訴えの利益を解説!将来給付や遺言無効確認も添えて【民事訴訟法その6】

訴えの利益 民事訴訟法

ようやく審理手続に入っていけますね。

法上向
法上向

いや,最後に訴えの利益について確認してみよう。

訴えの利益?たしか行政法でもでてきたような……

訴えの利益の基礎は民事訴訟法にあります。行政法上の訴えの利益を確認したい場合は以下を参照してください!

また,訴えの利益は訴訟の種類(給付の訴え,形成の訴え,確認の訴え)の考え方を前提とします。3つの訴訟方法についてよくわからないな,という方はまずはこちらの記事からご覧ください。

訴えの利益がないと判断されると,訴訟却下されます。つまり訴訟自体の審理をしてくれない,前段階の却下というわけです。これは悲しいですよね。ポケモンでいうところの,四天王と戦う前にチャンピオンロードで負けるようなものです

そのため,訴えの利益があるかないのかを判断することは重要になります。

それでは訴えの利益を見てみましょう。

訴えの利益のポイント

訴えの利益は,3つの訴訟の種類に分けて考えるのが一般的です。そして特に問題となるのが将来給付の訴え&確認の訴えなので,この2点を重点的に,かつわかりやすく解説していこうと思います。

①給付の訴えの利益について,特に将来給付の訴えを中心に押さえる。
②形成の訴えの利益はほぼ問題にならないことを押さえる。
③確認の訴えの利益の考え方について押さえる。その中で遺言無効確認の訴えの考え方を理解する。
それでは見ていきましょう。

給付の訴えの利益は将来給付にだけ注意

給付の訴えは現在の給付請求権を訴訟物(対象)とするものと将来の給付請求権を訴訟物(対象)にするものとで考え方が異なります。よって以下分けて考えていこうと思います。

現在給付の訴え

現在給付の訴えにおける訴えの利益はズバリ一言です。

訴えの利益は認められる!

原告がある請求権を主張している以上,たとえその請求権が本当は存在しなくても,訴えの利益があるとされています。つまり訴訟として取り扱ってくれるということです。よって訴えの利益はほぼ問題になりません。

将来給付の訴え

将来給付の訴えは現在給付の訴えと違って簡単に訴えの利益を認めてくれません

将来はまだ確定していないものなので裁判所としても,本当に審理してよいか慎重になるというわけですね。

将来給付の訴えの利益が認められる基準として参考になるのが大阪空港事件です。判旨を簡単にまとめてみます。

①権利発生の基礎となる事実上・法律上の関係が存在しその継続が予測されること
②将来における事情変更があらかじめ明確に予想されうること
③債務者に不当とはいえないこと

ポイントは明確に損害や将来の状況が予想されることは当たり前として,相手方(債務者)に負担を課しても不当と言えないことという相手方の配慮まで求めている点ですね。

よく問題になるのが,継続的不法行為に基づく損害賠償についてですが,上記のようにかなり限定的に考えられているので,基本的に不法行為があっても将来の分の損害賠償までは難しいことになります。

形成の訴えの利益はほぼ認められる

この章は一言ですみます。

形成の訴えの利益はほぼ常に認められる

です。というのも形成の訴えは法律上に規定されているため,法律の要件を守っている限り訴えの利益も当然にあるとされるのです。

認められない例外場面

典型的な例外場面が1つあるので押さえておきましょう。それは会社法上の取締役選任の株主総会の取消訴訟です。この訴訟において,取締役選任株主総会が問題となっている株主総会の後に改めて行われた場合,最初の問題としている株主総会の取消の訴えは訴えの利益を欠くことになります

株主総会

当たり前といえば当たり前なのですが,形成訴訟で訴えの利益が認められない例外場面なので貴重ですね。

確認の訴えの利益

確認の訴えの利益はしっかり検討しなければなりません。これは公法上の当事者訴訟で確認の訴えをする場合も同様です。つまりどのような条文を用いる場合であれ,「確認訴訟」をする以上は訴えの利益をしっかり意識しなければならないことになります。

なぜなら,確認の訴えは誰でも提起できるからです。給付訴訟は給付請求権がなければ提起できませんでした。形成訴訟は法律の規定がなければ提起できませんでした。確認の訴えは自分で好き勝手に訴えることができるのです。

極端にいえば,「私に月の所有権があることの確認を求める」として訴えることもできてしまうわけです。

月夜

規準は3つ

確認の訴えの利益は3つの要素から検討します。これは覚えましょう!

①方法選択の適否
②対象選択の適否
③即時確定の利益

方法選択の適否

方法選択の適否とは,簡単にいえば「給付訴訟ができるのであれば,給付訴訟を用いた方がいい」という理論です。確認訴訟はあくまで最後の手段であるべきという考えですね。もちろん「形成訴訟ができるのであれば形成訴訟を用いた方がいい」という考え方もできます。

対象選択の適否

対象選択の適否は,「積極的確認ができるなら積極的確認の方がいい」という面と「現在の確認ができるなら現在の確認の方がいい」という面,「権利義務の確認ができるなら権利義務の確認の方がいい」という面からなります。

逆にいえば,消極的確認や将来・過去の確認,事実の確認はあまりすべきではないということです。

これは少しでも確認訴訟を意味のあるものにするための配慮ですね。

即時確定の利益

即時確定の利益は,紛争の成熟性とも言われ,原告の危険が現実化具体化しているかどうかを検討することになります。「本当に今争うことで効果がありますか?」ということを改めて確認する作業です。一番「訴えの利益」という言葉に沿いますね。

遺言無効確認の訴え

さて,確認の訴えの利益で一番の論点をあげなさいと言われれば,ほぼすべての人がこの論点をあげるでしょう。

遺言無効確認の訴えです。判例はこの訴えを認めています。

遺言無効確認の訴えって,遺言が無効だよ,っていう確認訴訟だよね。ということは遺言作成という法律行為を対象とするわけだから過去の確認となって,対象選択の適否からするとアウトなんじゃないかなぁ?

 

法上向
法上向

いい指摘だね。ではなぜ判例はこのような過去の確認にもみえる訴訟の訴えの利益を認めたんだろうか。

 

解説では,紛争を直接かつ抜本的に解決できる場合は過去の法律行為の確認もできるとしているね。今回は遺言の無効を確認することでそこから生じる遺産確認の訴えや遺産関係確認の訴えを一つずつすることは煩雑なので,紛争の抜本的解決に役立つといえます。

法上向
法上向

たしかに,そのように言われるのが一般的だね。しかし判例を注意深く読むともう少し深く考えられるよ。

判例は遺言無効確認の訴えについて「それから生ずべき現在の特定の法律関係が存在しないことの確認を求めるものと解される場合」は訴えの利益が認められるとしています。つまり「遺言の無効の訴え」を「遺言から生ずる現在の法律関係が存在しないことの確認の訴え」であると読み替えて訴えの利益を認めているのです。遺言の無効確認の訴え自体の訴えの利益を認めたわけではないという点には注意が必要です。

そして,このような読み替えを認めた理由として,紛争の直接かつ抜本的解決となるから,というものが挙げられるわけですね。

とはいえ,慣れないうちは遺言の無効確認の訴えは紛争の直接かつ抜本的解決になるから,過去を対象にしていると見えても訴えの利益は認められる,と単純に理解しておくとよいでしょう。

その他,遺言者が死亡していない場合はどうなるのか?という問題がありますが,遺言者が死亡していない場合には,一般に,原告の利益は期待権にすぎないから対象が不適切または即時確定の利益を欠くとして訴えの利益は認められていません。

まとめ

以上,訴えの利益を見てきました。長かったですが結論としては単純です。以下にまとめてみます。

①現在給付の訴えと形成の訴えの利益はほぼ自動的に認められる。
②将来給付の訴えは将来の明確性と相手方の配慮が必要となる。
③確認の訴えの利益は,方法選択の適否,対象選択の適否,即時確定の利益を満たすかが問題となる。
④過去の確認訴訟であっても,それが紛争の直接かつ抜本的解決になる場合には例外的n認められると考えられている。

特に確認の訴えの利益は,民事訴訟法以外の分野でもよく登場するので,しっかり理解しておきましょう。

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

民事訴訟法で初学者向けの基本書を見つけるのは難しいですが,以下の本は薄くかつ分かりやすいのでおすすめです!よかったら読んでみてください。

民事訴訟法
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