今回は証拠調べについてみていくぞ!といっても証拠調べはあまり問題
として出題されにくいから,簡単に要点を羅列していく感じにしようと思う。
えっ(汗)。なら飛ばしてもいいのでは……。
いやいや,裁判上は証拠調べは重要な手続だし,短答や応用問題としては出る可能性があるから,流れをつかむという意味でも知っておいた方がいいんだよ。
今回は証拠調べです。争点整理をして争点を絞ったらその争点を証拠調べするのが民事訴訟法の流れです。特に,弁論準備手続と並んで集中証拠調べが行われることが多いです。
ただし,証拠調べは条文も難しいし,問題として出題されることも少ないです。そこでざっと重要な点と流れをつかめるように軽く整理する,いつもとは違う感じにしていこうと思います。
証拠調べのポイント
証拠調べで主要な点と,もし試験ででるとしたらという論点を軽く示していこうと思います。
証拠調べは証人尋問・書証を押さえよ
証拠調べの種類には,証人尋問,当事者尋問,鑑定,書証,検証の5つがあります。そのうちで押さえておくべきは,証人尋問と書証でしょう。
そして,争点整理手続の弁論準備手続では,文書の証拠調べができるという点を述べましたが,これは例外です。証拠調べは原則法廷で行われます。
証人尋問
証人義務
(証人義務)第百九十条 裁判所は、特別の定めがある場合を除き、何人でも証人として尋問することができる。
宣誓
(宣誓)第二百一条 証人には、特別の定めがある場合を除き、宣誓をさせなければならない。
民事訴訟法201条では宣誓義務があるとされています。宣誓をした証人が偽証すると,偽証罪に問われることになります。これに対して当事者尋問では宣誓は裁判官の裁量によります(民事訴訟法207条1項)。
証言拒絶権
(証言拒絶権)第百九十六条 証言が証人又は証人と次に掲げる関係を有する者が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれがある事項に関するときは、証人は、証言を拒むことができる。証言がこれらの者の名誉を害すべき事項に関するときも、同様とする。
一 配偶者、四親等内の血族若しくは三親等内の姻族の関係にあり、又はあったこと。二 後見人と被後見人の関係にあること。第百九十七条 次に掲げる場合には、証人は、証言を拒むことができる。
一 第百九十一条第一項の場合二 医師、歯科医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、弁理士、弁護人、公証人、宗教、祈祷若しくは祭祀の職にある者又はこれらの職にあった者が職務上知り得た事実で黙秘すべきものについて尋問を受ける場合三 技術又は職業の秘密に関する事項について尋問を受ける場合2 前項の規定は、証人が黙秘の義務を免除された場合には、適用しない。
証人は宣誓義務がありますが,その分証言が拒絶できるというわけですね。民事訴訟法196条では自分自身や親族の自己負罪拒否特権,民事訴訟法197条では職業系で証言拒絶権があるというわけです。
書証
文書についての証拠調べのことです。
文書には形式的証拠力と実質的証拠力というものがあります。
形式的証拠力は,その文書が作成名義人によって書かれているということを意味します。つまり,偽造されていないものという意味です。
実質的証拠力は,その文書がどの程度真実であり,信用でき,どのような関係で事実認定できるかを意味します。
二段の推定
形式的証拠力における私文書の押印の場合には二段の推定が問題になります。
(文書の成立)第二百二十八条 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。2 文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定する。3 公文書の成立の真否について疑いがあるときは、裁判所は、職権で、当該官庁又は公署に照会をすることができる。4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。5 第二項及び第三項の規定は、外国の官庁又は公署の作成に係るものと認めるべき文書について準用する。
この条文は文書の形式的証拠能力があること(文書が真正であること)の方法を書いているものです。重要なのは民事訴訟法228条4項です。
ここで押印については二段の推定が適用されていると説明されます。
①本人の印影があるということは本人の意思に基づく押印があったということ(事実上の推定)
②本人の意思に基づく押印があったということは本人の意思に基づく文書作成があったということ(民事訴訟法228条4項)
というわけです。
文書提出命令
書証を行うには文書がなければはじまりません。しかし,自分の欲しい文書は相手方が持っている場合もあります。この時に文書提出命令が使われることがあります。
問題になりやすいのは文書提出義務です。どの文書に文書提出義務が認められるかに争いがあります。
(文書提出義務)第二百二十条 次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。
一 当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき。二 挙証者が文書の所持者に対しその引渡し又は閲覧を求めることができるとき。三 文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき。四 前三号に掲げる場合のほか、文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。イ 文書の所持者又は文書の所持者と第百九十六条各号に掲げる関係を有する者についての同条に規定する事項が記載されている文書ロ 公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるものハ 第百九十七条第一項第二号に規定する事実又は同項第三号に規定する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書ニ 専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。)ホ 刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書
特に問題になるのは,民事訴訟法220条4号,さらにニの文書(自己利用文書)についてです。
②不利益性
③特段の事情がないこと
の3点があれば満たされるとされています。つまり,外部に公開される機会や,公開されても不利益がない場合,公開すべき特段の事情がある場合には自己利用文書ではない=文書提出義務が認められるというわけですね。
なお,文書提出命令に従わなない場合はかなり厳しく,真実擬制(真実であるとみなすこと)が行われます。
(当事者が文書提出命令に従わない場合等の効果)第二百二十四条 当事者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができる。2 当事者が相手方の使用を妨げる目的で提出の義務がある文書を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたときも、前項と同様とする。3 前二項に規定する場合において、相手方が、当該文書の記載に関して具体的な主張をすること及び当該文書により証明すべき事実を他の証拠により証明することが著しく困難であるときは、裁判所は、その事実に関する相手方の主張を真実と認めることができる。
まとめ
さて,証拠調べについてみてきました。証人尋問と書証について書きましたが,他に鑑定といった方法もあります。
詳しくは各基本書等で確認お願いします。論点として出るとしたら今回挙げた「二段の推定」「文書提出命令」くらいだと思います。
読んでくださってありがとうございました。ではまた~。
参考文献
民事訴訟法で初学者向けの基本書を見つけるのは難しいですが,以下の本は薄くかつ分かりやすいのでおすすめです!よかったら読んでみてください。