改正民法対応!詐害行為取消権の行使方法と効果をわかりやすく【債権総論その9】

詐害行為取消権の効果民法
法上向
法上向

詐害行為取消権の要件については前回の記事で確認したね。

今回は、行使方法と効果についてですね。なんだか今回は簡単そうですね。

本当にそう?私は行使方法や効果の方が難しいと思うけど……。

詐害行為取消権って要件も複雑だったけれど、効果とかも複雑なのか。知らなかった…

詐害行為取消権の要件については前回の記事で学習しました。今回の行使方法や効果は要件が充足していることが前提となるので、詐害行為取消権の要件について、気になる方は以下の記事をチェックしてみてください。

今回は、詐害行為取消権の行使方法と効果です。この分野もなかなか複雑な箇所なので、条文に沿ってしっかり理解して、不正確な点をなくしていくようにしましょう。

詐害行為取消権の行使方法・効果のポイント

詐害行為取消権の行使方法には複数のパターンがあります。どういう趣旨でどういった手段があるのかを最初に押さえましょう。また、債権者代位の箇所で出てきた事実上の優先弁済という論点は詐害行為取消権でも登場します。復習がてらみてみましょう。

効果についてはなかなか複雑です。というのも、詐害行為取消権には、債権者、債務者、受益者、たまに転得者という複数の登場人物がおり、それらの間の法律関係をどうするのか考えなければならないからです。条文が作られているので、なぜこのような規定があるのか、を考えながらしっかり理解していくようにしましょう。

①詐害行為取消権の行使方法を知る。
②受益者に対する詐害行為取消権の効果について理解する。
③転得者に対する詐害行為取消権の効果について理解する。

それではみていきましょう。

詐害行為取消権の行使方法

詐害行為取消権は債権者VS受益者の訴訟

詐害行為取消権は裁判所に請求するものです。これは前回の記事で何度も説明してきたことでした。

債権者代位権は裁判外でも行使できますが、詐害行為取消権は裁判上でしか行使できません

この点は意外と見落としがちなので注意してください。

以上を踏まえて、どういった請求をすればいいのか、気になる方も多いと思います。その規定が民法424条の6に置かれています。

行使の方法は民法424条の6

(財産の返還又は価額の償還の請求)
第四百二十四条の六 債権者は、受益者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、その行為によって受益者に移転した財産の返還を請求することができる。受益者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。
2 債権者は、転得者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、転得者が転得した財産の返還を請求することができる。転得者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。

民法424条の6第1項は受益者に対する詐害行為取消権について、民法424条の6第2項は転得者に対する詐害行為取消権について規定しています。

この規定をみると、受益者の場合であれ、転得者の場合であれ、詐害行為を取消すと、移転した財産を債務者に返還することが必要になることがわかります。100万円の絵画を売った行為が詐害行為であれば、詐害行為を取消すと、絵画を返還することが必要になるのです。

これを現物返還といったりします。

そして、現物返還ができない場合には価額償還(お金で解決)をするわけです。

勘違いしてはいけないのは、返還請求は受益者(転得者)から債務者に返還するものであるという点です。

詐害行為取消権は債務者の責任財産保全のために詐害行為を取消すだけのものでした。そのため、原則として債権者が物を得られるわけではありません。詐害行為が取消されるだけです。その取消しによる返還として現物返還が原則で、それが困難な場合には価額返還を請求できる、というだけです。

詐害行為取消権の行使方法

請求の範囲は被保全債権の限度

債権者代位権と同じく、詐害行為取消権も、詐害行為が可分の場合には、被保全債権額の限度でしか詐害行為の取消しを請求できません

これは債権者代位権も詐害行為取消権も、債務者の責任財産の保全のために、例外的に債務者の行為に介入しているだけであり、本来行為、権利行使を行うべきは債務者本人です。

そのため、行使できる範囲はかなり限定的になります。

条文は民法424条の8です。

(詐害行為の取消しの範囲)
第四百二十四条の八 債権者は、詐害行為取消請求をする場合において、債務者がした行為の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、その行為の取消しを請求することができる
2 債権者が第四百二十四条の六第一項後段又は第二項後段の規定により価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする。

価額償還でも同様(民法424条の8第2項)ですので、基本的に金銭の場合には被保全債権の額の限度でしか取り消せないことになります。

事実上の優先弁済

行使方法は、原則、現物返還で、例外的に価額返還をすることになること。可分の場合には被保全債権の額の限度でしか取り消せないことを見てきました。

この現物返還価額償還は、行為を取消しただけなので、受益者(転得者)から債務者に移るだけでしたね。

ところが、債権者代位権と同様に例外的に債権者が物を得ることのできる場合が規定されています。

民法424条の9です。

(債権者への支払又は引渡し)
第四百二十四条の九 債権者は、第四百二十四条の六第一項前段又は第二項前段の規定により受益者又は転得者に対して財産の返還を請求する場合において、その返還の請求が金銭の支払又は動産の引渡しを求めるものであるときは、受益者に対してその支払又は引渡しを、転得者に対してその引渡しを、自己に対してすることを求めることができる。この場合において、受益者又は転得者は、債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは、債務者に対してその支払又は引渡しをすることを要しない。
2 債権者が第四百二十四条の六第一項後段又は第二項後段の規定により受益者又は転得者に対して価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする。

金銭の支払や動産の引渡しが返還の内容となる場合には、債権者は自分へ支払うor引渡すように請求できるというわけです。

これは債権者代位権の箇所でみたのと同じ話です。

さて、債権者代位と同様に、この場合、債権者自身が動産や金銭をゲットできるわけではありません。あくまで債務者の」動産や金銭を代わりに保持しているだけです。

そのため、債務者は債権者に対して返還請求権を持つことになります。

ところが金銭の場合には債務者から債権者に対する金銭債権(返還請求権)と債権者から債務者に対する金銭債権(被保全債権)があることになるので、債権者は相殺の主張をすることができるのです。

これを「事実上の優先弁済」と呼びます。

債権者は被保全債権を相殺によって、回収できたことになるからです。

事実上の優先弁済は、債権者代位権や詐害行為取消権、さらには留置権など、広く民法で出てくる考え方なのでしっかり理解するようにしましょう。

ようは、法律に規定されていないが、頑張れば自己の債権を回収できる方法のことを事実上の優先弁済と言うわけです。

今回はその前提として、動産や金銭の場合には受益者(転得者)から債権者自身に支払or引渡すよう請求できるという点、引き渡されたとしてもそれは債務者のものであるから債務者から債権者に返還請求権が生じるという点をしっかり理解しましょう。

詐害行為取消権の効果

さていよいよ詐害行為取消権の効果に入っていきます。

詐害行為取消権の効果は債権者にも及ぶ

まず押さえてほしいのは詐害行為取消権の効果は債権者にも及ぶという点です。

詳しくは民事訴訟法での解説に譲りますが、詐害行為取消権は債権者VS受益者(転得者)の訴訟です。ところがその判決の影響は債務者にも及びます。

そもそもの原因は債務者にあるので、債務者も詐害行為取消権の効果・影響を受けなさい、というわけです。

そのことは、詐害行為取消権の際に債務者に訴訟告知(訴訟に参加しませんか?という告知)をしなければならないとしている点からもうかがえます。

(被告及び訴訟告知)
第四百二十四条の七 
2 債権者は、詐害行為取消請求に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない

また、認容判決の効果は債務者にも及ぶことが規定されています

(認容判決の効力が及ぶ者の範囲)
第四百二十五条 詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する。

受益者の権利

そうなってくると、詐害行為取消権が行使された後の受益者と債務者との間での処理が問題となります。

詐害行為取消権では原則として現物返還、例外的に価額償還がなされるのでした。これは受益者から債務者への返還が原則です(もちろん、見てきた通り動産や金銭の場合には債権者が受け取ることもできます)。

すると、誰かが損をしている可能性が出てきますよね。そう受益者です。

受益者は詐害行為によって得た利益を債務者に返還するのでした。受益者は利益を失うことになります。

たとえば詐害行為が売買契約であり、債務者が受益者に対して100万円の絵画を売った場合、詐害行為取消権が行使されると、受益者は100万円の絵画現物を返還するのが原則です。

しかし受益者から債務者に対しては何も請求できない(支払った代金の返還を請求できない)となると受益者は不当な損害を負ってしまいます

そのため、民法は受益者の債務者に対する返還請求権を獲得するわけです。

(債務者の受けた反対給付に関する受益者の権利)
第四百二十五条の二 債務者がした財産の処分に関する行為(債務の消滅に関する行為を除く。)が取り消されたときは、受益者は、債務者に対し、その財産を取得するためにした反対給付の返還を請求することができる。債務者がその反対給付の返還をすることが困難であるときは、受益者は、その価額の償還を請求することができる。

これも現物返還が原則ですが、困難な場合には価額償還ができます。

さて、これは債務者が受益者に弁済したような詐害行為の場合(偏頗行為)の場合でも同様です。

受益者は債務者に弁済で得た金銭を返還することになりますが、受益者が何も得られないのでは受益者に不当な損害が生じます。そのため、受益者から債務者に対する債権が復活すると規定されています。

(受益者の債権の回復)
第四百二十五条の三 債務者がした債務の消滅に関する行為が取り消された場合(第四百二十四条の四の規定により取り消された場合を除く。)において、受益者が債務者から受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、受益者の債務者に対する債権は、これによって原状に復する

このように、受益者は詐害行為が取消され債務者に返還する代わりに、反対給付を得たり、債権を復活するという効果を得るわけです。

詐害行為取消権の効果

転得者の権利

詐害行為取消権行使後の転得者の権利はさらに複雑です。まずはここでの登場人物は、債権者・債務者・受益者・転得者であることを押さえましょう。

さらに、転得者に対する詐害行為取消権は転得者VS債権者の訴訟でした。そしてその効果は債権者にも及びます。つまり、転得者に対する詐害行為取消権の影響を受けるのは、債権者、債務者、転得者です。受益者は何も関係ない人という点も理解しておきましょう。

このことを前提として、詐害行為取消しの効果を考えると、転得者は債務者に対して現物返還、困難であれば価額償還をするのでした。

しかしそれでは転得者は不当な損害を負ってしまいます。また転得者が受益者に何か請求しようとしても、受益者は関係のない人でした。

そこで、転得者と受益者の関係をどう調整するかが難題になってくるわけですね。

ここで法律はこう考えたわけです。

本来、受益者に対して詐害行為取消権を行うこともできたが、債権者は転得者に対して詐害行為取消権を行使した。となると、受益者に対して詐害行為取消しが行われていれば負っていた責任分は債務者に負わせても問題ないだろう。

こうして転得者は債務者に対して一定の限度で権利を行使ことができると規定されました。

このことを踏まえて、民法425条の4を見てみましょう。

(詐害行為取消請求を受けた転得者の権利)
第四百二十五条の四 債務者がした行為が転得者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたときは、その転得者は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。ただし、その転得者がその前者から財産を取得するためにした反対給付又はその前者から財産を取得することによって消滅した債権の価額を限度とする
一 第四百二十五条の二に規定する行為が取り消された場合 その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば同条の規定により生ずべき受益者の債務者に対する反対給付の返還請求権又はその価額の償還請求権
二 前条に規定する行為が取り消された場合(第四百二十四条の四の規定により取り消された場合を除く。) その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば前条の規定により回復すべき受益者の債務者に対する債権

1号は財産の処分に関する取引について、2号は債権の消滅についての取引の場合の詐害行為行為取消権の規定です。

みてわかる通り、転得者は、受益者の持っている債務者に対しての反対給付返還請求権(困難な場合には価額償還請求権)or債権を行使できるというわけです。ただし、転得者の受益者に対する反対給付や債権の価額の限度内でしか行使できない点にも注意してください(民法425条の4ただし書)。

注意点は、受益者は転得者に対する詐害行為取消権の場合には赤の他人です。そのため、あくまで転得者が行使できるのは債務者に対してとされます。

なかなか理解のしづらい箇所だとは思見ますが、条文の文言を読み取って、しっかり理解していけば大丈夫です。

結局は、転得者にも頑張って権利を認めてあげようとしているだけなので、もしわからなければとりあえず飛ばして、いろいろ勉強してから戻ってくれば気づくことも多いでしょう。

まとめ

以上、詐害行為取消権についてみてきました。

いかがだったでしょうか。前回の記事と今回の記事を合わせれば詐害行為取消権の基本事項を一通り学習したことになります。

詐害行為取消権はあまり試験に出題されませんが、改正民法で大きく変わった部分であり、いろいろな法律の知識を使う非常に勉強になる分野です。

債権総論の一つの山場だと思ってしっかり理解するようにしましょう。

最後に詐害行為取消権の要件を確認して終えたいと思います。

詐害行為取消権の基本的な要件を言えますか?

〈詐害行為取消権(民法424条)の要件〉
①詐害性(民法424条1項)
②無資力

③詐害意思(民法424条1項)
④財産権を目的とする行為(民法424条2項)
⑤被保全債権が詐害行為前の原因に基づいて生じたものであること(民法424条3項)
⑥被保全債権が強制執行により実現できるものであること(民法424条4項)
⑦受益者の悪意(民法424条1項)

これでしたね。とくに①詐害性②無資力③詐害意思⑤受益者の悪意はよく確認するようにしましょう。

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

債権総論では初学者にもおすすめのとてもわかりやすい基本書があります。有斐閣ストゥディアの債権総論です。

改正民法に完全対応ですし、事例や図解、章ごとのまとめもあるのでとてもわかりやすい基本書になっています。ぜひ読んでみてください。

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