争点整理手続をわかりやすく。論点をまとめて解説【民事訴訟法その7】

争点整理手続民事訴訟法
法上向
法上向

民事裁判の流れに入っていこう。ここからが論点になりやすいぞ!まずは争点整理手続だ!

 

え,今までの当事者能力とか訴訟能力,訴えの利益とかは問題にならないということですか?

法上向
法上向

まぁ,問題に出ないこともないが出題例は少ないな。なぜなら,今までやってきた分野は訴訟要件なんだよ。これがなければ裁判が却下されるものなんだ。裁判却下ということは審理もされないわけ。

いわばポケモンで四天王たちと戦う前にチャンピオンロードで負けるようなもの,と説明したよね。

これまで見てきた分野はすべて訴訟要件に該当します。訴訟要件とは,みたさなければ裁判しないよ,という要件です。つまり裁判をするにはすべて満たしておく必要があります。

訴訟要件を満たさなければ審理もされないわけですから,問題として出題されることはあまりないです(訴訟要件を満たさないと本案審理の問題を出したところで,却下されてしまうため)。

訴訟要件には,当事者能力訴訟能力管轄訴えの利益などがあります。これらについて不安がある方は以下のボタンでチェックできます。

これから,訴訟の審理に入っていきます。この場合は訴訟要件がそろっていることが前提となることを忘れないようにしてくださいね。

では争点整理手続をみていきましょう。

争点整理手続のポイント

争点整理手続は3種類ありますが,使われるのは弁論準備手続くらいです。そこで弁論準備手続を重点的に,そして論点となるところに絞って解説していけたらいいなーと思います。

①争点整理手続の3種類について押さえる。
②弁論準備手続の流れを知る。
③弁論準備手続の論点,時機に後れた攻撃防御方法の提出を知る。
それではみていきましょう。

争点整理手続は3種類

争点整理手続の条文をみると準備的口頭弁論②弁論準備手続③書面による準備手続の3種類の方法があることがわかります。それぞれをざっくりみてみましょう。ただし最初の方でも伝えたように弁論準備手続が主なので,今回は準備的口頭弁論書面による準備手続については,「こんなものもあるんだー」と知ってもらう程度で大丈夫です。

準備的口頭弁論

第一款 準備的口頭弁論
(準備的口頭弁論の開始)
第百六十四条 裁判所は、争点及び証拠の整理を行うため必要があると認めるときは、この款に定めるところにより、準備的口頭弁論を行うことができる。
(証明すべき事実の確認等)
第百六十五条 裁判所は、準備的口頭弁論を終了するに当たり、その後の証拠調べにより証明すべき事実を当事者との間で確認するものとする
2 裁判長は、相当と認めるときは、準備的口頭弁論を終了するに当たり、当事者に準備的口頭弁論における争点及び証拠の整理の結果を要約した書面を提出させることができる。
(準備的口頭弁論終了後の攻撃防御方法の提出)
第百六十七条 準備的口頭弁論の終了後に攻撃又は防御の方法を提出した当事者は、相手方の求めがあるときは、相手方に対し、準備的口頭弁論の終了前にこれを提出することができなかった理由を説明しなければならない

さっと上記条文をみて,大体を知っておけば大丈夫でしょう。意味がわからないところは飛ばしても大丈夫です。

覚えてほしいのは,準備的口頭弁論はあくまで口頭弁論なので公開法廷で行われるという点です。そのため,当事者がいっぱいいる訴訟で争点整理を行うために用いられるとされています。

準備的口頭弁論

第二款 弁論準備手続
(弁論準備手続の開始)
第百六十八条 裁判所は、争点及び証拠の整理を行うため必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、事件を弁論準備手続に付することができる。
(弁論準備手続の期日)
第百六十九条 弁論準備手続は、当事者双方が立ち会うことができる期日において行う。
2 裁判所は、相当と認める者の傍聴を許すことができる。ただし、当事者が申し出た者については、手続を行うのに支障を生ずるおそれがあると認める場合を除き、その傍聴を許さなければならない。
(弁論準備手続における訴訟行為等)
第百七十条 裁判所は、当事者に準備書面を提出させることができる。
2 裁判所は、弁論準備手続の期日において、証拠の申出に関する裁判その他の口頭弁論の期日外においてすることができる裁判及び文書(第二百三十一条に規定する物件を含む。)の証拠調べをすることができる。
3 裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、弁論準備手続の期日における手続を行うことができる。ただし、当事者の一方がその期日に出頭した場合に限る。
4 前項の期日に出頭しないで同項の手続に関与した当事者は、その期日に出頭したものとみなす。
5 第百四十八条から第百五十一条まで、第百五十二条第一項、第百五十三条から第百五十九条まで、第百六十二条、第百六十五条及び第百六十六条の規定は、弁論準備手続について準用する。
(弁論準備手続の結果の陳述)
第百七十三条 当事者は、口頭弁論において、弁論準備手続の結果を陳述しなければならない
(弁論準備手続終結後の攻撃防御方法の提出)
第百七十四条 第百六十七条の規定は、弁論準備手続の終結後に攻撃又は防御の方法を提出した当事者について準用する

主要なところを抜粋してみました。こちらの弁論準備手続は後でしっかり解説するので今はざっくり読んでもらう程度でかまいません。

ポイントは弁論準備手続争点整理手続のデフォルトという点です。争点整理手続といえばほぼこれを指します。

書面による準備手続

第三款 書面による準備手続
(書面による準備手続の開始)
第百七十五条 裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、事件を書面による準備手続(当事者の出頭なしに準備書面の提出等により争点及び証拠の整理をする手続をいう。以下同じ。)に付することができる。
(書面による準備手続の方法等)
第百七十六条 書面による準備手続は、裁判長が行う。ただし、高等裁判所においては、受命裁判官にこれを行わせることができる。
2 裁判長又は高等裁判所における受命裁判官(次項において「裁判長等」という。)は、第百六十二条に規定する期間を定めなければならない。
3 裁判長等は、必要があると認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、争点及び証拠の整理に関する事項その他口頭弁論の準備のため必要な事項について、当事者双方と協議をすることができる。この場合においては、協議の結果を裁判所書記官に記録させることができる。
4 第百四十九条(第二項を除く。)、第百五十条及び第百六十五条第二項の規定は、書面による準備手続について準用する。
(証明すべき事実の確認)
第百七十七条 裁判所は、書面による準備手続の終結後の口頭弁論の期日において、その後の証拠調べによって証明すべき事実を当事者との間で確認するものとする
(書面による準備手続終結後の攻撃防御方法の提出)
第百七十八条 書面による準備手続を終結した事件について、口頭弁論の期日において、第百七十六条第四項において準用する第百六十五条第二項の書面に記載した事項の陳述がされ、又は前条の規定による確認がされた後に攻撃又は防御の方法を提出した当事者は、相手方の求めがあるときは、相手方に対し、その陳述又は確認前にこれを提出することができなかった理由を説明しなければならない

書面による準備手続は,当事者が裁判に出頭する負担を減らすために,書面で準備手続していいよー,ということを想定して作られました。しかしほぼ使われていません。

まとめ

争点整理手続は3種類あります。

準備的口頭弁論は当事者が多い訴訟で公開法廷で行われます。
弁論準備手続はもっとも基本となる争点整理方法です。
書面による準備手続は遠隔にいる当事者のために用いられます。

準備的口頭弁論書面による準備手続はほぼ使われていないため,争点整理手続=弁論準備手続という理解で大丈夫でしょう

弁論準備手続の流れ

当事者の意見を聞く必要がある

弁論準備手続は当事者の意見を聴いて,行う必要があります。当事者が乗り気ではない場合は弁論準備手続で争点整理をしようとしても意味ないからですね。

条文は民事訴訟法168条です。

弁論準備手続の開始)
第百六十八条 裁判所は、争点及び証拠の整理を行うため必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、事件を弁論準備手続に付することができる。

和気あいあいと行う

弁論準備手続は準備的口頭弁論と違って,公開法廷で行われません。裁判官と当事者とでテーブルを囲んで楽しくおしゃべりしましょう,というイメージです。

弁論準備手続

ここでは準備書面の提出や主張立証,訴えの取り下げ,和解など,幅広く訴訟行為を行うことができます。

また,文書の証拠取調べができるのもポイントです。これは争点を調べるためには証拠調べが必要ですが,人証の場合は公開法廷でしなければならない必要性が強いものの,文書であれば公開法廷でもそうでなくても変わらないため,争点整理手続で行ってもいいね!となったと考えられます。

条文は民事訴訟法170条2項です。

(弁論準備手続における訴訟行為等)
第百七十条 
2 裁判所は、弁論準備手続の期日において、証拠の申出に関する裁判その他の口頭弁論の期日外においてすることができる裁判及び文書(第二百三十一条に規定する物件を含む。)の証拠調べをすることができる

仲間外れはダメぜったい

和気あいあいとするためには,一方当事者だけが参加できる日に開催するのはダメです。会議とかでも,特定人物に連絡しないで話し合いをすることはないですよね。呼ばれなかった人は悲しいです。ましてや公平中立の裁判官がそんなことを行うことを許してはなりません。

いじめ

そのため,弁論準備手続は,両当事者が参加できる日に行うと決められています。ただし両当事者が参加できればよく,たとえば「ここはこっちと一対一で話し合いたいから,少しの時間あなたは退出してくれないか」というような形で一方当事者と裁判官とで話し合いの時間を作ることは許されるとされています。

条文は民事訴訟法169条1項です。

(弁論準備手続の期日)
第百六十九条 弁論準備手続は、当事者双方が立ち会うことができる期日において行う。

論点は時機に後れた攻撃防御方法の提出

さて,弁論準備手続での論点をみていきましょう。

論点はズバリ

争点整理手続をしたのに,その後の審理中に,争点となっていなかった争点を出すのは許されるか?

という点です。

この論点につき,①説明義務②時機に後れた攻撃防御方法の提出の2点がポイントとなります。それぞれみてみましょう。

説明義務

条文上,弁論準備手続後の攻撃防御方法の提出はタブーとされています。民事訴訟法174条準用の民事訴訟法167条をみてみましょう。

(弁論準備手続終結後の攻撃防御方法の提出)
第百七十四条 第百六十七条の規定は、弁論準備手続の終結後に攻撃又は防御の方法を提出した当事者について準用する
(準備的口頭弁論終了後の攻撃防御方法の提出)
第百六十七条 準備的口頭弁論の終了後に攻撃又は防御の方法を提出した当事者は、相手方の求めがあるときは、相手方に対し、準備的口頭弁論の終了前にこれを提出することができなかった理由を説明しなければならない

争点整理手続(基本は弁論準備手続)をしているにもかかわらず,終了後に攻撃防御方法の提出をしたいと思った当事者は,説明義務が課されるとの規定です。

なんだ,説明すればいいんですね!そんなの楽勝じゃないですか。あまり争点整理手続意味ないですね。

法上向
法上向

そうでもないぞ。実はこの説明義務は時機に後れた攻撃防御方法の提出(民事訴訟法157条)の考慮要素になるんだ。

時機に後れた攻撃防御方法の提出

この論点は,争点整理手続以外の一般の訴訟でも出てくる論点ですが,争点整理手続を経ている場合は特に問題になります。

なぜなら,争点整理手続(基本は弁論準備手続)をしているにもかかわらず,後から争点を出したりして訴訟を長引かせるのは,通常の訴訟に比べてより一層対処しなければならない事態だからです。

条文は民事訴訟法157条になります。

(時機に後れた攻撃防御方法の却下等)
第百五十七条 当事者が故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法については、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。
2 攻撃又は防御の方法でその趣旨が明瞭でないものについて当事者が必要な釈明をせず、又は釈明をすべき期日に出頭しないときも、前項と同様とする。

ポイントは①当事者の故意・重過失によること②訴訟の完結を遅延させることの2点です。

①は普通にわかると思います。当事者が悪いやつってことです。ここで先ほどの説明義務違反が関係してきます。説明義務をしていないときは当事者の故意・重過失が認められやすくなるとされています!

②は若干の注意が必要です。訴訟の遅延は,第一審だけではなく控訴審も含めて検討されることになります。事件解決までの時間全体を見るということです。つまり,時機に後れた攻撃防御方法の提出として主張を却下とした場合とそれでも主張を認めた場合とを比べて判断することになります。

まとめ

少々長い記事になってしまいました。争点整理手続は実務では重要になってくるものなので少し詳しめに解説しました。再度改めて最低限覚えてほしいことをまとめてみます。

①争点整理手続には準備的口頭弁論弁論準備手続書面による準備手続の3種類があるが,実際に使われているのは弁論準備手続である。
②弁論準備手続は和気あいあいとテーブルを囲んでするイメージなので,両当事者が参加すること,公開法廷ではないこと,文書の証拠調べはできること,といった特徴がある。
③問題となるのは,時機に後れた攻撃防御方法の提出であり,弁論準備手続には後からの攻撃防御方法の提出に説明義務があるため,それが民事訴訟法157条の考慮要素の1つになる。

以上です。読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

民事訴訟法で初学者向けの基本書を見つけるのは難しいですが,以下の本は薄くかつ分かりやすいのでおすすめです!よかったら読んでみてください。

民事訴訟法
はじめての法
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