場取引・公開買付けを行う場合には、授権決議を取締役会ですればよいだけになるのです。

とはいえ、やはり手続に深みがないので試験ではあまり出題されない方法になります。

自己株式の取得が手続違反の場合の処理方法

分配可能額規制違反の可能性

自己株式取得の際には会社からお金が出ていくことになります。このお金の流出には剰余金と同様の分配可能額規制がかかります(会社法462条)。分配可能額規制違反については剰余金配当の記事が大変参考になると思います。

分配可能額規制違反で自己株式の取得をした場合は違法です。通説によれば無効説なのでその時点で無効になります

手続違反の無効は相対的無効説

あまり基本書等で詳しく説明されていませんが、通説は自己株式の取得の手続違反は相対的無効説といわれています。これは分配可能額規制違反に限られません!すべての手続違反についてです。

つまり、相手方が善意であったら主張できないというわけです。相手方が悪意の場合にだけ自己株式取得の手続違反の主張ができるというわけですね

ちなみに利益相反取引も相対的無効説です。利益相反取引の方がよく出題されるのでしっかり押さえておきましょう。

手続違反を主張できるのは会社だけ

分配可能額規制違反を含め、自己株式の取得の手続に違反している場合には、その取得は無効になります(相対的無効)。新株発行のときのように無効事由となるのはどういう場面か、といったことを考えることなしに、手続に違反していたら自動的にすべて無効です。

ただし判例・通説によれば、手続違反を主張できるのは会社だけです。たとえば相対取引の際の特定株主から、自己株式の取得の手続違法より無効であるとの主張をすることはできません。

これは自己株式の取得が会社の利益保護を目的としたものだからです。会社が「利益が失われるおそれがあるな!」となった時に自己株式取得の規定によって無効の主張ができるので、別に株主の利益を保護している規定ではないというわけですね。

左手は添えるだけ」の感覚で、

自己株式取得違反を主張できるのは会社だけ」と覚えましょう(笑)。

まとめ

以上、自己株式の取得についてみてきました。復習してみます。

まず手続が3種類ありました。

①ミニ公開買付け
②相対取引
③市場取引・公開買付け

でしたね。

そしてそれぞれについて自己株式取得の手続がありました。

①ミニ公開買付け…株主総会での授権決議→取締役会での具体的買受けの決定
②相対取引…株主総会での授権決議→取締役会での具体的買受けの決定→売主追加請求権
③市場取引・公開買付け…授権決議(定款があれば取締役会で可能)のみ

そして手続違反である場合の処理方法です。特に分配可能額規制がかかる点をよく忘れるので注意です。

①手続違反は相対的無効である。相手方が悪意であるかをまず確認する。
②手続違反であれば自己株式取得は無効となる。
③ただし、無効を主張できるのは会社だけである。

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

会社法の基本書はどれも難解だと思います。問題で論点をつかみながら理解するとよいです。そのため解説の詳しい問題集を載せておきます。参考にしてみてください!

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