差別対価・差別的取扱いの論点をわかりやすく【経済法その7】

経済法

差別対価や差別的取扱いって、経済法の試験でほとんど見ないんですけど、何が問題になるのかわからないです…

法上向
法上向

たしかに「差別対価」や「差別的取扱い」は経済法・独占禁止法の分野でもマイナーな分野だな。しかしその分、覚えることも少ないから楽だぞ。

独占禁止法上、不公正な取引方法として「差別対価」や「差別的取扱い」が用意されていますが、正直これらはマイナーな分野です。

検討すべき要件について暗記しなければならない事項があるわけでもありません

しかし、もし「差別対価」や「差別的取扱い」が出題されたら、それに対応できるくらいの理解は必要だと思います。

そこで今回も各要件をしっかり検討して、どのように考えればよいかを解説していきます。

差別対価・差別的取扱いのポイント

差別対価・差別的取扱いはまず適用条文を押さえる必要があります。取引拒絶ほどややこしくはありませんが、適用条文を把握することは経済法では特に重要なので、しっかりと理解していきましょう。

その次に、各要件について検討していきます。しかし今回の「差別対価」「差別的取扱い」は要件自体で知っておかなければならないことはそれほど多くありません。「不当に」という公正競争阻害性の要件の解釈くらいです。

「不当に」という要件をどのように解釈すればよいのか?差別対価・差別的取扱い特有の理解に従って解説していこうと思います。

①差別対価・差別的取扱いの条文を押さえる。
②差別対価・差別的取扱いの要件「不当に」を理解する。

それでは見ていきましょう!

差別対価・差別的取扱いの条文

独占禁止法2条9項2号・一般指定3項・一般指定4項

差別対価・差別的取扱いの条文は独占禁止法2条9項2号独占禁止法2条9項6号イロによる一般指定3項・一般指定4項になります。一般指定5項も一応、差別対価・差別的取扱いのものですが出題されることはまずないといってよいので、

基本的な条文としては、独占禁止法2条9項2号一般指定3項一般指定4項ということになります。

独占禁止法
⑨ この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
二 不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品又は役務を継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの

一般指定
3(差別対価)
 不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品若しくは役務を供給し、又はこれらの供給を受けること。

4(取引条件等の差別的取扱い等)
 不当に、ある事業者に対し取引の条件又は実施について有利又は不利な取扱いをすること。

これだけみても違いがよくわからないと思います。

差別対価:独占禁止法2条9項2号と一般指定3項の違い

まずは独占禁止法2条9項2号一般指定3項の違いです。

両規定は「差別対価」についての規定となっています。「差別的取扱い」ではありません。

条文を丁寧に読めばわかりますが「継続性」「他の事業者を困難にすること」が独占禁止法2条9項2号には要求されています。

加えて、独占禁止法2条9項2号は「供給をする」事業者しか規制されませんが、一般指定3項では「供給を受ける」事業者も規制されているのです。

このことから、

独占禁止法2条9項2号の方が要件が厳しい

ということがわかりますね。

すなわち、一般指定3項独占禁止法2条9項2号ではカバーしきれなかった差別対価を取り締まる役割を持っているわけです。差別対価のアシスト的ポジションです。

差別的取扱い:一般指定4項

差別対価ではなく「差別的取扱い」の規定は一般指定4項です。

一般指定4項の規定はすごく漠然としていますよね?

これは、差別が行われやすい取引条件で「差別対価」以外のすべてをカバーしている規定だからです。

すなわち、差別的な取引が行われる典型例が「差別対価」であり、こちらは独占禁止法2条9項2号・補助的に一般指定3項でカバーしています

残りの差別的取引(差別的取扱い)については一般指定4項がカバーしているというわけです

すべての典型は独占禁止法2条9項2号である

以上の話を聞いて、なんとなく察しがついていると思いますが、

差別対価・差別的取扱いについては、独占禁止法2条9項2号が不公正な取引方法としては一番の典型例です。

よって独占禁止法2条9項2号の各要件を知れば、その他の一般指定3一般指定4項には大体は対応できます

そのため、独占禁止法2条9項2号の要件に絞って解説していこうと思います。

もう一度、条文を見てみましょう。

⑨ この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
二 不当に地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品又は役務を継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの

⑤「不当に」②「地域又は相手方により差別的な対価をもって」③「継続して」④「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ」(便宜上、条文の順番と対応していません)

が要件として表れていますね。

また不公正な取引方法で忘れてはならないのが、独占禁止法19条です。独占禁止法19条がなければ、不公正な取引方法が「違法」とはなりません。

第十九条 事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。

ここから①事業者という要件が表れます。

要件①:「事業者」

事業者は毎回登場しますね。しっかり覚えていきましょう。

事業者とは、なんらかの経済的利益の供給に対応して反対給付を反復継続して受ける経済活動を行う者をさす(主体の法的性格及び営利性の有無は問わない)。

①経済的利益供給
②反対給付の反復継続

という2点の要素をしっかり押さえていきましょう。

要件②:「地域又は相手方により差別的な対価をもって」

地域又は相手方による価格差を付けていればこの要件は満たされます。よってそれほど気にする必要はありません。

なお、この価格差が微々たるものであることや価格差には事情があるといったことは、「不当に」の要件である公正競争阻害性で判断していきますので、「地域又は相手方により差別的な対価をもって」の場面では本当にただ単に「差別対価」=「価格差」があるかを検討していけばよいだけです!

要件③:「継続して」

一般指定3項独占禁止法2条9項2号を分ける要件なのでしっかり検討しましょう。

不当廉売にも「継続して」の要件があります。不当廉売でよく議論されることですが、継続性とは「廉売が廉売行為者自らと同等に効率的な事業者の事業の継続等に係る判断に影響を与えうる」期間のことを言います。

差別対価の場合も同様です。「差別対価が行為者と同様に効率的な事業者の事業の継続に係る判断に影響を与えうる」のであれば継続性は満たされるでしょう。

とはいえ、差別対価自体がマイナーな分野なので、あまりこの部分を詳しめに議論している参考書は少ないです。

要件④:「他の事業者の事業活動を困難にするおそれ」

これも不当廉売とほぼ同じ要件があります。不当廉売のところから論証をパクリましょう。

現に事業活動が困難になることは必要なく,諸般の状況からそのような結果が招来される具体的な可能性が認められる場合を含む。

差別対価はマイナーなので、差別対価で「困難化」のおそれが詳しく議論されることは少ないです。不当廉売で学習する際にしっかり理解するようにすれば大丈夫でしょう。

要件⑤「不当に」(公正競争阻害性)

差別対価・差別的取扱いの公正競争阻害性は自由競争減殺

差別対価・差別的取扱いの一番の難所が「不当に」、すなわち公正競争阻害性の要件です。

差別対価・差別的取扱いの公正競争阻害性は自由競争減殺を意味します。

ということは、需要の代替性・必要に応じて供給の代替性から「市場」を画定し、その中で競争減殺効果があるかを総合衡量によって判断するのが基本というわけです。

しかし、差別対価の場合には、精錬された考え方が定着していますので、そこの点にも注意して「自由競争減殺」を判断していく必要があります。

差別対価には①不当廉売型②取引拒絶型がある

差別対価には2種類あります。

特定の地域・相手方に対してのみ不当に低い価格を設定することにより自己の競争者を市場から駆逐しようとする行為が「不当廉売型」です。

一方、特定の事業者に対してだけ、対価において不利な取扱いを行い、取引拒絶の場合と同様の競争減殺効果を生じさせることも考えられます。これが「取引拒絶型」になります。

わかりやすくいえば、仲がいい企業に対して安くする場合が「不当廉売型」であり、仲が悪い企業に対して高くする場合が「取引拒絶型」というわけです。

不当廉売型の「不当に」

不当廉売型の場合には不当廉売の議論がそのまま生きていきます。不当廉売は次回に学習しますが、前出ししてやっていきましょう。

不当廉売型の差別対価の不当性(公正競争阻害性)については、不当廉売の考え方をもとにし、

行為者の意図・目的、取引価格・取引条件の格差の程度、供給に要する費用と価格の関係、行為者および競争者の市場における地位、取引の相手方の状況、商品の特性、取引形態等を総合的に勘案して、市場における競争秩序に与える影響が判断されます。(不当廉売ガイドライン)

とはいえこれは自由競争減殺の判断方法(「競争の実質的制限」の緩やかバージョン)とほぼ一致するので覚えるというよりは「いつもと同じだ」と考えれば大丈夫です。

さらに、差別対価特有の問題点を加えていきましょう。差別対価が地域等によって生じるのは少なくありません。合理的理由があることもあります。

よって違法となるのは、

行為者が自らと同等またはそれ以上に効率的な事業者を市場から駆逐するような価格水準であるかどうか

で判断すべきということになります。

さらに判例の理解も加えていきましょう。

判例によれば、不当廉売型の差別対価では、単に差別的な低価格設定ではダメで、原則として原価割れを要件とすべきとされているのです(ニチガス事件参照)

ただ例外的に市場で大きなシェア占め、強大な競争力を有する事業者が、その力をもって価格に大きな差を設ける方法をとっている場合には、原価割れでなくても「不当に」が判断されることがあります(トーカイ事件参照)

以上をまとめると、

不当廉売型の差別対価の公正競争阻害性=自由競争減殺はいつもどおり総合衡量によりますが、判例を踏まえれば、原則として「原価割れ」によって判断されるということになります。しかし、シェアが大きく強大な競争力を有する事業者の場合には「原価割れ」がなくても自由競争減殺が認められることがあるということになります

取引拒絶型の「不当に」

まずは大前提として、自由競争減殺なので、需要の代替性・必要に応じて供給の代替性によって「市場」を画定し、その中で自由競争減殺効果を総合衡量によって判断するという流れが基本です。

しかし取引拒絶型なので取引拒絶の要素も取り入れるとよいでしょう。

ここで取引拒絶の議論を思い出してください。

誰とどのように取引をするかは基本的に事業者の自由だったはずです。にもかかわらず違法とされるにはそれなりの理由が必要です。「共同」でやっていたり「間接的」にさせていたり、「不当な目的を達成するため」であったり……

差別対価の場合には、単独・直接でやることが多いので「不当な目的を達成するための手段」かどうかを用いて判断するのがキーになってきます。ただし、取引拒絶ほど議論が進んでいる論点ではないので、取引拒絶の場合に比べて差別対価の場合には、総合衡量の1つの要因になるといった程度で考えておけば大丈夫でしょう。

一般指定4項の典型例

差別対価の場合には、独占禁止法2条9項2号や一般指定3項を用いると言いました。それ以外の差別的取扱いの場合に一般指定4項を使うわけです。

では、一般指定4項該当行為と差別対価行為が並行して行われた場合はどのようになるでしょうか?

たとえば気に食わない取引先に対して、価格を引き上げて配送回数を減らすような場合です。価格の引上げは「取引拒絶型の差別対価」にあたり、配送回数減少は「差別的取扱い」にあたります。

この場合判例では包括して一般指定4項だけを適用しているのです(オートグラス東日本事件参照)

このように、判例の傾向も踏まえれば一般指定4項は「差別対価以外にも差別的な行為をしている場合」の包括規定ととらえることもできるでしょう。

まとめ

差別対価・差別的取扱いを見てきました。差別対価・差別的取扱いには特段の論証はありません。これまでやってきた解釈方法とほぼ変わらないということです。

押さえるべきは公正競争阻害性の考え方くらいです。

①不当廉売型と②取引拒絶型に分け、それぞれの特徴の要素を総合衡量にちゃっかり入れていくということができれば万々歳でしょう。

しかしあくまで自由競争減殺の判断は個別事情に応じた総合衡量ということを忘れてはいけませんよ!

解説は以上です。読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

経済法を本格的に学習する人の中で入門的に使ってほしい参考書を上げてみます。というか論証の暗記として使えるものを用意してみました。

とりあえず経済法のスタートは「要件の暗記」です。そのため、要件自体のガイドラインや判例通説をもとに逐条的に解説してある『条文から学ぶ独占禁止法(第2版)』をおすすめします。

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