責任能力について丁寧にわかりやすく解説してみた【刑法総論その10】

責任能力 刑法
法上向
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結果→行為→因果関係→故意(過失)→違法阻却を検討たら次は何を検討する?

責任阻却事由があるかどうかですよね。責任要素ってなかなか影が薄いですね。

法上向
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影が薄い=論点が少ないということさ。責任要素では特に誤想防衛と原因において自由な行為が大事だな。今回は原因において自由な行為についてみていこうか。

刑法は結果→行為→因果関係→故意(過失)→違法阻却→責任阻却の流れで考えるのが基本です。最終段階が責任になります。

責任は基本的に認められるのでここでは責任がないとされる場合について考えていくことになります。さっそく見ていきましょう。

刑法の責任能力のポイント

罰するにはその人に責任能力がなければなりません。この責任能力があるかどうかを責任段階で検討していきます。主に問題になるのが刑事未成年心神喪失心神耗弱,それに関連する原因において自由な行為です。

①刑事未成年について理解する。
②心神喪失・心神耗弱の場合は責任能力が欠けるとされることを押さえる。
③原因において自由な行為論を理解する。

それでは見ていきます。

刑事未成年(刑法41条)は罰しない

まず責任能力が欠けるとされる一つ目の場合は刑事未成年です。これは刑法41条に規定されています。

(責任年齢)
第四十一条 十四歳に満たない者の行為は、罰しない。
14歳未満の者は刑事責任を問われないということです。この年齢は絶対です。たとえばこの子は少し賢いから13歳でも罰しよう,とかひどい犯罪だから13歳でも罰しようとかそんなことはありえません。14歳という絶対的基準があります。

罰する=ペナルティを与えるというよりは正しい道へ歩ませるようにすることが重要であるとの考えがあるように感じます。善悪を理解していない年齢なので犯罪は見過ごすということなのでしょうね。

この点はあまり問題として出ません。つまり問題で出てくる登場人物はほとんど14歳以上のはずです。なぜなら14歳未満の登場人物を出すとその者に対しては行為や因果関係などいろいろな問題を検討する以前に責任能力がないため不可罰となるからです。問題が成立しないというわけです。

刑事未成年(14歳未満)は責任能力なし。

心神喪失・心神耗弱の場合も責任能力を欠く

刑事未成年と同じように責任能力が欠けるとされる場合が2つあります。それが心神喪失心神耗弱の場合です。

条文は刑法39条になります。

(心神喪失及び心神耗弱)
第三十九条 心神喪失者の行為は、罰しない。
2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
心神喪失心神耗弱の微妙な違いに注意してください。心神喪失刑事未成年と同様に罰しないとされていますが,心神耗弱は刑を減軽するだけで罰しないわけではありません。

心神喪失は精神の障害によって弁識能力や制御能力がない状態を言います。一方,心神耗弱は精神の所が言うにより弁識能力または制御能力が著しく減退した状態です。

なお,精神の障害を生物学的要素,弁識能力・制御能力を心理学的要素と言ったりもします。

よく例として挙がるのが酩酊状態(めちゃくちゃお酒に酔った状態)です。この場合は心神喪失や心身耗弱と判断されることがあり,責任能力で問題になることがあります。心神喪失や心身耗弱が認定されれば責任阻却ですね。

酩酊
他にも覚せい剤等の薬物であったり恐怖などで心神喪失・心神耗弱になる場合がありますが,問題として出る時はわかりやすく書かれていると思うのでそこまで気にすることはないと思います。

よくテレビの報道では被疑者が精神鑑定を受ける,みたいな話聞きますよね。あれは責任能力があったかを確認しているのかな?

 

法上向
法上向

おそらくそうだな。「責任が認められないので刑罰なし」という報道を批判する人もいるが,刑法がこうなっている時点でしょうがないことなんだよ。実際,刑法というのは責任を問うものなのだから。

 

感情に流されない法的な見方ができるようになるのも法律を勉強するメリットですね。

心神喪失は責任能力なし。心神耗弱は責任能力に欠けていることを理由に減軽される。

秘技!原因において自由な行為の扱い方

何かおかしい,という視点

法上向
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心神喪失の場合は罰せられないのなら,お酒をたくさん飲んでから犯罪に及ぶ人が増えないかな?

たしかに,酩酊になれば責任能力は否定されそうですよね。けどそれってなんかおかしいような……。

法上向
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その何かおかしいという視点が大事なんだ。責任能力をなくした状態を自ら作りにいっている場合,このこと自体についての責任が問えそうじゃないかい?そうすれば罰せられそうだね。

自ら心神喪失・心身耗弱状態に作りにいく場合も責任が阻却されるのはおかしいですよね?この場合は秘技「原因において自由な行為」を用いましょう。ジョジョの技名みたいです。

原因において自由な行為は原因行為を考える

自ら心神喪失状態を招いている場合,原因において自由な行為という技が使えます。ポイントは原因行為の意思決定を捉えることです。

学説上さまざまな議論がありますが,原因行為時の意思決定が連続ていていれば,実行行為時に心神喪失であっても責任能力を問うことができます。なぜなら意思決定を行っている時は責任能力があったのであり,その時点で刑の責任を問えるからです。

なんだか未遂犯の考え方と似ていますね。準備行為時から実行の着手を認めるというあれです。

たとえば殺人を思い立ち(=意思決定),契機づけに大量のお酒を飲んだとします。そして酩酊状態(=心神喪失)に陥り殺意で人を刺しました。

この場合,一見,心神喪失状態で人を刺しているので殺人罪の責任が阻却されそうです。しかし原因行為時に殺人の意思決定をしてそれがそのまま実行行為時の意思決定(人を刺す)につながっています。すると,原因行為時を捉えて原因において自由な行為として責任能力を認めることができるのです。

く,こいつ心神喪失になってやがる……。責任を問えないのか…。無罪なのか……。

となったら,最終兵器「原因において自由な行為」を検討してみましょう!(笑)。

まとめ

責任段階での検討は刑事未成年の場合はほとんどありませんから,心神喪失,心神耗弱の検討が基本になります。しかも心神喪失・心神耗弱の場合はほとんどありません=責任段階が問題になることはほとんどないということです。

しかし,忘れていたころにふと問題になることがあります。特に原因において自由な行為ですね。責任段階の問題=原因において自由な行為の問題といってもいいくらいなのでこの点をしっかり押さえておけば大丈夫だと思います。

①14歳未満は責任阻却(刑法41条)
②心神喪失の場合は責任阻却(刑法39条1項)。心身耗弱の場合は減軽(刑法39条2項)。
③ただし,原因において自由な行為を使う場合もあるので注意。
読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

記事の目的上,とても簡潔にまとめているので,もっと深めたい方は以下の基本書を参考にしてください。わかりやすいのでおすすめです。

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