会社分割の手続と論点をわかりやすく解説してみた!【会社法その19】

会社分割商法

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法上向
法上向

はじめての会社法シリーズのラストは会社分割だな。

会社分割ってだいたいは会社合併と同じですよね。

法上向
法上向

よく気がついたね。会社合併と会社分割は同じ組織再編の箇所の規定でほとんど手続のやり方は同じなんだ。だから会社分割の手続は簡略化していこう。

会社分割は会社合併と同様の会社法上の組織再編に当たります組織再編の条文のつくりは覚えていますでしょうか?

作成者がミスっているやつですね……

しかし、捉え方によっては会社合併と会社分割で手続を分けて覚える必要はないといえることにもなります。よって会社合併の手続さえマスターすれば会社分割でもそれなりに対応できるというわけです。

そこで会社分割の手続は簡潔にしつつ、会社分割独自の論点についてしっかり押さえていこうと思います。

会社分割のポイント

まずは会社合併同様、会社法の組織再編の条文の作りを理解する必要があります。そのうえで効果と手続を押さえましょう

最後に少し応用的ですが、会社分割独自の論点である事業譲渡との違い、トカゲのしっぽ切り、詐害的会社分割、についてみていきましょう。

①組織再編の条文のつくりについて復習する。
②会社分割の効果を理解する。
③会社分割の手続を理解する。
④応用論点として、事業譲渡との違い、トカゲのしっぽ切り、詐害的会社分割、というものがあることを知る。

それではいきましょう。

組織再編の条文の構造

組織再編とは主に、会社合併、会社分割、株式移転、株式交換、株式交付を指します。組織変更はほとんど聞かないので無視して大丈夫です。

組織再編の問題として、出題されるとしたら会社合併か会社分割でしょう。株式移転や株式交換は実務では使われますが、問題として出題されることは稀ですし、出題されたとしても基本的に会社合併等の議論をそのまま適用すればいいです。また株式交付は改正法で新しく入ったもので出題されにくいでしょう。

さてこのような組織再編は条文構造がいびつです完全に作成者が失敗したとみてもよいでしょう。初学者によっては勉強しにくくなっています。

組織再編の効果はそれぞれ個別的に書かれている

組織再編の効果や契約の締結等についてはそれぞれ個別的にまとめられています

つまり会社分割であれば会社分割についての条文があり会社合併については会社合併の条文があるというわけです。

会社分割について、「効果が知りたいなー、とか会社分割契約書って何を書くんだっけ?」と思ったら会社分割の条文を調べればいいわけです。だいたい会社法757条~766条あたりですね。

手続はその会社が何かによって分かれている

手続は会社分割ならここ!会社合併ならここ!というようには分かれていません。組織再編の手続は当該会社の種類によって分かれてます

会社が消滅株式会社存続株式会社設立株式会社かによって分かれているのです。

会社が消滅会社ならここ!会社が存続会社ならここ!会社が設立株式会社ならここ!というように分かれています。

え!消滅株式会社とか存続会社って何?

法上向
法上向

消滅株式会社とは吸収合併消滅階差h、吸収分割会社、株式交換完全子会社のことだぞ(会社法782条)。
存続株式会社とは吸収合併存続株式会社、吸収分割承継株式会社、株式交換完全親株式会社のことだな(会社法794条)。

たとえば吸収分割では、吸収される会社と吸収する会社の2社が登場するのが普通です。

分割を受ける会社は吸収分割承継株式会社、分割する会社は吸収分割株式会社といわれたりします。よって吸収する会社の手続を知りたい場合には存続株式会社の手続を、吸収される会社の手続を知りたい場合には消滅株式会社の手続の方を確認すればいいわけです。

ここで注意すべきは、分割する会社のことを分割会社という点です。よくある勘違いとして、分割を受ける会社のことを分割会社だと思って存続株式会社の手続を見てしまうことがあります(条文上は分割会社と書かれているため)。このような間違いを防ぐためにも、

会社分割で分割する方が会社分割会社である

ということは意識的に覚えておいた方がよいでしょう。

会社分割のときにどこの条文をみればよいか

まず問題として出題されているのが、吸収分割なのか、新設分割なのかを考えましょう。会社分割は会社合併と異なり、吸収分割も新設分割もありえます。

以下では吸収分割について考えていきます。

吸収分割の効果についてはまず個別の条文(会社分割)の条文を見ます。会社法757条以下です。

そして吸収分割の手続はその会社が消滅株式会社に含まれるか存続株式会社に含まれるかを考えます

消滅株式会社(分割会社)の場合には会社法782条以下を、存続株式会社(分割承継会社)の場合には会社法794条以下を見ればよいのです。

効果・契約と手続について、条文を見る際の探し方が変わるという点をしっかり理解しておきましょう

契約や効果については会社合併か会社分割かなどの個別的に
手続については滅株式会社か存続株式会社か新設株式会社かなど会社に着目して

条文を探していくことになります。

会社分割の効果

会社分割の効果は包括承継ではない?

会社分割は会社合併と同様に包括承継であるといわれたりします。当該承継される事業についての債務を含めて分割することができるからです。

しかし、会社分割全体としてみたときは「ある事業」は会社の一部でしかないため、包括承継という言葉は会社全部吸収分割(会社合併とほぼ同じ効果になる)の場合でないと意味を持たないことになります。さらに債権者からしても完全に承継される場合と併存的に分割会社にも債務が残る場合があります。

つまり、会社分割を包括承継として考えると間違えることが多いというわけです。あくまでも特定の事業の譲渡と同様に考えた方が間違えないでしょう。

会社分割には登記による第三者対抗などの規定はありません。第三者からは「どの事業が会社分割されたか」というのはわかりようがないからです。第三者に対抗したい場合は個別に民法上の要件を満たす必要があります。たとえば不動産を会社分割により分割承継会社に渡したのであれば、その不動産について独自に登記を移転する必要があるということです。

会社分割と会社合併の違いですので注意しましょう!

会社分割の手続

吸収分割について述べていきたいと思います。新設分割でも、会社の種類を考えて、新設分割会社(消滅株式会社)か新設会社(存続株式会社)かを考えていけばよいだけなので特段違いはありません。

分割する会社の手続

株主総会決議(会社法783条)

吸収される会社の手続は会社法782条以下に書かれています。具体的に重要なのは会社法783条です。

(吸収合併契約等の承認等)
第七百八十三条 消滅株式会社等は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、吸収合併契約等の承認を受けなければならない
(省略)

簡単に言えば株株主総会の決議が必要なわけですね。もちろん、これは消滅株式会社に関する規定なので会社分割などの場合でも同様です。

株主総会が必要ない場合(会社法784条)

また株主総会が必要ない場合もあります。

(吸収合併契約等の承認を要しない場合)
第七百八十四条 前条第一項の規定は、吸収合併存続会社、吸収分割承継会社又は株式交換完全親会社(以下この目において「存続会社等」という。)が消滅株式会社等の特別支配会社である場合には、適用しない。ただし、吸収合併又は株式交換における合併対価等の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合であって、消滅株式会社等が公開会社であり、かつ、種類株式発行会社でないときは、この限りでない。
2 前条の規定は、吸収分割により吸収分割承継会社に承継させる資産の帳簿価額の合計額が吸収分割株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を吸収分割株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えない場合には、適用しない

特別支配会社とは90%以上の株を持っている会社のことです。つまり吸収合併存続会社が消滅会社の株を90%以上持っている場合には、どうせ株主総会しても賛成されるのが決まっているので、株主総会の承認を必要としないわけですね。これを略式手続といったりします。

吸収分割の消滅株式会社(分割会社)の場合にはもう一つ、株主総会を省略できる場合があります。それが2号の簡易手続です。承継させる資産(事業)の帳簿価額が吸収分割株式会社の総資産額の5分の1を超えない場合には株主総会決議をとる必要がないというわけです。

会社分割の差止め(会社法789条の2)

会社合併についての差止めは会社法784条の2です。

(吸収合併等をやめることの請求)
第七百八十四条の二 次に掲げる場合において、消滅株式会社等の株主が不利益を受けるおそれがあるときは、消滅株式会社等の株主は、消滅株式会社等に対し、吸収合併等をやめることを請求することができる。ただし、前条第二項に規定する場合は、この限りでない。
一 当該吸収合併等が法令又は定款に違反する場合
二 前条第一項本文に規定する場合において、第七百四十九条第一項第二号若しくは第三号、第七百五十一条第一項第三号若しくは第四号、第七百五十八条第四号、第七百六十条第四号若しくは第五号、第七百六十八条第一項第二号若しくは第三号又は第七百七十条第一項第三号若しくは第四号に掲げる事項が消滅株式会社等又は存続会社等の財産の状況その他の事情に照らして著しく不当であるとき。

なお、この条文には注意してください。会社法784条の2第2号は会社法784条1項に規定された場合であることが前提です。つまり特別支配株主による略式手続である場合限定です。

よって、出題されるとしたら会社法784条の2第1号でしょう。法令定款違反の場合に差止めが可能ということを覚えておけば大丈夫だと思います。

なお、学説では、この法令・定款違反には株主総会取消事由も含まれるとされています会社分割の株主総会がおかしいぞ!という場合には分割自体を差し止めることができるわけですね。

反対株主の株式買取請求(会社法785条)

(反対株主の株式買取請求)
第七百八十五条 吸収合併等をする場合(次に掲げる場合を除く。)には、反対株主は、消滅株式会社等に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる
(省略)

株主総会に反対していた株主は、「合併するんやったら俺は株主辞めるわ!株式買い取って!」と主張することができるというわけです。

債権者異議手続(会社法789条)

(債権者の異議)
第七百八十九条 次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める債権者は、消滅株式会社等に対し、吸収合併等について異議を述べることができる
一 吸収合併をする場合 吸収合併消滅株式会社の債権者
二 吸収分割をする場合 吸収分割後吸収分割株式会社に対して債務の履行(当該債務の保証人として吸収分割承継会社と連帯して負担する保証債務の履行を含む。)を請求することができない吸収分割株式会社の債権者(第七百五十八条第八号又は第七百六十条第七号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては、吸収分割株式会社の債権者)
(省略)
5 債権者が第二項第四号の期間内に異議を述べたときは、消滅株式会社等は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該吸収合併等をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。

消滅会社の債権者は会社分割について異議を述べることができるというわけです。異議を述べた場合には弁済を受けることができます。

吸収分割の場合、分割会社は、承継される事業(資産)の債務について免責的引受け(承継会社に債務を移転する)にするか併存的引受け(分割会社と承継会社両方が債務を負担する)にするかを選ぶことができます。この点からしても会社分割は包括承継というのは間違いのもとですね。

併存的債務引受けの場合の債権者は異議を述べることができませんが、免責的債務引受け(承継会社に完全にわたってしまう債権者)は異議を述べ、弁済を受けることができるというわけです。

承継する会社の手続

株主総会決議(会社法795条)

(吸収合併契約等の承認等)
第七百九十五条 存続株式会社等は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、吸収合併契約等の承認を受けなければならない。
(省略)

株主総会決議が必要なのは消滅株式会社と同じです。

株主総会決議が必要ない場合(会社法796条)

(吸収合併契約等の承認を要しない場合等)
第七百九十六条 前条第一項から第三項までの規定は、吸収合併消滅会社、吸収分割会社又は株式交換完全子会社(以下この目において「消滅会社等」という。)が存続株式会社等の特別支配会社である場合には、適用しない。ただし、吸収合併消滅株式会社若しくは株式交換完全子会社の株主、吸収合併消滅持分会社の社員又は吸収分割会社に対して交付する金銭等の全部又は一部が存続株式会社等の譲渡制限株式である場合であって、存続株式会社等が公開会社でないときは、この限りでない。
2 前条第一項から第三項までの規定は、第一号に掲げる額の第二号に掲げる額に対する割合が五分の一(これを下回る割合を存続株式会社等の定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えない場合には、適用しない。ただし、同条第二項各号に掲げる場合又は前項ただし書に規定する場合は、この限りでない。
一 次に掲げる額の合計額
イ 吸収合併消滅株式会社若しくは株式交換完全子会社の株主、吸収合併消滅持分会社の社員又は吸収分割会社(以下この号において「消滅会社等の株主等」という。)に対して交付する存続株式会社等の株式の数に一株当たり純資産額を乗じて得た額
ロ 消滅会社等の株主等に対して交付する存続株式会社等の社債、新株予約権又は新株予約権付社債の帳簿価額の合計額
ハ 消滅会社等の株主等に対して交付する存続株式会社等の株式等以外の財産の帳簿価額の合計額
二 存続株式会社等の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額

会社法796条1項は消滅株式会社の場合と同様に、略式手続といいます。今回は吸収分割会社が分割承継会社の特別支配会社である場合です。いわゆる下剋上みたいなパターンですね。

この場合も株主総会を開いたところで賛成されることはほぼ決まっているので、株主総会を開く必要はなくなります。

会社法796条2項は簡易手続と呼ばれるものです。出ていくお金が存続会社の純資産額の5分の1を超えない場合には、存続会社にとっては大したことのない合併なので株主総会で決議をとるまでもないというわけですね。

強者の余裕というわけです。

会社分割の差止め(会社法796条の2)

(吸収合併等をやめることの請求)
第七百九十六条の二 次に掲げる場合において、存続株式会社等の株主が不利益を受けるおそれがあるときは、存続株式会社等の株主は、存続株式会社等に対し、吸収合併等をやめることを請求することができる。ただし、前条第二項本文に規定する場合(第七百九十五条第二項各号に掲げる場合及び前条第一項ただし書又は第三項に規定する場合を除く。)は、この限りでない。
一 当該吸収合併等が法令又は定款に違反する場合
二 前条第一項本文に規定する場合において、第七百四十九条第一項第二号若しくは第三号、第七百五十八条第四号又は第七百六十八条第一項第二号若しくは第三号に掲げる事項が存続株式会社等又は消滅会社等の財産の状況その他の事情に照らして著しく不当であるとき。

こちらも消滅株式会社の場合と同様、2号が略式手続の場合を前提としている点に注意してください。つまり、基本的には会社法796条の2第1号の法令・定款違反の場合しか差止めはできないというわけです。

また会社法796条の2第1号の法令・定款違反には株主総会の取消事由も含むと考えられています

反対株主の株主買取請求(会社法797条)

(反対株主の株式買取請求)
第七百九十七条 吸収合併等をする場合には、反対株主は、存続株式会社等に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。ただし、第七百九十六条第二項本文に規定する場合(第七百九十五条第二項各号に掲げる場合及び第七百九十六条第一項ただし書又は第三項に規定する場合を除く。)は、この限りでない。

文字通り、存続株式会社でも、株主総会に反対した株主は会社に対して株式の買取を請求することができる権利があるというわけです。

あいつと合併するくらいなら株主をやめてやる!買い取ってくれ!」と吸収合併存続株式会社の株主は主張できるということですね。

債権者異議手続(会社法799条)

(債権者の異議)
第七百九十九条 次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める債権者は、存続株式会社等に対し、吸収合併等について異議を述べることができる
一 吸収合併をする場合 吸収合併存続株式会社の債権者
二 吸収分割をする場合 吸収分割承継株式会社の債権者
(省略)
5 債権者が第二項第四号の期間内に異議を述べたときは、存続株式会社等は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該吸収合併等をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。

存続会社(分割承継会社)の債権者も会社分割に異議を唱えられるというわけですね。異議を述べた債権者は弁済を受けることができます

事業譲渡と会社分割の違い

事業譲渡と会社分割は似ています。というかもたらす効果はほぼ同じです。会社分割について詳しくは以下の記事をご覧ください!

事業譲渡と会社分割

ではどう使い分けるのでしょうか?

一番大きな違いは債権者の個別的同意が必要か、債権者異議手続でよいかでしょう。

事業譲渡の場合には債権者の個別同意が必要になる一方で、会社分割の場合には債権者異議手続を行っていれば、いちいち債権者個人に「債務移転していいっすか?」と聞く必要がないというわけです。

一方で会社分割は分割契約書の作成や事前事後の開示の手続など手間がかかるというデメリットがあります。時間と労力がかかり大変なのです。

そのため、一般的には債権者が少ない(協力的)な場合には事業譲渡が使われ、債権者が多い(非協力的)な場合には会社分割が使われるといわれています。

とはいっても個別事案に応じて変わってくるので正確な答えではありません。会社の事業移転をどのようにするかは弁護士の腕にかかっているというわけですね。

うまくいっていない事業の会社分割

続いて応用的ですが会社分割独自の論点について確認してみましょう。

会社分割はうまくいっていない事業を新設分割して切り離す場合にも使われます。もちろん吸収分割の場合もあります。

すると何が起こるか想像できますか?

この新設分割で、当該事業は免責的債務引受け=新設会社にすべて債務は移転するかたちになったとします。すると、債権者たちは基本的に分割会社に対しては債務の履行を請求できなくなるのです。

よって完全にトカゲのしっぽ切りが完成するわけですね。

この問題に対応するために、ある手続や効果が設けられました。この手続や効果を説明するのはやや応用なので「はじめての会社法シリーズ」では省きます。基本書等で確認をお願いします。

今回はその手続を少しだけお見せすることにします。

(株式会社を設立する新設分割の効力の発生等)
第七百六十四条 新設分割設立株式会社は、その成立の日に、新設分割計画の定めに従い、新設分割会社の権利義務を承継する。
2 前項の規定にかかわらず、第八百十条第一項第二号(第八百十三条第二項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の規定により異議を述べることができる新設分割会社の債権者であって、第八百十条第二項(第三号を除き、第八百十三条第二項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の各別の催告を受けなかったもの(第八百十条第三項(第八百十三条第二項において準用する場合を含む。)に規定する場合にあっては、不法行為によって生じた債務の債権者であるものに限る。次項において同じ。)は、新設分割計画において新設分割後に新設分割会社に対して債務の履行を請求することができないものとされているときであっても、新設分割会社に対して、新設分割会社が新設分割設立株式会社の成立の日に有していた財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる

組織再編では、両会社に債権者異議手続が用意されていました。債権者異議手続の通知・公告などの手続の保障がされていなかったり、不法行為債権者については、分割会社に対して依然として債務の履行請求ができるというわけですね。

詳しくは、基本書や演習書で学習してみてください!

うまくいっている事業の会社分割

上記とは逆に、うまくいっている事業を会社分割によって移転する場合もあります。

このような会社分割を行うとどうなるでしょうか?

分割会社の債権者がキレるわけです。うまくいっている事業を分割する=分割会社の価値が下がるので弁済を受けられない可能性が高まるからですね。

でも、手続上、会社分割を阻止できるものはいっぱいあったよね。債権者異議とか。これを使えばいいんじゃない?

法上向
法上向

実は無理なんだよ。債権者異議の条文を見てもらえばわかるけど、異議を申し立てれるのは承継される資産(事業)の債権者だけなんだ。

このような詐害的会社分割の場合に債権者異議は使えません。あくまで債権者異議手続をとれるのは移転する事業の債権者だけだからです。

そこで新たな条文が創設されました。先ほどの続きとして新設分割の条文を見てみます。

(株式会社を設立する新設分割の効力の発生等)
第七百六十四条 新設分割設立株式会社は、その成立の日に、新設分割計画の定めに従い、新設分割会社の権利義務を承継する。
4 第一項の規定にかかわらず、新設分割会社が新設分割設立株式会社に承継されない債務の債権者(以下この条において「残存債権者」という。)を害することを知って新設分割をした場合には、残存債権者は、新設分割設立株式会社に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる

詐害的会社分割(会社法764条4項など)について要件を満たせば、分割会社の債権者であっても、承継会社に履行請求することができるようにして解決を図ったわけですね。

また、民法上は詐害行為取消権を用いて解決を図ることも可能です。さらに法人格否認の法理商号許諾を用いることもできます。

とはいえ、これらは応用的なので、一通り会社法を学んだうえでの発展的知識として基本書や演習書でみにつけていけばよいでしょう。

まとめ

以上、会社分割についてみてきました。

とりあえずは効果手続を押さえるだけで大丈夫でしょう。さらに手続は会社合併と同様に考えることができます

会社分割独自の論点については応用的なので最初のうちはわからなくて大丈夫です。会社法を一通り勉強してから条文操作による債権者異議や詐害的会社分割の論点に対応できるようになれば大丈夫でしょう。

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

会社法の基本書はどれもかなり難解だと思います。問題で論点をつかみながら理解するとよいです。そのため解説の詳しい問題集を載せておきます。参考にしてみてください!

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