無効取消し改正についてロー生が解説してみた。【民法総則その5】

無効・取消し民法

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錯誤や詐欺で法律行為が無効や取消しになるのはわかりました。

法上向
法上向

では,錯誤や詐欺の場合の要件を主張すればそれで取り消せると思うかい?

え,そんなの当たり前じゃ……?

法上向
法上向

実は「取消しの意思表示」が必要なんだよ。これが無効と取消しの違いでもあるから見ていこうか。

これまで,法律行為が無効や取消しになる場合を見てきました。今回はそれにあたる場合にどういう法効果がもたらされるのか,つまり取消しや無効とはどういう意味なのかを見ていきます。今回は法律行為が取消しになる場合や無効になる場合を前提にするので,もし知らない方は以下の記事をご覧ください。

無効・取消しのポイント

取消しは改正により条文が大きく変わりました。特に民法121条の2は改正民法でよく使われる条文になります。改正民法になって嫌だなーと思う方もいるかもしれませんが,今回の改正はこれまで頭の中で考えていたことを書いてくれた面が強いので,条文に沿って考えていけば大丈夫です!一緒に頑張りましょう。

①無効と取消しの違いを押さえる。
②取消しの原状回復について理解する。
③追認について理解する。
④期間制限があることを意識する。

無効と取消しの違いは「だれでもいつでも当然」かどうか

無効と取消しの意味

法律には「無効とする」と書かれているものもあれば,「取り消せる」と書かれているものもあります。これらは一緒のようで若干効果がことなります。

無効とはいつでもだれでも当然に効力を生じないということです。つまり,無効の主張はいつでもだれからでもできることになります。たとえば全然関係のない人が「この人達の売買契約無効じゃね?」といってもよいわけです。

それに対して,取消しはその逆を行きます。取消権者が期間内に取消の意思表示をしないと効力が生じないという状態にはなりません。

ここでよく忘れるのが,取消しの意思表示をするという点です。えっ,当たり前でしょ。と思われるかもしれませんが,よく忘れてしまうんですよね。私だけかもしれませんが(汗)。

例えば詐欺を主張するときも前回同様①故意②欺罔行為の違法性③欺罔行為から錯誤④錯誤から意思表示を検討しますよね。それに加えて,通常はこれらを主張して行為を取り消したいはずなので⑤取消しの意思表示が必要になるわけです。

取消しは意思表示による

えっ,なんで取消しの意思表示が必要なの?となりますが,これは条文に書いてあるから仕方ありません。

(取消し及び追認の方法)
第百二十三条 取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消し又は追認は、相手方に対する意思表示によってする。
「取り消すことができる」と条文にある場合は,別途民法123条より取消しの意思表示を相手方にする必要があるというわけです。錯誤(民法95条)や詐欺強迫(民法96条)から条文が離れているので忘れてしまうんですよね。

効果ははじめから無効

取消しの場合は無効と違って取消しの意思表示をしてはじめて効力が生じないことを主張できるということになります。これをもう少しみていきましょう。取消しの意思表示をするとどうなるのか?これも条文に書いてあります。

(取消しの効果)
第百二十一条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。

取消しの意思表示があったら,無効とみなされるそうです。法律で「みなす」ときたら絶対と今のうちは考えておいてください。覆せないということです。つまり,取消しも取消しの意思表示をしさえすれば無効として扱われるということです。

取消権者は条文を

取消しはだれでもは取り消せません。取消権者からしか取り消せないのです。では,取消権者は誰か?これも条文に書いてあります。

(取消権者)
第百二十条 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
2 錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は,瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

よくわからないと思いますが,今のうちはなじみの深い錯誤詐欺強迫のみを考えておけばよいでしょう。民法120条2項によれば瑕疵のある意思表示をした者は取消権者とされています。つまり,錯誤の場合は錯誤に陥った表意者,詐欺の場合はだまされた表意者,脅迫の場合は脅された表意者が,取消権者というわけです。意外と使う条文ですので,しっかり理解しましょう。

期間制限も条文を

最後に期間制限をみます。無効はいつでもだれでも当然に主張できたのに対して,取消しはいつでもできないのです。

(取消権の期間の制限)
第百二十六条 取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
取消権のタイムリミットは追認をすることができる時から5年以内です。行為の時から20年以上でもあります。追認をできる時とは追認の要件(民法124条)を見てもらえればわかりますが,基本は取消権を有することを知った後です。

行為時から20年経つのはよっぽどであり,取消権があることを知って契約に不満があるならすぐに取消の意思表示をするのが通常なので,問題であまり使うことはないですが,無効との違いとして覚えておきましょう。

まとめ

以上,まとめるとこうなります。すべて条文に書かれているので,条文ゲームですね。

無効はいつでもだれでも当然に効力が生じない。一方,取消しは取消権者(120条)が期間内(126条)に取消の意思表示(123条)をしてはじめて効力が生じない(121条)といえる。
特に取消しになる根拠条文の要件とは別に取消しの意思表示が必要であるという点に注意しましょう。

民法121条の2第1項は改正民法で超重要‼

次に無効や取消しの意思表示をした場合どうなるのかを説明します。ここで超重要条文が改正法で新設されました!

(原状回復の義務)
第百二十一条の二 無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。
2 前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
3 第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。
ここの3項はまた行為制限能力を勉強してから戻ってきてもらえるとわかりやすいと思うので今回は解説しません。

まずポイントは,民法121条の2第1項は「無効な行為」となっていますが,これは取消しの場合も含みます。どういうことかというと,もう一度取消しの法効果を思い出してください。取消しの意思表示をすると初めから無効であったものとみなす(民法121条)でしたよね?取消しも取消しの意思表示をしさえすれば無効として扱われるということでした。そのため,ここの「無効な行為」は取消しと無効どちらも場合も含むといえるわけです。

さて,一番の問題は原状に復させる義務(原状回復義務)とはどういうものなのか,ですよね。原状回復義務は,元に戻す義務だと考えてみましょう

契約が無効になったのだから,その契約で得たものはもとの人へ返しなさい,こういう元に戻す義務を原状に復させる義務と言っているのですね。

たとえば,有名な陶芸家の壺を錯誤で買ってしまった場合は,錯誤取消しの意思表示をすると,原状回復義務が発生することになり,買主は壺を,売主は代金を返すことになります。

ここで重要なのは,壺がすでになくしてしまっている場合など,現物を返えせない場合です。

この場合は物を返せないので物の客観的価値をお金に換えて返すことになります。これを一般に価額償還義務と言ったりします。

原状回復義務は原則として現物(契約で渡したもの)を返還して元の状態に戻すことを目的とするものですが,もし現物が返還できないならその現物の客観的価値(つまりはお金)を返還する義務があるといえるのです。これは改正法の解釈ですのでしっかり覚えましょう。

取消しや無効の効力は原状回復義務である(民法121条の2第1項)。原状回復義務は元に戻す義務であるから,原則として現物を返還するが,現物が返還できない場合は価額償還として客観的価値の価格を返還する。

追認は取消権の放棄

あとはやや細かいのでささっといきましょう。

追認は,取消権の放棄です。取り消せるけど,認めるから有効というものですね。ちなみに無効の場合は追認は考えられません。無効はいつでもだれでも当然に無効であるからです。そのための救済として無効の場合に追認すると新たな行為をしたものとみなされます(民法119条)。しかしここはやや細かいので省略します。

しかし,こんなの覚えられません(笑)。影が薄すぎます。よって条文を頼りましょう。

(取り消すことができる行為の追認)
第百二十二条 取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。
(取消し及び追認の方法)
第百二十三条 取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消し又は追認は、相手方に対する意思表示によってする。
(追認の要件)
第百二十四条 取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。
2 次に掲げる場合には、前項の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にすることを要しない。
一 法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をするとき。
二 制限行為能力者(成年被後見人を除く。)が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得て追認をするとき。

条文が細かいときには全部条文に書いているから安心と思ってください。条文通り考えれば大丈夫です。

追認したら契約を認めることになりますから以後取り消せませんし(民法122条),追認も取消しと同じように意思表示により行います(民法123条)。追認の要件はすべて民法に書いてくれています。

まとめ

いかがだったでしょうか?取り消せる行為のときには取消しの意思表示(民法123条)まで大事ということを忘れないでくださいね。また取消しや無効から生じる効果として民法121条の2第1項の原状回復義務を忘れないでください。あとの部分は少し細かく条文にすべて載っているので条文を見直してくださいね。

ポイントは今回は少ないので省きます。この箇所は条文ゲームです。適宜六法を参照しながらがんばりましょう!読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

記事の目的上,とても簡潔にまとめているので,もっと深めたい方は以下の基本書を参考にしてください。改正民法対応でわかりやすいのでおすすめです。

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