改正対応!債権者代位権とは何か?わかりやすく解説【債権総論その7】

債権者代位権民法
法上向
法上向

債権者代位権という債権総論の難しい論点を今日は解説してみようと思う。

債権者代位権?よくわかんないです……。

何を考えればいいのかさえもわかりません。改正法になって参考書も少ないので助けてください。

債権者代位権は改正法で大きく変わった分野であり、債権総論の難しい論点の1つです。また以外と論点で出題されることもあるので、しっかり押さえておく必要があります。

とはいえ、民法改正で、条文に基本的には明記されるようになったので、勉強しやすくなった分野といえるでしょう。改正民法に準拠した説明をしていこうと思います。

債権者代位権のポイント

債権者代位権の勉強で一番重要なのは、要件をしっかり理解することです。債権者代位権は要件ゲームです。改正民法になりその要素が強まりました。

そのため、まずは債権者代位権のざっくりとした説明をします。

その後、要件を一つ一つ解説していきます。

あとは、効果を見ていきます

債権者代位権には転用という事項もあるのですが、今回は「はじめての債権総論」ということでデフォルトタイプしか押さえません。債権者代位権の転用について理解したい方は、各自基本書等で確認をお願いします。

すべての理解の中心は債権者代位権の要件と効果にあります。債権者代位権の転用でも債権者代位権の要件・効果を基礎とするので、しっかり意識して勉強していきましょう。

①債権者代位権とは何かを理解する。
②債権者代位権の要件を理解する。
③債権者代位権の効果について理解する。

債権者代位権とは何か?

債権者代位権とは何か?を押さえずして要件や効果を解説していっても、本番で使えないことになります。

債権者代位権の趣旨目的を押さえることで、問題を解いているときに「あ、これは債権者代位権が使えそうな場面だな!」と気づくことができるのです。

債権者代位権の適用場面

債権者代位権での主な登場人物は、債権者、債務者、第三債務者です。

第三債務者とは、債務者の債務者(この場合、債務者は第三債務者との関係では債権者となる)です。

債権者代位権を一言でいうと

債権者が債務者の債務を代わって行使する制度

といえます。

以下の図を見れば少しはわかりやすいと思います。

債権者代位権

では、なぜこのような制度が設けられたのか、気になりますよね。詳しく見ていきましょう。

債権者代位権の趣旨・目的

債権者代位権の趣旨・目的は

責任財産の保全

にあります。

責任財産とは、強制執行の対象になる財産のことです。強制執行になる場面で債務者はちゃんと財産を受け入れてくれるわけではありません。考えられないかもしれませんが、窮地に陥った債務者は、自身の権利を行使しないという無気力状態(もしくは妨害するために意図的)になる場合もあるのです。

無気力な債務者
無気力な債務者

このような債務者のせいで債権者が強制執行によって得られるお金が減らされては困ります。そこで「お前がやらないなら、俺が代わりに権利行使してやるぞ!」といった形で債権者が債務者の権利を行使する制度が認められているわけです。

これを債権者代位権といっているわけですね。

債権者が自身の債務者に対する債権の行使を守りたい(強制執行行使を守りたい)がために債務者の権利行使にとやかく言うわけです。

自身の債権を守るために債務者に対してとやかく言ってくる債権者

ただし、いつでも債権者代位が認められるわけではありません。債務者の権利は債務者が行使するのが原則です。それを代わりに行使できるような場面というのはかなり限定されています

そこで債権者代位権が行使できるような場面をしっかり理解していく必要があるのです。

債権者代位権の要件

債権者代位権は民法423条

債権者代位権の基本となる条文は民法423条です。

(債権者代位権の要件)
第四百二十三条 債権者は、自己の債権保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。
2 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、被代位権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。
3 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、被代位権利を行使することができない。

民法421条1項より

債権者代位の要件は

①自己の権利②保全の必要性③被代位権利

であることがわかります。さらにこれに加えて、先ほどの債権者代位の趣旨・目的(責任財産保全のために債権者が債務者に代わって権利を行使できるとした例外的なもの)を踏まえると、

④債務者の権利不行使

も要件の1つであると考えられています。すでに債務者が権利を行使していれば債権者代位は使えないというわけです。

また、①自己の債権は通常、被保全債権(債権者代位によって守る債権)と呼ばれます

以上をまとめると、

〈債権者代位権の要件〉
①保全の必要性
②被保全債権
③被代位権利
④債務者の権利不行使

となります。

以下でそれぞれについて詳しく見ていきましょう。

①保全の必要性

保全の必要性は、判例通説にそって考えると

無資力(債務者の責任財産が債務を弁済するのに十分でないこと)

のことを言います。これは債権者代位権の趣旨・目的を理解すればおのずと受け入れられるでしょう。

債権者の債務を守るため(ちゃんと回収するため)に債務者に代わって権利を行使するのが債権者代位権でした。となると、この債権者代位権を行使しなくても、債務者に十分な財産があり、債権者がちゃんと自身の債権を回収できる場合には債権代位権は使えないことになります。

よって、条文上の「保全のための必要がある」とは「債務者が無資力であり、債権回収ができないおそれが強い」ということを意味するわけですね。

基本的に試験問題では、この無資力を表すために

債務者は他に重要な財産を持っていない。」というような書き方をします。

②被保全債権

被保全債権がどのようなものでなければならないかはまず423条2項3項を確認しましょう。

(債権者代位権の要件)
第四百二十三条 
2 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、被代位権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。
3 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、被代位権利を行使することができない。

2項3項で被保全債権が履行期未到来であったり、強制執行により実現できない性質のものである場合には債権者代位権を行使できないとされています。

つまり、逆に言えば、被保全債権は、履行期が到来しており、かつ強制執行が可能であるものでなければいけないというわけです。

なお、2項のただし書にもあるように保存行為(財産を維持するだけの行為)については履行期は関係ありません。これは保存行為は急を要する場面だからです。時効の完成を妨げるような権利行使は保存行為にあたります。

また、条文上ははっきりしていませんが、被保全債権は金銭債権である必要があります。あくまで責任財産を保全するのが、債権者代位権の趣旨・目的であったからです。

また、漠然として被保全債権は認められていません。内容や範囲が不確定である場合には、例外的である債権者代位権の適用場面ではないというわけですね。

以上をまとめますと、

被保全債権は㋐履行期到来が原則であり㋑強制執行が可能であり㋒金銭債権であり㋓範囲や内容が確定していることが必要というわけです。

とはいえ㋑㋓は通常の試験問題では明らかに満たしていると思うので、

結局問題になるのは㋐㋒ということになります。

被保全債権の要件を満たしているかどうかの主軸として、金銭債権かどうか、履行期が到来しているかどうかは逐一チェックする癖をつけておくとよいでしょう。条文や債権者代位権の趣旨を考えて上記判断要素を導けるようになりたいものですね。

③被保全権利

被保全権利は基本的に債務者の権利であればあらゆる権利が含まれることになります。債権でなくてもよく、登記請求権や取消権、解除権、相殺権など、とりあえず権利であれば何でもオッケーです。

ただし、被保全権利として許されないものがあります。それは条文にも明記されています。民法423条1項ただし書をみてみましょう。

(債権者代位権の要件)
第四百二十三条 債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない

一身専属権や差押えを禁じられた権利は、被保全権利にはならないというわけです。

一身専属権は、認知請求権や離婚請求権など、権利者の意思のみによって決めるべき権利のことです。

とはいえ、一身専属権や差押えを禁じられた権利が登場する試験問題は出題されないでしょう。

債権者代位権っぽく見せておいて、「これは一身専属権だから被保全債権にはならないんですよー。騙されましたねー。」というような問題を作ることはないです。もしそのような問題を作る教授がいたとしたら頭がおかしいですね。何がしたいのかわかりません。

被保全権利は債権じゃなくて権利であればよい。ただし被保全権利として認められない例外もあり民法413条1項ただし書に書いてある。

というレベルで押さえておけば大丈夫でしょう。

④債務者の権利不行使

これは再度繰り返しになりますが、条文上から見つけられない要件です。当たり前といえば当たり前ですが、債務者がすでに権利を行使している場合には債権者代位権は認められません。

そもそも被保全権利が行使によりなくなっているので被保全権利がないことになります。

しかし意外と見落としてしまう箇所でもあります。問題を解いていたら「債権者が代位して債務者の〇〇という権利を行使すればいいじゃん。こんなこと思いつくなんて俺天才じゃん!」となって突き進んでしまいがちです。

その際には「債務者がすでにそのような権利を行使していないのか?」という視点を持つようにしましょう。

また要件の①であった「債務者の無資力」も意外と見落とす要件なので、しっかり意識するようにしてください。多くの場合は①無資力要件を満たさないことによって債権者代位権という発想自体を防いでいる試験問題が多いです。

債権者代位権の効果

債権者代位の範囲は被保全債権の額の限度(民法423条の2)

まずは債権者代位権を行使できる範囲について知っておく必要があります。債権者代位で効果が及ぶ範囲という言い方もできますね。

民法423条の2をみてみましょう。

(代位行使の範囲)
第四百二十三条の二 債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、被代位権利を行使することができる。

債権者代位権は、自己の債権額の限度においてのみしか、行使することはできません。これは債権者代位権の趣旨・目的を思い出せば理解できるはずです。債務者の責任財産の保全のために「例外的」に債務者の権利について介入できるのが債権者代位権でした。そのため、できるだけ介入の影響度は小さくしたいはずです。

こうして、債権者代位権は自己の債権の額に絞っているわけですね。

とはいっても、可分でない権利、目的物引渡請求権などの場合にはこの制限を用いることはできません。金銭債権のような可分の権利の場合の規定である点は注意しましょう。

効果の原則は債権者が権利行使しただけ

まずは効果の原則から押さえる必要があります。債権者代位権は、債権者が債務者に代わって権利を行使しているだけです。よって債権者代位の効果は、債務者が権利行使をした場合と同様になります。

たとえば、債務者の解除権を代位行使した場合には、債務者と第三債務者との間の契約などが解除されるだけです。債権者が直接的になにか利益を受けるわけではありません。ただ単に、債務者の責任財産を守った、というだけです。

例外が民法423条の3

次に例外です。被保全権利が金銭がの支払いや動産の引渡しを目的とするものであるときは例外的なパターンになります。

民法423条の3に規定があるので見てみましょう。

(債権者への支払又は引渡し)
第四百二十三条の三 債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利が金銭の支払又は動産の引渡しを目的とするものであるときは、相手方に対し、その支払又は引渡しを自己に対してすることを求めることができる。この場合において、相手方が債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは、被代位権利は、これによって消滅する。

なんと、金銭の支払いや動産の引渡しを目的とするものが被代位権利である場面では、債権者は直接「俺に支払え、引き渡せ」と請求できるというわけです。

ただ注意してほしいのは、債権者自身に支払や引渡しを求めることができるだけであって、そこで第三債務者から払われたり引き渡される金銭・目的物が自動的に債権者のものとなるわけではないという点です。債権者代位権は債務者の権利を代わりに行使するものなので、その権利行使で得られたものは債権者の物ではなく債務者の物となります。

そのため、債務者は債権者に対して引渡請求権をもつことになるのです。

民法423条の3

金銭の支払の場合の事実上の優先弁済

民法423条の3を使っても、結局債権者は債務者のものしか得られないわけだから、返さないといけないわけでしょ。
ならあんまり民法423条の3は意味ないってわけですか。

法上向
法上向

実はそういうわけでもないんだよ。民法423条の3が生きてくるのは、金銭の支払いの場合さ。詳しくみていこう。

特に金銭の支払の場合はこの規定が生きてきます。

たとえば被保全債権も100万円で被代位権利(金銭債権)も100万円だった場合を考えてみましょう。

この場合、民法423条の3第1項によれば、債権者は第三債務者に対して、自身に100万円を支払うように請求できるわけですね。

とはいっても、100万円は債務者のものなので、債務者は債権者に対して100万円の支払請求権を持つことになります。

すると、上図のような形になりますよね。さて、債権者は何か主張できそうではありませんか?

相殺が使えるのではないか?と気づいた方はすごいでしょう。とはいえ、通常は債権者代位を学習するときに相殺はまだ習っていないはずですので、気づかなかったという方はこれから覚えていけば大丈夫です。

相殺は民法505条にあります。先出しして押さえておきましょう。

(相殺の要件等)
第五百五条 二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

ようは同種目的の対立する債権であれば、対等額でなかったことにできるというものです。

これを債権者は主張して、被担保債権と債務者から債権者への金銭債権とで相殺をすることができます

すると、あら不思議

債権者が被担保債権を優先的に回収したことと同じ作用をもたらすのです。

これを業界用語で「事実上の優先弁済」といったりします。

法的効果としては債権者代位をしても、債権者は債務者の責任財産を保全できるだけで、優先弁済を受けられるわけではありませんが、直接の支払(民法423条の3)と相殺(民法505条1項)を用いることで、事実上、優先的に弁済を受けられた(被担保債権を回収できた)という効果をもつことができるというわけです。

復習となりますが、金銭債権の場合には、被保全債権の額の範囲でしか代位行使できませんでした(民法423条の2。そのため、事実上の優先弁済を用いる場合は被保全債権がゼロになるか残るかしかないという点も押さえておくとよいでしょう。相殺後に債務者から債権者への金銭債権が残るという事態は生じ得ません。

まとめ

以上、債権者代位権について確認してみました。

なかなか複雑な分野ですが、結局は債権者代位権の要件と効果を理解していれば大丈夫だと思います。しっかり整理していきましょう。

〈債権者代位権の要件〉
①保全の必要性(無資力)
②被保全債権
③被代位権利
④債務者の権利不行使

〈債権者代位権の効果〉
①原則は債務者が権利を行使した場合と同じ。
②例外として、金銭の支払や動産の引渡しが被代位権利の場合には債権者に直接引渡すことができる。
③②の場合に、債務者は債権者に引渡請求権をもつことになるが、金銭の場合には相殺によって、事実上の優先弁済が可能となる。

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

債権総論では初学者にもおすすめのとてもわかりやすい基本書があります。有斐閣ストゥディアの債権総論です。

改正民法に完全対応ですし、事例や図解、章ごとのまとめもあるのでとてもわかりやすい基本書になっています。ぜひ読んでみてください。

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