目的物引渡請求権を解除の要件事実とともに【民事実務基礎その3】

法律実務基礎科目

売買関係だともう一つ、買主から目的物返還請求をすることもできますよね。

法上向
法上向

そうだね、ただし、大体は売買代金支払請求と同じ請求原因だし抗弁・再抗弁だよ。

せっかくだし、別の抗弁として解除も学んでみようか。

売買契約から生じるもう一つの効果にも目的物引渡請求があります。

請求原因抗弁、再抗弁売買に基づく売買代金支払請求権と同様のものが認められます。ここではさらに追加として、解除の抗弁についても学習していきましょう。

売買代金支払請求については以下の記事を参考にしてください。

それでは見ていきましょう。

目的物引渡請求のポイント

要件事実の基本は、訴訟物請求の趣旨請求原因抗弁・再抗弁等を押さえることです。

そのため、順を追ってこれらの事項を解説していきます。

①目的物引渡請求の訴訟物を理解する。
②目的物引渡請求の請求の趣旨を理解する。
③目的物引渡請求の請求原因を理解する。
④解除の抗弁や再抗弁を理解する。

それではみていきましょう。

目的物引渡請求の訴訟物

目的物引渡請求の訴訟物は「売買契約に基づく目的物引渡請求権」です。

毎度のことですが、「売買契約に基づく」を忘れないようにしましょう!

目的物引渡請求の請求の趣旨

請求の趣旨は毎度言っているとおり、いかにシンプルに書くかです。

被告は、原告に対し、〇〇を引き渡せ。

が請求の趣旨になります。

決して

「被告は、原告に対し、売買契約に基づき〇〇を引き渡せ。」

とは書いてはいけません。執行官の方がこんがらがってしまうかもしれないからです。

目的物引渡請求の請求原因

民法の契約法で売買契約について学んだのであれば、売買契約から売買代金支払請求目的物引渡請求の2つが主として発生することがわかると思います。

>>>民法の視点からみた売買契約【はじめての契約法その6】

売買契約を主張すれば、目的物引渡請求の権利を基礎づけることができます

さて、売買契約の要件事実を覚えていますか?

〈目的物引渡請求の請求原因〉
①目的物の特定
②代金額(またはその額の決定方法の合意)

→「Aは、Bとの間で、〇年〇月〇日、△を代金〇〇円で売った。」など。
※ポイント:㋐誰と誰との間の売買契約か明確にすること㋑日時を入れること㋒対象物を入れること。㋓代金を明示すること。

解除の抗弁

さて、いよいよ今回の本番です。目的物引渡請求権は、売買代金支払請求と同様に、

抗弁として

履行期の抗弁

弁済の抗弁

同時履行の抗弁

錯誤・詐欺の抗弁

などなどが考えられます。

しかしこれらは前回の記事で書いたので、今回は新たな抗弁として解除を考えてみましょう。

前回の記事についてはこちら

なお、解除の抗弁は、売買代金支払請求のところでも使えます。というか双務契約なら万能の抗弁です。

解除の要件事実の考え方

解除の要件事実を考える際には、解除のことを理解していなければなりません。

はじめての民法シリーズその5

で詳しく説明していますが、

〈催告解除(民法541条)の要件〉
①債務の発生
②債務不履行
③催告
④相当期間の経過
⑤同時履行の抗弁の不存在
⑥解除の意思表示

が要件になります。

これを少し抗弁としてアレンジしていきましょう。

まず、①債務の発生は主張する必要がありません。請求原因ですでに権利が発生していることが表れているからです。

そして、解除の抗弁は、今回であれば代金を支払っていないことを理由とした解除ということになりますので、

弁済の提供(民法392条)等によって目的物を持参していることを主張する必要があります。
これが③同時履行の抗弁の不存在に当たります。

よって以下の通りになるでしょう。

〈催告解除(民法541条)の要件〉
②債務不履行
③催告
④相当期間の経過
⑤同時履行の抗弁の不存在
⑥解除の意思表示

→「②Aは、Bとの間で、本件売買契約に際し、履行期を〇年〇月〇日にする旨の合意をした。」
→「②(履行期)〇年〇月〇日経過した。」
→「③Aは、Bに対し、〇年〇月〇日、売買代金〇〇円の支払を催告した。」
→「④〇年〇月△日は経過した」
→「⑤Aは、〇年〇月〇日、本件〇を引き渡せる状態にし、B宅に赴いた。」
→「⑥Aは、Bに対し、〇年〇月〇日、本件売買契約を解除するとの意思表示をした。」
※ポイント:誰が、誰に対し、いつ、何について、どうしたのか、を具体的に明記する。

上の表で②について必要ないとする説もあります。

というのも、履行遅滞は民法412条3項より催告で基礎づけられますが、この催告は解除(民法541条)の催告と兼ねることができるよう判例があるからです。

となると、履行遅滞の場合の債務不履行については、解除の催告に吸収される=履行遅滞をわざわざ言う必要がないということになります。

しかしながら、上記の要件付けを覚えておけば無催告解除(契約不適合解除や賃貸借の解除)でも応用できるので、今回は、

ちゃんとした要件事実

として上記のような要件事実としました。ご参考までに。

なお、無催告解除についても確認してみます。

〈無催告解除(民法542条)の要件〉
①債務の発生
②履行不能(1号)※その他2号~5号の事情
③解除の意思表示

これを抗弁として考えると以下の通りになります。

〈無催告解除(民法542条)の要件〉
②履行不能(1号)※その他2号~5号の事情
③解除の意思表示

→「②〇〇は、〇年〇月〇日、火災により焼失した。」
→「③Aは、Bに対し、〇年〇月〇日、本件売買契約を解除するとの意思表示をした。 」など。
ポイント:㋐債務不履行が1号~5号のいずれであるかを具体的に明記すること㋑誰が誰に対し、いつ、解除の意思表示をしたのかを明示すること。

解除の再抗弁

催告解除の再抗弁としては、

不履行が軽微(民法541条ただし書)であることがあげられます。

条文より明らかですね。

しかしながらあまり民事実務基礎では出てこない再抗弁なのでそれほど気にする必要はないでしょう。

まとめ

以上、目的物引渡請求の要件事実について書いてきました。

特に解除については、催告解除無催告解除を含めてしっかり理解していきましょう。以下に図でまとめてみます。

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

民事実務の基礎の教科書、参考書として有用なのは1つしかありません。

これを買わずして勉強できないといわれるほどの良書、大島先生の「民事裁判実務の基礎」です。

予備試験、ロースクール授業対策であれば「入門編」で十分でしょう。司法修習生になると「上級編」や「続編」が必要になるらしいです。

まだ何も参考書がないという方はぜひ読んでみてください!

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