行政法で一番わかりやすい分野ってなーんだ?
え,どれもわかりにくいけれど……
そんなこと言わずに!(汗)
国家賠償法2条はもっともわかりやすい分野と言われているぞ。
国家賠償法2条は考え方が単純で行政法で最も理解しやすい分野だと思います。しかし,ポイントを理解していないと論点を落とすことにつながるので注意が必要です。国家賠償法2条の考え方についてみていきましょう。
国家賠償法2条のポイント
国家賠償法2条の考えるポイントは単純ですが,条文で見えにくいのが難点です。しっかりと覚えることが重要になります。
②本来の用法という考え方を理解する。
③機能的瑕疵について理解する。
種類で捉える公の営造物の設置又は管理の瑕疵
条文を確認!国家賠償法2条
国家賠償法2条は国や公共団体が設置した物によって損害がでた際の賠償を求める訴訟になります。
同情するなら金をくれってやつですね(わかりにくい笑)。
条文は国家賠償法2条になります。見てみましょう。
第二条 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
要件は条文からもわかる通り,
です。
瑕疵は種類によって違うことを意識
そもそも瑕疵というのは通常有すべき安全性を欠いていることです。これは覚えましょう。
しかし単に通常有すべき安全性を欠いている,といっても判例はその営造物の種類によって判断が異なるといわれています。そのため,種類に応じてどの程度であれば瑕疵にあたるのか=通常有すべき安全性を欠いているというのかを意識していく必要があります。
道路の場合
道路の場合は,国や公共団体がわざわざ作ったものです。そのため,ちゃんと管理していないとそれだけで瑕疵=通常有すべき安全性を欠いているとして責任を問われます。たとえば,崖で落石の可能性が指摘されていたのに標識だけしか設置しておらず落石事故が起こり国家賠償が認められた判例などが有名です。
河川の場合
河川の場合は,国や公共団体が作ったものではありません。あくまで自然上もともとあったものに国や公共団体が手を加えて整備しただけですね。よって道路よりも瑕疵が認められにくいといわれています。
ここで重要な判断要素は改修中であるか改修し終わっているかという点です。
改修中であれば,水害が起こっても改修してなかったししょうがないよね,となり,ほとんど瑕疵は認められない結論になります。
改修が完了している場合は,水害が起こった場合,改修したんだしさすがに水害防がないといけないよね,となり,工事で予定されていた水害と同程度の水害で被害が発生していた場合は瑕疵が認められるとされます。
道路の瑕疵の場合は認められやすく,河川,特に改修し終わっていない河川では瑕疵は認められにくい。
別の瑕疵=本来の用法の考え方
上記基準とは別に考えられるのが本来の用法という考え方です。これは道路や河川のような瑕疵ではなく,子供が公の営造物を使用してケガをしたような場合によく適用されます。
この場合の通常有すべき安全性の判断は本来の用法であったかどうかを考慮します。
たとえば小学校のテニスコートの審判台で遊んでいた子供が死亡した判例では,審判台は学校のものなので公共団体が設置した公の営造物といえますが,それは本来の用法で損害が生じたわけではないとされ,通常有すべき安全性があったとは言えないとされました。
このように,本来の用法という考え方は,さすがにこの場合にまで国家賠償を認めるのはねぇ~というような場合について考えられると思います。
道路や河川のようなTHE国賠2条のような場合以外でも国家賠償法2条は適用されるということ,本来の用法といいう考え方で通常有すべき安全性を判断することがあるという点を押さえておくとよいでしょう。
国家賠償法2条で忘れやすいのが機能的瑕疵
国家賠償法2条が適用される場合として忘れやすいのが機能的瑕疵の場合です。機能的瑕疵とは,公の営造物の機能,供用によって別の人(周辺住民)が被害を受ける場合です。
空港の騒音等がわかりやすいと思います。空港は国または公共団体が設置管理することが多いですが,それによる騒音被害は,公の営造物から生じたといえ,国家賠償法2条が適用されるとされています。
このような場合に国家賠償法1条を使うという学説もありますが,判例で認められているのは国家賠償法2条なのでこちらを考えた方がいいと思います。
まとめ
あまり大きな問題になることもなく理解しやすい領域であると思うので簡単にざっくり論点を確認できるような記事にしました。意外と忘れやすい論点,影が薄いやつなのでもし忘れないであげてください!
きちんと論点になりそうであれば検討しましょう。特に国家賠償法1条との区別,機能的瑕疵に気を付けてください!
読んでくださってありがとうございました。ではまた~。
参考文献
記事の目的上,とても簡潔にまとめているので,もっと深めたい方は以下の基本書を参考にしてください。わかりやすいのでおすすめです。