競業取引とよく一緒に出てくる取引は?
利益相反取引です!あれ,ちょっと苦手なんですよね。
たしかに,ちょっとわかりづらいな。コツは条文だぞ。
競業取引と一緒に条文でまとめられているのが利益相反取引です。利益相反取引は第三者との関係もあるので競業取引よりも難しく,試験にでやすい部分です。一緒に確認していきましょう。
利益相反取引のポイント
以下に沿って進めていきます!
②利益相反のパターンについて条文を頼りに理解する。
③第三者との関係に注意する。
利益相反取引の手続は競業取引と同様。罠に気をつけよ。
利益相反取引は競業取引の手続と同様です。なぜなら条文が一緒だから(笑)。なので詳しく知りたい人は以下の記事を参照してください!
競業取引と同様,取締役会設置会社の場合は,356条に加えて十の位と一の位をひっくり返した365条を見る必要がありますので注意です。事前の説明→取締役会決議→事後報告をする必要があります。
利益相反取引の条文は読み方を間違えない!
利益相反取引は競業取引以上に,どのような場合が該当するのかわかりにくく,勘違いもしやすいので注意が必要です。直接取引と間接取引なるものがあるのでそれぞれ見ていきましょう!
直接取引(会社法356条1項2号)について
会社法356条1項の2号と3号が利益相反取引ですが,2号が直接取引に該当します。ではまず条文を見てみましょう。
(競業及び利益相反取引の制限)第三百五十六条 取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
当該会社同士の場合は利益相反なのですね。これは重要な違いですので頭の中に叩き込みましょう!
といいたいところですが,やっぱり人間忘れる生き物です。そこで私は条文をとことん利用することをおすすめします!もう一度条文を見てみましょう。実はちゃんとどのような場合かが書かれているのです。
(競業及び利益相反取引の制限)第三百五十六条 取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
さらに,競業取引と同様,取引を行えるものでなければならないので,当該取締役は敵会社の代表取締役等でなければならないことになります。条文を正しく読んでパターンを理解しましょう!
間接取引(会社法356条1項3号)について
利益相反取引を難しくしているのがこの間接取引(356条1項3号)です。これも条文に沿って理解してみましょう。
(競業及び利益相反取引の制限)第三百五十六条 取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。三 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。
図にすると以下のようになります。
これは競業取引や利益相反の直接取引とはかなり異なるパターンだということがわかりますか?当該取締役は敵会社の役員でなくてもよいのです。特殊なパターンですので間接取引は覚えるようにしましょう。
間接取引で厄介なのは,条文の「その他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき」という文言です。取締役の保証人以外の間接取引のパターンは学説上も争いがあります。ここでは直接取引とは異なるけどさすがにダメでしょ,という場合が間接取引として処理されると考えるようにしましょう。
たとえば以下のような場合です。Q社の代表取締役が二人以上いて,直接取引に当たりそうな場合にはオレンジ取締役ではない代表取締役が代表する場合です。
一般的にこの場合も利益相反取引にしなければ,利益相反取引の潜脱に当たりますよね。ただし当該取締役が実際に行っているわけではないので直接取引とはいえず,間接取引にして規制すると考えます。
次に,下の図のような場合です。当該取締役が敵会社(Q社)の50%以上株式を保有している場合です。
この場合もオレンジ取締役は自身で利益相反取引を率先して行うことはできません。よって直接取引ではないことになります。しかし,過半数以上株を保有していることから裏で会社を牛耳れます。よって間接取引で規制するのです。
このように間接取引は,保証パターンと直接取引っぽいけど直接取引にはあたらない利益相反パターンを含んでいると考えることができます。
第三者がいる場合
正当な手続を踏んでいない利益相反取引は無効です。このときに毎度のことながら第三者がいる場合が問題になります。競業取引ではこれは関係ありません。競業取引は敵会社と市場との取引なので自己の株式会社は取引について関係ないからです。無効だといっても誰も聞く耳を持たなくてよいのです。これに対して,利益相反取引は自己の株式会社が行っている取引なので第三者に無効だ!と主張することができます。よって第三者との関係が問題になるのですね。
直接取引の第三者
まず第三者とはだれかで間違うことがあります。
間違ってもQ社を第三者だと思わないでください。P社とQ社は当事者です!利益相反取引の当事者からさらに取引をしたものが第三者です。
たとえば,P社とQ社の取引でP社の商品がQ社に移って,それをQ社がR社へ転売したとしましょう。このときにP社が「ごめん,PQ間の売買は利益相反取引やったわ。無効やから返して~」と言ったところで,R社は「そんなの知らねーよ」となります。
ここで秘密兵器,相対的無効説を用いるのです!相対的無効説は簡単です。第三者が悪意(無重過失)であれば無効という理論です。
そのため,上記の図でいうとR社が取引が利益相反取引が無効であることについて悪意(学説によっては無重過失も含む)であれば無効の主張ができるといえます。
間接取引の第三者
間接取引の保証パターンも第三者がだれかわかりにくいです。
この場合Q社が第三者なのです。「えっ?Q社って当事者じゃないの?」と考えるかもしれませんが,取締役とP社との間で利益相反ということが今問題になっているのです。ということは,Q社は利益相反関係にない第三者といえます。
ここでも相対的無効説が使え,利益相反取引の手続を欠く場合は,Q社が悪意(無重過失)に限り無効主張をすることができます。
まとめ
利益相反取引は競業取引と手続が似ていますが,直接取引と間接取引が分かれており,理解しなければいけないことがたくさんあります。そのため,条文をうまく活用して理解していくようにしましょう。
②直接取引と間接取引は条文を見て理解する。直接取引に当たらないがダメな場合(代表取締役が違う場合や50%以上株主の場合など)は間接取引に含まれる。
③第三者がいる場合は相対的無効説より悪意(重過失)の場合のみに無効が主張できる。
参考文献
会社法の基本書はどれもかなり難解だと思います。問題で論点をつかみながら理解するとよいです。そのため解説の詳しい問題集を載せておきます。参考にしてみてください!